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決意 2

 カタリナが除名された翌日、既にライムの前にはカタリナはいなかった。それでもダンジョンでの実戦&修業は続く。ヒーラーなしの戦闘は危険だった。

 街に戻った俺たちは教会で汗を流した。

「いつもありがとうセイラ。以前話していた事なんだが、一緒にご飯を食べに行かないか?もちろん俺たちの驕りで」

 せっかくの初料理屋、元メンバーのセイラを誘う。ゆっくり一度話をしたいしなぁ。


「はい。と答える事ができません。実は私、目が見えなくなってからほとんど教会から出たことがありません」


「大丈夫、皆いるからさ」


「ライムさん達、いつもと様子が違いませんか?」


「バレたかセイラ。実はカタリナと別れる事になった」


「別れたんですか?」


「戦闘の事が理由で、それでいなくなったんだ」


「そうですか・・それは残念です」


「ああ。で、ご飯なんだが明日、体を洗った後でいいかな?」


「はい、お清めの来客もほとんどその前にいらっしゃいますから予定を開けておきます」

 時間厳守や食べて良い物とか宗教上の規則は特になさそう。


「よ~し、それじゃー迎えにくるから教会の聖堂で待っていてくれ」


「はい。分かりました。ところでですが、アルスさんも誘ってあげたらいかがでしょう?」


「もちろん今から誘いに行く。じゃあなセイラ」


「はい」


 俺は教会を出た。初料理屋でエスコートできるか不安だな。とりあえず元リーダーとしての面子はとれたか。


 みんながこっちをみて笑顔で返す、よかった誘って。


 教会を出てエリスが俺に言った。

「ポーションを補充しておいて」


「そうだった」

 浮かれていた、俺は大事なことを忘れていた。


「ライム、私が買うわ。先に行っててー」

 忙しそうな俺を見てモニカさんがアイテムショップに行く。


「あ、ありがとうございます。・・・・・いや待てよ、モニカさーん俺が買いますから」

 今日のダンジョンで一番動いたのはモニカさんだ、俺は返事を取り消そうとモニカさんを追いかけた。


「いいからー!」


「いいえ、買い物は使い走りの俺の方が合っています」


「前にいろいろあったんでしょ、そんな事考えなくていいわ」

 優しいモニカさんの気遣いに今回は甘えよう。モニカさんはゲームのリーダーだ。色々と察してくれたようだった。


「それじゃー、先に商会に行きます」

 俺たちは商会に向かった。


 料理屋は街の若い男がカタリナを誘った事で場所を知ったのだが、カタリナの食事の件はどうしようか。




 商会のアルスを訪ねると、今は手が離せないらしいと言われた。こんな遅くまで仕事をやっているのか?

 俺は受付に伝言を頼んで商会を出た。いつもアルスと一緒にいる受付の女性だから、必ず放してくれると思う。


 戻らないモニカさんが心配でアッキーが見に行くと、



 手を振るアッキー、どうやら来たようだ。


 俺たちは、アッキーの方へ歩いてモニカさんと合流した。 


「遅かったから心配しましたモニカさん」


「ごめん、ちょっとね。アイテムで気になる物があったから、値切り交渉をしていたの」


「そんな事、出来るんですか?」

 おばさんじゃあるまいし、ゲームではあったような気がするけどさ。


「ずーっと首を横に振って値切りに応じてくれなかった」


「売れるからでは?」

 人気商品ほど断る。


「違うわよ、街の人は値切りなんて滅多にしないから」


「それで・・」

 あんな長い間、首を振らせたのか、首振り人形だって限界がある。一体どんだけ値切ったんだモニカさん。最後に『粘り勝ち』という称賛の言葉をアイテムショップの商人に送りたい。


 ただ、それを以前エリスはやってのけた、宿屋でのこと。あの品物での交渉はすごかった、交渉相手は笑い人形になっていたから。それとも条件が良かったのか?


