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第23話 ダンジョン9階層 温かなごちそうと冷めた食欲

 再生の要となる装飾品を壊して三匹のシルキーを倒す。ヴィンスの怪我はMP不足で治せず、その日はシルキーがいた屋敷に泊まることに。

 ゲイルとライム一行が眠りにつく中、冒険者の存在はダンジョンマスターに知られていた。

 冒険者は誰も、その事に気づかない。


「ふぅ~ん面白くない。人間が人間の霊を殺すことで生きるって、いかにも合理的な理屈を立てるのよねぇ~。

 だけど、またそれでモンスターが誕生することを知らないのならあなたたちは最低よぉ~。くすくす、だってあなたたちもいつか死ぬじゃないの、きゃーははははぁ!」

 ダンジョンマスターは凶悪なモンスターの頭を触りながら月水晶を見ていた。






 朝を迎える。


「おはよう、アッキー!」

 人の家だが寝起きは、気持ち良かった。


「うん、おはよう」


「起きたか、俺は下にいくからお前たちも支度が終わったら下に来い」

 デメグラムさんが声をかける。


「わかりました 」


「はい」


 支度が終わり俺たちも一階に下りて行った。




「ハーゼリアさん、可愛い人形持っていますね」


「これはサンサンドに伝わる馬のお守り」


「その馬、寝る時いつも持っているんです」

とリコルチェが言う。


「馬のタテガミが幸福をもたらすとかで」


「へぇ~、変わっているわね」


「走っている馬の毛を精霊が握ることで幸せを運ぶとかどうとか」


「風の魔術にいいのかしら?そういうのは初めて聞いたわ」


「さてと、それじゃー私たちは一階に行くわ、早く支度してね」

 ハーゼリアとリコルチェが部屋を出ていく。




「与えよう、煎じられし薬草を!」

「メディシン!!」


「はい、治ったよヴィンス!」

「感謝するぞー、リコルチェ!」


「俺は昨晩、熱を発する体を抱えながら、その熱にシルキーの思いの丈を綴っていたんだ」

 ヴィンスさんが語り始めた。


「朝から暑苦しい」


「そう言うなリコルチェ、熱の痛みをどう凌いだか教わろう」


「痛い話よ」


「私も聞き苦しい」


「まだやってるのかヴィンス」


「デメグラムはそんな鎧を身に着けているからいいが、俺はつけていないんだぞ!」


「いや、俺の黒い鎧は戦士の武装だが一転すれば諸刃の剣で重量との戦いになる」


「両者、引き分けだ」

 ゲイルが二人の間に入る。


「傷が治っても熱意が湧くから、リコルチェは治さなくていいのよ」

とハーゼリアが言うと、


「そういうなよ、ハーゼリア。俺はずっと夜中魘されていたんだぞ」


「あはははは!」

「ふふふふふっ」

「はははは」

 皆が笑う。




 女部屋では、支度のおわったハーゼリアは部屋を出たようだ。


「あれ!?そんな鏡、昨日から部屋にあったー?」

 モニカがカタリナに話しかける。


「上に被せる布が赤いから部屋の壁と一緒になって気づかなかったんじゃないですか?」


「そうかも、私は支度が終わったから先に行くわよ」


「はい。私も寝癖を直して、すぐに向かいます」

 そういってモニカも部屋を出ていった。



 カタリナは以前エリスから譲り受けたツリーで髪を研いだ。鏡は縦に長く幅は体くらい。左の頭の上に羽根っ返っている寝癖がついていた。その髪にツリーを通して研ぐ。

 他の毛も編み込むようにはねっ返った毛に絡んでいる。


「っ」

 必死になって少しずつ複雑に絡んだ毛にツリーを通していたら、


「!?」


「----」


「あれ。どこ、ここは!?櫛で髪を研いでいたはずなのに・・」

 カタリナは暗い場所にいた。中はジメジメとした地面でその上に座っている。短い草も生い茂り手で触ると砂が少し取れる。

「わ、私どうしてこんな場所に。助けてお姉ちゃん・・」

 中にも部屋と同じような鏡があった、しかし触っても何も起きないし被せる赤い布がない。


