第18話 奇跡の一掃
突然に!炎が飛び光が流れ、空のモンスターが壊滅する。ご主人の言葉でライムは我を取り戻す。
【エリスの守護 残り2日】
次の日になった。がまだ夜である。それも深夜、時間にしたら深夜一時頃か。
「ユリィ!ユリアン!」
アンクが嬉しそうに教会の中に入ってきた。
「ユリアン!外のモンスターが消えていった、俺たちは助かったんだ。おい、お前は助からないのか、目を覚ましてくれユリアン!!」
「ユリアン、俺も助かってほしい!」
ポンドも詰め寄る。
「すまない、俺が冒険者なんてしていたからだ!!」
アンクは感情が高ぶり震える声でユリアンに話しかける。
「すまない俺は兄を止めるべきだった!」
ポンドが謝る。
「真面目に生きるから、お願い起きてくれユリアンッ!」
タンクがユリアンに願う。
「みんな大声出さないで、ユリアンを安静にしてあげて下さい」
外から中に入ってきたカタリナが三兄弟に注意する。
ユリアンは教会の椅子に引いた毛布の上で、人形のようになって目を閉じていた。このまま峠を越えれるか・・。
「みんな疲れたでしょ、さぁ椅子に腰かけて休んで」
カタリナは三兄弟にそう言うと兄弟二人はユリアンの両隣の椅子に腰かけた。だがアンクは頑なに拒む。そして振り返り、天使の像にずっと祈りながら立っている。
それからカタリナも祈りを捧げた。
そしてカタリナがアンクの横で祈っている時に、教会のドアが開いた。
「誰かいるか!」
そこに立つ男が一人。
「ライム!」
「カ、カタリナか!」
「うん、私」
「アッキーとモニカさんが危ないんだ、手伝ってほしい」
「危ない?すぐ行く!」
「よかった、こっちだ」
俺はカタリナの手を引き、二人を隠した場所へ連れて行った。また、いなくなったら大変だ、急いで行く。命は心配なさそうだがモンスターが、まだこの街の外と塀の下にいた。
「ちょ、ちょっとライム!」
「アッキーとモニカさんの具合をみてほしい」
「わかったから!」
二人を隠した場所に着く。
「はぁはぁ、いなくなってから何があったか分からない、回復魔術を一通りかけてほしいんだ」
「そうね、一応全部やってみる」
そういってカタリナはビショップスタッフを掲げた。
「開け、いやしの輪!」
「ヒーリング!!」
「与えよう、煎じられし薬草を!」
「メディシン!!」
「起こせ、目覚めの心気!」
「ドラグケア!!」
使えそうな三種の回復魔術を唱えたカタリナ、これで治ればいいが。
「・」
「うんっ・・っ、んっ?」
魘された声を出すモニカさん、大丈夫そうだ。
「すっ、ふぅ~」
俺はモニカさんが生きていたので胸を撫で下ろした。
「あれ、ライム。私はどうしてここにいるの?」
「悪い、俺も分からない」
「ライムじゃないのなら私は何で」
狐につままれたような顔をするモニカさん。
「アッキー、アッキーは?」
「隣にいる」
「んぅん」
寝言を言ったがアッキーは目を覚まさない。体力が底をついての戦闘だった上、就寝時間はとっくに過ぎている。起きれなくなっても仕方がない。俺はアッキーも生きていたので安心した。また本当に嬉しかった。
「よかった、ありがとうカタリナ」
「どういたしまして」
「おい、お前たち!」
「なんでしょうか?」
確かヴィンスさんと同じ場所で見たことがあるような・・。
