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奇跡の一掃 3

 昨晩の街での出来事を話す人々、街の修理が始まり早くも復興してきた中で考えるそれぞれ。

 夕暮れ、光球が沈む橙の空が見える。

 仕事を終える住人、時間もそんなにかからず修理と修復作業がいくつか終わっていた。

 三兄弟は仕事が終わると、すぐに話しながら教会に向かった。ユリアンに会うのが楽しみなのだろう。


「アルスさん達、楽しそうだな」


「そうね」


「私も姉妹がいるんだけど、歳が近い兄弟がいると友達感覚で遊んだり話せるから楽しいもんよ」


「そうだな、喧嘩もあるだろうけど」


「あれっ、ライムは一人っこ?」


「えっ、そうだ俺は一人だ」


「アッキーも、一人なの?」


「一人」


 家族の話を嫌がりそうなアッキーだったが話してくれた。


「一人で部屋で遊んでいるの?」

 ぶるんぶるんと首を振るアッキー。


 訳の分からないことをいうモニカさん、面白そうだから言ったのだろうが、思い付きで発現するのは避けた方が良い。アッキーがまた沈黙の像になる。


「体、臭いから教会へ行こう」


「そうね」


「うん」


 俺達は教会に行きながら、遊んでいた。

「何日も入っていないローブ、喰らえ袖の下!」


‘’もわ~ん‘’


 アッキーの鼻先に袖の下の隙間の臭いを嗅がせる。ビクッと顔が震えたアッキー、相当臭うようだ。

 これがマダムパルファムと同等の臭いなら、俺たちを襲ったモンスターは臭くなかったのか!?

 顔を顰めたアッキーだったが、少しニヤケた顔をした。羨ましかった。例え臭くてもエロイベントが自然に発生するのならお前のキャラ選択は最良の選択だったのだ。

 My(わい) Mistake(ミスったけ)[俺の間違い]

