温かなごちそうと冷めた食欲 3
デメグラムがピンチ!〔サキュバス対ゲイル〕〔インキュバス対ハーゼリアとリコルチェ〕〔ヴァンパイア対ヴィンスとライム〕その他アッキーとモニカ、カタリナ。
あの爆風・爆熱、攻撃を喰らってもインキュバスは起き上がる。
「ザシュッ!」
「きゃぁああー!」
インキュバスは鉄のような爪がある足で魔術を詠唱中のリコルチェを蹴りとばした。
「大丈夫ハーゼリア!!」
「こざかしい女だ、お前たちは生かして捕えるのはやめだ」
「私はいいからデメグラムを癒してあげて!」
ハーゼリアが叫ぶ。
ハーゼリアはインキュバスを引きつけた、リコルチェは走る。そして、もう一度魔術を詠唱した。ハーゼリアはインキュバスの攻撃を左右にかわしながら、一度リコルチェを見た。インキュバスはリコルチェには目もくれず、ハーゼリアに鉄の爪を出す。
「きゃぁあ、あぁーっ!!」
「はぁ、ぁはっ。はぁはぁ」
ハーゼリアのローブと肌が切り刻まれる。臓器を抉るような激痛にハーゼリアは息が止まってしまった。
「は・・・ぁぁ」
それでも口と喉に意識を集中して唱える。痛みに堪え魔術を紡ぎだす!
(どうなるか何て、やってからじゃないと分からないけど)
(張り裂けろ、雷火花!)
(サンダースパーク!!)
「バリリリリ、ジャシャー!」
「ジィイイイパシャシャ!!」
「ウガァアア、グハァア!!」
僅かに紡いだ声で魔術は発動した。
入り乱れる空を折れた雷は網のようにインキュバスに絡み、当たり弾ける。触れるだけで浮き出る血管、そして痛みが滲み出るように収まっていった。
鉄のような爪は逆に電気を誘導してしまい雷撃ダメージを増大させる。爪は金属なのか?
ただ、これでは決め手にはならず倒せなかった。
「おのれぇえ、この私を二度も。お前たちには死を与えてやるぞ!!」
サキュバスは、翼が折れバランスを崩していた。本人は気づいていないが、普通に立っているつもりでも、俺たちから見ると傾いている。
駆けつけたリコルチェはデメグラムの顔に手を当てる。
「与えよう、煎じられし薬草を!」
「メディシン!!」
状態回復で火傷と睡眠を治癒する。
さらに火と水魔術に加え銛による攻撃の傷を回復するべく、
「広げよ、いやしの輪!」
「マドレヒーリング!!」
デメグラムのステータスは全快したが、精神的ダメージは大きかった。
「っ・・くそっ!」
デメグラムは立膝をつくが足に力が入らない。急激な回復で体が反応できないようだ。
「大丈夫、デメグラム!?」
隣にいるリコルチェがデメグラムに話しかける。
「悪いな」
ただ下を見ているデメグラム。どうやら力が入らないようである。
「そうだ!ハーゼリアが危ないの」
「何、ハーゼリアが!」
まだ影響が残る体に喝を入れる。床に手を付きデメグラムがゆっくりと起き上がった。
すぐ近くで戦闘中のゲイルはサキュバスとやり合っていた。翼を失ったからといってサキュバスの銛で突く回数が減るわけではない。
「サンサンサンサン!!ギリギリギリ」
ゲイルは敵の攻撃を剣で受け止める。歪な銛に剣が挟まってしまう。押し合う両者。
「おおおぉおおお!!!何ちゅう怪力だ!」
「キンキン!キキキキキィン!」
「ブシュ!ブシュ!」
「うぉぐうっ!!」
銛を剣で弾いたまではよかった。がゲイルは素早く繰り出されたサキュバスの銛に突かれてしまう!
「よくも私の翼を、ぅぁああっ!!」
怒りが収まらないサキュバス!