「俺はデメグラム、ここにまだモンスターはいるか?」
「いえ、全てあの通り」
「倒されたと言うのか」
「はい」
「それにお前たちは関係あるのか?」
「いいえ、ありません」
エリスが関係していても、俺は言うつもりはない。
「一位のギルド・エクセアは、引退した感じになって行動していない。他のギルドランク二、四位は他の街に住んでいる。六位のホワイトベールは見当たらないし、誰が倒したのか知りたくてな。
まあいい。それでだ、残りのリコイルとサンドワームは俺たちが倒す。だからもう休んでくれ。
それだけヴィンスが使えたかったらしい、せめてもの償いだそうだ」
「償い?何もしていませんが」
「はぁ~。ヴィンスが昔、アンクにお世話になったそうだ」
デメグラムは溜息をつく。
「はぁ」
「じゃあな」
デメグラムは歩いて行った。
「カタリナ、本当に自分勝手な事ばかり言うが、またユリアンを看病してほしい」
「あなた本当、忙しいわね」
「ごめん」
「ユリアンは、私がきちんと見てますから」
「ありがとう。空のモンスターがいたら危ない、そこまで俺もついて行く」
もう空のモンスターはいなかったが、念のためモニカさんにアッキーを預け俺はカタリナを教会の近くまで送っていった。
「カタリナ、他に何か変わったことなかったか?」
俺はカタリナを教会まで送りながら尋ねた。
「いいえ、空のモンスターが倒されたことしか」
「あれはエリスじゃないのか?」
「何人かが魔術を使ったんだと思う。教会の中で音が左右から聞こえたから」
「なるほど」
「ライム、私はここでいい」
「そうか、アッキーが起きたらすぐにそっちに行くよ」
「それはいいからライムたちは宿屋でゆっくり休んで。エリスさんも一緒に」
「いやお前にだけ任せられない」
「ライム、私の目的を忘れないで。ダンジョンでお姉ちゃんの手がかりが見つかるかもしれないの。それをあなたに託す、私はユリアンの看病をする」
「わかったよ」
それで、お互いの関係は成立する。
カタリナは教会の方へ歩いて行った。
カタリナが教会に戻ると、まだ三人兄弟は起きていた。
「残りのモンスターは、みんなが退治してくれるそうよ。ユリアンのお兄さんたちも今日は休んで下さい。明日、また看病して上げて下さい」
「まぁ、そうだなー」
「わかったよ」
「いや、もう少し俺はこうしている!」
アンクがユリアンの顔をしばらく見ていた。
エリスは魔術を使い、外のモンスターと戦っていた。
「どこにいるの!あの大量のモンスターをあっさりと片づけられる冒険者は?」
リコイルは街の塀にへばり付くような状態で回っていた。また塀の下にはサンドワームが身を隠す。ユリアンが引きずりこまれた所にある土塊からフロートで外に移動する。エリスは、その土塊にいるサンドワーム、囲むリコイルに魔術で攻撃した。
塀にいるリコイルに向かい、
「流れる、帯は幾重に大波!」
「アクアウェーブ!!」
モンスターと塀を水浸しにする、
さらに、
「うちおとせ、空より雷電柱!」
「サンダーボルト!!」
リコイルの体を直撃する雷電柱、流れる雷はリコイルの体の割れ目から入っていき、体の内部に電撃・雷撃を喰らわせた。エリスは感電攻撃でリコイルをまとめて倒すことに成功!
