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決意 3

 遅れてダンジョンから戻ったライム達はセイラ、アルスとパァティカの店へ。何とそこには除名したカタリナが招待されていた。皆でわいわいと一緒に食事をする。

【エリスの守護 残6日】


「コンコン」


 ご主人と朝が来る。ボーっとしてから朝食にする。朝食はパァティカから持ち帰った。

 ここはTVもなければ音楽もない場所だが何故か寛げない。いつも目にするのは新鮮な物や事だが、食べ物から街の人まで慣れない事ばかりでかえって疲れた。


「モグモグモグ」

 朝から炒めてあるものだとちょっと抵抗感があるので、サンドパンとトトスープを献立とした。コーンスープはスプーンと似た匙を使って飲む。これも金属製の容器に入れて持ち帰った。こうしないと、この世界での食事に困る、見つかったら怒られる。


 いつものように着替え、みんなと宿屋を出る。昨日は買えなかったポーションを朝アイテムショップで調達したが、これでは足りなかった。午前と午後で店員が変わるから待ってもいいが、時間とエリスがそれを許してくれない。

 さて、ヒーラーはどうなったのか?




 街を出てラクーダと一緒に旅立つ。


 ダンジョンの入り口に到着、戦闘を一時中断した冒険者が出てきた。傷ついた体と血がついた服(装備品)でそのまま帰る。ヒーラーがいてあの有様だ。おまけに中のモンスターの苛立ちを感じた。倒さず途中で逃げたのだろうか!?


「今日の予定は対等に戦闘して勝つことよ。手が空いてる人は素振りの練習でもしてて。午後は少し早く切り上げて街でヒーラーを探すから」


「はい!」

 よかった、ヒーラーの件どうなるのかと思った。


 俺たちは実戦の経験を積むが、出来る限り入り口付近で戦った。回復アイテムがなくなった時に逃げるため。


「いつもそんな何十戦もしないでしょー、素振りでもしてて」


 そういってエリスは奥に入っていきモンスターの囮になって返ってきた。一階層はモンスターが多いので経験値を稼ぐのに最適だった。


 やって来たのは、

「オーグだ!」


「来たわね」


「オ、オーグ」


 剣に真っ直ぐ向かってくるほどオーグも馬鹿じゃない。俺が剣を構えるとオーグが警戒したので間合いがとれた。あとは斬るタイミング次第。


「ブヒッヒッ!!」

 オーグが走ってくる、俺は剣を構える。このタイミングが早いと地を蹴って攻める方向を変える。だから今回は変えた時を狙って走り込み斬る!!


「ダダダダダダダッ!」


「シュィイ――――、ブブゥッ」


 オーグが迫りくる方向に真っ直ぐ走り込み斬った。すると毛皮を剥ぐような音を立て、剣は皮膚を切り裂いた。大量の血液と一緒にオーグは散り消える。

 さらに避ければ、さらに方向を変えるつもりだった。どのみち敵は斬られるのだが、この二通り以外の行動をとられたら焦って動けなかったと思う。


 斧の刃ほど厚みがある武器はない。オーグの突進の勢いに合わせ斧を横に振った。剣より斧は重いがアッキーはオーグを倒していた。


 ロッドは長くはない。モニカさんは間合いを取ってロッドで威嚇する。チャンスが来た時一突き!そして連続して突く!!!これもスキルの技じゃないかと思ったがエリスに尋ねると、そんな技はないという。格闘ゲームの連続攻撃がこれだ、まあ最後に技を入れるのが必勝法だな。


 続いてトロリン、オーグ、トロリンと順番に戦闘をした。待っている間は素振り、突き、振り下ろしの練習。




 昼食、オアシスの湧水を飲みカラカラボールを食べる。おつまみ感覚だ。小麦の生地をこねて球にしたもので焼いてある。その中にツリーシードの木の実が入っていて、脂質や渋み、香ばしさがあった。

 布で包んだカラカラボールを口に投げ入れるアッキー、モニカさんとエリスはゆっくり口に入れ食べていた。しゃべらないと何を考えているのかわからない女二人。カタリナだったら「ライムさん、この色はミネラルとビタミン、鉄分がありそうですよ」と説明してくれると思う。




