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鱗と苔 3

 調査の結果、苔と鱗の違いが少し判明。罠に気をとられていたら苔の下から大きな花のモンスターが出現。全員に眠りと毒の胞子が降りかかる。必死に抵抗するライムたち。目を覚ませばモンスターは消え去っていた。さらに進むとアークピクシーがいた。だがその行動には不可解な点が。

「コホン」

 居場所を知られるかと思い咳を止めるアッキー、それともエリスとモニカさんに何か言ってくれるのか。


「エリスさん、ライムが囮になる作戦でいいんですね」


「本気かお前達、俺はリーダーだぞ?」


「そう。そしてこけたライムを狙うアークピクシーを、後ろからやっつけるの!」


「俺を犠牲にするのか!?」


「ふふ、違うわ。虚仮(こけ)にしているのよ」


「!?、コケコッコ馬鹿ですよーって意味?」


「いいえ、外見では内面の心まで判断できないってこと」


「マンドラゴラの世話をしているけど、あのピクシーは悪物だと言いたいんですか?」

 カタリナが顔を強張らせ尋ねる。


「そうよ」


「ふむふむ。それでエリスさん、私はどうすればいいんですか?」

 結局、モニカさんはエリスに頼る。


「モニカはアークピクシーが育てているマンドラゴラの駆除に来たと見せかけるため、陽動としてファイヤーボウを放つ、それで内面が知れるかもしれない。  

 ライムとアッキーは、それで怒ったアークピクシーの羽をタタッ斬る。カタリナは誰かが攻撃を受けたらすぐに回復、あなたは一番狙われやすいから視界に入らない位置に身を隠すこと」


「はい」


「それって私が囮になるんじゃー」

 モニカさんが自分の方を指さした。 


「いいから準備して」


「エリスさん、マンドラゴラを燃やすんですか?」


「ええ」


「気にしなかったら見せかけ(虚仮にしている)ってことよね」


「そしたら退却して、もう一度作戦を立て直す」


「そんな、見せかけなんて。アークピクシーがあの場から離れるってことは、マンドラゴラを守るためじゃないのか?」

 俺が希望的観測を立てたのは、エリスの返答を知りたいと思ったからだ。


「ライムさんの言っている通りです」


「どちらでもいいんじゃない。まだ、普通に戦って勝てないでしょ。だから虚を衝くしかないのよ」


「真実なら?」


「真実でも方法は変えない」


「厳しいな」

 普通の答えだ。本能の行動にしろ、ここでアークピクシーに肩入れはできない。俺たちと住人の命がかかっているんだからな。だが挑発すると逆に強くなる恐れがある。


「作戦は、羽を落とせばいいんだよな」


「それもやりすぎだと思います」

 カタリナは反対した。


「でもやらないと俺たちがやられるんだ」

 わかっているのか、こっちが死ぬんだ。


「二度と飛べなくなるのは、ピクシーにとって死んだも同然」


 死んだも同然か、


「む~」

 アッキーも甲乙つけられない。


「カタリナは変わらないわね」

 モニカさんが言う。


「・・ぁりません」

 カタリナが言葉を詰まらせる。アークピクシーが人を殺す事がある事を分かっているのだ。


「うん、あきらめよぅ・・」


「作戦を話すわ」

 全員で打ち合わせする。


「ぇ」

 反対するカタリナに対し全員の意見は一致、作戦決行。






「いくわよ!」

 モニカさんが、いつでも逃げれる体勢を作り魔術を詠唱する。


「射よ、突き刺す炎矢!」

「ファイヤーボウ!!」


 炎の矢が空を高速で飛んでいく。


「パ、シューーーッ!」

「ボッフッ!・・・パチパチパチ・・」


「命中!」

 見事、庭のマンドラゴラの花に命中、何株かに引火した。


「大切な花が燃えてる。苦しそぉ・・」

 花が苦しそうに曲がる。カタリナが顔をしかめた。


 これでもピクシーに使ってないんだぞ。


 急いでマンドラゴラの花に周りの砂をかけるピクシー、思ったより行動が素早い。


「隠れて」

 俺たちは、身を伏せて風景に混ざるよう隠れた。


 アークピクシーが羽を広げ、真っ直ぐな姿勢でこちらに飛んできた。


「気付かれた?」

 声を殺して話す。


「逃げて!熱の流れから探知している!」


「上!!」


 アークピクシーは俺たちの頭上にいた。

 上からは丸わかり、見るなり光る鞭を撓らせてきた。放物線が何重にも残像を残す。俺達は散らばって回避、運よくダメージゼロ。怒りで狂い、手元が震えて操れないようだ。さらに右手前に、左手前に上空を移動し、鞭で打つ。


