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第12話 ダンジョン5階層 鱗と苔

 ブレードシャークを倒し、ウンディーネの魔術で渦から逃げる。そしてクラーケンと戦闘。隙を見て逃げ出すライム一行は、貝殻の通路と通路を渡り五階層に入った。

【ダンジョン5階層 鱗と苔】


 真っ暗な洞窟を抜けると、そこに広がるのはただの平地。地形次第で冒険者をいくらでも苦しませることはできるのに岩すらない、あると言えば湿気の残る草のようなもの。

 それをカビと言えば悪く聞こえ、絨毯と言えば良く聞こえる。このフロアはほとんどがコケのある地面であった。

 中は光球に似た光源があるが、薄暗く感じた。また、目が霞むような黄色の光で嫌気がさした。


 コケをよく見てみると二種類ある。


 灰汁のある、

 鱗鱗鱗鱗鱗鱗鱗鱗鱗鱗鱗鱗鱗鱗鱗鱗鱗鱗鱗

と、


 趣がある

 苔苔苔苔苔苔苔苔苔苔苔苔苔苔苔苔苔苔苔

が、


地面にこんもりと。


 それも芸術的に模様としてとして混在している。両者のコケの違いは前者が変色した黒色で、後者が緑色。他にあると言えばそうだな後者に草?が生えるくらい。


「どうしよう?」

 休憩を除いて既に八時間以上、ダンジョンを進んできた。ここは明るいがそれに騙される俺ではない、体力から考えると今日はここまでだ。

 このフロアをフロートで飛んでいけば楽勝なんだろうけど、当然フロアボスがいるわけだから戦力(魔力)は温存しておきたいし、出来る限り動きたくない。俺は考えあぐねたので、皆に尋ねた。


