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限界の果て 3

 街はモンスターの大群で埋め尽くされる。ライムはギルド協会に、エリスは教会に、アッキーとモニカは商会に、ユリアンは兄の元に。

 街はモンスターの(うごめ)轟音(ごうおん)と拍車を掛ける怒涛(どとう)が止まらない。


「教会の方にモンスターが集中しているわ」


「あそこに女、子供が避難したからか?」


「手負いが増えているけど、どうするんだ行くのか?」


「慌てないでよ」


「俺たちは、ここで戦うんだ。俺はここから弓を射る。あの場に行っても弱いから迷惑をかけるだけだ」


「俺たちはお前にかかっているんだ、ギャスパピロッチ」


「うん、分かってる」


 高台からモンスターに攻撃するギルド・ピックルバロンの六人は教会に避難した街の人を護衛するため、遠距離攻撃を仕掛けた。状況はかなり悪い。

 中堅ギルドとしての役割は、他のギルドと連携することや、街の人の避難を誘導することである。

 しかし、この状況は普段ない。だから動くととうなるかは予測がつかない。見つかれば、あの大量のモンスターに攻撃を受ける事が分かるだけに動けない。だから隠れて攻撃していた。




 ――酒場――


「なあ、どうするんだ。このままじゃー、街の壊滅で俺たちも死んでしまうぞ」


「そりゃーそうだが、まだ壊された家屋と言っても二十軒位だろ。そんなら大した事はない。それに冒険者が一番多く滞在するのがこの街だ。ここより安全な街があるのなら、とっくに行っている」


「これでは街の中で移動できん」


「出来るが、掴まれば最後だ。外で追い詰められたら隠れる所なんてどこにもないんだ」


「ほらっ、あそこに強いギルドがいるじゃないか。ここにいる俺達の方が生きのびる可能性が高いってもんだ」

 窓越しに外の冒険者を見て男は言った。


「いるけどさぁ」



 ――別のテーブル――

「オアシスの方はどうなったの?」


「さっき街から煙の臭いがするとか話していた人がいたわ。

 でもあそこはギルド・ブルーオーシャンが拠点を置いている場所、きっとモンスターたちは倒されているわよ。あの地で水系魔術を行使すれば、水と土が混ざり、この上なく効力が発揮するから」


「それなら土魔術を使えばいいんじゃない?」


「土魔術は主に地表、地中を攻撃する魔術よ。それに加え、敵は空にいるから当たらない。あと使った後に地形が変わり、元に戻すのに人手と時間がかかってしまう。水なら浸透か蒸発でかんたーん」


「そういう理由ね」



 ――別のテーブル――

「ツリーシードの森のギルドはマーベラスたちか」


「あのギルドリーダー、真面目だから、かなり強い魔術を使っているかもなw」


「負けるわけにいかないんだろ。有名な魔法使いの両親を持つ娘としては」


「あそこまで強くなれば、プライドだけでもないだろ」


 酒場の冒険者たちは戦闘で疲れた体を休ませていた。






 ――教会地下――

「ここ、暗いよ。早くお家に帰りたいよー、うぇえーーんっ」

「今はここにいなくちゃいけないの。我慢してね」


「こんなにモンスターがいるんじゃ私たち、これからどうやって暮らしていけばいいのよぉ?せっかくここに家を建てたのにさぁ」

「そんなの言っても仕方がないわー。他のどこへ行ってもモンスターがいるから」


 教会では地下に街の女と子供が避難していた。






「モニカさん」

 アッキーはモニカに話しかけた。


「何?」

 モニカが言って振り向くと、隣にいたアッキーはモニカより一歩前に出た。


「なんだ?お前は、お前もやろうってのか」


「そうだぞ、ずるいぞ」

 少し怯んで後ずさる街の男二人、


 アッキーは頭を下げた。街の男二人とは初対面、顔を合わせないし言葉も出ない。だが精一杯の気持ちを込めて深々と頭を下げ続けた。大量の汗と粗い呼吸を必死に抑えながら許してくれるまで。