「敵の真下に行って!」

 皆、エリスの指示に従う。


 散らばった全員が空中にいるピクシーの下に行く、ピクシーが下に鞭を撓らせる。


「鞭が目の前に来たら武器で返して!」


 範囲を限定した防御である。狭めることで反射神経を高められる。


「パシッ!ピシッ!!」


 アークピクシーの鞭は思うように振るえず、地面のコケを無駄に引っぺがすだけで終わった。冷静な判断力が欠けた状態では敵も失敗に終わるだけ。それがエリスの作戦なのだろうけど・・真実(マンドラゴラを育てる情がある)のピクシーだぞ、このモンスター。


「・・・!」


 それならと空中で回転し、鞭で打つアークピクシー。


「シャラン!!ヒュヒュッ!」


「ボバッ!」


「ギャァッ!!」

 空でアークピクシーの体に炎が燃え移る。


 横を見ると、モニカさんがファイヤーボウを放っていた。動きながら鞭を出すのは慣れていないのか、無理な姿勢が隙を生んだようだ。


 ピクシーのレオタードのような服が燃えた。背中から腰まで露わになる。ピクシーは人間と同じ顔つきで可愛いが蝶のような模様が入りグロテスクに見えた。肌も普通の人間と変わらないが、魔術で少し焼けたから背中の色香は感じられない。


「マンドラゴラまで走って!!」

 全員が走る、


 マンドラゴラのある胞子の出ない地面まで行かないと、眠りか毒に侵される。


 走りながら詠唱、もう一度ファイヤーボウを放つモニカさん。


「惜しい外れた!!」


「シュ ッ ッグジュッ!!」

 炎の矢は外したが身を翻してかわすアークピクシーはバランスを崩したまま地面に落ちた。


「はぁはぁ、急げぇ~!! 」


「うんっ、はぁはぁ!!」


 もう少し、


「アークピクシーが来るわ、みんな散らばって!!」


「はいっ!」


 鞭を振るう、光と同じ色なので見えにくい。

「シュルルッ、パシィーン!パシィーン!!」

「シュルルル、ヒュッ―」


「きゃぁぁっ!!」

 悲鳴を上げたのはエリス、予測不能な攻撃はかわせない。エリスのローブが部分的に破れ、血が飛ぶ。


「だ、大丈夫か!!」

 俺は焦った、エリスはこれまでダメージを喰らったことがほとんどない。


「ギィギィ、ギィイイイイーッ!!」

 地上に下り立つアークピクシー、訴えるような金切り声を出す。


「榮えん、燃え滾る火火!」

「ヒートバーニング!!」


 アークピクシーの足元に火がボボボッと現れ、高熱となり一気に大きくなった。


「グウゥゥウウッ!!」

 歯を向きだしにして立てつくアークピクシーは、跳んで退いた。


 エリス手出さないんじゃなかったっけ?鞭が当たって怒ったのか。


 アークピクシーが手を翳した。風が立つ、魔術か。


「気を付けて!」


「風が吹いています!」


「空から来る!!」

 さらに飛び立つアークピクシーは空を飛んで鞭を構えた。


 振るう!!

「シュラッ、シュパパパッ!!」


 アークピクシーの鞭をかわす、身を屈め、ひざの筋肉を動かして。右、左とこちらの動きが敵に読まれないように動き回る。


 今度は鞭に合わせ、風の魔術を使うアークピクシー。魔術は、風の牙が辺り一帯を回って発生!


