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心の尺度 5

 トロルに殺されかけたユリアンを救ったの人物はギルドランク三位の冒険者ギルドに所属するヴィンスヴェルタであった。彼らは、一度街へ帰っていった。午後も戦闘したライムたちは、夜セーフエリアで眠る。

【エリスの守護 残り3日】


 起床し朝食をとる。食料も尽きたので一度俺たちは帰ることにした。この硬い床の上に布や毛布を引いたって寝心地が悪く体が痛くなるばかりだ。あの藁か植物が詰まったベッドが懐かしい。


「ここで出来る限り経験値を得て、レベルアップして」

とエリスに説教され戦闘が始まる。


「おりゃー!」


「いっ!」


「えいっ、ファイヤーボウ!!」


「ヒィーリング!!」


 朝から七戦程して一段落ついた。ダメージを喰らわない戦法は自然と身についた。罠を仕掛ける、皆で囲む、武器を狙い攻撃をさせない等。


 フロアをよく見ると草むらの中にも、モンスターの道があった。さらに、そこには踏み荒らした跡がある。土が盛り上がっていたので辿っていったら、ゴブリンと戦闘になった。俺の仲間たちは、怪しい場所ばかり歩いていく。リーダーの俺を差し置いて。


「なあ、この道モンスターばかりで違ってないか?」


「こういう道を辿って行くのが冒険者よ。簡単な場所には手がかりはない、大事な場所だから罠を張りモンスターを置くのがダンジョンでは定石」


 すげぇな、ダンジョン!!そこまで言われると納得。




 草むらに入る。


「アッキー、草むらの中からモンスターが出現することもある、気を付けてくれ」


「・・こわ」

 アッキーは恐れのあまり身を竦めた。で~んとしたその体でどうなるっ!しかも女たちの方へ避難するだと、有り得んっ。

 もしかして、そのまま女キャラ演じて“きゃあ、こわぁ~いとか言って洞窟の中までついて行こうとしているのか!?それはさせん、俺がお前の本性を暴き出してやろう!


「女キャラにでもなったか、裸体見学者アッキー!さあ、こっちに来いっ!」


「ええっ?」

 とぼけたか、でもここは戦場だ。そんなこと考えてたら命がいくつあっても足りん。


「いや、草むらは何か怖くて」


「ライムさん、アッキーさんに冷たくしないで下さい」


「え、あぁ」

 ユリアンがアッキーの腕を掴んでいる。しかも二の腕をからませて。二の腕?確か二の腕は胸の硬さ、揉み具合と同じだと高校の先輩から聞いたことがあった。エロ戦はアッキーに完敗(間パイ)だ。



「ああ、あそこ見て」

とモニカさん、


「ほらー、あったじゃない。だからわざとこういう道を選ぶ方がいいのよー」


「かもな」

 お前たちは、良いことが続くな。




 草が剥げた道を真っ直ぐ行った先に円形状に剥げた草むらがあった。スゴロクのマス目とゴールと言えば考えやすい。そのゴールにフロアボスのようなモンスターが見えた!


 七階層に通じる通路を見張る番人、アッキーと同じ戦士のような出で立ちのモンスターが立っている。あれはオーガか?メニューで調べられないのでゲームと同じ姿・特徴から判断する。顔はオーグと少し似ている。オーガはその手に鉄球(武器)を持っていた。


 さらに円形状に剥げた草むらの周りを歩くもう一匹のオーガがいた!まわりを警戒しているのか、攻撃力がありそうな剛腕な腕に斧を携える。


「ヴィンスさんの言ってたモンスターがいるわよ」


「そうね」


「筋肉隆々だから強いと思うけど、肉は必ず切れる。武器を使い魔術を使えば勝てるはず。攻撃は出来る限り避けたい。さぁ、どうやって戦う?」


「いいえライム、強靭な肉体は質そのものが違う事も。ヴィンスさんの言った通り引き返しましょう」


「ゴボッ、そうですか」


「シーッ、見つかっちゃう」


 見学者アッキーはオーガを見ていた。

だが、咳の音に、ひょこっとモグラのように出した頭を屈めた。


「パキッ」

 屈んだ時にバランスを崩し、アッキーは倒れかけた。尻餅をついたアッキーは枝を手で折ってしまう。しまった。


「ぁぁ」

 ユリアンは草むらの隙間から覗くと、視線の先にはこちらを見て怒るオーガがいた。ユリアンは怯えた。


「オガッガ、オガガーアァ!」

 斧を持ったオーガが暴れ出す。


「見つかった、逃げよう!」

 ユリアンが言う。


 オーガーがドッドッドッとこちらに走ってきた。


「ユリアンが注意したのにライムが咳をするからよ、もう走るの嫌ーっ」


 俺たちは、斧を持ったオーガに追いかけられた。通ってきた道を相当戻ってきた。ああっ、オーガがまだついてくる。あのオーガは通路(階段)を守る必要がないのか!?