「私は、植物をあまり踏み潰したくないです」

 カタリナは、ただ単にコケの上が滑るから歩きたくないようだ。


「でもその上を歩かないといけないだろ」


「そうですけど転んだら危険です」


「カタリナ、私が思うに目的は戦力を削ることよ。転んで戦力が減るのなら、道を選んで歩きましょう」


「まとめると危険だからコケの上を歩くのは止めるという結論になるが、結局は歩いてないから判断できない。そして動けない」


「歩いてみたらどう?」

 きっぱり言うエリス。


「特徴を知るには実験か、歩いてみるか」

 皆の意見は、滑らず歩きたいという解釈でいいだろうか。


「僕が先頭で行く」

 アッキーが自ら先頭を選んだ。


「おお、行ってくれるかアッキー。さすが戦士だ」

 俺は激励した。


 エリスがその間に入ってきて俺とアッキーを引き離した、そして言う。

「ライムがやりなさい」


「えー」


「僕、最後の方でいいよ」

 俺とエリスの硬直状態が続き、アッキーが遠慮した。


「仕方がない、俺がいくか」

 気を使わせてしまったなアッキーすまん。


 コケの上に一歩踏み出す。未踏の地の初めの一歩はこんなものか。踏み荒らされていない初めての感触。コケが湿気を含んでおり、その吸水感を足で感じとる。


「チャッ!」

 す、べ、ら ないな。


「すーはーすーはー」

 そして空気は美味いから大丈夫。毒のような臭いはない。


「大丈夫だと思う」


「大丈夫よー!」

 モニカさんが手を上げて後続のカタリナ、アッキー、エリスに合図を送る。エリスは背後からの奇襲に備えているのだろう。


 俺たちは苔を踏みしめRPGゲームさながら一列で歩いて行く。万が一、トラップが発動しても俺が犠牲になるだけだ、ふっ淋しい。

 丸みを帯びた石や、てかって滑りそうなコケは避けて歩く。踏んでも特に異常はなさそう。踏んだ後のコケは、潰れたことで放水した水に浸食した。

 一抹の不安はあったが順調に進み、踏んだ足跡のコケは小さな湿地帯から破壊地帯へと変わっていった。


「順調ですね」

 カタリナが穏やかに言う。


「はは・」

 アッキーが笑う。


「石、石があるわ!」 

とモニカさんが珍しがる。


 今更そんな石で転ぶ俺たちではない。


「もうそろそろ、普通に歩かないか?」

 罠はないと憶測だが答えた。


「本当にそう言える?」

 エリスが不安を煽る。


「自信は・・ない。このままで行く」

 石が不安要素になると進行不可能になるから言っただけだ。皆の視線が集まったので俺はエリスに従った。


 まず前方には石が立ち並んでいる、この石とコケを交互に歩くのはどうしても避けたい。だがそうすると前進した方から左右の道にいくことになる、前進したところに草と苔の混ざった道があるのを俺はこの目で確認済みだ。そうこの場合、進む先は未踏の地かつ怪しい土地だ。


[補足:後ろだと戻り道となる、敵が襲ってきた場合は安全が確認済みの道から逃げる]


 石が多いので怪しい、罠の可能性があった。


「モニカさん杖で突いてみて下さい」

 怖いのでモニカさんに頼む。


「いやよ、絶対これで突かないからっ」


「じゃーカタリナ、ロッドをだな」


「私も嫌ーですっ、ライムさんが剣でやって下さいっ」


「そうか」

 腰を低くし屈み、チョンチョンと剣で突く怖がり冒険者リーダーの俺は、惨めにも石を相手に苦戦している。


「何も起こらない、よし行こう!」


「ライムさん心配性です」

 カタリナが面白がって俺に声をかける。


 やはりここは怪しい、何もない。普通のダンジョンなら落とし穴や毒矢くらいあって当たり前だ。もし当たったら一貫のおわりになるんだが。

 モンスターがいかないから余計に考えてしまう。ゲームで『調べる』や『捨てる』などのコマンドがあるのはそのためだ。


「いいんだ、それが俺の方法。学生の頃のゲーム経験()をなめるなよ」


「一つ一つ剣で調べる経験()ねぇ?」


「ここまでやってるんだ。それで何か起きたなら俺も喜んで引き受けよう」


「さぁっすがぁリーダー!」

 手を合わせて称賛するモニカさん。


「お見事です」

 ぱちぱちと拍手するカタリナに、


「ありがと」

 頭を下げるアッキー。リアクション間違えてないか俺は死んでいない。


「・・」

 オロオロとしているエリス。どうした、いつもの表情や態度とは違うぞ。突然の爆発はお前でも助けられないのか?


 勢いで言ってしまった~!皆が尊敬の念で俺をみるので後に引けない。はぁはぁ、胸が苦しい、こんな息苦しくなるとは何とプレッシャーのかかる事を。俺は剣を片手に転ばぬ先の杖のように歩いた。


 エリスのオロオロが止まらない、俺の方が動揺で倒れそうだ。


 それでも俺たちは歩く。


 相変わらずエリスのオロオロが止まらない。オロオーロ、ふふふ。気がおかしくなってきた。


 まさかエリスが俺のリーダーとしての実力に焦っているのか・・。ここでヘルパーが離れることになるしな。もう少し俺がドジふみゃーよかったのか。尋ねてみようか俺どう?やれてるって。

『上出来よ、私以上の才能の持ち主だわ』なんて展開があるのか、でも態度はそれに近い、何かあるサプライズ的な事。ああっ、気づいてしまった~!

 爆弾・地雷・罠を仕掛けてあったって俺は何でもこいだよ。こっちはマニュアル人間だ、攻略本・試験・資格・ノウハウ・ハウツー本を読み漁ってやってたんだ、バイトだけど。


 ほーら何も起こらない。はっはっは、俺の考えすぎってやつだった。さあ不安は解消した思う存分、好きに暴れまわるぞー!