「シュー!」

「ああ・」

 体を切る、


「スシュー!」

 ローブが切れる、


「パッ!!」

 アッキーの鎧が風から身を守った。


「シュシュッ、ドロッ」

「いたぁっ!!」

 風の牙に逆らい傷口が深くなったモニカ。ダメージを残し風の牙は消えた。


「鞭をかわし、風を切れ」

「ザッ!!キィン!ガィン!!」


 俺とアッキーは剣で風の牙を切った。前進しながら進行方向の風を切っていく。当てると風は刃物並みに切れ味のある音がする。


 アークピクシーがこちらに飛んで鞭を振る。


「接近戦は苦手かも!!」

 囲まれるのを嫌うのか、敵は距離をとって攻撃してくるのに気付いたエリス。


 また魔術を唱えるアークピクシー、なぜなら同じ感じの動きだから。


 アークピクシーは、モニカさんに魔術を唱える暇を与えないように攻撃の手を止めない。そして空中にいる。


「コケでこける作戦だ!アッキー。俺を狙った時にお前の斧で鞭をからめとれっ!!」

 とっさの思いつきだが、当初の作戦である。


「でも・・」


「そして地上に落としてくれ。攻撃は俺が必ずかわす!」


 全員で鞭から離れるように走り回る。


 慣れていない連携攻撃ほど危ないものはない。リスクとリターンを考えると、前者をとるべきっ!


【攻撃によるリスクとリターン】

 連携の場合 リスク:間違えて仲間にあたれば仲間が死ぬことがある。

       リターン:敵に当たれば仲間を守れる」


「個々の場合 リスク;リスクをとれず仲間がやられることがある。

       リターン:仲間を殺す危険性がない」


「リスクがあるからこそ強い、承知の上でやる」


「ダダダダダッ・・・」

「ズササーーーッ・・」

 俺は敵に背中を見せた。ここにコケはないが、わざとこけて見せた。アッキーはあっちを見て気づかないフリをする。そこにアークピクシーは鞭を撓らせ飛んできた。空中にいるが少し降りてきている。


「パシィッ!」

「ぐ!ぅぅうぅああっ!」

 最初の一撃に耐えてスキルのダッシュをした。後は頼むぞアッキー。


「ぁ!」

「スルスルスル!」

 ライムが攻撃を受けた状況になり焦るが、それでも作戦決行だ。鞭を斧を絡めとる。そして一気に斧を下に振り下ろした。

「ぐっ、ビィン!!」


 おかしな行動にアークピクシーが見入る!


「うぉ~っ!」

「ヒュ――ッ」

「―――ドサァッ!!!」

 アッキーが振り落とした斧から、鞭を通して遠心力が伝わりアークピクシーは顔から地面に落ちた!


「やめて!!」

 カタリナは叫んだ。



 アークピクシーはカタリナの次に俺を見た。顔が歪み、そのまま俺に突っ込んでくる。

 俺は剣を構えた。 鞭を引くピクシー、だがアッキーは斧を放さない。


「―――シュ」


「ブ!シュッ」


「ウギィィ、キィイ!!」


 俺の剣はピクシーの首元を突き刺していた。声が出ないアークピクシー。敵から見れば剣も点にしか見えなかったのかもしれない。それとも暗かったせいか・・。あまりに惨酷で悲しい戦いである。


「殺さないで!!」


 俺は急いで剣を引き抜く。

「ズッ・・」


「ア、ア、アア、ギギャ!!ゴホッ!!ホゴッツゥ・・」

 首を抑えて呻き声を上げるアークピクシー、血で喉が声が・・」


「・・・ッ・・・・ッ」


「ヒーリング!!」

 アークピクシーの首にロッドを当て必死に魔術を唱えるカタリナ。回復の緑の光がその部分を覆う。そしてアークピクシーは、楽になったのか目を細めた。


「死なないで」


「ヒーリング!!」


「キャ・」


「・・った?」

 カタリナは安心した。


「ギギッ、アァアアアアアアァ!!」

 ピクピクとしていた首の動きが血で塞がったのか止まり、目を開いたまま動かなくなっていった。動かなくなったが血は流れている。まるで生きているかのように動いて。

 ピクシーの手を先には花が咲いている庭があった。


「何で、回復したんじゃないのぉ?何で何でぇっ」


「ヒーリング!!」


「ヒーリング!!」

 何度もヒーリングを唱えるカタリナ。


「どうして・・。どうして皆、彼女を殺したんですかぁ?」


「ごめんカタリナ、羽根だけ斬るなんて、俺にはまだ出来なかった。剣を構えていたら勝手に当たってしまった。それに、それに殺さなければ俺たちが殺されていたんだぞ」


「カタリナ、ライムみたいに戦えないのならギルドから出ていきなさい!」


「えっ?エ リ ス さ ん」


「殺したくないのなら、どうして動きを止める攻撃とか魔術の一つも覚えないの?使わないの?ヒーラーに出来る事があるとか思わない?助けるのだって同じよ!殺したくないなら、あなたがやればよかったのよ!」


