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個性的な皆とシーレース 3

 ボートを漕いで移動する。クリスタルサンゴを見つけ、ポイズンフィッシュに毒される。しかしカタリナがアントドートを覚え治癒一命をとりとめる、只今ブレードシャークと戦闘中!

 エリスたちは戦闘が終わったので、こちらにボートを寄せた。


「アイスウォール、氷の壁を作る魔術よ。敵の目の前に氷の壁を作り衝突させたの、氷が華のように砕けて水面に落ち逃げ道を塞いだ。あなたの世界なら流氷か氷塊に座礁した鯨や船と同じ状態かな」


「座礁したブレードシャークか、敵はお手上げだな」


「仮に聴覚か超音波、視覚で前方を把握したとしても、急な地形変化に対応できない。氷塊にぶつかって少し崩れた時にあなたのサンダーアーク剣が刺さったから」


「止まり倒せたか、剣で一撃ってどんな剣だよ」


「魔術剣。雷狐が剣にのって電弧を帯びた剣」


「エリスは俺にだけ手加減ないよな、そんなヤバイ剣で俺まで感電しかかったんだぞ」


「それ以外に、今のあなたがどうやって太刀打ちするの?それに氷って純度にもよるけど電気はあまり通さない」


「そうなんだ・・。てっきり俺は通すと勘違いしていた」

 エリスは、物理の知識もあるのか。


「悪かった」


「聞こえない」


「悪かった!!」


 他三人は気を遣って見ないようにしていた。


 それから移動で体力を使ったので、一時休憩をとる。




 空が暗くなる前に陸地に着きたいが、腕が痛いのでオールが持てない。

 いつ移動を再開しようか悩んでいると、


「あれ見て・・・何か浮いてる!?」

 モニカさんが何かを発見した。


「どこだ!」

 暗いせいかと思うと、


 一難去ってまた一難、


「水面に渦!!」

 目が良いエリス。


「どこだよ!!」

「えっ、えっ!!」


「ボートの周り一面に何個も出来てる!このボートも一緒に回っているわー!!」


「きゃあ、本当だ!」

「うわわーああ!」



「モニカさん、私吐き気が・・・」


「あたしも、うぷっ」


「何だこれ、すげぇ回ってる」


「んご、んぐぐぐ、っ、うっぷ・・」


「二艘とも同じ渦に吸い込まれて」

 喉を押さえ嘔吐を止め、オールで漕いで逃げようとするが回転する渦に巻き込まれる。


「ぐあっ!!がぁああーっ!!」

 眩暈、吐き気、頭痛、もう気持ち悪くて訳が分からない!


「ぐうっ、ぅっぅぅぅぅう!!」


「戻れ、静寂な流れに!」

「フローリバース!!」


 回転が止まっていく、へはは、やったぁ・・。


 渦の中心に見えるのは魔術の精霊か?半透明か青の、水に溶けるような姿の踊り子が渦巻くように泳いでいた、結構可愛い。


「気づいたライム?あれはウンディーネ」


「あのウンディーネか?」

 ゲームと同じ呼び名だった。


「ミズ!」


「おお、返事した」


「カタリナは見えてる?」


「みえません」


「他は?」


 他、皆は見えなかったようだ。まさか俺だけとは、俺は魔術の際もありそうだと思った。




「魔術を詠唱する時は精霊や神の言霊を呼び出して魔術を使うの。この世界では精霊や神の名前も一緒に見えるわ。その主な精霊は四大精霊ね。水はウンディーネ、風はシルフ、火ならサラマンダー、土だとノームと言ったように」


