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第15話 昨日の敵と

 ヒーラーなしではダンジョンでの実戦に支障がある。そこでライム一行は、早めに実戦を切り上げヒーラー探しを街でする。するとテントさんを襲ったギルドのメンバーであるユリアン(ヒーラー)と出会った。

【エリスの守護 残5日】


「コンコン」

 目が覚める。そう言えば昨晩、物音がしたような・・・。寝起きの俺は、しばらくベッドに座っていた。

 この宿屋のご主人が毎日泊まる俺たちのためにベッドを人数分用意してくれるようになってからは、すごい疲れがとれるようになった。


「アッキー」

 なぜかいつも目をすぐに覚まさない。眠りの呪文をかけられたかのように眠ったアッキー。

「アッキー」


「んう!」

 起きたか・・。


「昨日少し音がしなかったか?」


「音・・・?あった?」

 なんだ聞いてないのか。


 俺の聞き違いだろうか?ふとドアを開けてみた。するとあちら側のドアの前に絨毯が置いてある。、他には何も変わった様子はない。ご主人が置いていったのか?

 それから食事と眠気を覚まし、支度を整え俺たちは部屋を出た。モニカさんたちを待つのも飽きたので先に部屋の前で待つことにした。


「あらっ?」

とモニカさん、


「いたの?」

とエリス。


「もちろんリーダーだから。この絨毯は何だ?昨日何かあったのか」

 それらしく答え、俺は踏んでいる絨毯の方へ目をやった。


「別にぃ」


「何も」


「さあ行きましょう」


 そう言って三人はそこそこと廊下を歩いていった。


 違う空気や怪しさは微塵もない。だが、そこに絨毯があるということは何かしらあった事実を物語っていた。他から見当をつけるにしても、ご主人まで昨日と変わらないから探しようがなかった。さあポーションを買って出発するか。


「みんな、何か街が騒がしいな」


「そうねぇ」



「おい、みんな!攫われた冒険者が帰って来たらしいぞ!!」


「ダンジョンに監禁されていたらしい!」


「街の住人もいるのか?」


「早く急げぇー!!」



「皆よかったわね」


「ああ、よかった・・」


「これで心置きなく頑張れるわ」


「うん」


 その話を聞いていたかったが、俺達は街の中で準備を整え旅に出た。



「ラクーダ、相変わらず多いわね」


「まだお宝眠っているからな」

 岩壁に刺さるU字杭に、ラクーダをつなぐ。一度ここにいるラクーダをオアシスに連れて行って水を飲ませてあげたいがそんな暇もない。エリスがいなくなる前に強くならなければ、生きていけないぞラクーダ君。



 ダンジョンの入り口。


「あああわ。こ、ここが噂のダンジョンか!」


「ユリアン、落ち着け」

 声が女で男の言葉使いだと違和感があるぞ。


「ここは何階まであるんだ?」

 ユリアンが尋ねる。


「少なくとも十階以上はあるわね」

とエリスは答えた。


 今、俺も初めてエリスの口から聞いたぞ。


「エリスさん、なんでわかるの?」


「モンスターの強さとドラゴンから十階位ある事は推測がつく」


 一階フロアのモンスター(フロアボス)から階段式になると考えればドラゴンまでは、と計算すれば自ずと求められるらしい。


 入り口から中に入る。


「さあ修業よ、あそこのトロリン一匹を一人で倒してユリアン。トロリンは仲間を呼ぶから慎重に」


「え、ああ、はいっ!」

 やっと言葉使いが戻ったようだ。ユリアンは直立し、手を太腿につけ返事した。


 ユリアンが前に出る、襲ってくるトロリン。

 トロリンの攻撃をヒラリとかわし杖で一打、振り上げる棍棒にビシッと一打、反撃の隙を与えさせない一打、一打と攻撃する。


 しかしビクともしないトロリンに、


「武器で突いて」

 エリスがユリアンに助言する。


「ズッ、ズス―――ッ!」


「横にやると折れるから、傾けずに頑張ってぇー」

とモニカさん、あの大変さが伝わるようだ。


 そして一突き、また一突き、何とか当てる。泥棒稼業で逃げていたからか、暗い場所でも動きが早いユリアンは有利に容易にトロリンを追い詰める、ああっ!仲間を呼びそうなトロリン。