「なんだ?」


「どうした・・」

 街の男二人は思ってもみなかった行動に身構える。


「!?」

 街の人と同じでどうしたのかと固唾を見守るモニカ。


「この兄ちゃん図体でかいな。もしかして怪力か?そうだろ、少なくともタフだな」

「だな。お前はとんでもない冒険者だろ」


「・・・」

 許してくれるという言葉だけを待つアッキー。


「そうだ!もしだぞ、俺たちの家が壊れたら直すの手伝ってくれるか?」

「おっ、それだ。もちろん給料は支払うし時間の良い時でいいから」


「!?・・・」

 アッキーは何が起こったか分からない。ただ無礼な態度をとったので謝るのに必死だった。


「どうするんだ?それなら許すが」

「いいだろ」


「う・ん」


「よし約束だぞ、ならポーションを二つやろう、いや三つだ」

「俺もあげる、お前は強い」


「お金は・・」

 モニカがアッキーの代わりにお金を渡そうとすると、


「いや、いい。こちらの兄ちゃんの怪力に期待したいんだ」


 アッキーの体格は、この世界ですごく珍しかった。街の食生活からだろうか、ほとんどの人間は細身か中肉中背の体格である。他に類を見ない体格であることをアッキー本人も気が付かなかった。

 だから街の人から見れば、普通以上の冒険者となり、強く力があるように見えたのだ。上位冒険者なら扱いも別になると言うが、それに例えられるだろう。


「えっ!?」

 稀にみる大柄は人を引きつけ、小心者の弱気で内気な性格と態度は街の風土と良くあい、得をする結果となった。

 モニカとアッキーの相反する性別と性格、体格が功を奏すのに一躍買ったのは言うまでもなく。






 ・・・・心に語りかける声。


「お兄ちゃ・・」

 ユリアンが意識下の中で感じ取ったのは知っている匂いだった。


「うおぉぉぉ!!」

「おおららららぁあっ!!」

「っぉおしゃおしゃしゃ!!」


 三人の兄たちの太い声がユリアンの耳に届いた。

 しかし声は五感を絶つユリアンの意識には届かない。さらにサンドワームの上から出した三人の救いの手も一緒に地中へ引きずりこまれた。

 サンドワームが移動している。その流れが中断され、また動き、横にいるサンドワームが上の方へ行ってと、これまでと違った動き方をしている。

 呼び覚ますための意識ある行動が、(心の奥で兄を求める)無意識のユリアンに届いた。



「くそ、ラチがあかん!」


「倒してからじゃないと救えないのなら全て倒してでも助けるぞ!」


「おおおーっ!!」


「ユリアンに当てるな!」


「よし、まずここだ!」


「おおあああっ!!」

「せいっ!!」

「おらっつ!!」


「ザスッツ!」

「ジシッ・・!」

「パキ、ジュワリ!」


 時間との格闘、早くしなければユリアンの命が危ない。


「はあっー!!」

「どりゃあああ!!」

「ふぬんっ!!」


「バキッ!」

「バズスッ!」

「ビチチチチ・・」


 サンドワームと必死に戦う三人の兄、と瀕死のユリアン。何も考える事さえ許されない、耐えられない。


「うおほっほ、うがああっ!なんだこ・」


 ポンドは足首をサンドワームに噛まれた。そして次々と噛まれたポンドは力が抜けて膝を曲げてしまった。膝が地面につくとサンドワームは体に這い上がってきてポンドを覆っておく。

 隙間から逃げ道が見えた。その逃げ道(前の地面)に手を付くと一度にサンドワームが現れ手を噛みつく。ポンドは手の力を奪われた!抵抗出来ずベッタリと地面に伏したポンドに全身を包むように這いサンドワームが襲いかかる!まだそこで終わらず、土の中へ引き摺りこむ。


「ポンド兄さん、逃げなきゃ駄目だぁ!!アンク兄さんポンド兄さんが!」

「おまえたちまで、今助けるぞぉ!」

「おぅおおおーっ!!」



「うぁっ!!」

「うぁあっ、ぁああああっ、うわぁわぁわっ!!」

 ポンドを助けようとしているアンクの傍らで、タンクに忍び寄るサンドワーム。背後から大量のサンドワームがタンクの背中にのしかかり、重さに耐えきれず仰向けにひっくり返る。さらに体を這うサンドワームの甲殻的な足が皮膚を刺す。