 そしてまた実戦の修業が始まった。敵の攻撃を良く見てかわす。相手がゴーブなら石器を持つから、その距離を考えて戦う。

 大丈夫、俺には仲間がいる。また周囲に他のモンスターはいない。矢や毒針を持つ敵がいるのならそうはいかない。石器や棍棒、爪も全て致命的な攻撃があると考える。


「すっげぇ」

 アッキーが手で突き飛ばした、戦士は何て力が強いんだ。グレートアックスにした効果覿面だな。トロルの子は相当な力があるはだがそれに負けていない。押し倒した所にアッキーは斧が振り下ろした。

 モニカさんの問題が残っていた。魔法使いとして最大の難関、打撃による攻撃をどうするか?女性は力も弱い。モニカさんはロッドで十回以上突いた、さらに急所を突く。



 こうやって自分や仲間が攻撃する所を何度も見ていると、凶暴的で酷い事をしているのを自覚する。俺が戦闘を受け入れることは、その酷い事を肯定している。

 何か心が影響を受けているような気がして・・・。


「そこまで」

 俺たちがゴーブを倒して傷ついた体を最後のポーションで癒した時に終了の声がかかった。




 実戦を早く終え俺たちはダンジョンを出た。

 途中、川で出現したモンスターをかわした(まだ川のモンスターと戦える腕前がない)。


 街に着く。


 入り口から大通りを真っ直ぐ行くと、


「カタリナさんは?」

 以前カタリナと食事を約束した若い男が話しかけてきた。


「もう、ここにはいない」


「それでは約束が違いますよ」


「俺たちもどうする事もできなかった」


「言い訳はけっこうです、それでは僕は失礼します」

 街の若い男は去っていった、人が変われば情報も入手出来なくなる。


「なに、よ」

 俺の目線の先にはエリスがいた。


「いいえ」

 眉を吊り上げて俺は答えた。この意地悪姫様が、我がままばかり言って追い出したせいだ。


「何か言いたそうな目をしているけど」


「いえ」

 私めは、何もございません。


 これぞ嫌がらせ目線、通称アンアイライン。俺が、対カタリナの列伝対策として開発した兵器だが、やっと完成した。これは事前に察知することによってそれを防止できる。


「アッキー、俺やりました」

と俺は言って、ギュッとアッキーの手を握るとヒクヒクしたリアクションが返ってきた。表現として間違ったか?アッキーが誤解してとっている?街の人も不審な目でこっちを見ていた、そして俺を変質者として避けていった。


 俺たちは人目を避けるため酒場に行った。




「ねえ、あれ」

 酒場でモニカさんが指をさす。


 酒場の一人席、カタリナがいたその席に一人の女がいた。間違いないヒーラーである。俺はその容姿に心当たりがある。


(あれは俺たちを襲った連中の一人だぞ)


(でも様子が変よ


(そうだな、何か顔が暗いな)


「・・・・」


「話しかけたらどう?」


 そうだな。

「おーい」

 人の家のドアを開けるのは失敗だったがゲーム感覚で話しかける方法は悪くないはず。


「あいつらはどうしたんだ?」

 俺達を以前襲ったアンク、ポンド、タンクの三人のことを尋ねた。それが一番厄介で知りたいこと、また共通となる名前だから。


「先日はスミマセンでした、私はユリアンと言います。三人は大けがをして家で療養中です」


「それなら回復魔術で治せばすぐに治るだろ」


「いいえ、それはもうしないっ」


「どうして?」

 モニカさんが尋ねる、


「私が止めればよかったんです。それなのにお宝目当てでダンジョンから戻ってきた冒険者を襲いました」


「それで怪我を!」


「はい。私は三人とこれまで行動を共にして、初めてその原因が自分にあることを悟りました」


「自分が原因ってそんな自分を責めないで」


「ダンジョンから戻る強い冒険者に勝てる見込みもないのに戦闘を挑み惨敗。私は傷をいつも治していました。

 兄たちは地道に働いてGoldを稼ぐことを知らないわけでもないのにずっと悪行ばかり、そうするうちに普通の仕事にも付けなくなってしまい・・・それで迷っていたんです」


「待って待って、いーま、兄たちーって言わなかった?」


「あに?」


「えっ、あの三人はお兄さん達なの?」


「はい!!」


「オーマイ、ユリアン」

 兄弟ギルドがいたのか!あっ皆こっちみてる失敗、こんなジョーク通じないよな。


「ねえ、ユリアンはロッドでの攻撃もできる?」


「はい、できます。でも昔から力が貧弱でしてー。職業に就く時もギルド協会で入れそうな仕事はなく、これだったら出来そうだというのがヒーラーだった」


「ヒーラーを選んだのね」


「そうか」

 俺たちの世界に職業選択の自由とか言うのがあるんだけど、これも頭が悪かったりお金がなかったり、目が悪いなど様々な理由があって自由に選べないのがこれまた現実である。この世界にも、そういうのがあって冒険者はそのならず者が集まる職業になっているようだ。ユリアンはそう言わないだろうけど。