「わー!」


「わーわー!」


「ミジュミジュミジュ!」

 不気味な音、これを不気味音(ブキミネ)と名付けた。雨で水を吸ったポリ袋を踏むようにコケを潰していく。


「ミジュミジュミジュ!」

 ここは雨で水を吸ったビニール袋を踏む感じだ、コンビニのバイトを思い出す。


「ミジュミジュミジュ!」

 やはりどこを歩いてもそんなに、


「ツルッ!」


「ステンッ、ゴッ!!バタッ!」


「ああっ、いったぁ!なんだ、なんでこんなに滑るんだよぉ~、氷の上と同じじゃないか」


「それは罠じゃないわよ」


「馬鹿ねライム」


「お前たち文句ばっかりだろ!あんまりだよな、アッキィ~」


「なんだ、その目は!?」

 アッキーの足に縋りつき顔を見るとアッキーはこっちをガン見した。


「うわあああぁ~、仲間が仲間がいない~」


「ど、どうしちゃったのライム、早まらないで!」


「うあわあぁぁー!」

 俺はこの場にいたくなかった。だから走った。思い知れ、リーダーが先に行ってしまうことを。俺の有難味を噛みしめやがれー!


「バシャッ!」


「変なものでも食べたんですかね?」

 カタリナが言う。


 ギクッ!心当たりのあるモニカ。


「それは、幻覚・幻聴かもしれないわよー!!」

 とモニカはライムに教えるため叫んだ。


「ライムー!!」


 知るもんか、知るもんか、みんなどうにでもなれ。


「ラィムー!」


 うるさい、みんなで馬鹿にして。


 俺なんかどうでもいいんだろっ。コンビニ勤めでも、こけたことがあって・・。


「バシャバシャバシャバシャ!!」


「バシャバシュバシャ!!」


 それから200m位走った時、


「ガサッツ、ガガッツ」


「あれっ、何だ?」


 いつの間にかコケに草が混じっていた。そして草が足に絡まっている、ただの草に足が絡まっただけなのに動けない。


「止まったぞ」


「ちょ、ちょっとー、ライム!」

 みんな追いかけてきた。


「うわぁ~っ!」

 怖いが動けないぞ。


「どうしたのよ?」


「ライム!」


「だってみんな~っ」


「誤解よ!」


「それより何で止まってるの?」


「ああこれは草が絡まって」

 ここにはコケと草が混じり、どちらか見えにくいため注意しないといけない場所だった。


「みんな急いで草から出て!!」

 足に草が自ら倒れ込んできた。


「この草、生きてないか!」


「え、生きている?」


「巻き付かれています」


「モ、モンスターあぁ!」


 普通に生えている草が〆のように形作って何重にも巻きついてきた。その草は強固な鎖のようにジャラジャラと足を締め上げ、俺の反発力を奪う!