 エリスは俺たちに説明してくれた。


「はい」

 モニカさんが真剣に話を聞く。


「右回転の渦だったから左回転の渦をぶつけ相殺した。それで正解よ。渦の中でもウンディーネは問題ない、そうよねウンディーネ!!」


「ハハハ、ソウネワタシハタノシイワ、デモココノミズハスコシセイシツガカワッテル。コンナニアワガナクテ、オモイノハヒサシブリ」



「泡って?」


「泡は泡よ、泡沫とか気泡とか色んな泡があるの、その泡玉で遊ぶのが好きなの」


「ふ~ん」


「ンン*」

 水面からウンディーネが俺を見た。


「シタニマダイルワ」


「マダ?」


「モンスターよ」


「よし、ならこの剣で」


「使わないでね。まだ雷の効果が残っているかもしれないから」


 ウンディーネが俺を見た。


「冗談だよ。何だその手は、俺に魔術使う気だっただろ」


「エリス、お前ウンディーネと仲がいいよな。もしかして友達なのか?」


「ソウヨ」

 ウンディーネが俺を見る。


「俺はエリスに聞いたんだけど・・」


「ジョウダンヨ」

 といって水の中に消えていった。


「ほら渦が完全に消えたでしょ、敵がいなくなったわ」

 消えるとモンスターたちが、いない証拠らしい。


 俺はエリスはウンディーネと仲が良いから相当な腕の大魔法使いであることが分かった。あいつは精霊と会話する、そこまで心を開くとは・・。


「あなたが面白いみたいよ」


「なんだ、面白いって。褒めても何もあげないぞ」

 これは大好物でも用意しておかないとな。きっと好かれて・・ふふふ。


 渦はなくなって、海面は元の流れを取り戻していった。俺たちはボートを漕いだ。筋肉痛のせいか脇や背骨が痛い。ここで立ち止まるとモンスターがくるので先を急ごう。



「つらいな」


「うん」


「ダメっ、頭がまだぐるぐるしてるっ!」

 前方で目を瞑って、凭れかかるモニカさん。


「いいから漕いで」


「私も気持ち悪いです」


「貧弱ね」


「またブレードシャークがやってくるわ、あっちのボートにモンスターの血がついているから」


「うぁぁーっ、エリスさん助けてー!」

 モンスターばっかりで、脅迫概念に襲われるモニカ。




 エリスがボートの進行方向を少しずらした。ここからは、前から後ろへ水が流れている、それに逆らうよう垂直に突き進む。


「海底のクリスタルサンゴがいなくなったわ!」


「もしかしてモンスターが食った・・のかも」


「ポイズンフィッシュもいませんねー!」


「食べられたかー!?」


 周囲の景色は相変わらずだが、水中の景色は変化していた。


「アッキー、ボートを三人の後ろにつけよう。ぶつからないよう注意して」


「うん」


 流れが強い。俺たちはボートを一列にして空気・水流の抵抗を減らした。




 前方へ進む。


「バサバサッ」

 前を行く女たちのローブが風に靡く。見えそうで見えない&めくれそうでめくれないローブのチラリズムは、生き物のようにうねうねしていた。どうやら風にも味方がいるようだ。


「おまえかシルフ・・・」

 俺は小声で言った。姿は見えないが。


 アッキーは気づいていない、機械のようにボートを漕ぐ。真面目で頑張っているから声をかけないでおこう。


 俺の視線に気付くかとエリスを見ていると黄昏れた目で遠くを見ていた、時間にして午後の六時頃だと思う。アッキーの重さも考慮できたし、もう少ししたら女三人とボートの位置を変わろうと思う。


 風と水流の抵抗ゼロでボートが速くなった、しかし女たちの『ローブの靡き』と『ボートの動き』も止まった。

 俺たちは、すぐに三人の異変に気付いたのでボートを横につけた。



 三人の視線が一か所に集まる。俺とアッキーもそこを見た。


「あの岩の洞窟の奥に次へ進むための通路があるようね。タコとイカを合わせたようなフロアボスが見張っているわ、もう少し近寄りましょう」


「ボスか、間違いない。それにしてもあんな気持ち悪い生物がこの世にいるのかよ、まるでクラーケンだぞ」


 メニューを開く。やはり!

 ≪クラーケン 頭と口が一つに足が十本生えている巨大モンスター≫


「あぁぁぁ・・・」

 気分が沈むアッキー、まだ水に沈んでないのにw。


「うえっ、気持ち悪いです。何か少し臭いませんか?」


「カタリナ、私も気付いたわ、あの生ゴミみたいな臭いでしょ」


「はい、鼻がツーンとします」


「臭気に気を付けて、臭いで意識を失うから」


「そんな臭いのか?」


「だからフロアボスなの」


 気絶なんて高濃度の臭気、嗅いだ試しがないから恐すぎて近寄れないぞ、あと数mでその距離になる。


「エリスさん、強さはどれくらいあります?」


「そうね、水上では私が手を貸して互角、水中は相手が遥かに強いくらいよ」


「そんなの負けじゃないっ。いいわ、ここは私がやる。タコだかイカだか知らないけど弱点は炎と見た!」

 ボートで仁王立ちのモニカさん。そりゃ火魔術が得意なあなたは強気でいられますよ。


 まだボスは気づいていない、これは千載一遇のチャンス!


「さあクラーケンを丸焼きにしてあげる!!」


「飛べ、怒り怒る炎の球!」

「ファイアボール!!」


「ボール」

 俺も何か口ずさんでいた。


「ボフッ!シュッツ!!」


 標敵はクラーケン。大きさからこちらの命中率は高い。かつ敵の回避率は低いはずだ。


「ばちっ、じゅわああああー。キュギュギュグワアガガァ~!!」

 ファイアボール的中!!


