迷いの森 対 カタリナ 2
迷いの森に入ったライム一行は、パズルや謎解きが得意なカタリナのロジックメイズを使い、道を進む。
「どうしたんですか?」
カタリナが何食わぬ顔で俺たちに尋ねた。
「俺たちは歩きたい気分なんだ、さあカタリナ行こう」
俺はカタリナの背を押した。
「行きましょう・・」
「ほら、アッキーもはりきって!」
「はい」
右に左に前に、どこに辿り着くのか気にせず歩く。滅茶苦茶に進んでゴールに着いたらしめたもの、歩けば必ずどこかへ行きつくはず。それが行き止まりかもしれないが。
「歩けば道が開くなら、歩くのは〇です」
と結果を評価するカタリナ。
「それで迷ったから意味がないけど、どうするんだ!」
「また道が塞がれました」
「それじゃー仕方がないから私に変わってカタリナ!」
「ちょっと、モニカさーん!」
モニカは集中し魔術を放つ。
「飛べ、怒り怒る炎の球!」
「ファイアボール!!」
「ゴゥウン!!」
「ボワボワ、ファアアッ!!」
「ダメか!」
木が燃えた先に木が見える。燃え移るかと思ったが、燃やすには火力不足なようだ。魔力の関係か?全部燃やすには、さらに上級魔術の習得が必要だな。
「ねえ今、重大な事に気がついたんだけど、木が燃えて山火事になったらどうしよう」
無頓着に疑問を言うモニカさん。
そりゃー死ぬな。詳しく教えるには、俺はカタリナに助けを求めた。
「カタリナ、助言を頼む!」
「ファイアボールは×ですね」
それでもロジックメイズなのかカタリナ。
「レインコールを使ったらどうかな?」
と俺は提案。
「それで、消えるわよ。私水魔術苦手だけど」
モニカさんが掻き分けるように前を進んだ。
「ぐわぁああっ、そうだった」
でもレインコールは使えたはず。
「これ以上、確実でない魔力の消耗は避けよう」
「それにしても長いわねぇ~っ。この先ずっと道よ。まだどこにも行きつかない」
「そうですね、かれこれ一時間以上は歩いていますから。もし戻れなくなったらどうします?」
「それは・・」
モニカさんが息が詰まる。
「この木々の間、通れないか?」
良く見ると木に少しだけ隙間がある。
「通ってみましょう」
先に全員が通る。
「っと、んしょ、あっ」
アッキーが木の間の狭くなった所でハマってしまった。あるのか?そんな事!
「あっ、アッキーさん。ふふふっ!」
「どうしたカタリナ?おい、うっうふふふっ!」
「あははははは!!アッキー、体が細くなったみたいよー!!」
「本当だな、あはははは。肉が隠れて細いアッキーだ」
木に脂肪が隠れて痩せたように見える。特に顔は歪んで小さく見えた。
「皆、笑っちゃいけませんよ。ふふふ!」
「あはは、カタリナこそ~!」
「ははふふほすー」
両手で木々を押し、唇を突出し蛸のような顔をするアッキー。
「ぎゃはははははー、何をやっているんだ。タコ、それタコの真似だろ!!」
当たりだな。もしかしてクラーケンの真似?どちらにしろ似ているな!
「ザザッ、ガガガッ、ぶはっ!!」
顔だけ出すアッキー。
「おいアッキー、だから顔だけ出してもダメだって!」
「ご、ごめん」
ハマって口が動かせなくなり、声が出せなかったアッキー。結局タコの真似はどうなったんだ?