「喉をついて!」


「はい!」

 喉に一突き、


「ゥガァ」

 喉が潰れたか痛めたのか声が出ない。突き突き突き突き突きでトロリンの急所を突いた!トロリンはそのまま散っていった。


「合格よ」

 まぐれでも勝ちは勝ち、ユリアンはエリスの試験をパスした。


「倒せるじゃない」

 モニカさんが驚き声をかける。


「ちょっといいか」

 見たことのない武器、俺はユリアンから武器を借りて茶色のスタッフを品定めした。メニュー画面を開く。


「ビショップスタッフ?」


「そうビショップスタッフ、お兄ちゃんがくれたんだ、いえもらいました」


「へぇ~、武器は良さそうだな」

 どっかでパクってきたのかと思わせる高価で質の良いスタッフ。俺たちの武器より上のランクの品だと思う。



「それでは、今日の戦闘目標を伝えます。目標はスキルを正確にあてる練習よ」


「なんだ、そんなことかー」


「私はしなくていいのよねぇ、エリスさん」

 モニカさんが尋ねると、


「ええ、但し素振りの練習しててね」


「えーっ、あっちの方がきつくない」


 エリスに言い訳は通らない。モニカさんは素振りをする事になった。 




 トロリンが棍棒を振り上げた時、俺は『一刀』を出した。そして一刀を繰り出す、トロリンは腕の筋が切れて手から消えていく。俺はトロリンのリーチは短いから絶対に腕を上にあげると思った。


 アッキーはオーグの猛追をわざと喰らうような姿勢でたち、ガードに入る。盾を持ち、力は五分五分でオーグも盾にぶつかるわけだから気絶するほどは突進できない。防ぎきった猛追、ガードを解き、その頭上からアッキーは振落を決めた!


「モニカ、魔術は使わなくていいの。どうする次の階層へ行く?」

 俺たちより一歩前に出て振り返ったエリスは微笑んで言う。何か怪しい。


「二階に行くけどいいかアッキー」


「行こぅ」


「よし、二階に行くぞ!」

 アッキーの同意もとれたし行こう。


 松明を持ち階段を上り二階層へ。出口から出てフロアを見渡すと、ここにも冒険者がいた。


「冒険者がいるわね」


 まだ雨が降っていないのかな?と思いながら歩いた。


「あっ、雨だ!」


「一旦、出口に避難して」


 俺たちはそこで雨が上がるのを待ちながら他の冒険者を見ていた。



「みんなどーなっているぅ!?」


「何で肌がヒリヒリするの!!」


「雨が降ると痛くならないか!」



「何が起こっているのか、分かっていないんだわ」


 初めてこのフロアに入ったのか?そうか!雨に混じって酸性虫が降ることが、まだ図書館の書物で伝わっていないんだ。情報はさらに更新が必要らしい。


 他のギルド冒険者の方をみると服に赤い染みのようなものがジワリと広がって声を上げていた。


「痒い痒いぞ、なんだこれは!」


 皮膚を掻き出す冒険者、地面で転がりパニックを起こす。

 酸性虫は傷ついた体の中に入り、それで寄生している?その姿を見て酸性虫の恐ろしさを俺たちは改めて知った。


「戻れ、戻れー!!」

 そうすると俺たちの方に走っって戻ってくる他の冒険者たち。


「すまない、どこかの冒険者ギルド。後で何か情報を掴んだら教えるから、俺たちの傷を回復してもらえないか?」


「それなら、はい」

 そういってポーションを一つ渡すエリス。なんだかんだ言って優しいんだエリスは。それと、どっかでカタリナに会ったら言いつけてやろう。


「あ、ありがとぉございます」

 階段を下りながらポーションで体を治す女ヒーラー、魔力切れか?



 そんな状況の冒険者もいれば、いくつかの冒険者はそれでも足を止めない。




「まじで?」

 思わず声が出た。酸性虫を空中で斬って倒す一人の剣士がいた。あんなすごい腕の戦士とかいるのか?常識を覆すレベルである。


「あれはギルド、ホワイトベールのロビンです。

 リーダーのテオ率いるRANK6位のギルドです。ロビンのあの剣捌きは一流なんですが天然で、ほら見て下さい。ああやって斬ったモンスターから酸が飛び散って自分が溶かされてちゃー何も意味がありません。さらに横の二人がヒーラーのイライザと魔法使いのガーネット」