 当たった!


「やったわぁ!!」


「よっしゃー!!」


「楽勝ね」


 鳴き声などではない。柔らかな体の表面が萎み固くなったことで、押し出された水分が声のように音を立てたのだ。その火炎球後、敵の当たった部分はどす黒くなっていた。神経が通っているのか痛みからか足がうねる。さらに吸盤が開いたり閉じたり体で呼吸をして調節している姿が生々しく余計気持ち悪かった。



「おっ?」

 クラーケンが足を広げたぞ。じっとこちらを見つめ、漏斗を尖らせたまま水中へ沈んでいく。何か仕掛けてくる気だ!


「水中へ潜ったわ!!」


「ああ!!」


「もしボートが手に掴まれたらすぐに攻撃する!」


「ザッパーン!!」

 足を束ね鉄砲の球のように空へ飛んだ。空で足を広げるクラーケン。


「一旦、引くか!?」


「こちらに落ちてくる!!洞窟へボートを漕いでぇー!!」

 エリスが怒鳴る。


「クラーケン、クラーケン、クラーケン、クラーケン!!」

「クラーケン、クラーケン、クラーケン、クラーケン!!」


 俺たちは洞窟へ全速力でボートを漕いだ、その間十秒。


「ドッ、バサァアアアアアーン!!」

 後ろにクラーケンが落下した、水で出来た巨大な木のような水飛沫が立つ!



「いけない!!」

 波で、ボートが進まない!


「大丈夫、次で行く!!」


 またクラーケンは海に潜り、足を束ね空へ飛んだ。潜りに十秒、浮上に十秒、落下に七秒、タイムリミットは二十七秒。


 さっきのクラーケンが落下した波立ちを背に利用しボートを漕ぐ、加速するボート。


「ぜえぜぇ、逃げろ、逃げろ、逃げろ、逃げろ、逃げろ、逃げろ!!」


「はあはあ、逃げる、逃げる、逃げる、逃げる、逃げる、逃げる!!」



「次は軌道修正をかけるだろうから、一気に渡りきるぞぉお~!!」


「ブッツ、ブブッツ!!」


「パシャパシャパチャン!!」


「うおおおおおおっ!」

「うああっ!」


 水面を漂う黒いもの、口から泡か液を飛ばしたようだ。


「うりゃああああああーっ!!」


「ああーあああああああ!!」


 構わず突き進む!


