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心の尺度 6

 六階層はフロアボスが二匹いた!アッキーの尻餅でひき返せず、逃走も失敗で戦闘に。一匹倒すと、もう一匹のボスもエリスが倒せと言う。

「エリスどこ行ってたんだよ。どうして俺たちが、そんな無理しなくちゃいけないんだ?」


「先に倒さないと他の冒険者が危ないからよ。さっきいたヴィンスヴェルタさんが戦っていたら、あのフロアボスに殺されたかもしれない」


「そんな事あるわけない」

 俺は否定した。確かに元の世界の化学やゲーム知識が戦況を変えた事は分かるけど。



「よーし、アイテムで回復だ」

 俺はポーションを飲んでHPを回復する。


「そうしましょう」

 モニカさんはエナジードリンクで回復する。


「そーうですね」


「これ良い香りがしますね」

 ユリアンが小瓶を飲みながら俺に言った。


「エナジードリンクか?」

 悪いが俺は魔術が使えない、から飲まない。以前、モニカさんは特有の匂いと癖のある味がすると呟いていたっけ。


「はい、癖になる匂いがします」


「まあ、ほどほどになぁ」

 お前達を見ていると危ない顔をしているぞ。


 もう一匹のオーガの所に向かうように歩き始める。


「何かフロアボス倒した気になって戦う気力が湧かないなぁ」

 それか、もう気力が尽きたか。


「私も安心感が邪魔をするわね」


「うん・・」




 円形状に剥げた草むらに戻ると、オーガが入り口前で見張っていた。誰も通さないように前を見ている。


「もう見たくない」


「私も」

「俺も」

「僕も」

 三人の意見が合った所で、早速だが作戦を立てよう。


「フロアボス二戦目もサンダーアークで倒せるか試そうと思うんだが皆どう思う?」


「いいと思うわ」


「私、次はどうすれば」

 怖気づくユリアン、


「ユリアンは回復の事だけ考えればいい」

 気持ちだけで十分、今も俺達より恐怖やその幻影と心の中で戦っているようだ。


「私がまず、不意打ちでファイアボールを出す」


「で、俺たちはそれから動く。アッキーは一番手」


「一番手ね、鉄球どうするの?」

 アッキーは頷く。


「死ぬから回避のみ。盾か斧で塞げば死は逃れると思う」


「最初に死ぬ・・」


「いやっアッキー、一番手は敵が攻撃する軌道が読めるはずだ。だからかわしやすい」

 標的が少ない分、攻撃が単純になる。だから俺は動きが遅いアッキーを一番手にした。問題はそれからだ、複雑、ランダムな攻撃になればなるほど偶然当たる確率が上がる。

「やってみる」


 その意気だ。逃げ腰になるのも仕方がない。

 これで二戦目、HPをアイテムで回復したとはいえ、ボスは強い。どう戦えば勝てるか、一人でも重傷、再起不能になったらどうするか?その対処方が俺の頭を悩ませていた。

 

 鉄球が地面に横たわっている。周囲を見張るオーガ、遠距離から魔術だけ使っても効果は小さい。倒した斧を持つオーガには効かなかったから想像がつく。

 不意をつける壁となるものがない。

 全員がボスを恐れている。足が竦む。あれだけ距離が長いと近づく前に鉄球にやられる可能性が大きい。

 そんな臆病風に吹かれていたら行動に抑止がかかる。

 俺は震えるユリアンの代わりにヒーラーをつとめる。同じ言葉を使う。

 「行こう!!何かあっても皆が助けてくれる!」

と言葉を発し、その治療薬にした。




 俺たちが、現れるとオーガはこちらの姿を見るなり牙をむき出しにした。そして、やって来ないもう一匹のオーガの存在に気づき雄叫びを上げる。


「グゥオォーン!!」


「――――」

 声が返ってこない、狼じゃーあるまいしと思っていたらギロッとオーガが睨む。



 地面の鉄球が少し動いた気がする。あれを持ち回して投げるのか?


「みんな、一定の距離を保って!!」

 すぐにモニカさんがみんなに呼びかけた。サブリーダーと呼べるモニカさんは、声がラの音程で声がよく通る。

 俺は敵の攻撃範囲を測るため近づいた。目視の感覚で距離をとり、その範囲の境でジタバタしてみる。さあ攻撃してこい!