「三人は今どうしてる?」


「家にいます」


「それでユリアンはこれからどうしようと思ってるの?」


「あてにした教会も他の出来そうなギルドの募集もギルド協会にはなかった」

 仕事は、ない時期はなく受からない奴は受からない、俺と同じ境遇だな。


「エリス?」


 頷いて見せたエリス。


「俺たちのギルドに入らないか?」


「いえ、それはできません。私たちは一度、皆さんを襲って殺めようとしました」


「それは兄たちだろ。俺たち生きてるからさ、ほら。それに俺たちにヒーラーがいないと死ぬだろ、だから」

 俺は腕を広げ、受け入れ態勢をとって見せた。


「怪我が治るまででもいいから。仕事だからGoldも支払おう」

 もちろん、カタリナと同じような扱いをするつもりだ。


「そうですか。私は兄たちと同じギルド・ルフィアンの元冒険者です。それで恨まれているかもしれれませんが、よろしくお願いします」

 目を潤ませてユリアンは俺たちの方へ来た。


「俺たちは、そんなの気にしない天然な奴らだから」

 見かけはな。あれっ、俺の胸に飛び込んでこなかったぞ。手を出したほうがよかったかな。


 ユリアンが仲間に加わった。


 これで明日からは安心だ。

「俺たちは、これから教会に行って酒場で夕食、そして宿屋に行くけど一緒の宿で泊まらないか?もちろん夕食からでもいいぞ」


「げ・一緒って」


「一緒に泊まるのは()()()()()とで俺たちは別の部屋だ」

 そう言うと、


「ゴメンナサイ、兄たちと生活してたから男みたいな言葉も覚えてしまって」


「そう、だったのか」

 ”げ”って男かと思った。まあ兄弟以外の男とは普通一緒に寝ないから。


「でどうするの?ユリアン」

 モニカさんが尋ねると、


「それでは兄たちに報告、支度をしてから宿に行きます。出かける時も一緒でないと寝坊しそうで」


「私たちは街の入り口近くの宿屋に泊まっている、くれぐれもお兄さんたちには教えないでよ」


「はい、教えん、いえ教えません」




「コンコン」

 そして教会に行き体を洗い、酒場で夕食をとって宿屋で待っていると、隣の部屋からノック音が聞こえた。


「主人でございます、お客様をお連れしました。一応お伺いしていた方かどうか確認をお願いします」


「こんばんは、遅くなりました」


「ああ、ユリアン。待っていたわ」


「カチャ・」

「どうぞぉ」


「ご主人まだ何か?」

「い、いいえ。そちらのお客様の分も何かいるかと思いまして」


「いいえ、いりません。気を使わせてしまいました」


「いぃえ、いいえ、お気になさらないで下さい」

 聞こえないが隣で話をして時間稼ぎをしている。そんなに中の様子をみたいか、まだドアを閉めた音がしない。



 俺がドアに耳を済ました所、


「バタンッ」

「おほぉ」


 ご主人の常軌を逸した笑い声が俺の耳に入ってきた。何があった?


「アッキー、おほぉって聞こえたぞ」


「関わらない方がいいよ」


「お前は気にならないのか?」


「笑い声だよ」


「そうか」


「ご主人は信用できる人、安全だし」


「そう言えば襲われないよな」

 エリスが宿屋で襲われたらとか言ってたしなー、う~ん。


「ドアも変わった」


「それか、おほぉ。何か頑丈なドアになったな。鍵も新しくなったし」


「・・・」

 ほら今の笑い声に答えないだろ。まあいい、ユリアンとはまた明日話すことにしよう。


 俺は疲れをベッドにうつすように身を預け、目を閉じた。


 そして俺たちは、眠っていった。


 ・・・


 ―――


「ドンドン、ドン」

 宿屋の廊下で音が鳴った。しかしドアは頑丈になり鍵もかかっている。

 別れがあり、また出会いがある。主人公だけではなく脇役や街の人にもそれぞれ人生があり、それを考えました。

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