「おい!タンクー!!お前までー」


「誰か助けを呼ばなければ、二人とも・・」


「ズサリッ・・ザザザザ・ザザザザザ・・」

 家の壁を這い上がるサンドワームは、身を翻し空中に体を落とした。そしてアンクの体にくっ付く。

「パラパラカサカサ」

 アンクの体で音がする。それはサンドワームの甲殻と甲殻がぶつかり合う音。

 それでアンクが上に気をとられたら、足から体に這うサンドワーム。柔軟に襲いかかる。こうなってしまっては抵抗する術がない。アンクは蹲るように倒された。


「おぃ俺は、ユリアンを助けなければいけない~!俺までこんな所でえっ、倒されるわけにぃっ・・!」

 体の上、横を這うサンドワーム。その重さで言葉を出す事が出来ない。出来るのは少しの呼吸だけ。アンクは、地に指の先を押し付けたまま・・引きずられる。


「・・・」

 アンク、ポンド、タンク兄ちゃん。






「シスターはいます。だけど皆も魔力がありません。皆、代わると言ってくれましたがそれでは私がここに来た意味がありません」


 セイラの言うとおり他のシスターたちも、ずっと魔術を使い続け底をついていた。他のシスターが代ると言ったのは、セイラの外見に異変があったからだ。


「献身的なのはいいけど、無茶しないでセイラ」


「はい」


「ヒーラーが足りなぃ・・」

 エリスが呟く、そして自問自答する。


 問題は何?

 戦士やナイトは地上戦のみ。

 地上戦になっても二、三匹の攻撃ならまだしも十匹、百匹の攻撃だと対応不可。攻撃を受ける、空中へ連れて行かれる。そして落とされ・・・・。


 空中戦を可能とするのが魔法使い。いくら魔術を使ってもあの数は倒しきれない。

 逆に攻撃を受けたら大ダメージを喰らう。魔術は使用回数が決まっている。

 深々と考えるエリス――。


 席に座ったまま祈り続けるセイラ、立てないほど衰退している。


「セイラまで・・。私は・・なのに。私は・・!!」

 自分の無力さに呆れる。グッと押さえ、言うのを止めた。

 これまでになく取り乱すエリス。


 万事休す。



「コッ・・」


 教会の扉を開け中に入ってきた一人の女性がそこに立っていた・・。黄色のローブにユリアンと同じスタッフを持つ冒険者。



「カタリナ!」


「カタリナさん!?」


「それ、私が代わりましょうか?」


「お久しぶりです、カタリナさん。調子はいかがですか?」


「調子は良いし元気。エリスさん、それ私が変わります。セイラさんは、教会のシスター以外としか代わる気がないようなので」


「代わりのヒーラー?よかったぁあーっ」


「代わりです、セイラさんはもう休んで下さい。また明日、皆さんの傷を手当の続きを」


「そうさせて頂きます!」


「街にいたの?カタリナ」

 エリスはカタリナを見るなり厳しい目をした。


「はい、ずっと。理由はないけど他に行く場所がありませんから」


「できるの?」

 そして問う、


「私はみんなと別れた後、他のギルドに加入していました。だけど回復以外、未だに出来ません。そうして生活し、一緒に姉を探していました。

 エリスさん、私は別れた後も冒険に出て修業していました。回復なら誰よりも長けています、だからその役目私にやらせて下さい!」


「あなた、だって」


「私はずっとヒーラーです」


 ずっとセイラは二人の話を聞いていた。

 だから、エリスは否定できない。

 カタリナは異世界人でずっとヒーラーではないと言う事も、セイラと交替させないと言う事も、できなかった。


「いいわ、セイラあなたに交替を頼みます」


「はい」


「よかった」

 そういうとセイラは杖をついて部屋の方に歩いて行った。


「セイラさん!私が部屋まで一緒に着いて行きます」

 そう言ってカタリナはセイラを部屋までつれていった。






「なし、それはなしだ」

 俺は先に言って、アイテムショップの店の男に何も言わせない作戦をとった。


「ポーションはありますよ」


「だな。それで何です?」

 改まった話をしたので察するにそれかと思って話をとめたわけだが。


「ここにあるアイテムの在庫が足りないので、一緒に取りに戻って頂けますか?」


「はい?」


 何ナニなに、お前何?誰?店の男が売る物なくてスミマセン、取りに行ってきますなんて台詞、絶対なんですけど~。ポーションはあるけど家にあるだって、さてはお前お邪魔人だな。はい魔人決定~、ギルド協会では魔人まで出現する事態となった。さあどうするライムお前の手に、この世界の運命がかかっているぞ!


