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鮮明な砂漠の赤青緑黄 2

 日も月もない闇の中、色鮮やかなモンスターの群れが蔓延る。一寸先は闇の中冒険者たちは進んでいく。

「ザッザッ」


「ザザザザ」


「ザザッ、ザザッ」

 ブルースコーピオンから距離をとり、俺たちは一歩ずつ闇の中に足を忍ばせた。足裏に神経を集中させる。歩いていると集中して体まで熱くなった。


「あの、質問なんですけど」

 俺は無性に気になることがあったので尋ねた。


「なんだ?」

 デメグラムさんが聞いてきた。


「列から逸れたブルースコーピオンを踏んづけてしまったら、どうすれば良いですか?」

 最悪の状況は常に考えておく。


「そりゃー戦うしかないだろ」

 デメグラムさんが答える。


「踏んづけて倒したら、敵さんの攻撃対象になるだろう」

 ゲイルさんが言う、もう意地悪。


「そんな心配はするなライム、踏んづけたら土をかぶせりゃーいいんだ」

 ヴィンスさんは珍しく意気地なしの回答。そんなの見つかっちゃいますよw。


「俺たちも昔、外でよーくそんなことがあったからな。ペンタンは攻撃してこないように見えるが、踏んで住処を壊すと大勢で出てきて針みたいなのを刺して血を吸われたことがあったんだ。百匹以上いたが砂をかけ一目散に逃走、作戦は成功したぞ」


「最弱モンスターでも、数がいたら強くなるんですね」


「っははは、小心者の大胆行動ってとこだな」


「はあ・・・」

 余裕そうな顔だ。



 そして、またザクザクと足音を立てて歩いていった。


「ザクザク!」

「ザクザク!」


「ズォオオオオオオオッ・・・サラサラサラ!!」

 遠くから流砂の音がした。


 ≪キラーアント:砂漠の地中に潜って天敵を連れ去る白いモンスター。地中では巣を網羅しており獲物をとらえるまで地下水を飲んで生きながらえている。その手には小さい毛針があり、刺されると麻痺する≫


 おっ?今度は説明が詳しい、このモンスターは発見者がいるのか情報が書き込まれていた。


「特徴が詳細に描かれているのはエウロたちが発見したからだな」

 ゲイルさんが言っているのはギルド・ブルーオーシャンか。



 一度休憩のため、砂地に座る。

 休憩には早いと思うが、靴に入った砂を落としたり汗を拭う方が順調に冒険が進むので効率的だ。外で修業をしていた時、いつもエリスは酷い戦闘後にそういった休憩を入れた。

 ゲームとは異なり、実際の冒険は休憩と休息がある程度必要になる。


 ずっと歩くのは辛かった。


「前、見て!」

 ハーゼリアさんが言う。砂の中をサラサラと進んでいく起伏があった。砂がモコモコと膨らむが砂なので平らに戻り変化に気づかない。

 これが天候の変化による影響ではないのは風や雨がないからである。



 遂にお前たちの仕業なのか?と言う決定的瞬間が見えた!ポカッといくつも穴ができた。これは蟻地獄である。よく見ていないとその穴に落ちてしまう。暗い穴に黒い景色、悪賢いモンスター。


 その穴に気を付けながら最少の光(松明)を持ってブルースコーピオンに続く。モンスターの変化がフロアの位置的変化を表す。俺にはそれが分かる。


「ザクザク!」


「ザザッ、ボフッ!」

 今のは何の音だ?


「ちょっと~、何これ!」

 モニカさんに何かあったようだ。


 モニカは、お気に入りのレザーブーツが砂の中に見事ズッポリとハマっていた。

「あれっ、抜けなぃっ!」

「照らせ月の光!」

「ライティング!!」


「は!?」

 光が辺りを照らす。光があって声がした位置は確かモニカさんがいたはず。


 その時!

 地団駄を踏むモニカはそれどころじゃない。足を引き抜くのと同時に景色が一変した。


「バシュバシュザザンガシュッーーー!!」


「ババババババアバアバババッバザザアザザザー!!」

「ッザザザザアザザザーー。キュキュキュキュキュウウ!!」


「ジャララジャラアッ!!」


「―――――」



「――」


 モニカさん・・。



 少し前の光景を頭で覚えている―――。

 スコーピオンの群れが遠くまで道のように列を成していたが一斉に黄色の光を向けて、青い手が伸びた。少し離れた所で顔を砂から白い顔を出すモンスター。

 この場から逃げろと言いたかったがそんな暇はなかった。逃げろ叫ぶにも移動するにも時間が足りなさすぎて。

 それは俺は光を直視していないから覚えていた。


 モニカさんモニカさん、と心の中で叫ぶ。

 魔術の光りは、モンスターの大群に飲み込まれるように沈んでいった。また声や音も轟音の中に消える。

 大群と轟音は闇の中へ、襲った形跡も。

 だがそこには何かいる。微かに聞こえる音。生物の吐息か羽音がその場を散らかしていた。


「パシパシ、やれやれ」


「誰!?」


「俺だ」

と答えるゲイル。


 そ、その声は!!