「キキィン、キ、ギリギリ、バシッ!!」
「ぐっ」
サキュバスは地上の方が得意であるかのように、ゲイルは力負けして押されている。
「ザザザッ」
「キィン!カサッ」
ハーゼリアの前にデメグラムが突然割り込んだ。そしてインキュバスにハルバートを振るう。デメグラムはまだ不安定な揺れる体。その体から出す覚束ない攻撃。しかし目はしっかりと働いている、最小の体の動きだけで受け、また攻撃する。
「しつこいな、お前わ!」
足蹴りするインキュバス、
「!」
デメグラムを侮るモンスター、デメグラムの動きが早すぎて遅く見えたか。
デメグラムは残像が残るくらい早く力強くパワーキルを出す。それはインキュバスの足を斬りつけた。仕組みは簡単、二本同時に出すから像が残る。
「オガアァアアア!!」
インキュバスは足から流血し呻き声を上げた。
ゲイルはサキュバスの攻撃を受けながら、何かを感じていた。
何故ここに自分がいるのか、戦ってきたのか?それは、この先へ、未来へ進むためだ。
このまま、この小さな世界で一生を過ごすのか?いや俺は、もっと自由で希望のある世界を求めて進む!
「はぁっ、さぁ!!」
ゲイルが剣と体をうまくつかって銛の攻撃をはじく。
「その歪な部分だけ避ければいいだけのこと」
そうだ、剣でない銛は剣のように切る部分が長いわけではない、三なり四なりになった角の部分にさえ突かれなければいい。他の部分に触れても押されるか、叩かれる位だ。
身を任せる、
「グァアアアアッ!!」
ように相手に極力近づいた。そして胸に剣を突き刺す!!そのまま右で剣を持ち左で柄を持ち上げ飛び上がる様に縦に斬る。
あとは小刻みな斬りつけの連刀、連斬り、
「さっ!シュッ!」
「よっ!シュッ!」
「はっ!」
「ザッ、ズバッ」
ゲイルはファーストステップをとり、右に左に後ろに移動し一刀を連続で入れる。そこで可能なら斬撃も入れた。別に相手に当たらなくても構わない。
相手が痺れを切らす時がチャンス!
「ウグゥァッ!!」
リコルチェにマドレヒーリングをかけてもらったハーゼリアがクリメートを唱えた。
「ズッォオオオー!!」
「ギャァアアア!!」
炎の柱がいくつか出て、うまい具合に翼から火が体に移っていく。さらにそこをゲイルが遠慮なく斬りつけた。
もう死んでいたのかサキュバスは動かなかった。そして粉々になって消えていた。
デメグラムはインキュバスへの足の一撃を機に、何回も斧を振るった。まるで何かの職人のようにその手はどんどん早くなった。
デメグラムは決して自分の実力を過信しなかった。自らの力を制し早さを抑え調整することで失敗を回避、連続攻撃を続ける。
もちろん途中、その攻撃は塞がれた。しかし相性は悪くてもスキルを使用すれば、その戦力は補える。攻撃回数に加え、スキル・技を使い大技勝負で勝てば戦闘は優位に進む。
「パワーキル!!」
左の鉄の爪をはじき返す右の斧は、その勢いを殺す事なくインキュバスの太腿を斬る。
一方、右の鉄の爪は左の斧がはじき返し、攻撃を防御する。連続で速い左右の鉄の爪にも斧を二本使えば対応が出来る。
インキュバスの体に黒い線が入った。傷口である、戦っているうちにその線が増えていき血が垂れる。そしてインキュバスは下を見た。
目は虚ろになり、足が震える。出血多量という言葉はモンスターに似合わないが他に原因は見当たらない。
斧を振るデメグラムの前から、いつの間にか攻撃対象のインキュバスは消えていた・。
インキュバスの返り血をどれだけ浴びたかは、デメグラムの黒い鎧からは想像がつかない。
ヴァンパイアにそこそこのダメージを与えたのか攻撃は効いていた。しかし、ヴァンパイアには特有の自然治癒能力があった。
それは時間と共に回復するもの、そこで一気に間合いを詰める。ヴィンスは足を素早く動かして攻撃をかわし速攻する。
モニカはファイアボールを放った。
何とヴィンスはファイアボールがヴァンパイアにあたる直前、後ろから剣を被せて振っていた。
ヴィンスの剣がファイアボールを斬る。
分裂したファイアボールと剣がヴァンパイアに襲い掛かる。
「これで・・どうだぁ!!」
目をやられる事を恐れる事なく、威勢を張るヴァンパイアは剣を出す!