 アッキーに嫉妬する今日この頃。






 教会の寝室で寝転がっていたユリアンは、通路から聞こえる三人の兄の賑やかな太い声に反応し、ベッドから起き上がった。


「どうだーユリアン!体は大丈夫か?」


「体の調子は良いよ」


「ぐっすり眠って疲れをとれよ」


「えーあんまり寝ると夜眠れないから起きていたい。でも少し暇かなー」


「そんな暇なら家に行くか?」


「明日行く予定、シスターにも一日安静にしていなさいって言われたから」


「そうか、それまで掃除して絨毯も戻しておかないとな」


「ユリアンはまだ冒険続けるつもりか?」


「それは・・」


「俺たちは、今回のことで冒険者から転職しようと考えている。でもそれにはまだ、少しお金が足りない」


「はぁ~そうだな、別の仕事を見つけてこないとなぁー。またこんな目に遭ったら取り返しがつくかどうか」


 ――――少し黙ったまま外を見る。


「ユリアンもゆっくり考えておいてくれ」


「アンク兄さん何かおかしいそ、なあタンクもそう思うだろ」


「完全に妹に、ドはまり中だ」


「その言い方、土の中の俺たち四人みたいだな」


「それは勘弁してくれ~、もう思い出したくない~!!」


「あはははははは」


「はっはっはっはっ」


「くふふっふふっ」


「ははははは」


「教訓としよう!」


「それじゃー、ユリアン頑張ってなー」


「何かあったら宿屋に来て」


「宿屋だな」


()()()()何か行きにくいな」


「皆には、謝るしかない」

 アンクが言うと、


「ふぅ~そうだな」

 ポンドは上を見た。






 俺たちは教会に着いた。

 ついでなので寝室にいるユリアンに会いに行く。

 既に、お兄さんは帰ったそうでユリアンは一人でベッドに腰掛けていた。


「ユリアン、座っていても平気なの、悪い所とかない?」

 モニカさんが体を気遣う、


「はい、ヒーラーですから」

 魔術で怪我や状態異常は全て治せる。

 普通にかかる病気くらいしかユリアンは問題にならない。


「それならユリアンも清めの場で体を洗わな~い?私たち臭くって」


「*##っ、洗います!」

 モニカさんがそう話しかけるとユリアンはさり気なく自分の臭いを嗅いで快諾した。


 皆で清めの場の方へ歩いて行く。


「ユリアン、タオルいるか?」

 お風呂セットというのはどの世界でも共通で必要だ。普段の事は知らないけど。


「いつもどうしているの?」

 モニカさんが唐突に尋ねた、そういうのを気兼ねなく聞けるから俺は見習いたい。


「えっとですね、外での戦闘時に雨が降る魔術を使った冒険者がいたら、その中で洗っていました。皮で編み込んだ幕を作りそれを四本立て、その中に私は入ります」


「お兄さんと一緒にそんな事してたとは苦労したんだねえ」

 同情するモニカさん、


「お兄ちゃんは裸で洗ってました」


「それは真っ裸なのかな、ユリアン」


「そーです。兄たちは()()()()稼業をしていたので教会には立ち入らないから」


「街の人は、みんなそうしているの?」


「いいえ、家で洗っています。魔法使いの仕事の一つで、家に呼んで水魔術を頼みます。でそれを温め使っていたかな?」


「そうか」

 可哀想なユリアン。そんな生活をしてきたら心も荒むな。雨に打たれて体を洗う、原始的な方法だが、この世界では日常なのかもしれない。



「ユリアン待っててくれ、ちょっとセイラの所へ行ってくる!」

 俺は走ってユリアンの方へ行きタオルを借りてきた。


「ユリアン、これを」

 俺はセイラのお風呂セットを渡した。


「えっ、あはい。ライムさん、ありがとうございます」

 優しくされ照れるユリアン。お兄さんで慣れているのかと思ったが・・。もしお兄さんに見つかったらしばかれるな。


 そして男女別々の清めの場へ入って行った。




 俺とアッキー、二人で体を洗う。しばらく水浴びをしていなかったから肌に冷たく感じた。


「アッキー、エリスがいなくなるけど何か言っておきたい事はないか?」


「う~んん」

 どもった声で言うアッキー。


「俺なんて、死ぬかもしれないからダンジョンへ行くのをやめたいんだけど」


「え」


「事実だ、死にかけたし」


「僕も嫌、だけど」


「行くしかないか?」


「うん」


 頷いて体を流すアッキーはゲームの時に思えない強さを見せた。


(きゃあ~)


 なんだ?