 今はお金に余裕があるからな。あれ、Goldが減っているぞ。

「モニカさん、なんかGoldが少なくなってないですか?」


「バレちゃった、昨日カタリナに少し持たせたのよ」


「そうですか」

 流石モニカさん。それなら俺も納得・安心できる。


 さて夕食を食べに酒場に行こうか。料理は多めに注文し、明日の食事分を確保した。ずっと気が抜けなかったがこれで一安心。


「エリス明日もダンジョンか?」


「そうだけど」


「そうよぉライム、そんなだるそうな顔しない」


「うん、そうだよな」

 こんな早いペースで戦闘だからな、カタリナもついていけないだろう。


「ヒーラーの話なんだが・・」


「何?」


「以前に、この街で探したがほとんど見つからなかった。おまけにダンジョンでは必要不可欠だろ。実戦より先にそれを探さないといけなくないか?」


「僕が探そうか」


「どうした?アッキー」


「忙しそうだから」


「それじゃアッキーに頼むか」


「うん」


 分業というやつだな。


 宿屋に行き、俺はすぐに寝ることにした。この疲れをとるには、いくら寝ても足りない気がする。






【エリスの守護、残り7日】


「コンコン」


 朝だ、目が覚めるとアッキーは既に起きていた。今日から朝、食事をとることになった。それで早起きになったかアッキーww。

 まあいい、アッキーと一緒にご飯を食べる。聞いていないが別に宿屋の中で食べてもいいかな。


「これハンバーガーみたいだな」


「うん、大きい」


 サンドパティと言ってパンの生地とペースト状にした肉が一枚、ほかツリーシードの葉が挟んである食べ物。それとシトラ水を飲む。朝食後、支度をして廊下で待つ。


 遅いので声をかけた。

「準備できましたかー」


「カチャ」

 ドアを開けたモニカさん。寝相が悪かったのか、モニカさんの毛が逆立っていた。そしてな・な・なんとエリスまでもが立っている、ちょっとだけだけど。ツリーで研いでも寝癖はどうにもならない二人はご機嫌斜め。


 昼食確保だけすればいいから、飲物だけどこかで調達しなければ。アイテムショップの隣で子供が飲物を売っていたのを思い出し、それを瓶に入れてもらう。

 すぐにフタコブからラクーダを引き取り、ダンジョンへ向かった。


 途中、Gold稼ぎのためにモンスターを倒す。そしてまた実戦が始まった、ポーションが減るたびに積極性がなくなり間合いをとった。出来れば明日にでもヒーラーを確保したい。


 砂を投げれば真似をして剣で受ければ棍棒や石斧で受けてと敵は戦いながら進化した。俺たちと同じ方法で、いとも容易く反撃する。すぐ覚えるのは戦いが好きだからだ。ただ倒して復活すせば、その学習もリセットされるから今の所問題はない。


 昼になったのでヤシの水を飲んで休憩した。全員の分をエリスが持つ。戦闘中使えないアイテムを持っていると何だか落ち着かないからな。


 スキルは使用禁止だから地形を利用して敵を倒した。地面を少し掘り、そこにモンスターをおびき寄せて足を落とし引っ掛ける。体勢が崩れた時に攻撃をすれば隙をつける。

 最初にダンジョンへ来た時に習った方法(隠れて不意打ち)と類似しているのでエリスに反対されるかと思ったが、地形利用は認めてもらえた。もちろん戦闘終了後はそれを埋めておく。どこを掘ったか覚えていられないし他の冒険者が(つまづ)いては危ないから。


