アンデッドでバッドエンド? 2
迷いの森を抜け8階層へ到着。人影をしたアンデッドが出現。疲弊した全員はがやられる間際、風の子が現る。
「スシュッ!パシュッ!」
は、はやい。振りかえる事すら出来ず、目の前のアンデッドを斬り燃やす。ゲームの武器で言えばファイアソードかフレイムソードで、魔術で言えば火炎系だ。そのゲーム知識から分析すると、これは倒せる戦術だ。
続いて神父のような男が、俺たちの目の前に躍り出た。
「バシバシバシ!」
今度はロッドをアンデッドの体に当てる。頭、体、足、それと同時に発する青の光。その叩いた部分が生の肉体へと変化したのか削がれ落ちていった。
それで傷が治らないのは、魔力が打ち消され体が保てない証拠。その効果抜群の武器は、聖なる石で出来で回復効果か闇を打ち消す効果がある武器だと思われる。
死臭が一気に放出された!
だが、その死臭もアッデッドから臭うもので、死んで動かない体が本来の姿を取り戻すと一緒に粉のように散って消えていった。
「カタリナさん!あなたはモンスターを回復させることも出来ないのですねぇ。私は神父をしておりますがそれは情けない事です」
「だ、だって普通は人も動物も殺してはいけないはず」
「そうです、私もそうやって生きています。だから盗っ人に殺された家内の復讐も出来ずに私は泣き寝入りして生きてきました。生きていても死んでいるような気持ちです。
ですが、ですがです。もしこの死んだ体のアンデッドに家族がいたら、この地に縛られたままの魂に本来の体をとり返してあげたいと思いませんか?
このままアンデッドだったらどうでしょうか?一生救われず報われないと思いませんか?家族に本来の姿を取り戻して返してあげましょう。それが神の思し召しなのです」
「は・・・ぃ・」
声を殺して答えたカタリナ。
「あなたは敵の死と仲間の死を天秤にかける気ですか?感情を持たない、抑えることも引くこともできないモンスターとの戦いの勝敗は必ず生と死のどちらかに傾きます。
それが出来ないのなら、いっそモンスターの時間でも止めてみなさい。そんなすごい魔術を使える魔法使いなんてこの世にはおりませんぞ。あなたの時が止まっていても皆は進んでいる、その結果もそこで起こるのです」
「・・・・・・・!」
何も言えないカタリナ。俺もエリスに同じ質問をされたことがある、俺のように両方をとるなんて答えないだろうな。
「ヒビアゲル、それ位にしなさい。あまり言ったらそちらの女性が可哀想よ」
エルフの一人が駆けつけてきた、いつの間に。
「そうですか、あなたは冒険者で同じ職をとっている身です。ここで殺されたら、どこに行くのか分からせるため言ったまで」
風の子は俺たちの横を軽やかに歩いて行く。
「それよりさ見つかった?ヒビアゲル」
「それが、まだ見つかりません。ここにあるはずなのに私の記憶違いでしょうか?」
「早くしてー」
「カタリナ、あまり気にすることはない。俺たちが弱かったからこうなっただけだし」
「そうよ、ライムの言う通り。私がもっとレベルをあげて魔術を連発して倒せるようにするからさ、あんな髭もじゃ親父の言うこと聞くことない」
「なにが髭もじゃ親父ですか!!」
ヒビアゲルがこちらをみてカッと目を見開き怒った。
あっ、声が届いてた!ヒビアゲルが怒っている。
「カタリナ、神様はそんなことで何も言わないぞ」
俺はカタリナを励ました。
「そういうあなたたちは責任をとれますか?」
「とれない、だけど俺たちが弱いから負けたのでいいんだ」
「今回は助けてあげましたが次回はありませんぞ、では神のご加護があらんことを」
そういって、どこかのギルド一行は去っていった。
「お節介にもほどがある。助けてくれるんだったら黙って去ってくれればいいのに、あの言い方は何なの。どこのギルドよ?」
全員がメンバーを見た。メンバーがエルフ、エルフ、エルフ、ドラゴン、ヒーラー五人が所属するギルド。
「エルフ!」
「エルフってことは」
「あれがギルド・エクセア!!」
No1ギルドのエクセアは風のように現れ去っていった。ヒーラーは新たに加わったメンバーか。
俺たちの方に助けるため来たのはわずか二人、エルフの少年とヒーラーの親父だけだった。他のエルフ二人とドラゴン族一人は、あちらにいて見守っていただけ。
「なら七階層のフロアボスはエクセアが倒したのか?」
「他にいないのならそうなるわね」
「どこも広いですから」
「よかった」
「ええ」
モニカさんの額を汗が伝う。戦闘の緊張感が残っているようだった。
それから途方に暮れた。どうやってこの先進もうか?戻るにしても、もう一度迷いの森を突破する事は現状では出来ないだろう。
「どうするか、今度アンデッドが出てきたら即死だぞ」
アイテムなし。HP、MPが僅かしか残っていないステータスの状態では身動きがとれない。
「どうしますかモニカさん、どこかの家で眠りますか?」
とカタリナ。
「あ、あんたは適当でいいからそういうけど幽霊に襲われるかもしれないじゃない」
とカタリナの天然発言に肝を冷やすモニカさん。
「ぅわっ」
「休もう」
焦ってアッキーの体にぶつかったモニカさん、その時にアッキーも休みたいと言った。
「見張りは立てるから」
そうしないと命取りだ、ただ夕暮れ頃でこれだ。もし夜になったら状況はとんでもない。八階層出口に行きつく前に全滅する。
「人影が見えたらとにかく逃げよう。建物の陰も要注意!あとは皆の逃げる力だけが頼りだ!」
「分かりました 」
「うん」
「!」
「ダダダダダッ!!」
「カタ!」
「ダッダダッダダ!!」
こうして俺たちは物音や影が見えたら、即効逃げた。
「はぁはぁ、まだいるか?」
「はあはあ、まだいると思う」
アッキーが目に力を入れて強く瞬きする、意識レベルまで酸素濃度が薄くなっているのか。
「はぁ~はぁ、臭いでしょうか?」
カタリナは何で居場所がバレるのか考えている。
「汗はするー、ここまで来るのに汗を嗅いだから」
蚊なら息や汗の臭いに反応して人間の居場所を特定できるが、アンデッドはそんな敏感なモンスターなのか?
