抜け出せない檻 2
スケモンことライムです。三階層に到着。するなりパタパタ音とスライムとお着替えで一悶着。着替えなんて、ただの装備品の脱着だろ。それで一部分だモン!
「服も乾いたことだし、ここで朝昼食を含んだ休憩をとりましょう。それまでに完全に服を乾かし体を温める。一応、言っておくけど休んだ時間の分だけ不利になると思ってよ」
「はーい」
みんな返事をする。休んで遅れるが急いで死んだら終わりだからな。
「はい」
アッキーの赤くなった顔は青くなっていた。体調の変化であろうか。
朝昼食という安堵の言葉を聞いて、俺とアッキーは忘れていた食事の事を思い出した。
生存することにおいて“戦闘“と”空腹“を秤にかけると前者に重きを置く。食べるのは戦闘後で十分だ。
しかし、三階層にきてから状況が一変した。状況が変われば比重も変わる。ここで重要度が高い事はご飯に変わった。
このままでは、いくらステータスで状態が良かったとしても体調を崩してしまう。何もかもを数値ではかること等できない。感覚を研ぎ澄まし感じとる。
体にきちんと働いてもらうためには栄養が必要だ。そのための食事はきちんと摂取しなければならない。
朝昼食はバランスを考えて用意してあった。サンドライスと干したシイラカンス、ミントティーの三つである。俺は必要な栄養とエネルギーが摂取できる献立を考えた。
みんなで暖を囲んで食事する。俺は顔を見比べながら皆の体調に気を配った。アッキーは顔色がだいぶ良くなって回復している。
こちらを見ないエリスは考え深げに、遠くを見つめていた。
その頃、このフロアの各地では様々な事が起こっていた。
多くのスライムが住処としている大木の隣の窪地で、ライムから逃げたスライムが大急ぎで地図を探していた。ここではスライムたちが自由気ままに昼寝していた。
色々な色のスライムたちは、いつもと変わりなし。
「地図、地図はどこだぁ?大丈夫みんな昼寝している」
「スラスラスラスラ」
「スララーラ」
「ススススラ」
マッダァたちは沼地の中で何者かの気配を悟っていた。
「マッダァージャハハ!」
「ジャジャジャジャ」
「ジャユヒ」
「マッダジャジャ」
「マッ」
バークバッドたちは洞窟の中で、音を聞いていた。
「キバキキキー!」
「キキッバ」
「キキ、キキキバ、キキキーバ」
「キキキ」
それと、
「・・・」
淀んだ吐息がいくつも上がっていた。
こうして三階層のモンスターたちが、一斉に誰かの侵入に気づいた。
「あ~あー、こうなっちゃうんだったらいっぱい美味しいもの食べとくんだった~!」
モニカが仰向けになって不満を言う。
「モニカさん、寝るとローブに草の染みができるかもしれませんよ」
「いーのよ、こうやってグダァーっとするとするから緊張もほぐれるんでしょー。そういうライムはパンツ覗き込んでるんじゃない?」
「違いますよ、パンツなんて見たって腹の足しになりませんから。戻れないにして食べ物や料理で美味しいのも見つかるかもしれませんし、もっと探しましょう」
「そうだといいけど、何かほとんど素材の味だけっていうか」
「モニカは食べ物で何か好きなものはあるの?」
エリスがモニカに尋ねる。
「わ、私?私はスパゲッティという麺にソースをかけた物が大好物なんですっ」
「美味しい?」
「美味しいですよ。あの素っけない小麦の麺に、味付けされたミートソースや塩辛いタラコが絡んでコクを増すのがなんとも、うまっ」
「幸せになれる食べ物、そういった幸せのある世界ね」
食べ物で幸せとか思えない世界か。スパゲティはソースに多くの調味料を使っているから食材が少ないこの世界では、作れないな。
「みんなも私みたいに余計な力を一度抜いたらどう?気持ちが落ち着くし軽くなるわぁー」
アッキーが仰向けになった。
「ボスッ!ぉぅっ」
「一番大きな体だから疲れますよね。アッキーさん斧重いです?」
「えっ、ううん」
「重いのかと思いました。斧大きすぎますよね」
「何とか大丈夫」
「斧や鎧(装備品)は体力の消耗が激しい持ち物だと思います。体重と一緒に支えなきゃ-いけないんですから」