「だって・・・」


「・か」


 カタリナが顔を歪ませる。

「モニカさん私、お姉ちゃんを助けたくて・・」


「モンスターなんだから復活するだろ?」


「モンスターは、トロリンで確認したけどボスはまだ」


 エリスはじっとカタリナを見つめたままだった。一方カタリナは自分の不甲斐なさに居た堪れなくなり、アークピクシーの死んだ場所を見つめていた。ただ倒したアークピクシーの姿は既に消えていた。




「・」


「・・・どうしようか」


 ふと横を通り過ぎる大柄な奴、アッキーである。


「はい・・」

 アッキーが花を渡す、ピクシーが育てていたマンドラゴラの花である。一体どんな効力があって何に使うのか分からないがアイテムとしては希少だと思う。


「それは燃えたものの一部だから持ち帰ろう」

と俺がいうと、


「ええ、」

 カタリナは涙を流し答えた。


 アッキーは微笑んでいた。大事にしていたものを大事にすることが死んだ人に対する敬意なのだろう。エリスはずっと黙って見ていた。


 一本の木がある。大木というほどの大きさもないが人間の横幅二人分くらいの太さ。これは何の木か?俺は木を調べながら皆に話しかけた。


「今回は何もないぞ」


「ここであってるわよ」


「普通の木よねぇ、ココッ、コンコン」

 木を調べるモニカさん。


「アッキーも一緒に探さないか?」

 俺たち三人を尻目にアッキーとカタリナはマンドラゴラの庭を直していた。


「僕はここでいい」

 アッキーはマンドラゴラの庭の土を盛る、心は乙女か。


「マンドラゴラの花はいい香りがするな~」


「カタリナ、一応花には気をつけてくれ」


「はい」

 よかった。どうやら元気になったみたいだ。エリスと顔を合わせないようにしているんだろう。


 木を背に木の下にしゃがみ込む俺とモニカさん。

 エリスはフロートで上に登ったりして木の上を調べる。どうやら他へ続く道はないようだ。俺も見つからないので一度、休憩をとった。


「ねぇ」


「なんだアッキー」


「あった・」


「いきましょう!」

 エリスが立ちあがった。


「何が!?」


 マンドラゴラの庭近くに地下に続く隠し通路があった。


「アッキー、お前は天才だ!」


「アッキーが隠し通路を発見しました!」

 俺は叫んだ。


「よっ、この大将ー」


「良く見つけたわねえ、アッキー」


「やるじゃない」


 皆アッキーを褒め称えた。



「さて、ここを進めば六階層に着くわけだけど今回はここまでにしましょう。今日は遅いからここで休んで明日、街に戻りましょう」

とエリスが突然言う。


 夜も遅く、みんな体力を使い切っていた。おまけに負傷、ローブも破れ装備品も腐食している。


「それじゃー、五階層入り口まで戻りましょう。そこで一晩泊まるから」


「まだ動くのかよ」


「ええ」


「お前体力ないはずだよな」


「いいえ」


 俺達は来た道を戻った。モンスターがいない黒の鱗の道をうまく歩いて。話す気力すらなく黙々と俺たちは歩いた。


 五階層入り口に戻ってきた。


 何種類かのツリーナッツとサンドパン、水を夕食に食卓を囲む。三つの街の食料がほとんど手に入るのでサンサンドは便利である。


 階段の通路で眠り、体を休める。スプレッドクローズとキャメルタオルを使い寝具がわりにして。


「カタリナ、明日の朝、アークピクシー復活しているか見に行く?」

 エリスがカタリナに尋ねた。


「・・・はい」


 食後すぐに全員が眠っていった。

 ダンジョンに行くと時間の感覚がわかりずらくなります。外からの光が差し込む場所ならともかく、ここはねぇ。コケ→虚仮→←真実。

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