第24話 ダンジョン10階層 過去の面影(モニカの告白)
ゲイル&ライム一行はサキュバス、インキュバス、ヴァンパイアに勝利する。
「広げよ、いやしの輪!」
「マドレヒーリング!!」
リコルチェさんがハーゼリアさんの傷を回復させる。
「ありがとうリコルチェ」
「こんなに苦戦するとは思わなかった、これ以上進むのはやめた方がいいかもしれないな」
ヴィンスさんが悩んでいる。
「そうだなぁ。限界以上に力を出して、この有り様だからな」
ゲイルさんはヴィンスさんの意見に賛同する。
俺も戻りたいと思った。この先、例え良い事があったとしても戦闘で死ぬ事とは比較できない。
「どうするのゲイル?」
リコルチェが困った目で尋ねた。ずっと、フロアボス級の敵がいる。それが意味することは他にもボスがいるという事である。
「どうするかな?」
ゲイルさんも決めれない。
「次のフロアボスの手前で引き返すのはダメですか?」
俺はゲイルさんに尋ねた。ゲームっていうのはボスがその場から動かない。その特徴がこの世界でも見受けられるから。
「ライム、お前たちはなぜ進みたいんだ?」
「ダンジョンが十階層まであるか確かめたいんです」
エリスの話が本当か確かめる意味も込めて。
「そうか、皆どうする?」
「答えられない」
「俺はまだ行けるぞ」
デメグラムさんは、まだ闘志が立ち込めている。
「私は引き返したいです」
カタリナが言う。これ以上戦いたくないようだ。まあ、他の冒険者が攻略して行けば俺たちは戦闘しなくてよい訳だが。
進むと引き返す、どちらか。
「意見が分かれているようだから十階層を覗いて帰るのはどう?」
モニカさんが二つをまとめた選択肢を作った。
「私は賛成だけど、それでいい?」
ハーゼリアさんがみんなに尋ねる。
「はい」
「それなら進もう」
「おう」
進むことに決まった。
「言っておくけど、俺はもう体力が底をついているぞぉ!」
ヴィンスさんが弱音を吐く、
「まぁまぁ」
リコルチェが宥めた。
全員で城を隈なく探したが次の階層に繋がる扉は見つからなかった。まだ他に探す場所がないかと言えば、ヴァンパイアが逃げていった空がある。しかし、空を探すとなると飛んでいかなければならない。
それじゃーそちらの魔法使いさん、
「私ね」
屈伸するモニカさん、肩がこっているんですか?
「羽ばたかせ、風の翼!」
「フロート!!」
ハーゼリアさんも同じく唱える。そして二つのギルドが空高く上がっていった。
この魔術で浮かせられる人数は、大体五人位だろう。
「ひぇ~っ!」
カタリナが足元を見て怖がる。魔術陣と比べ足元が揺れ安定しないからだろう。落ちる事はないらしいが。
「ずりっ・・おお!」
「っと危ねぇ!」
「ごめんねぇ、魔力が安定しなくて」
「集中して下さい!モニカさん」
頼みの綱のモニカさん、スティックを持つ手が震えている。
「そうね、ここで落ちたら私も死んじゃうもんね」
「そんな歴史は残せませんよ」
リコルチェさんが言う。
冒険者の恥でもいいから載せろよ、それが教訓になる。と俺は思った。
それから、さらに上がっていった。魔術が消えてしまわないか冷や冷やした。
凹凹凹凸凹
「おい、あそこ!」
岩肌に螺旋状の凹凸があった。良く見ると階段である。岩肌にくっつき、下側が壊れていた。昔は、その階段が地面まであったようだ。
「あれ、崩れていかないか?」
「いいから、あそこに下りましょう」
モニカさんが言う。
「キィイイーン!!」
点滅し、消えかかっているスティックが魔術効果の終わりを告げている?ずっと連続して魔術を使っている状態なのか?ステータスを広げるとMPは残り僅か。
「んっしょ、んっしょ」
モニカさんは、空中でバタバタと無意味に泳いでその階段に何とか降り立った。
階段をトンと一つ上がってみた。今にも崩れそうな階段に不安を感じたので俺たち全員は急ぎ足で上っていった。手すりはないし、下から崩れそうな階段に全員が慎重に足を運ぶ。
「ぎょわわ!!」
「きゃあ、背中触らないで!!」
どこにも掴まる所がないから、足を踏み外して落ちる感じがするんだろう。
神経を集中する、全員が他のメンバーとぶつからないよう上へと歩いて行った。道は長い、まだ着かないのかと思い不安になった。もちろん壁の淵を螺旋上に上って行くので中央はドーナツ状に大きな穴が開いている。
岩の頂上が見える。ここで崩れるとかありそうと不安が過ったが、そんな最悪なことは起きなかったことに感謝したい。
「カタッ」
岩の頂上に着く、そこに広がるのは何と大きな一つの岩地であった。
ダンジョン10階層 過去の面影(モニカの告白)
灰色の岩地は砂と岩だけである。これは燃えた跡だろうか?灰色と化していた。
ここで何より恐ろしいのは空まで灰色となっている事である。
九階層にいた時は曇り空のような感じだった。