「それは問題ない。この世界では職種に適した体が与えられるの。そして装備品はそれに準じて作られているから」
とエリスが説明する。
「でもでも先ほど見たエリスさんの筋肉だったら、そのステックではなく剣やナイフも扱えませんか?」
「確かに装備できるかもしれないけど言わないでっ#」
「あぁ、すみません。自分の体型と違い、筋肉があって美しかったので」
「いいわよ、そんなの」
俺とアッキーは何も言わなかった。そんな話をしていたんだな。そうは言って女も考えることは俺たちと同じじゃないか。
「カタリナ、体格は気にしないで職種に合った装備品を扱えればいいのよ」
「はいぃ」
少しだが自信を無くしているカタリナ。
魔法使いがナイトの肉体なら日頃の丹念の賜物だろう。エリスは鍛えているのか?そして初心者に何回付き添い案内を手助けしているのか?今でも俺の中ではエリスの職業を魔法使い&ヘルパーだった。
「なあエリス、お前はなんで俺についているんだ?」
「それは言えません」
「俺はどの職種を選んでも、お前の守護は受けられたのか?」
「そうよ」
「もっと教えてほしい。俺と同じ世界のプレイヤーは他にいないのか?」
「私はカタリナの存在を知らなかった。だから他は分からないわ」
「・・・。俺はお前に誘われてここに来たのか?それともこのダンジョンの主に無理やり連れてこられたのか?」
「どちらでもない。来たのはあなたの意思よ」
また同じ答えにあたる。だがエリスは俺が来たこと、俺の存在を知っていた。
「エリスはこの世界の住人なのか?」
「それは・・」
「ガザッ!」
「ザサッ、ザザザザァ!」
「モンスター!」
エリスが言う。
「誤魔化す気か?」
さあどうするエリス。
「ちょっと様子が変よライム」
モニカが話を止める。
「スラ、ハラァ」
何やら話している?話はひとまず中断、一応スライムの鳴き声に耳を傾けた。
「僕はスライム」
「喋ってるー!!」
なんだこいつ、俺たちと同じ言葉を話している。聞き取れるから人間語で間違いない。
「言葉だー!」
「あぁ、ぁぁぁ」
「本当にモンスターですか?」
怪しむカタリナ、ここで玩具はないから。
「スライムだよな。どうしたんだ?」
「お願いがあるんだ。僕と仲間を一緒に探してー」
「ちょっと、待てよ。どうしてそうなるのか説明してほしい」
「僕はここに連れてこられた。そして仲間と離ればなれにされた、仲間はこの中にいる」
「ごめんなさい、スラちゃん。私たち冒険者なの、だから忙しいのよ」
「僕には地図がある。これをあげるから一緒に探してほしい」
次の階層は自分で探せるし、寄り道はしたくないな。
「せっかくだけど・」
「コッ」
エリスが俺の背中にステックを当て言葉を止めた。
「協力しましょう」
そう言うエリスはスライムを掴んだ。とりあえず持って見たようである。
「・・・・・」
どうやら可愛いようだ、人形のように
あっ、手に粘々ついた。おっ、おろすのか。そうだよな、汚れるもんな。
「ベチャっ」
「おい!エリスぬじるなよ」
エリスがジト目で俺をみる。そんな目お前らしくないっ!
「わかったよ、協力しよう!」
「よかった、僕の名前はレッドスラ。みんなにはこの愛称で親しまれてる。僕はライムさんの背中に隠れますので何かあったら呼んで下さい!」
「せっかく服が乾いたんだぞ」
「大丈夫ですよ。ちょっとベチョっとするだけで」
「嫌~」
罰ゲームじゃないんだから。
「・・・・」
女三人ともジト目。スライムの目を見習えっ!冒険者と戦ってボロクソやられてもそんな目つき一度もした事ないだろー!
「いいさ、やるよぉ!」
お前たちは、自分たちさえ被害がなければ良いんだもんな。
「ぷにょん、ピチャ!」
「ゾワワワワ~」
スライムが俺の背中に入り冷たい粘り気が背中にベタつく。
「おいレッドスラ、もっとスマートにくっつけないのか?原型を留められなくなるぞ、なんなら俺の方に防具のようにくっつくとかさ」
「僕は大丈夫、背中にベッタリつきます」
「名前はライムさんで合ってますか?ライムさんは僕の仲間で人間との中間のような気がしました」
「そうかな」
俺はキョロキョロみんなを見回してしまった。スケモンの上、スラモン?