「ボッ、バシュ、ボォッ!」
「キィン!!」
目を微かに開けて剣を受けるヴァンパイア。だが、その炎の粉は確実にヴァンパイアを焼き、ダメージを与えていた。
「うぉおおお!!」
剣を離し女に食らいつこうとするヴァンパイア。
それをアッキーは盾でガード、阻止する。空腹状態のヴァンパイアは誰でもいいのかアッキーに牙を剥く。今度は、ヴィンスさんが剣を出し阻止する。多勢に無勢となったヴァンパイアは行動範囲が狭くなっていく。
「ヴィンス!!」
ゲイルとデメグラム、ハーゼリア、リコルチェがこちらの広い部屋にきて合流した。
ヴァンパイアは外へ逃げていった、後をつける。それを全員で追い込んで距離を詰めていく。
振り向き様、ヴァンパイアは剣を素早く出し乱斬りする、と見せかけて足蹴りした。ゲイルの腹部に蹴りが入る、蹲るゲイル。
「ゲイル大丈夫!?」
「っ、ああっ」
ヴィンスとデメグラムの二人は実は最強の組み合わせだった。
右手を前に出し左手を後ろにして連携攻撃をする。しかし、その攻撃という攻撃はヴァンパイアの圧倒的な力の前に敵わず、防御だけの戦闘に変わっていった。
そのせいで二人は手が軋み腕を捻って痛めた。拳で殴るヴァンパイア、さきほどまでが嘘のように強くなった。
そしてモニカさんのファイヤーボウ、さらに俺とアッキーは二人同時攻撃、手と足で攻撃するヴァンパイアはその刃が届く前に蹴散らし、俺たちは捻じ伏せられていた。
俺とアッキーはひっくり返った。誰かを踏みつぶしている。モニカさんとリコルチェさんが一緒に倒れていた。
倒れた所を狙われヴァンパイアが俺たちに襲い掛かった!
「死ね!!」
やばい!ヴァンパイアが来る。
倒れていた俺たちは受け身も防御も取れず無防備だった。
「クォオオ――ン!!」
光が後ろから現れる。十字光がヴァンパイアの体に映り込む。
「やめろ!その光、私の体を焼くような力を感じる!」
「もうやめて。これ以上戦っても無駄な血を流すだけ」
カタリナが今までに使ったことのない魔術を唱えた。スタッフから射光した光は熱を放ち、その偉力を顕示する。
メニューで確認するとエクソシストクロスという魔術だと判明。ただの十字架なら効果は薄いが悪魔祓いかつ魔術の十字架である。
「いつか、この借りは返させてもらうぞ!」
逃げる所を見ると効果は絶大なようだ。
「血が・」
ヴァンパイアが呟いた、出血したのか?フラフラだ。
「!」
突然、姿を消した。
「ちょ、ちょっとやめなさい」
俺たちから少し離れた場所でヴァンパイアはハーゼリアを抱えている。まだそんな力が残っていたのか、それとも俺たちを最初からだますため瀕死のフリをした?弱くなったり強くなったりするヴァンパイア。
空を飛び立つヴァンパイアは醜い蝙蝠の姿になっていた。羽根が生え顔に毛が生えている。
「ちょ、ちょっと!」
「バシッ」
「うっ」
ハーゼリアがヴァンパイアにぶん殴られた。女に素手で殴るとはかなり酷い奴だ。こんな女どうでもいいと思ってやがる。
「ミュッ」
首筋に牙を立て血を吸うヴァンパイア。出血からではなく、力を使ったからか血を欲したのだろう。
「きゃぁああああ!!あああっ!」
気絶したハーゼリアの肩に激痛が走る。
「ペロッ、あぁうまい。少し味には欠けるが、まあいい」
「モニカ、フロートを使えないか?」
「使えるけど、上がる速さは勝てないわ」
ハーゼリアはヴァンパイアにとって、ただ血を吸うだけの存在である。
抵抗するハーゼリアに構わず、ヴァンパイアはハーゼリアをつれて上空へ上っていく。上には次の階層でもあるのだろうか?どんどん小さくなっていく。
「ギュサッ」
ハーゼリアはロッドを翳す。
「うちおとせ、空より雷電柱!」
「サンダーボルト!!」
「#」
「ドッパァアアアアンン!!ズコォオオオン!!」
光、音、空から地に雷の柱が一本落ちた。
ヴァンパイアは咄嗟の判断でかわすためハーゼリアから手を離した。そして逃げる。
ハーゼリアは諦めない。もう一度、サンダーボルトを詠唱し放った!!この詠唱は自滅とも思えた、まさか死ぬ気なのか。
空から落下するハーゼリアさん、フロートを使わないと地面に落下する。
モニカさんは走っていた。雷撃で気を失ったハーゼリアさんを助けるべく、フロートで飛び上がる。俺はそのモニカさんを守るため走った、皆も走る。
「くっそぉおおおお!!貴様、私の美しい顔に何をした!?」
感電し顔がぼこぼこになったヴァンパイアが奇声を上げ、落下中のハーゼリアに襲い掛かった!