「はぁー、あああ!!」


「は、あわああっ!!」


「アレハアワジャナイサン・・」






「着いたぁ!」


「間に合った!」


 洞窟の入り口に入ると、モニカは速度を落とした。


「はあはあはあはあはあはあ」


「うおっ、ごほっごほっ、はあっはあっはあっ、ふうふう~」


「あははぁはぁはぁ、やったわー」

「ええ、はあはあはは~」

「はぁはぁはぁ」


「やったぁ、はっはぁあ」


「よっしゃーいけたぞ」


「はぁ、逃げるが価値です」


「ははぁは」


「はぁ~、水面に黒い泡が漂っていました」

 カタリナも気づいていた。


「っ酸よ。あと臭気も一緒に飛ばしたわ。意識が失いそうになったもの」


「俺は普通に呼吸していたけど何ともないぞ。全力でボート漕いだから酸素不足でさー」


「ライムさん、それは泡で酸素不足になったからですよー」

とカタリナが言う。


「それと、水に落ちて臭い成分が溶けたから害がなかった。だから後列のライム達は臭わなかったんだと思う」


「なるほどな」


 クリスタルサンゴやポイズンフィッシュがいないのは、あの墨のせいかもしれない。


 前方に明かりがついた、モニカさんが松明に火を灯したようだ。


「それでも倒さないで攻略できるって私たちには良いフロアじゃない」


「悪いフロアだ」


「コホン、生きてるから攻略はまだよ」


「えーっ、そうだったぁー。帰りまたいるんだ」


「余計、攻略不可にしたのかも」


「ところで、クラーケンって空を飛んだ?」


「飛ぶんだろう」


「腰が引けてるわよライム」


「リーダーがだらしない」

 モニカがおちょくる。


「ふふふ」

 とカタリナは上品に笑う。


「ふふっ」


「おいアッキーまで、何がおかしいんだ?」


「えっ、いや」


「リーダーお疲れです」


「ライム、お疲れ!」


「ううん、そうかぁ」

 何か騙された気もするけど、まぁいいや。




 俺たちはボートを漕ぎ続けていた、まだ安心できないから。


「はぁはぁ、疲れたー」


「アッキー、少し痩せろ、ははは進まないぞw」

 俺の腕が痛いからだけど。


「ごめん」

 アッキーは汗が滝のように出ていた。


「あれってさあ」

 アッキーの疑問、


「どうしたの?」

 エリスが聞くと


 アッキーは顔を赤くして

「いい」

 とそれ以上言えなくなった。


「どうしたんだアッキー?」

 俺はアッキーの恥ずかしい質問に心当たりがあった。


「アッキーがボート漕ぎ過ぎて火照ってしまったから、俺達ちょっと休んで休憩するー!」

 俺達はボートを漕ぐのをやめ、皆と距離をとった。



「あれって、体液だろ」

 あれ強烈な臭いだったからな。


「いやっ」


「あーだんまりか、照れるな童貞」 


「・・・」

 沈黙のアッキー、


「ドーシテイ」

 ダメか、笑っても怒ってもくれない。


 そしてアッキーはこちらを見なくなった。言いたくないのならそれでいい、俺はボートを漕ぎ、三人にボートを寄せた。



 オールで確かめながら浅瀬の前でボートを止める。


「はい、エリスさん」

 カタリナがエリスの手をとる。


「ありがとう」


「カタリナ、エリスにそんなに気を遣わなくてもいいんだぞ」


「エリスさんが魔術や神経を使っているのに私は何もしていません。何かお手伝いできればと思ってです」


 水を差したか?俺も、それに助けられている。


 俺もアッキーに手を貸すか?


 アッキーはボートを降りていた。しかも転んでも支えられない。


 帰りも使うのでボート二艘を洞窟内の地面に上げた。


 松明を前方に近づける。すると奥の天井や壁の所々虹色の光沢を帯びる白い道があった。


「これ全て貝殻?」


「純白~!」


「ぉぅ」


「はぁ~っ」


「エリスさん見てください、私たち真珠みたいな場所を動き回っています」


「ふふっ、寝そべってみたらカタリナ」


「あんな醜いモンスターが、こんな宝物のような場所を守るってまさに冒険です」


「真珠がないのならクラーケンと戦う意味ないだろ」


「私たちが真珠になればいいんです」

 二枚舌のカタリナ。


「私なんてファイアボール当てたから恨まれているわ、きっと」


「忘れてますよ」

 天然なカタリナ。


「あの腕で絞められたら絶対死ぬ~」

 貝に挟まれることは気にならないモニカさん。


 真っ直ぐ進むと階段がある。これもまた貝殻で積み重なって段差になっていた。踏んでいる外側は白い階段だが、重なりからはみ出した部分の内側が松明の灯りに照らされ虹色の光沢を放つ。


「行くわよ」


「うわっ、ととと」


「はいっ」


「うんっ」

 大柄だが器用に上る。


「っと」


 俺とモニカさんが松明を持っている。モニカさんが先頭の方を行ったので、俺は最後を行くことにした。階段はどうやら岩の表面に貝柄がくっついたようだ、崩れ落ちる心配はなさそう。


 松明の灯りがあっても何か暗い・


 ジグザグした不安定な階段を上っている途中、


「うわわわわっ、滑る~ぅ」

「カカカカカカカッ!!」

 二段分ほど滑ってモニカさんが落ちた。


「ツー――」

「カッカッ―――」

「ツー、カッカッ――――」


 上っては滑って止まる、上っては戻り安定するところに収まる、その繰り返しである。


「きゃっ」


「ガッ!ペタ!ス―――」


「大丈夫?」

 ゆっくりと歩いていたエリスが声をかける。


「ったぁ~」

 倒れかけた体を、手で支えたカタリナは貝殻で手を切ってしまった。


「ビリッ!ビチチチチチッ!!」

 エリスが貝殻で、スプレッドクローズを切る。そしてカタリナの手を縛った。


「これで大丈夫」


「ありがとうございます、エリスさん!」


「気を付けて」

 階段の上を目指して俺たちは歩く。



 階段の上に着くと真っ暗な穴が見え、先は行き止まり。皆がどこかへ消えたかと思うと通路は横に続いていた。照らしてもよく見えないので手探りだった。


 ぷにょ。


「きゃっ、バシッ!!」


「痛っ!!」

 誰かに顔を平手打ちされた。


「悪い、ぶつかった」


「僕だよ」


「アッキーか」

 期待したわけじゃない、嘘じゃない。ぷにょがアッキーなら何で俺は平手打ちされるんだ・・!?

 クラーケンは、この物語ではタコとイカが混ざった存在です。しかも巨大生物シリーズの。

 タイトルのシーレースはシームレス(継ぎ目のない状態)とかけた。ボートを休む暇なく漕がないと流されるので。フロア内は壁が見えず、端に行くと外へ落ちる罠有り。

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