 そこから部屋のベッドが見えた。どうやらここは鏡の中のようである。

「ちょっと、ねー出してよ!!誰か~!!」

「ドンドンドン!!」

 鏡を叩くカタリナ、元の場所に戻れないか調べている。




 朝、ご飯を食べる俺たちに合わせ、ゲイルさんたちも食事をとる事になった。

「ライム、朝食は何を用意してきたの?」

 モニカさんが俺に尋ねる。俺たちは水とサンドナンにミートハムを挟んだものだ。


「お前達、そ、それは!酒場から調達してないか?」

 ゲイルさんに気づかれた。


「はい」


「それは、いいかもな」


「見つからなきゃいいわよ」


「えっ!?」

 ゲイルさん達も真似するようだ。


「おいしそうー!」


「おんっ」

 アッキーが至福の声。


「準備が良いなら食事をとりたいが、カタリナはどうした?」

 ゲイルさんがモニカさんに尋ねる。


「あれっ、まだ来ていないの?私、ちょっと見てくるわ~!」


「来ていないよな」


「うん」


 別におかしくはない。女は支度に時間がかかる、この世界でもそれは変わらない。



「カッ、カッ、カッ、カッ、カッ」

「バタン!」


「カタリナ!!」


「あれカタリナがいない。どうしていないの!」


「みんな来て!カタリナがいないのー!!」

 モニカさんが二階から呼ぶ。


「なにぃ!?」


「そこから行ける場所はここしかないよな」


 全員が二階へ駆け上がった。男部屋や中央の部屋も調べるが誰もいない。ベッドの下も探した。部屋には窓があるが、どこも開かないので出たとは考えにくい。


「どうやって外に出たんだ?」


「それが分かれば苦労しないわ」


「おかしい」


「こんなこと、あるはずない」


「魔術じゃないのか?」

 デメグラムも怪しむ。


「ねぇモニカ、さっきまでカタリナと何してたの?」


「え、確かカタリナは寝癖がすごくて~、櫛で髪を研いでいたかな~?」


「ただ、それだけ?」


「それだけ」


 髪を研いでいた。そうか!再生の要と同じ原理だ。

 それには櫛が必要で、攻略のアイテムになるとか。ならアイテムが必要のはず。

「モニカさん、エリスのコンタクトピンはありませんか?」


「ここにあるけど・・」


 エリスはご主人にコンタクトピンをもらっていたはず・・。それを知ったのはちょうどもらった次の日のこと。


「これで髪の毛にピンをはめれば」


「ああっ!!」


「ライムが消えたわ!」


「おい、俺たちにも貸してくれ!」


「待って!中に入ったら出てこられないかもしれない、しばらくここで待ちましょう」

とハーゼリアは言う。


「何悩んでるんだ?ハーゼリア」


「シルキー三姉妹は装飾品を装備していた。鏡の前で指輪、イヤリング、首飾りをつけていたのだとすれば・・・うん、合っていそう」




「ああライムさん!!よかったー、突然ここにいてどうなるかと思いました」


「カタリナ心配したんだぞ。中でも鏡に映るのは自分の姿だけなのか。戻るには、この鏡の前で装飾品を頭につければいい」


「それが鍵なんですか」


「うん、さあ戻ろう」

 櫛をコンタクトピンを頭につけると、俺とカタリナは部屋の鏡の前に戻った。この鏡は侵入者を阻止するためか。




「ほら戻ってきた!」


「みんなー助かりました」


「俺たちは何もしていない、それにしてもよく気付いたな!」


「ルーキーだが抜群の閃きと感だ。俺たちが追い抜かれるわけだ」

 ゲイルが褒め、仲間を煽る。


「まだ抜かれてはいない」


「見つかったなら飯だ」

 デメグラムさん、お腹空いていたのか。まああの黒い鎧だ、体力使いそうだし。


「デメグラムさんの鎧、重いんですか?」


「いや軽いぞ、ただ急ぎたいだけだ」


「そうですか・・」

 庇って損した。


 俺たちは朝食をとった。朝食後、寛いでいたら話があると言われる。

 お前たちの能力を教えてくれと言われた。これから本格的な戦闘になった時のために作戦を考えるために使うらしい。


(メニューを見ても****(いせかいじん)はバレないよな)