「はっはぁ、間に合って!」
まだ、モニカさんの手は届かない。
ヴァンパイアは、ハーゼリアに猛突進し空中で切り裂い・・
少し前、
「うおおおおっ!!はっはっ!!」
城の部屋の窓からヴィンスヴェルタは剣を携えて身を投げ出していた。
ヴァンパイアは自分の傷を見てハーゼリアを見る、助けにきたモニカを見る。
「!」
「なっ、なぜお前が!!お前まで空中にいるんだ?」
その視界に突然飛び込んできた者がいた。
「シイ・イイ・イ、ザフッ!!」
「うがっああーっ!!くっそーおおお!!」
ハーゼリアを襲うヴァンパイアの手を切り落としたヴィンス。さらに空で斬撃を入れた、己の可能性を信じて出来ることをやる。斬撃は入らずともヴァンパイアの集中は削がれ、攻撃は阻止できるとと信じて。
痛みで乱雑に飛び回るヴァンパイア。痛みで足掻き狂っている。
デメグラムは悔しがっていた。自分が助けられない無様な姿で動けないから。またヴィンスを見ていると負けていたから。デメグラムは城の部屋の中の火を松明に引火させた。
その松明で自分のハルバートを熱する。持ち手が金属だから出来る限り最小にして。持ち手は布で覆う。
腕が落とされたヴァンパイアは呻き声をあげて地面におり立った。そして姿が元に戻る。
「お前は影を見ていたか?」
黒い鎧を纏ったデメグラムがヴァンパイアに問う。
「シュラン、ガッ!!」
答える時間を与えないでデメグラムは、最後の力を振り絞りヴァンパイアの胸を十字に斬った。地に伏すデメグラム。
ヴァンパイアの再生スピードは落ちていた、だがそれでも少しずつ回復していくヴァンパイアは攻撃を耐えた。
「ダッシ・・ぐはあっぅ」
地面へ落ちるヴィンスヴェルタ。かなりダメージを受けた。しかし草がある地だったのが幸いし即死は免れた。
「マドレヒーリング!!」
リコルチェが詠唱していた魔術をすぐに唱えた。時間の猶予などない。死ぬ前に唱える、一秒でも早く。最大HP以上のダメージを受けたとしても、下がる前に回復すれば命は繋がると信じて。
落ちてくるハーゼリアさんを受け止めたモニカさん、
戦う気力が薄れたヴァンパイアをカタリナは見ていた。戦いは終わったと思っていた。
「うごぉぉおおおお~!!貴様ら絶対に絶対に!!・・」
血を吸い傷の回復を図ろうとカタリナに襲い掛かるヴァンパイア!
カタリナの前にゲイルが現れた。ゲイルは松明の火でヴァンパイアを燃やし、交差する点(×)に剣を突き刺した。
「ゥううううううぁああああああああ!!!!」
ヴァンパイアは肉がボロボロと削がれるように落ちて消えていった。その姿が消えると共に炎も消えた。
「最後はあっけなかったな」
「ぁあ、ゲイルずるいぞ!」
「お前らが熱すぎるんだろ。奴の弱点が熱なら、それを見せるな。表情で油断させて意表をつくんだ」
二つのギルドが入れ替わり立ち代わり戦闘、敵の体調(状態)が良かったら結果は変わったかも。