 ポーションを切らすことなく、順調に戦闘は終わりダンジョンを出る。いつものように帰ろうとしたら森がざわついた。

 森に黒い影がある。戦闘はダンジョンで使い果たしたから、同じ戦力のモンスターと戦闘ができる体力は残っていない。


「タッタッ」


「足音!」


 他のギルドの冒険者達である。先に行かせ、俺たちはしばらくここでやり過ごした。


「ッグギァ~!」


「ギァアギァ!」


 モンスターの声が聞こえて木々の音がなくなった。 恐る恐る森に入るとそこにはモンスターが倒れていた。見えなかったが、黒いモンスターという注釈になった。

 メニューの履歴には、こう載っている。


 ≪キュラ 森に住まう邪悪な羽の生えたもの≫


 それともう一つ、


 ≪キラーバッド 森に住む妖魔、大きく黒い翼が特徴≫



 街に戻ると教会に向かう。

 太陽のような光球は二つとも既に落ちていた。


「あーっ、遅れてしまった~」

 早く行く予定だったが随分と遅れてしまった。


 教会の扉を開くと聖堂でセイラが待っていてお祈りを捧げていた。


「セイラー!ごめん、遅れてしまって」

 具体的な時間が決まっていたわけではないが俺たちが着いた頃は既に暗かった。武器屋やアイテムショップは終わっている。


 それまでずっとセイラを聖堂で待たせてしまった・・・。


「いえ、待っていません。それより遅れているからモンスターに襲われたのかと思って身を案じておりました」


「ごめんねセイラ。私の魔術で退治しようにも森だと死角が多いし、火で燃えてしまうから使えなかったのよ~」


「いいんです、さあ、清めの場でお体をお流し下さい」


「いいの?」


「はい」


「・・・」


「俺は先に洗う、お前も急げアッキー」


「うん」


 俺は、すぐに体を洗い着替えアルスを呼びに行った。



「モニカ、急ぎましょう」


「はい、それならエリスさんいつもの()()やって下さい」


「いつもの・」

「アクアウェーブ!!」


「バシャパシャザッパァーン!!」




「遅かったな、待ったぞぉライム」


「ごめんアルス、ちょっとダンジョンと支度に時間がかかってしまった」


「そうか、大変だな。俺も昨日忙しかったから一日違いだ。がはっはっは」

 アルスは気さくに許してくれる男だ。


「料理は酒場に行くのか?」


「それは行ってからのお楽しみです」


「楽しみか、ふ」


 少し遅れて体を洗い着替えて出てきたエリスとモニカ。


「これで全員揃ったので料理屋へ行きましょう」

 全員で料理屋に行く。


「エリスとモニカさんはセイラを頼みます」

 俺は体を触らないように二人に頼んだ。


 カタリナの両隣に二人付く。


「ここから階段を昇るわよ」


「うん」


「はいっ!」


「わかったわ」


 ここで俺達が背負ってもいいのだろうが他人の目からは良く映らないと思う。自分の足で歩けば、どこを歩いているか感じ取れるし、それも楽しみの一つとしてセイラに体験してほしいと思った。