さらにアクアウェーブを何回かエリスが唱えたことで塀の下の穴は水で満たされ、また土が締め固まっていった。呼吸ができない、もしくは穴が掘れないサンドワームは穴から出る。そして塀の外か内側に一旦避難した。
そこを、また同じように叩く。
「うちおとせ、空より雷電柱!」
「サンダーボルト!!」
土、水、サンドワームと繋がれた範囲の中で電気を通すものは水を除いてサンドワームだけだった。サンドワームの体を突き抜けた電気が内部から破壊する。あっという間に消えていくサンドワーム。残った電気と水は地中に流れていくので心配ない、これは他に被害が出ない倒し方だった。
俺がモニカさんの所に戻ると、モニカさんはアッキーに呼びかけていた。薄らと目を開いたアッキー。
「アッキー、しっかりして私はここよ」
「ん・・・んっと」
アッキーが体を起こす。
「僕は・・ああ、助かったんだ。ボルフライは?」
「あれよ」
「?いないんだね」
モンスターの残骸は既に消えていた。残されたのは戦闘の後の地形の変化だけ。
「アッキー無事でよかった。それじゃー宿屋に行くか?」
「でもエリスさんは?」
「エリス」
そうだった。体力が底をつくとか、そんなことしか俺は考えられなかった。
アッキーが目を覚ますと安心から急に空腹であることを思い出す。マジお腹と背中がくっつきそう。早くエリスを探し出さないと飢え死にするぞ。
「待ってな、俺はエリスを探してくる」
二人は、まだ寝起きだから俺が探す。
「ライム!」
俺がモンスターが落ちた場所を探すと、エリスが商会の左にある通路の奥から俺の名前を呼んだ。
「そこにいたのかエリス!」
エリスと俺は、互いに走った。
「どこにいたんだ」
「私は戦っていたのよ。消息不明だったのはライム、あなたの方よ。みんな必死だったんだから」
「悪かった」
「ねぇ、あそこにいるのって、アッキーとモニカ?」
「合ってる、二人だ」
「よかった合流できたのね」
「まぁ、偶然だけど。それよりエリス、酒場に行かないか?ユリアンは生死をさまよう状態だが、俺たちがいても何にも出来ない。それにカタリナが見てくれるらしい」
「あなた言ってること分かってる?自分で看病しないでカタリナにさせるの?そして食事をとるって考えられないわ」
「それは悪いと思う。俺たちは戦闘する方がカタリナの望みも叶うらしい。それに俺たちも瀕死に近い状態だ」
「そうねモンスターが一掃したから私たちは休んでもいいと思う。それと酒場は、さっき閉まったわよ」
そういってエリスも認めてくれた。
「えぇえ~!!それなら宿屋に行くしか・・」
「そうね、もう疲れて動けなぃから」
俺とエリスは二人の方へ行った。
「あ~、エリスさーん」
モニカさんがエリスに抱き着く、再会を喜ぶモニカ。
「や、やめなさい」
「モンスターに空に連れられて死ぬかと思った~」
「う~ん~」
「そしたらドカっって音がして頭の中が真っ暗になったの。目が覚めたら地面に着いていて生きていた。これエリスさんが助けてくれたんでしょー!」
「ち、ちがうわ・・」
「ええーー!エリスさんじゃなかったの、私はロッドがなくてフロートが使えないし、どうして助かったのか考えていたら、エリスさんだと思ったんだけど」
「そうね、それはまた明日考えましょう」
「そうしようかなぁ。うん、そうしよう」
話が終わったようなので俺は宿屋に向かった。
宿屋の周りにヴィンスさんが見えた。
「ヴィンスさんありがとうございます!」
「いいんだ、俺の方がお前たちの先輩なんだから」
悪いと思っていたらしい、声からしてヴィンスさん達も疲れているのに。
宿ではご主人が待っていた。
「夕ご飯は、まだでしょう」
「え、まあ、よく分かりましたね」
「そうですか、ではこれを」
と言って水とサンドパン、少量のカラカラボールを差し出してくれた。ご主人のおもてなしに俺と皆は一日中、助けられてばかりだった。
「エリス様、ラクーダはちゃんと奥の方で預かっております」
「それはありがとう」
エリスが笑った。
ご主人の世界時間が一瞬止まっていた。例の奴だと思い、俺たちはすぐに部屋に移ることにした。
部屋に入ると遅い夕食を食べる。
「やっぱりナイトはそうでなくっちゃー 」
宿屋のベッドの上でモニカさんが一言、
「何どうしたの」
「みんな助かり後は寝て良しなんて、えひゃひゃ寝るのが楽しみぃ~」
「そう」
そう言ってモニカはすぐに目を閉じ寝息をたてて眠っていた。エリスはモニカの嬉しそうな寝顔を見ていた。
俺とアッキーは部屋で遅い夕食を食べた。しかし、
「グゥ~!」
「お腹が鳴った」
今、食べた後なのに。俺は自分の腹時計が鳴ったので、口に出していった。
「ググググーッ!」
すると、それに応えるようにアッキーもお腹の音が鳴った。
あれだけ動いたもんな、まだお腹が減っている。
俺は何も出来なかった。明日、アッキーとモニカさん謝ろうか考えていた。助けたのは俺じゃない。もっと用心して進まないと、いつか死んでしまう。
俺は目を閉じた、
すると、すぐに考える事ができなくなって・・深い眠りについた。
――真夜中の教会――
ユリアンが息を吹き返した。
死の狭間で引っかかっていたのか、冥府の世界に落ちた時に天使が舞い降りてきてユリアンの体を死の底から引き上げたのか。
朝、セイラは教会の天使の像の前で祈りを捧げていた。街の住人と仲間たちが助かった気持ちを感謝して。
その横でユリアンは皆の事を思い祈っていた。
「―」
天使の像の目から雫か涙が一粒垂れる。
椅子にはユリアンが使っていた毛布が敷かれていた。そしてその横、後ろで寝ている三人の兄。
「・・、・・」
「・・!」
??