「なんだここは、空気が濁っていないか?」
「空気は濁っているけど毒はないようだ。ただ、植物一つないこの地にどうしてヴァンパイアが向かったのかが不思議だけど」
「ここが、フロアなのは間違いなさそう」
「おいヴィンス、ここにはモンスターが一匹もいない」
デメグラムが注意しながら周囲を確認する。
「俺も気づいているぞ。姿形どころか気配すら感じないな」
ヴィンスも答える
「!」
アッキーが俺をツンツツした。
「どうした」
アッキーが指さした場所は、岩が切れたのか?黒い砂が積もっていた。過去に火山の爆発でもあったのか、たくさんの砂や石が転がっていた。
全員がそこに着目していた、俺は皆を見るとヴィンスさんがこちらを見た。
「皆、今日はここで休もう」
「えっ」
俺はヴィンスさんに肩を組まれた。もしかして、あれか。
「みんな座ろう」
みんなでスプレッドクローズを敷いて岩地の地面に座った。
「では、ここからライムにダンジョンマスターの話をしてもらうことにしよう!」
えっ、勝手に始めなさんな。俺の了承もなしに。
「何、ダンジョンマスターだと?」
デメグラムが険しい顔と声で言う。何か真剣な顔してますね(汗)
「・・・・」
「それなら一緒に昼食も兼ねましょう、飲む物があればいいんだけど」
「それなら、あります」
カタリナが言う。
「それでライム、話はどうなったんだ?お前が話さないと俺たち全員死んでしまうかもしれないんだぞ。もし、お前が秘密にしておきたいのなら俺たちもそれに協力するから」
「・・・それではアルスのエンシェントドラゴンの話からします」
固唾をのんで見守る皆。異世界人のことは死んでも言わないように気を付けよう。
何人か水とかジュレ系を手に持っていた。
「ドラゴン、ダンジョンに姿を現したというモンスターが存在した」
俺は話し始めた。
「街で有名だからな」
「それがダンジョンで襲ってきたモンスターよね、調べはついている」
「俺たちも詳しくは知らないが、このダンジョンは人工的に作られた塔か城の中に何層もフロアがありモンスターがいます」
俺が知っている事と想像を合わせ、推論を立てて説明する。
「それはここまで来ているから皆知ってる」
ハーゼリアさんが言う。
「俺たちは、ここに何かを隠しているのではと考えている」
ゲイルさんが言う。
「いいえ、それなら入れさせません」
「それでダンジョンマスターというボスはどこにいるの?」
ハーゼリアさんが座ったまま足を横に曲げた。
「最上階です。だから上に行けば行くほど敵が強くなり侵入が妨害されるんです。ダンジョンマスターは途中で冒険者が倒される事を望んでいます。モンスターが街へ襲撃したのも、そう考えれば理由が通ります」
「なるほど」
「ここに来るまで、フロアの敵の知能が上がったと思いませんか?モンスターは言葉を話し人間と同じ知識を持っている」
「いたな!シルキーにしてもヴァンパイアにしても話ができた。まるで人間のように」
「そして最上階には人間と同等、もしくはそれ以上のマスターがいるってことになる!!」
「それだと死んでない?最上階で閉じ込められている状態になるし」
とハーゼリア。
「でも、シルキーやヴァンパイアは生きていましたよ」
とリコルチェ。
「同種といいたいのか」
とゲイル。
俺は途中、答えを導いた。その方が信じてくれるはずだと思って。
「はい、ダンジョンマスターはこのフロアを作った人物のはず。だから食料もどうにかなったと思うんです」
「一理も二理もあるな。だが何故このフロアには、何もないんだ?」
「分かりません、俺もそれが不思議で」
「一度、調べてみる?」
とハーゼリアさん。
「そうだな奥の方に行ってみるか、ライムたちもどうだ?」
「今は遠慮します。疲れて動けませんので、俺たちは休んでからにします」
「そうか」
昼食休憩が終わり、ゲイル、デメグラム、ヴィンスさんの三人は奥の方を見に行った。リコルチェとハーゼリアさんの二人は焼け焦げた場所を見に行く。
俺は皆の顔から話が必要だと悟った。
「ねえライム、あれバレちゃったらどうするのよ」
「俺も言いたくないんだけど、出来る限り全て話すべきだと思う。こんな弱い、赤の他人の俺たちと一緒に戦ってくれる人なんて滅多にいない」
「それで話したの?」
「そうだ。俺たちがこんな場所こなければ、あんなに切り刻まれ血を吸われて苦しむこともなかったのに・・」
もうこれ以上俺たちのせいで誰かに迷惑をかけたくなかった。誰も苦しんで、死んでほしくない。
「ねえライム」
「アッキーお前も疲れただろ」
「うんん」
アッキーも疲れていた。
「ねえライム!」
「なんですかモニカさん」
「私、実はこのこの世界の話を知っていたの」
「はい?どういうことです?隠しイベントやアプデでなくなったイベントですか?」
「いいえ、そうじゃなくて人がいなくなる噂がゲーム内であったの」