「カサッ!」
「バササァッ!!」
「きゃあああ!」
「どうした!なんだ、こいつはさっきのモンスターと違うぞ」
「どこ!」
幽霊?メニュー確認、モンスターのゴーストである。生気を吸うような吐息と凍りつくような冷たい風を吹きつけた。
≪ゴースト 人の魂に悪霊が乗り移った幽霊≫
ぶんぶんスティックを振るモニカさん、だが攻撃はゴーストの体をすり抜けダメージを与えられない。
「下がれ下がれ!逃げるぞ!!」
もうあまり走れないアッキー、それでも逃げないと殺されてしまう。
俺たちは走った。真っ直ぐ進んで左に三回曲がり、
「あの木の箱の横に隠るぞ!」
とりあえず、陰に隠れれば幽霊からも見えないはず。
「ドサッ。ふぅ、ここで一呼吸しよう」
「カサッ!」
「うわぁあああ!!」
「うおぉぉおお!!」
「こっちもだぁぁー!!」
「うぉおあっ!!ああ、お前たち!?」
どこかで見たことがあると思えばダンジョンとサンサンドで助けてくれた、命の恩人ヴィンスヴェルタさんその人だ。箱を挟んであちら側に立っている。
「ふぅ~よかった。ヴィンスヴェルタさんだった。俺たち逃走して、ここまで逃げてきました」
「それは大変だったな。実は俺たちも苦戦を強いられてな」
ヴィンスさん達も?
「ヴィンス、それはお前だけだ。正攻法で挑むなんて馬鹿しかしないぞ」
「デメグラム、お前の方が馬鹿だな。あいつらだって怨念残しているんだ。相手してやって思いの丈をぶつけ合ってこそ浮かばれるってもんだ」
「それで負けたら、さらに怨念を抱くだろ」
この人たちには何を言っても駄目そう。
「あはは、お前たちどちらも似たようなものだからやめてくれ。さあ敵が来た、ちゃちゃっと倒すぞ!!」
ゲイルというリーダーが指示する。
「よけてて!」
詠唱が早い。
「射よ、突き刺す炎矢!」
「ファイヤーボウ!!」
空中で止まったゴーストと火の矢が重なり静止画のようになる。ゴーストの心臓を一突きして、その体を貫いていた。さらに、そこから燃え上がる火柱が空中に上がる。そしてゴーストの青い影は体と共に薄れて消えていった。
「助かりました」
カタリナがお礼を言う。
「何度もありがとうございます」
モニカさんも言う、俺は遅れてしまった。
「それよりお前たち、俺たちと一緒にこないか?ルーキーがこんなにも早く強くなるなんてエクセア以来だぞ。お前たちにとっても悪い話ではないだろう?」
ゲイルという人が誘ってきた。
「ぜひお願いします!!それとエクセアのギルドなら、さっき会いましたけど」
とモニカさんが言うと、
「嘘、エクセアも来ているの?めずらしい!」
珍しい?引退したんだっけ?