「コッ、コッ、コ」
カタリナが少しして目を覚ます。足音が耳に障ったからだろうか。その時、ぽたりと溜まっていた一粒の雫(涙)が落ちた。
天使の像の前で祈りを捧げるセイラの姿を見るカタリナ。
「あれっ?」
目をこするカタリナ。白い光が差し込む中に、もう一人の姿が見えた。
「あれっ?」
レンズの仕組みで集められた光が教会の天使の像の前に、いくつかの光の帯が差し込む。交わった下に足が見えた。
カタリナは椅子から起き上がった!
そして天使の像の前にゆっくりと歩み寄る。光で包まれた中に自分も入る。
そこで見たのはセイラの隣で祈るユリアンの姿だった。頭から足までついていて、そこに立っている。
カタリナはユリアンが祈っているから声をかけなかった。祈り終わるまで待つ間、一緒に祈っていると、
「誰?」
目を瞑って祈るカタリナにユリアンが話しかけた。
「ユリアン、目が覚めてよかった」
「!?」
「ユリアンさんですか?」
セイラがカタリナの声でユリアンの存在に気づく。
「えっ、誰?二人とも」
「私はセイラ、この教会のシスターです」
「ここは教会?私モンスターに襲われて、お兄ちゃんの声が聞こえたらと思ったら、今度は声が遠のいて・・・・。そこまでは覚えているけど・・」
「私はカタリナ。ライムと同じギルドの元ヒーラー。それからユリアンは助けられた。そしてお兄さんが抱えて駆けずりまわって、ここに来てからもずっと眠っていたの」
「お兄ちゃん・・、ああ、本当だ。私・・・シスターがいて気づかないから、ここは天国かと思っていました」
教会内は朝の光が差し込み、天使の像の前以外は光はあまり差し込まない。
「よかった意識が覚めてきたみたいね」
「カタリナさん、私助かったんですか?」
「はい」
「お兄ちゃんはそこにいて、私は生きている」
「そうよ。さぁ、お兄さん三人を起こそう。ユリアンが目を覚ましましたよ!アンクさん、ポンドさん、タンクさーん!!」
「・・・んぁっ」
タンクが目を覚ます、
「おっ、どうしたんだ!?」
明るく甲高い声が聞こえる。
「セイラさん 、何ですかそれ恥ずかしいです」
「元気になった姿を見てもらって下さい」
「セイラさん、それは私も恥ずかしいです」
「おおっ、ユリアン~。おいポンド兄さん、アンク兄さん、ユリアンが目を覚ましたぁー!!おい、起きろって!」
「なんだよ、うるさいな。朝は静かに!」
ポンドが目を覚ます。
「おっ、おおおおおユリアン~!愛しの妹ユリアンなのか、神様ありがとうございますっ!」
「アンク兄さんも起きろ!ユリアンが目を覚ました!」
「おいおい、おーい!」
アンクは夜遅くまで看病していて疲れ果てていた、揺さぶっても起きないアンク。
「まあいいか好きなだけ、寝させておこう」
タンクは放っておいた。
「タンク、兄さん怒るぞ。でも俺もいいや」
単純な性格の二人だった。
家族が倒れた時、かけつけてくれる家族がいたら良いものです。また友達や仲間、知人がかけつけてくれたら、きっと嬉しいと思います。