俺たちは歩きながらスライムの話を聞いた。
スライムはホワイトフォレストという場所から実験のため連れてこられた。実験はモンスターを大量に複製すること。オリジナルにはサンプルとして魔法薬を飲ませた。そうして言葉を話せるようした。 ホウ素、エーテル、魔法液・・たくさんの薬品を調合して出来たのがこのフロアのモンスターたち。まさかモンスター本人も人間と話ができるとは知らなかった
「まず最初は、ブルーマッダァがいる場所まで行く、地図では~(カラ)です」
―①仲間のブルーマッダァ―
「変な記号やマークが多いわね」
「僕が独自に描いた地図です」
地図の沼地の前にきた。
緑の草や木に囲まれた大きな沼地の中に橋と小屋があった。沼地の水の表面は澄んでいるが、何層も沈殿した泥が多そう。
「レッドスラ、あの小屋はなんだ?」
「あれは、牢獄です」
「誰かいるのか!?」
「いても、ここでは聞こえません」
「エリスさん、助けましょう」
「おそらく罠よ」
「そんなの百も承知よ、どうせ途中で帰るのならここで助けて戻るのがベスト」
「私からもお願いです、エリスさん」
「助けよう」
とアッキーも賛成する。
「いいわ。危険は覚悟してよ」
俺たちは橋の上を歩いた。沼地は静かに佇んでいる。
「ギシ!」
橋、壊れないだろうな。
「ギッ、ギッ!」
まあ、これなら何ともなさそうだ。
「チャ・」
「何か音がしなかったか」
「ベトッ、ぎゅっつ・・」
「足!足を掴まれてるぞ、カタリナ!!」
「モンスターのマッダァです!!」
レッドスラがいち早く反応した。
「沼地に落ちたら這い上がれないぞぉ!!」
カタリナの手をエリスとアッキー握った、お互い力比べで引き合う。
「マダッ!ジャハハユヒヒヒイィ!!」
沼地の水面の藻が広がるが、その奥も緑色一色だ。
「それじゃ悪いけど」
エリスが腕を狙って呪文を唱える。
「撃て、詰められた鉄砲水!」
「ウォーターガン!!」
「バシャッ!」
「ボフッッ!」
スターステックから発生した水の球がマッダァの腕を吹っ飛した。
「ユヒヒヒヒィ~!!」
マッダァは水の中に落ちていった。
「何度もすみません」
「次来ると危険だから小屋へ急ぎましょう」
「はやく」
カタリナの背中を押してモニカが言う。これでもモニカはカタリナを守っている。
小屋の前についた、立ち止まる俺たち。
「開けるわよ」
「ギギギィ」
部屋に入ると中は閑散としていた。何もない、埃だけが少しある。
部屋を見回すと、そこにカーテンがかかった場所が一つあった。
「行くぞ」
ああ、恐ぇ~。ここはリーダの俺がいくべきだろう。
「カラカラシャラッ!!」
俺は近寄ってカーテンを開けた。
「!」
絶句だった、檻がそこにあった。
「何よこれ、誰か閉じ込めていたの!?」
「それは分からない」
「気持ち悪い」
とカタリナが口を押さえる。
「・・・・」
アッキーは茫然と見ていた。
檻の中にはベッドが置いてあって黒い染みがいくつか、ベッドの手すりには擦った跡があった。
「人形があります」
ベッド横の小さなテーブルには人形が置いてある。
「この世界の物じゃない」
「トンッ」
「きゃ!」
立てかけてあった人形が倒れた。俺は腕に悪寒が走った。
「何にもない、っていうことは罠ね!すぐに部屋を出ましょう」
「おしっ、行こう」
「バタンッ!」
部屋から出ようとするとドアが閉まる。
「きゃあ!」
「きゃあ!ねぇ、エリスさん」
「どうなってるんだ、超常現象が起こっているぞ!」
「落ち着いてこれはマッダァの仕業よ。ゆっくりとドアを開いて」
「ギィィ~」
橋の上を大量のマッダァが占拠していた。
「沼地に引きずり込む気ね」
「ダァ~、ジャハハハハァ」
「ジャハァハァ」
沼地には泥か顔か見分けがつかない起伏がたくさんあった。俺たちを見ているようだ。橋の上にいるのは沼地の土じゃなくて明らかにマッダァで間違いない。あんな大量の泥が載っていることはないから。
呻き声がどもる声で、怨念のようなものが籠っているのか。
「どうするエリス?」
「剣で斬っても倒せないわよ」
「まじ!?」
ゲームのようにそんな単純にいかないってことか。確かに泥は斬っても泥だが。
「ダン!!」
「ドドッ!!」
マッダァが泥を投げつけてきた。運よく泥は小屋に当たる。体にたくさん、あたると体が重たくなるぞ。
「ダン!!ダン!!ドン!!ダン!!ダン!!ドン!!ダン!!ダン!!ドン!!ダン!!ダン!!ドン!!ダン!!ダン!!ドン!!ダン!!ダン!!ドン!!ダン!!ダン!!ドン!!」
「あああ」
「おい、中に石が混ざっている泥もあるぞ」
「あわっ、ドベチャッ!」
アッキーが転ぶ。足元がドロドロ、ヌルヌルになっていたせい。
「中へ逃げましょう」
「そんなことしたら入り口を塞がれるわ」
泥で塞ぐってのかよ。
「もう泥で開かないと思います」
「レッドスラ、仲間のマダァに頼んでくれないか」
「いても無理です」
「モニカ、水の魔術をお願い!」
モニカは魔術を詠唱した。
「・・・・」
ウォーターガンが発動しない!
「やっぱりダメみたい」
「まとめて洗い流してあげる」
「流れる、帯は幾重に大波!」
「アクアウェーブ!!」
「バシャリバシャリバシャシャ、ザッパーン!」
「ダァッ、ヒャアアアー!!」
橋の上と周りにいた、たくさんのマッダァが体を削がれるように沼地へ流されていった。
「今よ!」
全員が走る。
すまぬ、執筆だけして修正の帳尻を全くしていなかったでござる。
人間語を喋るモンスターとそれ以外がいます。喋らないモンスターにも台詞があったが削除した。