 しかし、そのオーガは持つ斧が大きいから速く走れない事が見て取れた。斧を肩に乗せていた。アッキーも同じだった。


「もうダメ走れない!はぁはっぁ」


「俺も、っはぁ~っ」


「僕も、はぁはぁはぁ」


「私も死ぬーっ、はぁはぁ」


「はぁはぁ」

 エリスは俺たちより離れている。




「はぁ~っ、オーガがついてきたぞ!」


 全員が俺を見たw。


「ほんとっ!」


「えええっ!」


「なっ」


「はぁはぁ、さぁ戦おうか。引き離し作戦成功だな」

 行き当たりばったりだが、作戦にする方が良いな。その方がけりがつく。


「えええ!!」


「うそぉ!」


「驚かせて悪い」


 わざとオーガを見る。おかしくてにやけてしまうから。


「さあバトルといこうか!二対四が一対四に変われば勝ち目がある」




 呼吸を一同、整えて戦闘態勢になった。

 オーガの立ち位置なら敵も見慣れているから良かっただろうが、移動したので環境が少し変化した。

 ここは俺たちが一度通った場所、だからこちらにも分がある。敵が一度偵察に来ていても、風景全て記憶する事は不可能。おまけに地形は変化する。


「休んでいる暇はない」

 恰好つけて言ってみた。自分に。


「わかってる」

 言葉数少ないモニカさんはオーガの動きを細部まで見逃さない。


 オーガが俺たち四人の前で立ち止まった。



戦闘位置(並び方)

オーガ

   大斧


アッキー ライム

ユリアン モニカ



 オーガが巨大斧を振る、俺とアッキーは退く。それに合わせてモニカさんとユリアンも下がる。


「抜けて一振り、気をつけて」

 俺とアッキーがオーガに走る。左右二手に分けれて同時攻撃、これは武器は違うが二刀流ともいえなくない。


 二人が分かれ視界が開くと、モニカは魔術を放った。

「射よ、突き刺す炎矢!」

「ファイヤーボウ!!」



 まずはいつもの陣形で攻撃する。



「ボシュッ!」


「!?」

 誰もが唖然とする。ファイヤーボウがきかない。顔に刺さらず炎の矢は下に落ちた。


「なんで?どうしてよ!!」

と驚嘆するモニカ。


 一度俺たちは退避した。



 オーガはこちらの誰を狙おうか迷っていて足を踏み外す。さらに足が縺れる。


 悪い、そこには大きな石が落ちている。そして、そこは草が絡むんだ。



「飛べ、怒り怒る炎の球!」



 俺の後ろから、再びモニカさんがファイヤーボウの詠唱を始めた。それで時間稼ぎは良いがおそらく効かないだろう。

 ユリアンは何かを思いついたのか木の棒を投げた!


「ファイアボール!!」

 それをオーガは斧で弾いた。その一ターン位の隙に、俺は持っていた防水オイルを振りかける!


 ファイアボールがオーガの体に直撃!!


「チッ!チッ!チシッ!」

 顔にベッタリついた防水オイルに炎の球で引火しオーガを焼き付ける。火力アップしたファイアボールの炎を消そうと、自分の顔を叩くオーガ、




「一度作戦を練り直そう!!」


「うん」


 すぐに決定。


「ここで考える。片方で無理なら魔術剣でやってみないか?」

と俺が提案した。だってもう、それしかないもん。


「防水オイルはないの?」


「すまない、あれが最後だ」

 最初で最後の一瓶、ドローシラに塗りたくったから余っていない。


「あれ位じゃ倒せない、ほらっ!」



「アッキー補助頼む」


「分かったよ」


「ガィイーン!!」

 俺はマントに柄を隠すように布を何重に折りたたんで剣を持った。アッキーが草を投げつけて敵の視界を遮る、さらにオーガが斧を振る前に自分の斧を敵の斧にぶつける!!