 鎖がガラガラ鳴り、地面の上を転がる!


 来る!!


「カラララララララ!」


「ジャラジャラジャラジャラ!」




「――――!!」


「バンッ!!」


「ジャラジャラジャラッ!・・・」


 即死!当たれば。目の瞬きのせいか、気づいた時には鉄球が俺の横に落ちていた。野球ボール並みの速さで飛ぶ鉄の大きな球。

 その飛距離は、そこの土についた跡まで。それは鎖の長さでもある。またオーガが手を伸ばす、足を前に出すと、その距離(攻撃範囲)は長くなる。さらに鉄球を回せば・・・。


 もし飛ばした軌道が合っていれば、俺の体に鉄球が衝突していた。また近づいていたら鉄球の鎖に巻き込まれていたかもしれない。

 こうなると、迂闊に近づけない。

 ただ逆に接近してしまえば鉄球の攻撃は出来ないので、こちらが有利になる。ブラックゴブリンとの戦闘と同じだ。


「危ないわよライム!ボーっとして今のが直撃していたら即死していたわー」


「だから考えていたんです」


「どうする?」

とアッキー、急ぐな待て。


「一旦引こう!」

 俺たちはボスが動けないのを利用して一旦逃げることにした。予想通りついてこなかった、ボスは俺たちのいる方向を見ていた。




「何か良い案ないかな?」

 作戦を練り直す。


「四人、分かれて仕掛けるのはどうでしょうか?」

と提案するユリアン。


「そうね、それだと四方向も見れないからこちらが有利。それだと私かユリアンが狙われるかも」


「アッキーが一番大変だぞ。体の大きさ分かわし、体重分を支え俊敏に動く力が必要になる」


「・・まぁ」


「なあ、鉄球って電撃が通るんだよな」


「それって一匹目と」


「ああ感電させたらどうかなと考えたんだ」


「サンダーアークを鉄球に当てるのね。それを手放すかは賭けになるけどやってみましょう」


「はい」


「鉄球を絡め取れないかな?」

 アッキーが提案した。


「それ、どうやって絡めるんだ?」


「グロートゥリーは?」


「それ、あったな」

 二階層で使った呪文だ。媒介はアースレインのように必要な木々や水を使い、精霊に木々の成長を促してもらうもの。

 そうすれば、オーガはこちらの姿が見えないはず。しかも木々や草に当たるから鉄球の攻撃範囲が制限される。


「いけるかもね」


「モニカさん、その魔術は使えますか?」


「もっちろん、合間に練習したから」


「さっすが、モニカさーん」


 ≪グロートゥリー 木々を媒介としてその成長を促す。但し、その成長は環境(自然界)に比例する≫


「とりあえずやってみましょう。これ以上考えても思いつかないし、難しい方法は試す機会すらあるかないか」


 それから、どうやって連携するか話し合った。




 再挑戦。第六階層フロアボス、鉄球のオーガ。


 オーガは姿を隠さない。真正面から相手する。オーガはこちらを見ているが動こうとはしない。


「今気づいたんだけど、どうしてオーガは階段を壊さないのかな?普通なら、壊しても構わないと思うはずよ」


「壊すとダンジョンマスターが下りてこられないとかあるんじゃないのか」

と俺が答えると、


「ボスにもボスがいたw」


「納得の一言w、モニカさん」

 こうやって仲間と冒険したから、楽しく頼もしく知恵も出る。ボスに攻撃がかわされた時に反撃する方法が思いつく。



 ボスがこちらを見る。鉄球は、まだ動いていない。


 俺の後方で魔術を詠唱するモニカさん、俺はアッキーに棒を渡す。

「棒を放り投げてくれ、アッキー」


 アッキーは思いっきり棒をオーガに投げつけた。俺たちとオーガの中間に木の棒が落ちる。


「手をのばせ、精なるものたち!」 

「グロートゥリー!!」


 森森(もりもり)と草や木々が、投げた棒から生える。それは地に根を張っていき、モニカさんの足元まで伸びる。さらに、すくすくと伸びていき、五分程度でこの剥げた地は草木が生い茂る森となった。大自然と呼べないけど。