「そのはず」


「それではメニューを見せますね、ゲイルさん」

 俺たちはメニューを見てもらう事にした。


「よぉし、いいかな!」


「お前たち結構高価な武具を装備しているんだな」


「それは、偶然ファーストを見つけてGoldが入りましたので」


「それはツイてたな。でもこれからはそうはいかんぞ」

 生意気なのか、目が恐い。


「ははは」

 チームを組んだことで杭が打たれることはなかったが ひやりとした。




 朝食後、鏡の前に集まる。


 そして、コンタクトピンを頭にさして鏡の中に入った。中は通路になっていて、トンネルのような形をしている。


「ファイヤー・・」

 ハーゼリアさんが詠唱し松明に火をつける。それを持って歩く。


「こんな道があるなんて・・・」


「鏡の中の土って武器の素材と似てない?」

 モニカさんが言った。魔術加工場の見学の時、見た素材に似ているらしい。


「まあ俺はダンジョンに行く岩壁のトンネルだと思ったが、こんな草は生えてないか」


「そうだな、それでいて出口があるはず。はやく出よう、こんな場所」


 その通路を抜けると、そこは普通の土地で明るい光球が一つ空にある。






 第23話 ダンジョン9階層 温かなごちそうと冷めた食欲


 初見は攻略が楽勝なフロアだと思う、目の前にあるのは森と庭園、城だけだから。

 俺たちは、すぐに行動を開始した。森は静かで少し湿気を感じた。


「ここを抜けると、お城に行くわけか」


「お城?昔、どこかにお城という場所があったんですか?」

 カタリナが異世界人という事がバレないよう上手く質問する。


「お城ってわけではないが、昔オアシス湖の方に城があってその城跡を利用しオアシス湖の街は作られたんだ」


「へぇ~、そんな城跡が」


「そうは言っても、崩れかけで誰も入れなかったが」


「そうですか」


「誰か先人がいたんですね」



「静かに!」


「何かいるぞ!」


「キヒヒヒヒー!グワッハハハ!ケハッケハ~ッ!」

と不気味な声が所々から聞こえてくる。




 敵だ。


「あっちだ!」


 声のする方に集中するが、それとは違う方から攻撃が来た。それをヴィンスさんは受け流す。すぐに攻撃が来た場所を剣で斬るが、


「シュッ!!」

「ちっ、いない!外したか」

 俊敏なヴィンスさんの攻撃をかわす敵のようだ。


「どこにいった?」


「見えない、幻術を使っているのかも」


「シュン!シュシュン!!」

 モンスターが地の利を生かし、森の木々や草の影から鎌で切り付けてくる。


「あいっ!」


「ヴィンスさん、当たってしまいました」


 俺の腕に何かが飛んだ。少しヒリヒリするから毒だと思う。一応、念のため報告する。それで命を失ったら、あまりにも不運すぎるから。ついに、その正体が明らかになった。


「インプよ!」


「インプ?」


 姿はわからないがメニューには、その名前が表示されている。


 ≪インプ 森に住まう悪魔のようなモンスター≫



「奴らはインプよ、気を付けて!」


「はい」

 けど、どう気をつければいいのか。


「踊れ、夢幻の影よ!」

「シャドウマイン!!」


 インプたちは、それ以上攻撃してこなくなった。ハーゼリアさんが幻術状態の中、幻術をかける。上書きされる幻術なのか?インプの姿が見えるようになった。


「見えるぞ!」

「ああっ!」


「せいっ!はあっ!」

「うらっ!ぬんっ!」


「ヒアァァ!ギャアァ!クアァッ!」


 次々と倒されていくインプたち。


「うああっ!」

「はあっ!!」

 俺たちもインプと戦うが、仕留めれず時間稼ぎだけ。


「さあさあ、早く倒さないと負けるぞお前たち!」

 ゲイルが二人を競わせる。


 見るとインプは、二人にあっさり退治されていた。


「パンパンッ!」

 拍手するように手を払い、土を落とすヴィンス。


「カシャン!」

 二つで対となるハルバートを一つにまとめるデメグラム。


「よかった~攻撃で倒せて、魔力抑えられたわ!」


「そうですねぇ、私も安心。こんな朝早くから激しい戦いになっても体が反応しなくてさぁ」