 俺のこれまでの用心は無意味だった。このまま罠がないと甘いことを考えていたからだ。歩いて注意力が落ちた頃、罠にはめるのがダンジョン。

 俺は草に剣の刃を押し当てた。何度も押引するが草から出るのは粉と音のみで切れない。


「!?」

 コケの周りに、葉に種を持つ草が生えているのを見つけた。その存在が周囲の景色と馴染んでいたから今まで気づかなかった。


「エリス、種を持つ草があるぞ!」


「本当ね」


「お前、目が良いんじゃないのか?」


「立ち位置が悪かったわ」


「先手必勝、倒しておくわね」

「ファイヤーボウ!」

 モニカさんが詠唱し魔術で種を持つ草を燃やす。


「シュボッ!」

 はずだった、手応えなく消えた。


「私がやるわ」


 エリスが言ってスティックを翳した時、突如、種のついた草が一斉に葉を揺らし俺たちの頭上に何かを飛ばした。


「何か飛んだ!」


「霧が漂っています!」

 広範囲で白い霧かゆっくりと上から舞い降りてくる。逃げても間に合わない。


「吸い込むと、おそらく状態異常に陥るわ!」


「おそらく正体は胞子です」

と賢いカタリナが見抜く。


「私に任せて」

 エリスが呪文を唱える。


「まとえ、魔術の防護布!」

「マジックバリア!!」

 エリスのスターステックから放つ紫の光が俺達の上の空で四つに分かれた。そこからオブラートのようなカーテンが俺達を包むように足元まで覆っていった。


「ここで使うのね」


 敵は予想以上に強いのか。


「ん?」

 紫の光で覆われたバリアの中に霧が落ちてきた。


「どうなってるんだ!?」


「え」


「おわっ!」


「物理攻撃に魔術防御では意味がない・・大失敗っ」


 失敗したエリスを裏目に、魔術壁の中に落ちてきた霧は立っていられない程迫っていた。


「ふーっ!ふーっ!ふーっ!」

 息を吹きかけて霧を浮かそうとすると薄くなるが次々と降りてくる。


「霧が薄くなったということは、風だエリス!!」


「その原始的行動、見習いたいものね」


 それ絶対思ってないだろwこの状況で面白いエリス。


「吹け、北風を我が胸に!」 

「ヘッドウィンド!!」


 風がエリスの前から吹いて、その霧を跡形なく消し去った。


 見れば正座で地面に膝をつき、形の見えない霧の境界に気をつけ魔術を唱えたエリス。その姿がアッキーにはどう映ったのか知らないが、じっと見つめていた。お前は何もしてないから、やっぱり後で先頭を頼もう。


 草が足を縛り、その周囲に生息する胞子を飛ばす草が毒のようなものを出す、これぞ連携の罠だな。


 小さな胞子を飛ばす草を見てエリスが言った。

「これも胞子ね」


「胞子?」


「この大きい胞子から小さい胞子を吹きつけて、私たちに状態異常を引き起こさせようとしたのね」


 まあ奇妙な植物の特殊攻撃は不明なものが多いと聞く。


「あそこに」

 アッキーの指さす手が震えている。見ると俺たちの足で踏んできた道に霧がかかっていた。


「あの胞子って俺たちの付けた足跡だけに発生しているのか?」


「そのようね」


「つまり罠は最初から張られていたというわけだ、それも後で発動する罠。おまけに罠に気づいても後戻りができないし立ち止まれない。そして罠が発動すると、どこにも逃げられないという巧妙なものが張られている。

 もし逃げられたとしても、ここで動けなくして殺すというカラクリなんだろうな」


「単純な罠を組み合わせ複雑化する、そして殺す。何て卑劣なことするの、主は」


「卑劣です。それでは、回復も間に合いません」


「うん」


「そうだ」


「エリス、後ろに戻れないなら、戦闘になったらどうすればいいんだ?」


「胞子は避けながら戦わないといけない」


「わかったけど・・」


「さっきエリスさんがやったやつよ。風を吹かせればいいんじゃない!?」


「風は最後の手段。その魔力の消費と、動く力が要求される。作戦は私に頼らないで自分たちで練りなさい」


 二人目を合わすモニカとカタリナ、


「お願いします」

 モニカさんはエリスの手を握る。


「一緒に考えて下さい、エリスさん」

 カタリナも真似をする。肩に手を乗せおねだりする。それで動けないがな。


「・・・」

 アッキーがエリスの方を見た。


 おっ、お前も行く気か?やめておけ、ぶっ飛ばされるから。ほら睨みつけただろ、体を触ろうたってそうはいかんぞ、悪事は神様が見てる。


「ねえねえ~」


「協力を頼む」

 俺は頭を下げた。


 アッキーも。




 風が止んでみんな黙って、一斉に歩き始めた。早くしないと罠が発動するのと口から毒が入りそうだから。


「次は、地面を凍らせるか、剥ぐってのはどう?」


「それ、やってみよう!モニカさん、凍る魔術教えてもらって下さい!」

 モニカさんは攻撃魔術なら何でもできるはず。


「もちろん」


「それなら私たちとボスが立っている場所だけ固めるのはどうでしょうか?」


「それだと胞子の攻撃を受けるわ」


「そこは踏みません」


 踏まずに、どうやって?まあ後で話そう。


「ねぇ」

 アッキーが小さく言った。


「どうしたアッキー?」


「コケの調査はどうなったの?」


「コケ?」


「それを忘れていたな」

 残された手だ、コケ調査次第で戦闘方法が変わる。



「情報不足だったわね」

 エリスも同意見。


 その調査のついでに、俺たちはフロアを進んでいく。

 ※鱗はコケラ(動物の細胞)、苔はコケ(植物の細胞)。別々の物。 

 苔が生えている湿地帯は海の様。まるで【胞子を飛ばす笠のある植物】が【神秘的に漂う傘を差したクラゲ】の様。実際は胞子を下に落とすだけかもしれませんが、このストーリーでは空に放ちます。

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