「ははは、オーガ、あそこで階段を守るの大変そうだな」


「そうねぇ。障害物が何もない殺風景な場所にいたから」


「視界は塞がれた!皆ー木々に紛れて仕掛けよう!」

 これで周囲の視界が遮られ、俺たちの位置を掴むのが難しくなっただろう。


「皆、どこから鉄球が飛んでくるか見えないから気をつけて!」


 誰に卑怯と言われようが俺たちは構わない、勝つために必要な事をする。


「三つに分かれるぞ」

 奥は俺とユリアン、左はアッキー、右はモニカさんが目指す。


「分かったわ」


「うん」


 最初は地形に戸惑う。だけど三方向に分かれて木草をかき分けオーガの前までやって来た。オーガは鉄球を何度なく振り回すが自然の草木はそれを阻むように攻撃を止めた。武器を思うように振るえないオーガ。


「来たぞぉー!!」

「こっちもー!!」

「僕もぉ!!」

 大声で完了の合図をする。位置を確認し合う。声が木々で遮られるが何とか聞こえた。


「ユリアンは俺とアッキーの間に居てほしい」


「はい」

 ヒーラーのユリアンを俺とアッキーの間に移動させる。



「アッキー頼む!!」

 鎧を装備してHPが一番高い戦士が挑めば、草木で威力が落ちて一撃で殺されることはないはず。ゲームではそうだった。


「はぁああっ!」

「ガコンッ!・・・・・バサバササッ!」

 アッキーの斧と鎖を巻き付けたオーガの拳がぶつかる。斧が草木の中に飛んでいった。



「ズボッ・・・」


「バサバサバサバサッドッ、うぐぅぅぅ」

  オーガが素手で殴るとアッキーが吹っ飛ばされた。 それでも起き上がり戦いを挑むアッキー。


「ボホッツ!」

「ぐはぁあぁ!!」 

 続いて蹴りを放つオーガは下から上に蹴り上げる。



 はあああああっ。


 俺は後ろから、声を立てずオーガの頭に斬りつけた。オーガは頭の直撃をうまくかわし剣は体に当たった。体に当たった剣は表面の固い皮膚に当たるだけでノーダメージ。やはり先ほどのオーガと同形質の皮膚。


「ぁぁぁあっ・・」

 オーガは俺の胸に正拳突きを出してきた。攻撃の瞬間、ファーストステップをとり攻撃を回避したが草木が邪魔になる、鎧の上から拳を喰らった!胸が痛みで鼓動を止め、息が詰まり圧迫された。鼻呼吸も出来ず。

 最後のポーションで傷を回復、すると呼吸も回復する。


 この木々の中では俺たちは敵のように自由に移動できない。

 痛みを堪え見ると、オーガは俺の方へ近づいていた!


 モニカは階段の所に走る。

 それに気づいたオーガは焦った!階段の前にオーガが走って戻ると、俺たち全員を警戒しながら見張りを続ける。


 俺とアッキーの距離は近い。

 ユリアンが来て、俺にヒーリングを唱えた。


 モニカさんが呼びかける。

「ライム、アッキー一旦こっちに来てー!」


 階段入り口前、最初オーガを見た正面に戻る。



 その間にモニカが魔術を詠唱する。

「ウォータガン!!」

 だが、魔術が発動しない。



「エリスー、魔術を頼む!!」

 どこにいるか姿の見えないエリスに頼む。


 空からオーガを水の球が撃ちつけた。何度も、オーガを水浸しにする。ボスのオーガは斧のオーガが倒された理由を知らない。


「悪いわね」

「射る、空を飛ぶ雷弧!」

「サンダーアーク!!」


 剣をさす必要はない。サンダーアークの雷狐は鎖に導かれるようにオーガの体に流れた。さらにそこから水を伝わり体の中(目や鼻の孔、口)に電弧が走り回る。


「ビビシシシィ、バチィイイイー!!」

「シィィイイイ、パチパチパチ!!」


 音を立てショートでもするかのように体の内部を電弧が焼く。

 オーガは目が赤から黒くなり、体が踊るように動いて消えていった。

 痛い思いをしてフロアボスのオーガを倒したが、それで終わらない。次の階層がまだだ。階層と戦闘の惨さと痛みと良心と何か。


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