「カタリナたち騒いでるなぁ」


「虫でもいたんんじゃない?」


「虫?」

 そう言えばこの世界で小さな普通の虫を見かけたことがない。アッキーはその悲鳴を何故、平然と聞いていられるのか。


 それから銅像が壺から水を流す丸い窪みに入って体を洗った。




 女の清めの場にて、


「ユリアンは華奢ね」


「華奢?」


「はい、ぷにゃっ」


「ひゃは、何するんだ!」


「ペタリぺたり、パシャッ!」


「はゃー、冷たいやめろ!」


「あははははー洗礼よ。こういうのに慣れてないわねユリアン」


「だっていつも一人ですから」


「----」

 目が光るエリス。でも目の光は見せない、それが一流の大魔法使いというもの。


「だいじょ~ぶ、エリスさんにはしないから。もしやったら魔術でパシャー、ズテンッてされるしぃ~」


「モニカさんも形無しですね」


「水に形は無いわ。あんなの喰らったらこの肌が台無しよ~」


「ユリアン、両方とも無いよねー」


「はぁい」


「ニュルニュル、スリスリスリリ~ン!!」

 モニカはソープピーを手に取り、よく混ぜてカタリナの体を揉んだ。


「きゃあ~!!」


「ふにゃぁ?」

 猫のように何が起きているのか分からない天然いや自然育ちのユリアン。


「はぁー」

 あきれるエリス。


「はぁはぁはぁ~」


「ふぅふぅふぅ」


 泡だらけの二人。


「アクアウェーブ!!」

「バシャァーン!!」


「ゴボボボボボッ」


「ボゴボゴボゴッ」


 髪の毛がクチャクチャになり、体が捩れているカタリナとモニカ。



「二人とも神聖な場所を汚さないで」


「はぁ~、すみません」


「ふぅふぅ、ごめんなさい」


「私はもう見ていられないんだから」


「エリスさん、いなくなるんですか?」

 ユリアンが言う。


「もうすぐお別れなの、エリスさんと」


「そんな・・。私トロルに殺されそうになって、今も足が竦んでいるのにぃ」


「他のみんなは、いるわよ」


「私なんてエリスさんに五つ以上魔術習ったんだから」


「う、ん」

 安心できないユリアン。


「ユリアンは明日からお兄ちゃんと一緒に行動しなさい」

 エリスが唐突に言った。


「それは私がついていけないからですか?」


「それもあるわ。それとお兄さんが心配しているから。あなたもお兄さんを慕っているし、最初からしばらくの予定だったわよね」


「はぃ」


「どうユリアン、夕食も一緒に食べに行かない?」

 モニカが助け舟を出した。


「いいえ、今日はここで大人しく休んでいます。あとセイラさんたちにもお世話にもなったのでお礼を言いたいかな」


「じゃーお世話になった分、働いて恩返ししなくちゃね」

 ウィンクするモニカ。


「具体的には何を?」

 (すが)るユリアン、


「これは・・」

 教わっていたユリアンであった。


 カタリナとエリスは秘密話を聞かず体を洗いながす。


 ユリアンは話の後、銅像に見入っていた。

 綺麗な裸体の女性の銅像が聖杯から水を流す。花のような包みに入って水が下に流れていく。

「綺麗」

「その聖杯の下に体を預けると体を洗い流していった。

「うわ~ぁっ」

 この時初めて、綺麗で清潔な良い環境というものを知った。




 酒場は大盛況という程ではなかった。街にとっては不運な出来事だからだろう。但し冒険者ギルドがいくつも集まって勝利と街の復興が進んできた事をお祝いしていた。


「我らマッドギルドの勝利を祝杯をしよう!!」


「やれやれ」


「はぁ~い!」


「いぇ~~!」


 黄色いジュースが入った器を持って、乾杯するマッドギルドのゲイル。


「もう俺らの街は復興の兆しを迎えている。サンサンドの街、バンザーイ!!」


「バンザーイ!!」




「さっ、入ろう」

 俺はアッキー、モニカさん、エリスを先に通し酒場で夕食をとる。こういう雰囲気なら、いつもより入りやすい。


「あ~グゥグゥお腹を締め付けてる~!贅肉がとれて、こんなに痩せたわエリスさ~ん!」


 異世界に来てから腹八分目所か二分目も入っていない。モニカさんは痩せたかな。


「ライム座らないの?」


「あ、ん、座る。この椅子はいいなぁ」

 全てが嬉しい。


「いつもと同じ椅子よ 」


「あはは」


「何食べます、エリスさん?」


「そうねぇ~」


「あそこ、あのテーブルの奥」


「あれ!?」


「ヴィンスさん」

「ヴィンスさんね」


「俺、お礼に行ってきます」


「私も行くわ」

 みんなで行き、全員でお礼を言った。


 ―――。


「あのモンスターの襲来深夜の事で、お礼だけでも言いたくて」


「なんだ水臭い」


「いえ、俺は無力でした。本当にありがとうございました。疲れていたのは皆も同じなのに俺たちだけ休ませて頂いて、助かりました!」


「俺たちは先輩だぞ!ギルドはな、街の人命を優先する。それができたら次はお前たちだ新顔、俺たちの方こそユリアンちゃんやお前の仲間を助けに行けなくてすまなかった・・」