「それゲームをやめた人の話ですよね?」
「いや私もね、最初はそんなことないって思っていたのよ」
「つまり、人がゲームの中に吸い込まれたという噂があったんですか?」
「関係ないと思ったんだけど」
「そんなの決めつけすぎだろ!!」
「私も何でこうなったのか、分からないから!!」
「それは俺の台詞だ、もしかしてアッキーも知っていたのか?」
「プレイヤ-がいなくなるのは知っていたけど」
アッキーは知らないようだ。
「嘘つき!!モニカさんもエリスも信じられねぇ」
「私も嘘つきたくなかったわよ」
「そう」
「おーい」
ヴィンスさんたちが俺たちの声を聞いて戻ってきたようだ。俺はモニカさんの裏切りが許せなかった。
「調査の結果、幸運にもこのフロアにはモンスターどころかフロアボスも存在しない」
「本当ですか?」
「ああ、間違いない。だが次の階層はまっくらなフロアだった。このまま、これ以上進むのは危険すぎる」
「ステータスが底をついているから今日はここで泊まろう。足止めを食うにも、時間は活かせそうだ」
とゲイルさん。
「話でもしますか?」
イライラしたが、ゲイルさんたちは俺たちの仲間だから関係ない。
「ここで特訓でもするか?」
「はい!それなら休めば出来そうな感じがします」
「よし」
「ゲイル、これからみんなで特訓を始めることになったぞ」
「おえ、なに始めるんだ、俺はここでゆっくり地形の観察をだな」
ゲイルさん、リーダーらしからぬ発言だ。
「それではせいれーつ、素振り千回から始めるぞ」
仕切りはヴィンスさん、妙に張り切っている。
「せいっ!せいっ!せいっ!せいっ!せいっ!・・・」
と剣の素振りが始まった。
「お前はアッキーだったか、斧はデメグラムのようにゆっくり振って戻せ」
「は い」
「お前ら早いんだよ」
両手斧もちのデメグラムがヴィンスに言う。
「私たちは魔術詠唱だけを百回ね、放たなくていいから 」
ハーゼリアさんが言う。
「また、あれやるの?」
リコルチェが愚痴る。
「愚痴らない、武器の素振りじゃないんだからぁ」
「さあカタリナ、私たちもやりましょう」
それを見て声をかけるモニカ、
「は、はい」
焦るカタリナ。
それから俺たちは修業をした。
モニカさんとは話したくない。
技の習得を目指す方がいいと思うんだけど意味があるのか。すぐに俺とアッキーはバテて素振りをやめた。
「吹き飛べ、爆裂の熱!」
魔術の詠唱を途中まで行う、音と共にロッドが光った。ハーゼリアは、それを終わると崖の辺りを見た。
冒険者が、同じ階層に入ってきた。八、九階層のフロアボスは倒されているから戦力が必要なわけではないが、少なくともアンデッドやグールを倒せるレベルの冒険者ギルド。
「あなたたちが一番乗りね?」
「よく、お前達をあれを倒せたな。俺たち相当手こずったんだぞ」
何の話?いきなし来て何を言うのか?
俺たちを誰だと思っていやがる失敬な、これでもフロアボスを倒したギルドなんだぞ。
「あんなの楽勝よ」
とゲイルさんが大ぼらを吹いていった。俺たちみんなで、やっとだったけど、この際はそれでいい。
「なるほどマッドギルドの方が知恵があるってわけね、悪いけどここからは私たちが先に進ませてもらうわ」
「ああ、構わんさ」
ゲイルさんは横を見て話していた。
そして修業を続けると、また別のギルドが崖から上がってきた。案外見つけやすいな、ここは。
「おお、お前達マッドギルドか?」
「キキアレキのギルドか」
「進まないのか?」
「そうだ、体力の限界だ」
「なら先を行くか」
そういってホパー、キキアレキ、シロタレスのギルドがやってきた。構わず俺たちは修業を続けた。
それから時間にして三時間位経った。
ホパーのギルドが引き返してきた。
「あれではいけない、まさかあんなにうじゃうじゃいるとは」
「仕方がないから一度街まで戻ろう」
「そうしましょう」
「おい、ゲイルたちはここにいるのか?」
「ああ、明日までいるがどうした?」
ヴィンスさんが答えた。
「俺たちが食料を運ぶから一緒にダンジョンを攻略してくれないか?」
「まあホパーのギルドは七位だからいいけど・・いいのか?」
「妥協するのが七位ギルドの頭の良さだ。俺たちはファーストがあるからいいんだ」
「そうだな、高額なGoldが手に入るからな」
「マッドギルドはフロアボスの情報があるだろう」
良く知っているな、この人。
「そうだな。もう少し、ここに居させてくれ」
「分かったよ、それじゃー俺はいくから」
「ちょっと待って、これで・」
「確かに承った」
こうしてホパーのギルドはフロートで下りていった。途中、岩の凹凸の階段で下りる。そして再度フロートでおりていった。
「階段怖いから、今度あれやってみよう」
ハーゼリアがモニカと話す。
「そうですね」
頷くモニカ。
他のギルドたちと出会う。