「モ、モモ、モニカさん!」

 モニカさんが生きている。


「大丈夫だったわ、みんなー!」

 砂を落としながらモニカさんが近くで砂を払っていた。しかもブーツをしっかりと持って。


「だ、大丈夫か?モニカさん心配しましたよ!」

 俺は暗い中を歩み寄る。まだいるモンスターに注意して。


「よかった・・」

とアッキー。


「危ない奴だ」


「不用意に魔術は使うな」


 ヴィンスとデメグラムの二人は答える。


「すみません、ご迷惑おかけしました」

 頭を下げるモニカ。


 モニカさんは声は小さいが怪我はなさそう。モニカさんの隣、寡黙のゲイルさんは周囲を見ていた。

 ゲイルさんはジャンピングタックルを見事に決めてフラグ取りじゃないモニカさん取りに成功した。そして大量のモンスターの攻撃を完全回避!

 そんなゲイルさんに俺は【フラグジャンパー】の称号を授けたい。


「ゲイルさん、すみませんでした。私が無闇にライティングを唱えたせいで」

 モニカがゲイルに謝る。


「気をつけろ。闇なのには理由がある」


「はい、気を付けます」


「ゲイルさん、すみませんでした。あと、ありがとうございます」

 俺たちも一緒に謝った。


「いいから。ここで立ち止まっていても危険だから行くぞ」

 ゲイルさんは頼りないように見えることがある。それは顔も言葉も他のメンバーより優しいからだ。しかし、今の行動力から実力が垣間見えた。

 ゲイルさんは赤い星へ向かい歩いていった。さすが下から這い上がったマッドのリーダーである。さっき砂から顔を出していたモンスターを調べる。


 ≪デザートスネーク 砂地を泳ぐモンスター、固い砂地を難なく泳ぎ狙った獲物の死角から襲い掛かる≫


 ずっと気配を殺して隠れていた。海ヘビのように砂の中を自由に移動するモンスターは、移動する時ガリガリと音が鳴った。砂を食べているのか?そのうねりが起伏を作り、また元に戻り地中を乱していた。



 それから俺たちは再び歩いた。


「調子はどうだ、カタリナ?」

 俺はカタリナに尋ねると、


「私は頭が珍紛漢紛」

 カタリナが答えた。


 このフロアは砂だらけな上に、謎のモンスターが隠れているからな。


「そういえばブルースコーピオンが襲ってこないよな」


「そうよね。私も変だなと思っていたの。でも、さっきは地中にいるデザートスネークやキラーアントまで襲ってきたから魔術に反応したのかなって考えているの。そのあたりに、きっと答えがあると思う」

 とモニカさん。


「うむ。その検証にはもっと材料が必要だな」

 声は極力出さない方がいい。 


 それから約十五分程歩いた(松明が燃え尽きた)時の事、


「モンスターだ!」

 ヴィンスさんの覇気のある声がする。


「空!!」

 眉を顰めながらヴィンスさんたちが空を見つめる。


「下からも来る!!」


 つまり砂の中。俺は敵の位置が掴めない。

 メニューを開く。履歴・戦闘に表示される二種類のモンスター。走りながら移動するのは、こけるのであまりしたくない。それでも開いたのは情報のため。

 ちなみに屈んでメニューの光を足元に近づければ照明代わりになる、がそのまま歩くと腰が痛くなりそう。


 ≪コカトリス 象徴的な頭、毛で覆われた体を持ち翼が二つある、また長くヘビのような尾がついている空の見張り役≫


 ≪バジリスク 蛇の王。地中の支配者はいつも地下に住む。猛毒を持つ≫



 特徴から推測すると、コカトリスが空からバジリスクが砂中から襲ってきているのだろう。


「なぜ居場所が知られたんだ?」

 松明以外の光はなく魔術も使ってない。それなのに何故!?


「夜行性だから見えるんじゃない!?」

とモニカさん。


「コカトリスが三匹、バジリスクが一匹いるぞ」

 ヴィンスさんは目が良いらしい。


「コカトリスが二匹来るぞっ!」

 デメグラムさんも目が良い。


 という事は急降下か!?

 高く暗い空か降りてきても下りてくるまで見えないし、地上からは距離間が掴めない。


「一匹は見張り役?」

 空で見張っている奴がいるのか。鴉の習性みたいで賢い頭がありそう。


「空は私がやる」

 ハーゼリアさんが言う。


 モンスターが来ている!?