「宿屋を守ってくれてありがとう」

 エリスがお礼を言うと、 


「いや、構わん」


「何で赤くなってるのゲイル」


「俺はな、自分のためにやっているんだ。困ったことがあったら俺がいつでも守る!」


「ゲイル、変わってねぇ」


「なんだデメグラムやるか?リーダーの座は譲らないぞ」


「勝負だな」


「やめ、やめよ。それよりダンジョンで戦う方が面白いから」


 その時だった、全員がその言葉に耳を止めた。今回の一連の襲来とダンジョンの関係は引き離せそうにない。


「それでは私たちは失礼します」


 アッキーは深々と頭を下げていた。




 俺たちが席に戻ると酒場のマスターが全員に一品ごちそうしてくれた。


「これって昨日の戦いを語っているのかしら」


「そうだと思う。これは乙な一品だな」


「香ばしい」


「ずーっ、ああ蕩けるような味ね!」


「美味しい」


「白いの何使ってるんだ」


 柔らかいミルクのようなスープに癒されながら、俺は昨日の事とその後のことを振り返った。みんなゆっくり飲んでいた。


「本当大変だったな」


「ええ」


 街の話をして食事を済ませた。



 宿屋に行く、ランプの光で俺たちの影が壁に映りのびた。こんな暗い中で生活していたら目が悪くなってしまうな。まだ外の方が明るいかも。


「ああ~、疲れた」

 ベッドに仰向けになるモニカ。


 エリスもベッドに座る。


「どんどんモンスターが増えてきて強くなってピンチになって冒険って厳しいわぁー。エリスさん、昔もこんな感じだったの?」


「昔は今よりもっと大変だったわ、街を作ったりしてて。設計図とかもなくて何回も作り直していたそうだから。でもモンスターは少なかったかも」


「それじゃー街をつくるのも手伝ったの?」


「いいえ、そういう話があったの」


 それから他の話をする二人。



「モニカ、ちょっと部屋出るから戸締り頼んでいい?」


「いいけど今からどこ行くの?」


「ちょっとね、戻る時は魔術で開けるから先休んでて」


「そうします」


「ついてこないでよ」


 モニカは頷いた。




 街は明かりが少し灯り、モンスターの再来に備え警戒していた。


 ユリアンは夕食時、シスターの真似をしていた。ただ、おっちょこちょいな所もあり何回もスープを零しそうになった。スプーンの正しい使い方は知らないのでシスターを見習って飲んでいた。

 それでも、段々とやっていくうちに慣れて出来るようになった。肩もみでもしようと思ったが『いいから』と遠慮されたので恩返しができない。

 それでもセイラに手伝いがないか聞いて自分が代わりに動いた。

 いつもより早く終わったセイラは早く休むことができるので喜んでいた。セイラが寝室に行ったのでユリアンも就寝することにした。


 ユリアンはベッドで寝ながら、兄たちから手渡された笛を見ていた。


「お兄ちゃんたち、こんな笛をもたせて私こんな所で何かあっても吹けないんだけど・・・」


「トントン!」


「今いい?エリスさんが会いにいらっしゃいました」


「はい構いません」


 エリスが入ると中にカタリナがいた。夜は銀の月があり、誰かは見える位の明るさが窓から入る。


「ユリアン、あなた隠していることない?」


「そんなのないけど」

 ユリアンがエリスの顔を見る。


「えっ・!」


「鞄の中を見せて」


「ああっ、それはごめんなさい。つい出来心で回収しました」

 ブラックゴブリンの骨でできたチェーン(鎖)が入っていた。


「ダンジョンにいた時は、既に街が襲われていたからチェーンは無関係だけど、どうして勝手に回収したの?」


「売ればお金になるから」


「カタリナはどう思う?」


「盗みは駄目かな」


「ごめんなさい」


「ユリアン、それはあなたにあげるわ、戦利品よ売ってお金にして。それに私もいるのか尋ねられたから、何となくどうするか分かったし」


「それでユリアンはお兄さんと一緒に生活できると思います」


「いいんですか、ダンジョンまだ途中なのに。私が抜けたらヒーラーがいなくなるけど・・」


「ヒーラーはここにいるわ」


「わ、わたし?」


「嫌?」


「攻撃できなくても・・いいんですか?」


「いいわよ。くすっ、これからは私はいないから誰もそんな事言わない」


「そうですか。それでは、お願いします!」


「ユリアン、こっちは決まったわ」


「それでは私もお兄ちゃんと平凡な冒険者に戻ります」


「建築家でしょ」


「そうだった、その手伝いをします」


「それよりユリアンは、教会の仕事の方がいいような気もするんだけど」

 とエリス、


「私もそう思います」

 カタリナも同意する。


「私たちでシスターに頼んでみるわ」


「あ、ありがとうございます」


「ユリアン、頑張りなさい」


「はいっ、エリスさん」


「じゃ、さよなら」


 エリスは寝室を出て行った、外に見送るカタリナ。



「さよならカタリナ」


「さよなら、エリスさん」



 振り返るエリス、

「それと・・たくさんのポーションを集めたヒーラーと出会うのは初めてよ」


「まぁ、寄付ですけど」


 エリスは教会から商会の方へ歩いて行った。

 カタリナは思いがこみ上げてきた。また皆と一緒に旅をしたり寝たりできることに、そしてお姉ちゃんを探す機会を得たことに。

 もう少し、街の復興に沸く姿を書いた方が良いか。ギャグが足らんか。言葉足らずか。

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