「さあアッキー、戦士の力を見せてやれ!!」
俺はアッキーを励ました。顔だけ抜けたのなら体も抜けないといけない。
「っつ、ぐっつ」
木にハメ技をかけられているアッキー、それくらい自力で抜け出さないと俺はお前を戦士と呼べない!単なる枝の一部になるのか、いや木の幹か。
「バキバキバキッ!!」
アッキーは、両手を木に押し当てた、両手を案山子のコマのようにして押し出してそのハメ技を返した、枝が折れる。お前の勝利だ!!幹に、もう挟まれることはない。
「よくやったアッキー、二人がお待ちかねだ」
「待っていました」
「頑張ったねー」
二人、口を揃えて言う。が待っている間おしゃべりしていた。他のギルドや魔術の修業、街の女がどうとか言う単語を使っていたから。
「なんか道の幅が狭まってないか?」
「嘘?マジ、縮まっていくー!」
さっきまでそこにあった通路の幅が縮んでいる。
「アッキー走れるわよね」
「うん」
そして全員で走った。これでは全く意味がない。
「はぁはぁっ、モニカさん、土魔術でいけませんか?」
「はぁはぁ、それなら元に戻らないから行けるかもしれないライム賢いっ。でももう魔力も残り半分しかないから慎重に手を打たないと大変よ。アイテムを使うのは最後の手段にしたいし」
「はぁはぁ。お、お願いします」
「ぁあ、はぁ。モニカさ~ん」
七階層に入ったのは失敗だったか。
「土魔術で使えるのはクレイモールとサンドストームだから役立ちそうにないわ」
「魔術書になにか載ってませんか?」
「待ってて」
――――――。
「あったわ!」
「どんな魔術ですか?」
「ふ~ん、土を隆起させる魔術みたい・・・」
「すぐに、やってみて下さい」
「あなたナイトだからそんな事言うのよ、練習がいるの。えっと・・」
「モニカさん、お願いします」
「お願いします」
「お願いします」
「仕方ないか」
ダンジョンの中で魔術の練習を始めるモニカ。
ずっとこのままだ。どこへ行っても道が開かない。最初の六階層の出口の空に目印でもなければ、今の位置が掴めないぞ。戻れないから進むしかない。
「失敗だー、最初に狼煙でも立てりゃーよかったか」
「パズルも消しゴムで消せば可能ですけど、始めから実線やサインペンで塗りつぶしていくと間違っていたらそのまま、気づいたら終わりなんてよくあります」
「狼煙は天井に届くかな?」
アッキーが面白い発言をした。
「それは試していない」
見えない力によってかき消される恐れはある。
練習するモニカさん、
「目覚めよ、地に眠る竜!」
「アポファイシス!!」
「キィイ・・」
「目覚めよ、地に眠る竜!」
「アポファイシス!!」
「キィィイイ・・・・ン」
「目覚めよ、地に眠る竜!」
「アポファイシス!!」
「キィイイイーン!」
魔術が完全ではないが完成した。だがこれでは微量の魔力を消費してしまう。
エナジードリンクで魔力を回復、魔術を詠唱し、地面が隆起し高さ3m、幅5mくらいまで盛り上がった。奥行は50m位ありそうだ。
見えない力というか天井の壁によって空と木々がぶつかり合う。押し合う両者の間で硬直状態が続く。地上で道が縮まる現象が止まった。そして俺たちは進んでいった。
走る、前に、右に、進む、左に、斜めに、振り返り、戻る。
!
遠くに壁のような木が見えた、色が違う。ぶつかり合った場所、境界に残像が現れている。衝撃波のような魔力の光。空が木に突き刺さっている状態といえば分かりやすい。
俺たちは走った、待てない、待たない。どの方向か分からないが、そこから遠ざかる様に走った。
「飛べ、怒り怒る炎の球!」
「ファイアボール!!」
魔術でここぞと思われる木々をぶち破ると異様な空間を抜け出した。なぜここまで来れたかって?それはこうなっている。
仕組みを解説するとこうだ。
隆起で空に張られた結界のような魔力壁の気を反らす。その隙にフロートで飛ぶモニカさん。折った木々で一度空を突いて確かめてから、上に上がっていった。その先でスタートとゴールを確かめたというわけだ。
モンスター遭遇という理由でカタリナはすごく反対した。でもカタリナとモニカさんが空についていく。俺たち二人はサポート役の受け止める役目、何と言ってもナイトと戦士だから。
それで落ち(・)な(・)か(・)っ(・)た(・)わけだが、二か所同時に見えない力は働けず、少しはゴールが見えたようだ。それからは、ゴールまで右左ごり押しで走っていった。まあ敵さん、その隆起した土が人間かと思って勘違いしたんだろ、粗い作りだ。
そして、
木々で囲まれた箇所が一つあった。その前には焦げ付いた跡が点々としている広場。何本か木々が折れ、土が盛り上がりモンスターがいたかのような感じがする。
「あそこ、戦闘の形跡が残ってないか?」
「土がポロポロ落ちてる」
「この焦げた草と地面で鍵爪を研いだような跡が如何にも、戦闘があったように見えます」
「そう思う」
アッキーが土を踏んで締め固めていた。
「ザザザザツ!」
「ゴゴゴォオオオゴゴゴ・・・!!」
周囲の森が揺れ、地響きがする。
「森が変だぞ!!」
巨大な木々が手を伸ばすように枝を伸ばして襲ってくる!