「爆ぜろ、消えた竜巻を集めて重ねて!」

「エアブラスト!!」

「ブゥ―――ッ!!」


 爆風が二匹の翼をへし折る。防御すらできなかったはコカトリスは、バランスを崩し地面に頭から落ちた。


「今よ!」

 男たちの一斉攻撃。爆風後に地面で砂の擦る音がした方へ行く。俺は一刀、アッキーは振落で攻撃する。が倒せず、さらにヴィンスさんはダブルキル、デメグラムさんは振落で攻撃、二匹は息絶え砂のように散り去った。


 ハーゼリア、リコルチェ、モニカ、カタリナは空の敵に備えつつ、辺りを警戒する。


「一応、光の出ない魔法を使ったわ。あとは魔力の問題だけど・・」

 と言うハーゼリアさん。


 敵の一斉攻撃にも気を付けなければ。

 俺たちは攻撃した時、別のモンスターに襲われた事があった。

 だから攻撃はコカトリスに対してだけだが、バジリスクも考慮する。さらに全モンスターに。


「バジリスクー!」

 カタリナが叫んだ。女たちがの居場所が知られたようだ。


「熱!?」


 モニカさんが言った。その声に反応したのか?バジリスクが襲い掛かる。

 敵の探索方法は熱か声(音)、リスク承知で伝えたようだ。


「熱か試してみるわね」

 ハーゼリアさんが魔術を詠唱する。

「聞いて、空高く雨乞う声!」

「レインコール!!」


 雨が降る。砂地に空から点線が疎らにいくつも引かれる。成功は地下水のおかげか、雨がバジリスクにも降り注ぐ。


 雨で音がかき消され、体の熱を冷ました。


「バジリスクの動きが鈍っている!」

 居場所を感知しにくいようだ、離れたところで声をかけるデメグラムさん。


「跳べ、波紋の水滴!」

「ウォータースプラッシュ!!」

 ハーゼリアさんが魔術を重ねる。


「パッシン!パッシン!」

 跳ね散らした水の粒だったが、バジリスクは何ともない。


「どうして、目くらましにもならないの。リコルチェそっちいったわ」

 水と一緒に砂が跳ばしたんだろう。


「うん」

 リコルチェに託すハーゼリア。


 バジリスクは地を這って前進する、そして牙をむき出しに襲い掛かった!!

 大股を広げデメグラムが地中の中にハルバートを突き刺す。


「グズォオオオオオオオー!!」


 俺の足元には砂ごと抉られた跡がカタリナの方まで続いていた。


「デメグラムありがとう、夜這い並みのしつこさだった」

 リコルチェさんの声が聞こえた。


 この世界にもそんなのがあるのか、そう言えば宿屋のご主人が・・。それよりだ。


 空にいるコカトリスにも雨はとどいていた。雨がコカトリスの目にあたる。瞬き一つの間に、地面にいたバジリスクはリコルチェの目の前から消えていた・・。


「キン!ザッ、ザザッ!」

 残る一匹のコカトリスを皆が探す。さっきまでいた場所にはモンスターはいない。

 地面に串刺しにされたモンスターが一匹倒れていた。闇を纏う黒い氷の刃がコカトリスに刺さっている。音と熱がない魔術の刃は回避出来ず。


「カタリナ、リコルチェにアンチトードをお願い」


「は、はい」


「どうしたんだ?」


「直接毒の攻撃は受けていないけど返り血を浴びた可能性があるわ。そのための安全策よ」


「紫色の返り血(血飛沫)を浴びていたリコルチェ」

 良い判断のゲイルさん。しかも回復魔術を分散させるところが。


「はいっ」

「持て、森の解毒草をその手に!」

「アンチトード!!」


 空に靄みたいな固まりが浮いて消えていった。少し毒を浴びていたか?目に見えないものを感覚的に見ていたハーゼリアさんのセンスがすごいっ。


「さあ次いくぞ」

 ゲイルさんは何でもない顔をして進行を促す。


 俺はカタリナとモニカさんの顔を見た、平気そうである。アッキーと言えば様子を伺いながら邪魔にならないよう戦うスタイル、まあゲームでもそうだったが、もっと前に出てもいいのでは。


 松明で照らすと、ブルースコーピオンは他のモンスターが倒されたことを気にせずせくせくと歩いていた。その道をついていく俺たち。松明の熱じゃ反応しないのが不思議だった、小さいからか?




 それから、

 何とブルースコーピオンが行きついた先は地下へ通じる穴であった。そんなオチか、俺は納得できなかった。蟻じゃーあるまいし、何をやっていたのか。


「ねえ、まさかあんなところに入っていこうってんじゃないわよね」

 モニカさんが恐る恐るハーゼリアさんたちに尋ねると、


「まさか、ペンタンじゃないんだから」

と答えた。


「そうよねぇ」


「あー、よかったー」

 カタリナとモニカは肩を撫で下ろした。俺もこれで安心だ、もんすたーの巣穴に入るなんて死ににいくのと同じだから。


 ゲイルさんは穴から、さらに前へ進んだ。モニカさんが次に並び、あとをついて行く。

 戦闘が荒いかも。

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