 刃と刃がぶつかる音が響く、アッキーの斧の重さと勢いがオーガの持つ斧にのしかかった。


「ライム!」


「準備サンキュー!」


「うおおーーっ!」

 剣を胸に振り下ろす。


 ――これは一瞬の出来事。モニカがサンダーアークを詠唱し放っていた。


 雷のように空中を素早い雷狐が走り、それが剣に伝わる。

 そして、

剣で電弧へと変化し、オーガの固く厚い皮膚の奥にまで突き刺さった。


 だが倒れない!


 全く聞いていないオーガ、体の途中で絶縁されているようだ。


「食い込んだのに~」


「モニカさん、水をかけて手伝って下さい!」


「でももう魔力がないわ!それに水は・・」


 このフロアに水はない。モニカさんが水魔術を使って俺がそこを斬る。そういう作戦を立てたがもう魔力切れ。それを察したようにユリアンがエナジードリンクを手渡す。


「いつでもいいわ、回復したから」

 メニューを開き確認しながら答える。


 感電したオーガは止まっていない。オーガが斧を振り回すので、俺とアッキーは二人で戦っていた。とりあえずこれは時間稼ぎのため。

 斧を極力かわして相手の体力を削る。それまで俺はオーガを分析していた。

 オーガの一振りは攻撃範囲が広く威力大が、反面その勢いや重さのため止めや溜め(準備)がある。だから回避が出来た。

 ただ敵は疲れない、相手する俺たちは体力が減っている。


「ライムとアッキーさん、下がってくれ!」

 ユリアンが合図する。ただ緊張して男の言葉使い。相当ハードだったから喜んで下がりますとも。


「撃て、詰められた鉄砲水!」

「ウォーターガン!!」

 しかし、発動せず。


「待って待って、出ないんだけど~」


「ウォーターガン!!」



 見兼ねたエリスが手を貸した。危ないのだろう。


「ウォーターガン!!」


 ≪ウォーターガン(水鉄砲) 消費MP25 精霊ウンデーネを呼び出し水の球をうつ≫



 オーガの体に水がかかる。しかも目や耳、口にも入る様に。


 第一準備完了。


「僕が行く」

 戦闘が板についたように前へ出る戦士のアッキー、俺はその考えに賛成だ。


「アッキー、俺は砂で加勢するから我慢してくれ。跳ね返ってくる水と砂に気を付けて!」


 顎を下げて応えるアッキー。接近戦、斧対斧で俺はアッキーの後ろから砂を投げつけた。草で視界を奪ってもよかったがそれだとアッキーにも影響がある。

 砂を投げるのは思いのほか良かった、オーガの目つぶし効果が大きくなった。



 第二準備完了、

 サンダーアーク、雷狐が俺の剣の上に飛び乗り電弧に変化する。俺はマントで柄をくるんだ剣を突き出す。アッキーは斧で斧を封じる。


 攻撃する!!胸に差した剣がオーガの体を斬る。だが剣はオーガに効果なし。


「アガガガガァー!」

「オオグウグゥゥ・・・ゥ!!」

 遠吠えのような悲鳴を上げて、オーガは全く動かなくなった。目は褐色していき、目と口から煙が出ている。


「ウグッ」


 俺は次の攻撃に備え剣を構える。


「もう倒したわよ」

 モニカさんが言う。


 そしてオーグの体が消えていった、モニカさんはすごい明るくて優しい人だから必要のない事はしない。


 水は体の内部まで電撃が通る経路を作っていた。

 ゴーレム以外のモンスターが体の中まで鍛えるというのは生物学上難しい事である。また目や心臓も同じ、それらが硬くなったり厚くなったら正常に機能しなくなるから。だから勝てたのだ。



 それにしても人間は、何と野蛮で惨酷な生き物だろう。誰も感電死など見たくもない。


 それを知っている俺はユリアンが目と耳を塞いで木のあたりでしゃがみ込んでいるのを見て思った。俺はユリアンの肩を叩いた、ユリアンは震えていて振り返らない。


「もういないから、大丈夫だ」


「ユリアン、終わったのよ」


「えっ、本当?」

 ユリアンはオーグのいた場所を見る。そこは地面が荒れて黒かった。


 まだ子どものユリアンの目には、倒されたオークが悲惨な姿に映ったと思う。


「モニカさん、魔力(MP)使い切りました?」


「アイテムは、エリスさんの分がまだあるはずなんだけど~、エリスさんいないわぁ!」


「おーい、エリス?」


「大丈夫、ユリアン?」


「頑張ってみます」

 ユリアンの精一杯の返事。


「もう一匹のフロアボスも倒して」

 エリスがどこかから急に現れた。

 この階層は初期から中期モンスターが出現する。敵味方ともにステータスが上がっている。だから攻撃を喰らえば痛い。

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