「フロアボスよ、きっと!」
「次のフロアに進んだギルドは、倒していないぞ!!」
「それなら私たちも逃げるわよ」
「うんっ」
「早くあの木の囲いの中に走るんだ」
あの中は跡一つ付いておらず、綺麗だった。きっと魔法陣のようなものがあって上の階層に上がるに違いない。もし違っていたら危険だが、この際。
走り出す俺と皆。
「逃げる事も戦闘です」
カタリナは戦闘が嫌いである。
「ああ」
「はぁはあ」
「はぁはぁあああ」
「おおっ~はぁはぁはぁ・・」
「えあっ、はぁはぁ」
俺たちは全速力で木々の囲いの中へ走っていった。森全体に広がる魔獣のようなモンスターは、木々の中に襲ってこなかった。これは結界なのか?
「何とか攻撃を凌いだぞっ」
「このまま長期戦になると全滅するわー」
「モニカさん魔術書に使える魔術ありませんか?」
モニカさんに尋ねた。
「ちょっと休ませて、はぁはぁはぁはぁ」
そう言いながらモニカさんは魔術書を見ていた。俺は呼吸が乱れながら魔術書を見ているモニカさんに悪い事をしたと思った。いくらなんでも急がせすぎたかな。俺も呼吸を整える。
「はぁはぁ、ごめんなさいライム~、そういうのは全くなかったわ」
そうやって見えた魔術書を閉じた時、赤く刻印された魔術が見えた。
「今開いていたページの魔術は使えませんか?」
「これは火の最大魔術よ、精霊か神様かは知らないけど。魔力の消費すご~く大きいのよ」
「そうですか」
この魔術書があれば、モニカさんは強い魔術も知る事ができる。あとは練習次第。
木の囲いの中は薄暗かった。
「ここからはどうすればいい?」
モニカさんが尋ねた。
「おそらくここはセーフエリアではないと思う」
「見てこれ何?」
【Characters That exceed beasts】
中央にある地面の石のプレートに、そう刻まれている。
「謎々じゃないですか?」
「なんて書いてあるんだ?」
「獣とキャラクターは分かるわ」
「コホン、えっと直訳すると獣を超えるキャラクターはどれでしょう?と書いてあります。訳は、獣より恐いとした方が面白いかもしれません」
「カタリナは大学に行ったのか?」
カタリナは頭がよかった。
「はい私も姉も大学生でした。それまでは順調に進んでいたのですが、姉の失踪で私まで人生が変わってしまい現在に至ります、ははは」
暗くなるカタリナ。
「そんなに気を落とさないでカタリナ、さあ謎を解くわよ」
「はい」
「ああ、この六本の神木?のような大きな木にも何か書かれているぞ」
「本当だぁ~」
「そうですね」
「あー」
木が六本立っていて一つずつに職業が書かれていた。
Ⅰ.Knight
Ⅱ.Warrior
Ⅲ.Wizard
Ⅳ.Healer
Ⅴ.ELf
Ⅵ.Doragon Group
と書かれている。
「それで、この中から選択するのか?」
「私はお手上げよぉ」
「僕も」
「俺か?これはⅥのドラゴンじゃないか?」
「Ⅵをどうするんですか?」
「触るんだと思う」
「では、触ってみます」
「カタリナ、気を付けて!」
モニカさんが言葉をかけた。
カタリナが手をのばした。
「ペタ」
「パッ!」
「モニカさん?」
モニカさんがどこかに消えた。
「あそこにいるぞ!」
飛ばされたのか、結界の外の広場にモニカさんの姿が見えた。
「うわぁあっ!!」
「パキパキパキパシッ!!」
木々が襲い掛かっている、木々の手のような枝がモニカさんを取り囲む。
「おい、囲まれたぞ!」
「飛べ、怒り怒る炎の球!」
「ファイアボール!!」
「ゴォウン!」
「ボッワン、チリリッ・・!」
炎の球に当たった木々が嫌がり曲がりくねる。
「ウウゥン!ウンッ!」
声のような木の呼吸音が聞こえる。
「モニカさーん!」
この囲まれた木々の中に俺たちは普通に入れた。しかし木々は侵入できない。
モニカさんは結界内に急いで避難し間に合った。
「はぁはぁはぁ~、これでぇ二度目よ走るの、ライムー!!」
地に手をつくモニカさんの目が怖い。
「モニカさんが勝手にⅥの番号に触ったんじゃないですか」
「ライムが触れとか言うからよ」
「もしかして『十を超える文字』の事を言っているんじゃありませんか?」
カタリナが言いかえた。
「でもそれならドラゴングループで正解だろ。同じことだ、吹っ飛ばされるぞ」
モンスターも入れようかなー?と思いました。ちょっと物足りなさを感じる今日。