「おおっ、それはありがとうございます。もちろんお代はいりません。ただで差し上げますから」


「はあ?」

 手をブルンブルン振るの止めてぇ。何故、承諾となったんだ?お代は払っていいんだ。時間がないから今すぐ、くれよ。


 俺の手を繋いで外に出ていくアイテムショップの店の男。何ちゅう理解だ、どうすればいいんだ?俺は。






 ―少し前のオアシス湖―


 オアシス湖の横に街があった。街の周りには塀が立っている。家の数はサンサンドほどではないが、湖も囲めば大きさはサンサンドの街以上の広さ。


「おいおい、ここは俺たちの家だ!この先は通すわけにはいかない」


「エウロ、モンスターには何っても言っても意味がないぞ」


「いいや、土足で入ってきたんだ、分かってるさ。こんな野暮な客にはお帰り願おう。喧嘩売ってきたのはお前たちだー!」

 瞬時に出す剣さばきでサンドワームの一角を切り裂くエウロ、ブルーオーシャンのリーダーとして一気にサンドワームを倒していった。


「空からも次々と」


「あんなに数が多くいちゃー、堪らんねぇ」


「空は水を上手く使って、ちゃちゃっと倒してくれアシュリー、プリンシパル」


「ただいまー倒しますぅ」

「ブンブンブンうるさいわね、夜は静かなのが好きなの、水音以外聞かせるなんてお粗末よ」


 そう言って二人は杖を立てる、


「現れよ、形のない水の函!」

「プール!!」


 高等な魔術を同時に詠唱する二人の魔法使い。土と岩の土地に突如現れたオアシス湖以外の巨大な水の函。


「いつになくすげぇ魔術だな。水なら、そこのオアシス湖にいくらでもあるのに・・」


「セイロン、その水は貴重な生活のための水だ」


「そうか」



「爆ぜろ、消えた竜巻を集めて重ねて!」


「エアブラスト!!」



「ブォオオゴォオオオオオッツッツウッツ!!」

「ボフォォオオオオッツ!!バシュゥウウウン!!ズババババババババッ!!」

 函の中の水が、いくつもある竜巻に吸い込まれる。さらに竜巻同士ぶつかって破裂した。水はクリアーバタフライの羽の粉を流しクリアーバタフライは自由を奪われたかのように全て地面に落ちていった。


「地面の水濡れは、戦士とナイトの仕事だ~!!」


「ズシュッ!」

「ブッ!!」

「バヒュッ!」


 落ちても倒せなかったクリアーバタフライは地面に待ち構える冒険者たちによって倒されていった。




「包め広げよ、いやしの輪!」

「マドレレイズヒーリング!!」

 戦う冒険者みんなに行きわたるように自分から動くバルバラ。



「まだボルフライがいるわー」


「舞い上がれ、まわる大地と砂!」

「サンドストーム!!」


「ならこちらも」


「舞い上がれ、まわる大地と砂!」

「サンドストーム!!」


「ザザザザラザラブォー!!」

「ザザザザラザラブォー!!」

「パシパシパシパパパパ!!」

「パシパシパシパパパパ!!」


 竜巻が砂を地面から掬いとる。さらに風に混ざった砂が辺り全てに飛散する。空中を飛ぶボルフライの羽根の表面は土の粉と中和され乾いてしまった。羽根を羽ばたかせることが出来ないボルフライが地面に落ちていく。

 それでも何とか羽ばたかせ降りることはできたボルフライは地上モンスターとなった。素早く足をシャコシャコ動かしタックルするが、


「地面の土被りは、戦士とナイトの仕事だ~!!」


「バフッアー!」

「うわぁああ!」


「怯むなあああぁ~!!」 


「ザクッ!」

「ザシュッツ!」

「ズズッ」


 知恵と知識と工夫と努力、冒険者の日頃の鍛錬の賜物である。その地を覆い尽くしていたモンスターたちはあっという間に激減していく。それでも抵抗を見せるモンスター、モンスターも必死である。


「水が混ざった土の上は回りにくいか?リコイルたち・・」


「あとはリコイルとサンドワームだ!いっくぞぉおおおお~!」


「せーのっ」


「お・お・おおおおっ!!!!」


 組んだ冒険者ギルドのそれぞれ。冒険者は横一列の横陣を組み、前に進んで壁のようにモンスターへ立ち向かった。


「ダッダッダッダッダッダッ・・」

 行進するように一歩ずつ前へ進行する。


「あいているものは火を焼べろ!!」


「陣形を崩すな、全て倒すぞー!!」


「おおーっ!!」

 小さな虫でも厄介なのに大きなモンスターとなれば、気持ち悪さと恐怖は比例して大きくなる。だから目の前に飛んできたら怖い。

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