「うわっ、俺の靴が溶けていってないか?なんか冷たいと思ったんだよ。この穴のせいかーっ、駆け出しの頃から使っているお気に入りなのに」


「あんたが夢中で戦っているからでしょー。水に濡れたくないならこの布を被りなさい。それとあんたの靴はあんたの責任だから」


「えっ!!誰ですか~?」


「異国人を気取っても買ってあげないから」


「えええー、俺は酸を出すモンスターと戦った気鋭なナイトなんですよ」


「こんなちっちゃな虫相手に何真剣になって相手してんのよ。いつまでもそんなことやっていないで早く次の階層に行くわよ」


「それよりテオさん、これから僕と歩む道を探しませんか?こんな所で話して申し訳ないのですが・・」


「雨の下たる良い男とでもいうと思ったか、このナルシストキザ男め。さっさと次の階層の入り口を探してきなさい!さもないとこうよー、ガスガスッ!」


「ひ、ひどいテオさん」




「一流の剣士がうまくあしらわれているわー」


「な、仲がいいみたいですね」

 ユリアンが飽きれる。


「さあ皆、雨が止んだぞ。あんなの放っておいて、さっさと次の階層にいこうぜ」

 アッキーを促す、俺たちには無縁のことだ。 


「待って下さい、他の冒険者の傷の手当てがまだです」

 ユリアンが俺たちの顔を見る。


「これを使ってもらって、急いで進みましょう」

 エリスはユリアンにポーションを三個渡した。ユリアンは回復できそうにない冒険者にそれを渡しその場をあとにする。




「はぁ~。痛々しい姿で見ていられません」

 ユリアンは溜息を溢した。


「雨には気を付けてユリアン。雨の中に酸で体を溶かすモンスターが混ざっているわよ」


「雨に!?」

 雨は思ったより早くあがったのはフロアボスを退治したからだと俺は思った。フロアボスにモンスターが服従しているかは知らないが、それなりに意味があったと結論づける。


 アッキーも急ぎ足、

「鎧が」

とアッキーまで気にしている。



 洞窟に入ると魔法陣が空へ上っていく。


「すごーぃ。あんなに小さくなってるぅ~」

 はしゃぐユリアン。遊園地気分か?見る景色は雨だが、ここは雨が降っていない。エリスとモニカさん二人はしゃがみ込んで、ユリアンは開きローブで風に靡く、足が見えた。下には短かいパンツを履いている。例の風により俺は視界を遮られた、またか。


 三階層にとうちゃーく。冒険者ギルドは見受けられないが出口付近が以前、来た時より荒れていた。この荒らし様は人の往来の痕跡である。


「幾つかギルドが来てる!?」


「たぶん、これ」

 アッキーが言う場所に足跡があった。


「例の捕虜となった人達を救出した人達だと思う」


「それが正しいわね」


 おれたちは、地図を利用してこのフロアのモンスターをさけて進んだ。ただはぐれモンスターの類はどこにでもいる。バークバッドが三匹出現した!


「私も戦います」

 ユリアンが言う、


「ここは俺たちがやるから」


「全員で倒して」

 エリスの一言で決まった、ユリアンも戦う。


 ユリアンはスタッフをもってバークバッドに襲い掛かった。陸対空の戦闘だ。


「おりゃっ!」

「パサパサパサ」


「ふぬ!」

「ヒラーリィ~」


「はいっ、えいっ!」

「シュッ、スィーン」


「たあ、あいっ、はぁはぁ。えいっ、まだーっ!」

「キキキキキッ!」

 嘲笑うように木の上で鳴くバークバッドたち。


「くっそー」

 俺が石を投げつけると、空を羽ばたくバークバッド。


 バークバッドが空の『ある範囲』に集まった瞬間を逃さない。チャンス!!

「舞い上がれ、空に浮かぶ旋毛のように!」

「ワールウインド!!」


「ベチャプシッパパパバシバシッ!」

 空を飛ぶバッドたちが一網打尽に旋毛風に巻き込まれ、地面に落ちた。


「やったぁ」


「よっし」


「シュンッ!!」


「意外に硬いからしっかり狙って!」


「キキキィーッ、キィーキィー、キキッ!!」


 地で羽ばたくのは無防備というより無意味に近かった。振り下ろした剣と斧は次々とバークバッドを斬り裂いて倒していく。モニカさんとユリアンもロッドとスタッフを振り、空に逃がさないよう攻撃した。


「うまく倒したわね、みんな」

 これも一階層の修業の成果。これだけ冒険者が多いのだ、待ってはいられない。戦闘が終わったらすぐに次へ向かう。



 隠し通路前に着いた。レッドスラから貰った地図は意外と精巧だ。


「どうだ、ユリアンもう辿りついたぞ」


「さすがリーダー」


「カササッ!!」

「グリーンライム!!」


「モンスターですよライムさん」

 ユリアンが俺の陰に隠れていった。


「実は仲間なんだ」


「な、仲間?何言ってるんですか。ライムさん、おかしいです」


「ユリアン、いいのライムは元々だから。ああやってスライムと戯れるのが彼の生き方なのよ」


「ちょ、やめて下さいモニカさん」


「理解不能のユリアンに通じる言い方をしなくちゃね」


「それで理解出来たのか、ユリアン?」


「はい」


 それでよかったのか、悲しい~男、その名もグリーンライム。


「それはそうと、ここに誰か来たかレッドスラ?」


「まだ誰も来ていません、グリーンライム。ただ少し前に冒険者ギルドが来ました」


「バサササッ」

「そうそう、捕虜を連れて行ったんだねぇ」


「まだいるっ!!」

 ユリアンが怯んで驚くーっ。


「それは聞いた。ここがまだ、見つかっていないのなら、この通路の表面だけ岩の壁は外しておくか」


「そうしましょう」


「うん」


「ところで、ブルーマッダァは?」


「その木の陰にいるよ、ブルー!!」

「バサッ!ベタ・・」


「プスッ!」

 ユリアンが目を白くした。


「おい、ユリアンしっかりしろ」


「あなたヒーラーでしょ、自分が正気を失って・・」


「いいわ、アッキー持ってあげて」


「うん」


「それじゃーまたなレッドスラ」


「はいっ」

 早く終わりそうで終わらない、十二時を越えて内容が固まりました。おっと角をたてない。スライムは丸いもんね。

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