「ねえ、エクセアも来てるんだって!!」
揉めているヴィンスとデメグラムに言うハーゼリア。
「本当か!!」
二人の口喧嘩が止まる。
「モンスターが多くて苦労しそうなの、私からもお願い!」
ヒーラーの方にも言われた。
「構わないんでしたら」
「弱いですよ」
「大丈夫それは、私たちが倒すから時間を稼いでほしいの」
「よろしくお願いします!!」
俺は、時間を稼ぐという言葉を聞いて即決した。これなら問題なく、ずっと組んでいられる。
「自己紹介を一応するわねぇ、私はモニカ」
「はじめましてカタリナです」
「アッキーです」
「リーダーのライムです」
「こちらもメンバーを紹介する。俺はリーダーのゲイル。この二人がヴィンスヴェルタとデメグラム。あとはハーゼリアにリコルチェだ」
「はじめまして!よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくね」
「これで安心だな」
「仲良くしよう」
「これからどうしますか?」
「このフロアはこれからの夜間、戦闘の連続になるだろう。建物の中も追い詰められる危険領域となる。だから進めるだけ進んで次の階層前まで行くつもりだ!!」
俺たちは身を隠せる場所を探していた。
しかしそれは俺たちの判断ミスで、ここに滞在するのは危険なようだ。固唾を呑んで俺たちは顔を見合わせた。
「すみません、俺たち瀕死の状態でして」
正直に俺は言った。隠しても損するだけだ。
「それは大丈夫よ」
「コトッ」
リコルチェがポーションを四つ、エナジードリンクを二つ取り出した。
「まずはこれで回復して下さい」
俺とヴィンスさんが両端で隠れていた木の箱の上に置くリコルチェさん。
「えっ!使っていいんですか?これはすみませんご丁寧に」
照れながらモニカさんはアイテムを有難く使った。
「すみません、リコルチェさん」
俺たちも、お言葉に甘えてアイテムを貰い使用した。みんなメニューを開く、HPとMPが60%以上回復している。どうして俺たちのステータス状況がわかるんだろ、この人。
「ところでお前たちはこの階層が何階まであるのか知っているか?」
デメグラムさんが尋ねてきた。
「何階まであるのか知りませんが、俺たちは十階層まであると仮定して目指しています」
「そ、そうか。お前たちは十階まであるのを知っているのか」
「おい、ゲイル」
「できる限り協力してやってくれ、そこまでわかる冒険者はほとんどいないからな」
「ああわかっているさ」
「ミシミシバキバキッ、バキンッ!!」
「ウグォアアア!」
アンデッドが箱の中から出現した。
「はこはこ箱に!」
「うぉおっ!アンデッドだ!」
「それじゃー大通りに出るぞ!」
ゲイルさんが指示を出した。
「行くか」
「わかりました」
俺たちも大通りに出た、待っていたかのようにモンスターが五匹で襲ってきた。
「あいつらは人間じゃない、グールだ!」
「わかってます」
≪グール 高い再生能力を持った人型モンスター、恰好は冒険者に似ている≫
「冒険者に化けて出るとは汚いわね」
ハーゼリアさんが魔術を詠唱。俺たちはそれを邪魔されないように敵を足止めする。これまでの戦闘から、敵は力が強いから力比べはしない。向かってくる勢いを利用して転ばせたり目のあたりをビシバシと叩いたり、砂を振りまいて行動を阻害した。
「おらぁっ!」
デメグラムさん、
「はあっつ!」
ゲイルさん、
「おおおおぉおお!」
ヴィンスさん、がグールをひとまとめに倒した。
「眠れ、燃えさかる火と共に!」
「クリメート!!」
炎の塊がいくつか出て、三匹のグールを激しく燃やす。
「ウォゴオッゴオオオォォォ!・・」
「ウァワァワァァ!」
体を燃やされ苦しむグール。まさに火葬、成仏してくれグール達。
またまたゴーストが出現、今度は二体。
「ゴーストは赤じゃないのか?青もいるぞ」
「赤は怨念、青は無念とか死に方に関係があるんじゃないのか?とにかく情熱派と冷静派の二種がいるのは間違いない」
つまりヴィンスさんとデメグラムさんのような関係である。ゴーストは人の姿をしているので赤い色は余計怖く見える。
「モニカさん、魔法使いですよね。手伝って下さいます?」
「はい喜んで」
「あなたは青い方、私は赤い方をやるわ。ファイヤーボウをお願い!」
「わかりました!」
「射よ、突き刺す炎矢!」
「ファイヤーボウ!!」
ゴーストに突き刺さった炎矢は、その刺さった部分から燃えていった。だが心臓を射止めていないからか体を引きちぎり逃げていく。燃えた足を犠牲にして他を逃がしたゴースト。
フォローに入るリコルチェ、
「開け、いやしの輪!」
「ヒーリング!!」
リコルチェがその逃げたゴーストに回復魔術を唱えた。青い体が薄れていく、存在を否定するかのように完全に体は消えていった、姿が完全になくなり倒したことが分かった。
「貫け、滴る雫を冷酷な槍と化し!」
「アイシクルランス!!」
ハーゼリアは赤いゴーストに氷の魔術を唱えた。胸に突き刺さる氷の槍、だがそのダメージはその部分に穴をあけただけで限定的だった。赤いゴーストは真正面から突き抜けてハーゼリアに襲い掛かる!
「危ない!」
ハーゼリアの体を倒すカタリナ、そのおかげでハーゼリアは敵の攻撃は受けず。ただ赤いゴーストの手はカタリナの肩に触れていた。
「きゃぁっ、ぅっ」
触れただけで焼けただれるように痛みがしたカタリナ。
「大丈夫?カタリナ!」
「全く効いていない!・・」
「赤いゴーストは青より強いみたい、ハーゼリア」
リコルチェが言う。
「いい加減な推察よね」
ハーゼリアさんが言うとヴィンスさんがやれやれという顔をしていた。
モンスターがアンデッドである時は、魔法使いやヒーラーが役立ちます。RPGではお決まりですね。