 モニカさんがハーゼリアさんに語りかけた。


「んっしょ」


「よし」


「まだ城がありますよ」

 リコルチェさんが気を引き締める。




 これからが本番である、俺たちは明らかに怪しい庭園に入った。


「ここは何だ」

 右左が塀に囲まれた、だだっ広い庭。何個もある小さな丸い森のミニチュアには白い花が咲いている。


「庭よね」


「光の線でも出るのかな」

 レーザービームとか言えないから、この世界の言語に翻訳して言わないとな。


「誰かが現れるのもありだな」

 執事とか、よくこういう場面で出てくる。


「噴水だ」


 俺だけが話していた。噴水があり湿地でついた泥を落とす、口を濯ごうと水を口にしたとき力が抜けた。


「どうした!水を飲んだのか!?」


 俺を掴んで噴水から出す仲間。


「あ、よかった。眠っただけで命の心配はない・・」

 リコルチェさんの声。


 ライムは瞼が重くなり目を閉じている。


 皆が、ライムをどうしようかと見つめた。

 しかし違った。どこかからか無色透明の臭いがスーッと鼻に入ってきていた。

 その空気を吸った全員は眠りに落ちていった。


「―――」




 全員が城に運ばれた。

 そこには悪魔を崇拝するかのようなモンスターがいる。


「きひひぃ~、良い人間が手に入った。これで私の美貌が保つわぁ~!」


「けひひぃ~、久しぶりだな。こんなごちそうは!」



 ゲイル達一行とライム達一行は夢の中。

 サキュバスは、小麦色の肌に細く柔らかかつ弾力のある体をした可愛い顔をした女であった。その女達がライムとゲイルに迫る。

 肉付きのよい白肌の美女たちがヴィンスとデメグラム、アッキーにせまる。

 サキュバスは異様な術で五人の精液をしぼり出す。


「おおっ、おおお!!」


「うわぁ~あああ!!」


「うっ、うぁぁ!!」



 インキュバスが言う、

「この女たちの体内に我が子をはらませる!」


 イケメンでがっしりとした日焼け肌の高身長の男がハーゼリアとモニカに迫る。


「さあ受けろ我が精液を!そして宿せ悪魔の子を!」

 中肉中背の白いイケメンの男がリコルチェとカタリナの顎を持つ、頬を擦る。


「さあ、いくぞ」


「可愛いな」


「あっ、あああ熱い熱い!!」


「あああっ、痛いっ、やめてぇー!!」


「んんんっ~、あっあっあああ!!」



 体の生命力がモンスターに奪われていく・・。


「はぁはぁはぁ、うわぁっ」


「んっ、あっはぁ~、はぁはぁ」


 男も女もその夢でいたぶられる。

 しかし、一人その誘惑を断ち切るものがいた。


「ねえ入れてよ、スケベーくんっ」


 誰がスケベだって?

「僕はそんな豚女お断りだ!」

 目を開く、唯一アッキーは我を取り戻した。


「何よあんたは!?」


「僕はアッキー、みんな寝てるからぃぅけど」


「せっかくデブで不細工な童貞野郎にいい夢見せてあげてるのに~私を豚女だって?殺してあげる!」


「ちょっと待て待て、お前たち気が早いぞぉ!」

 ドアを開けて入ってきたヴァンパイアが言う。


「なによー!!」


「お前達もう用は済んだのだろう。今度は私がその生体の血を吸わせてもらうぞぉ!」


「バシバシバシバシ!!」

 アッキーが力任せにライムの顔を叩く。張り手を何度もパシパシと。ヤンキーじゃないけど、並みにボコボコに。


「駄目っ!痛いっ!やめろ~っ!!」

 痛みが走る!


「何やっているんだ?」

 痛いと思って目を開くと、目の前にいたのはアッキー。手が俺の左側にあった、たぶんこいつが俺を叩いた張本人、間違いない!

 それと周りにいたのはゴキブリたち、なるほど・・OKOK!


 俺とアッキーは叩いて全員を叩き起こした。


「なんだなんだ。だ、誰だぁ~お前たち!」

 ゲ、ゲイルさん、ヨダレ垂れてる。


「おお、お前達、俺の醜態を晒しやがって。この恥は絶対許さんぞ!」


「眠っていたわけだな、俺も男が災いしたか」

 モラルが壊れていくような気が。

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