「あっ」


「大丈夫?」

 二人が支える、後ろにはアッキーがいる。


「あ、わかったぞ。この先は・・」

 商会の仕事をしているアルス、街の店は粗方把握している。

 ・

 ・

 ・

「パタッ」

 店に着く、どこに着いたのか俺が音声ガイドとして説明する。


「料理屋パァティカに到着でーす」


「到着で~す」


「そんな名前の店があるんですね。私はずっと、ここに住んでいたのに知りませんでした」


「アッキーはドアを開けたまま、そこで人が来ないように見張って。アルスは先に中へお入り下さーい」


「うん」

「おう、じゃ中に入るぞ」


「ええっ!?」


「おお、先日のー」




「なんだ!?」


「それではセイラ、そのままお進み下さい」


 セイラはゆっくりと真っ直ぐ歩いた。

 隣にはエリスとモニカさん、後ろは俺だ、俺も初めての店である。


「中に入りました」

 少し声量を下げた、カタリナにだけ聞こえればいいから。


「いらっしゃいませ!」


「ようこそセイラさん!」

 何と、そこに席をとって待っていたカタリナがいた。テーブル横にⅦと書いてある。


「さあセイラ、右を見て進んで。前方は誰もいないから」


「ゆっくり」


「グゥウ」

「グギュゥ」


「ぷふっ」


「誰だ、お腹の音が鳴ったのは?」


「ライムさんですか?」


「俺だけか?」


「ぼ、ぼくも」


「アッキー、俺たち恰好つけすぎで笑われてるぞw」


 俺はセイラの後ろで椅子を引いた。

「ここで、止まって、椅子を引いています」


「そのまま左を向いてお座りください。足裏に椅子が当たりますので、そっと腰掛け下さい」


「はい」

 セイラがゆっくり腰を下ろす。


「それでは、少々お待ち下さい」


 俺はアルスの方へ行った。こういうのはあまりしたことがないが自分からの恩返しである。俺は丁寧な言葉で案内する。


 俺は椅子を引き、アルスの足裏に軽く当てた。

「アルスはこちらにお座り下さい、どうぞ」


「俺もかぁ」

 アルスが腰を下ろす。


「それじゃ俺たちも座ろうか。俺はアルスとセイラの間でいいか?」

 俺はみんなの方を見て聞くと、


「うん」

 良いみたいだ。カタリナ、アッキー、モニカさん、エリスは向かい合う側にいた。


「注文ね」


「どれにしようか?」

 壁に貼ってある注文書きを見る。紙はどこも希少だからメニュー表はなかった。


「セイラ・・」

 いつもの癖で言いかけてしまった、俺がセイラの目のかわりをやる。


「なんですかライムさん」


「セイラはトローリンでいいか?」

 注文書きの端にある料理を適当に挙げてみる。


「はい、ライムさんにお任せします」


「お・・・う」


「ライム、本当にそれでいいのか?」


「他にも注文するけど」


「それが・」


「それでいいんだ」

 俺がセイラに勧めた料理はサプライズだ。多少辛くても苦くても一興さ。


「そうか、わかった。なら俺はシードライスにしよう」


「私は~、ロックパイ」


 ・・・。


 そして注文した料理がテーブルに並んだ。

「なんだ、これぇ」

 モンスターの形をした肉とライスをまとめたものだった。


「なんですかー」

 セイラはフォークで確かめる。


「嫌な予感があたった。これじゃー、罰ゲームだぞ」


「どうしたんですかライムさん」

 セイラが俺に尋ねる。


「この料理、トロリンの形をしてるんだ」


「きゃぁあ」


「大丈夫、料理だから」


「こ、これが頭と足なんですかー」


「たぶんな」


「お前達、ダンジョンのモンスターが料理になる事は珍しくないぞ」

 アルスが言う。


「あははは」


「ひどいわねぇ~」


「みんなで分けて食べよう!」


「ええ~っ!?」


「それはライムが一人で全部食べきってよぉ」


 追加の料理も注文しトローリンを皆で食べた。外見の割に味はスパイシー&ジューシーで美味しい。


「はいセイラ、あ~ん」

 俺はフォークで口まで運んだ。


「もぐもぐ・・・美味しいです」

 セイラは笑顔で頬張り咀嚼する。


 食べながらダンジョンでの話をする。雨と一緒に落ちるモンスター、海のようなダンジョン、真珠のような階段がある事をメニューを開いて説明した。


「何色も連なった石があるんですか!」


「貝だ。貝は薄く丸い水の中の石のようなもの。それが魔術のような色をしているんだ。例えるなら教会の窓の色が一度に目に入ってくる感じだ」


「うわ~、羨ましい~。天からの光が差し込む洞窟なんて聞いたことがありません」


「それは、光が当たって初めて光るんだけどな」

 そう、普段は光が当たらない場所にある。


「光りが当たるまで光らない・・。何と慎ましやかなことでしょう」


「普段は白色で口を閉じているから当たっているかも」


 そして楽しい時間も終わりが来た。俺たちはアルス、セイラをそれぞれの場所まで送る。


「セイラまた一緒に出掛けよう」

「はいっ」


「アルス、何かあったら言ってほしい」

「おう、じゃあな」


 二人と別れる。


「カタリナ、驚いたぞー」


「そのために来たんですから」


「昨日、ポーション買っていたとき見かけてさぁ」

とモニカさん。


「またカタリナ、一緒にご飯を食べよう」


「ええ」


 アッキーも笑っていた。



 そして冒険しよう。


 ・・・いつか。




 宿屋にて、

「今日は楽しかったな」


「うん」


「ライム、浮かれてケガしないでよ」

 エリスが厳しい目でみる。


 俺は気を引き締めて、

「うん、わかった」

と答えた。


「ふふっ、まあまあエリスさん」


「あははっ」

 俺は笑ったがエリスは笑っていなかった。


 部屋を別れて寝床についた。


「おやすみ」

「おやすみ」

 食事でも映画でも毎月どこか行くと人生が楽しくなります。まあ全部お金がかかりますけどね(汗)要は何をするかです。皆さんは、いかかお過ごしでしょう?

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