ツリーシードの森
他の街へ行くことになったライムたち。ますはオアシス湖に行く。そこには人魚のリトルと半漁人のようなワールウールというモンスターがいた。危うく死ぬところだったライム、しかし攻撃は届かず、ワールウールは逃げて行った。まだいる未知のモンスターとライムたちはどう戦うのか。
エリスの守護、残12日
音のせいか、ふと目を覚ます。どうやら音は外からするようだ。既に朝を迎えていた。一昨日の恐怖は昨日で消えたかと思ったが、意識がずっと頭に焼き付き眠った気がしない。まだ少し疲れが残るが、これまで眠れたことにあえて感謝したいと思った。
「ココッ!」
「私よ、急いで支度して!」
エリスだ。
「まだご主人は来ていないぞ」
「いいの、目が覚めたんだから。もう頃合いだし、そろそろ出るから!」
「きゃ、」
エリスが驚いた。
「これはこれはエリス様、お目覚めですか?」
「ええ・・目が覚めたものだから」
「それはお早いお目覚め、ライム様の支度が整うまで何か召し上がりますか?おおっと、もちろんお金など入りません。あなたの顔さえ見れれば私は朝日に浴びるより力をもらえますので」
「いいわ、そこ」
「はて、なんでしょう?」
「―――」
「おや、何もありません」
「バタン!!」
「エリス様、困りました」
「コンコン」
ご主人がエリスの部屋をノックした。
「出ないで」
エリスが小さく言うとモニカは頷いた。カタリナは何事かと耳を澄ます。
「コンコン」
ご主人が隣の部屋をノックする。その音をモニカはドア越しに聞いていた。
「タッタッ・・」
ご主人は歩いていく。
「かえったわよ」
隣の男部屋、
「ふわぁあぁぁ・・」
ノックの音でアッキーは起きた。目覚めは最後だが、時間的にはいつも通り。
「いたたた」
俺は支度するため体を起こすと、ラクーダにのって筋肉痛になっていた。これもある意味修業だと思った。
「アッキー、もうみんな起きてる。早朝はモンスターが少ないかもしれないから支度を急ごう」
「うん、あうぅぅ」
体を起こしたアッキーも筋肉痛になっていたw。目が合ってお互い笑った。
俺たちは体をゆっくりと曲げ支度を整えた。そして廊下に出てエリスたちを呼んで一緒に宿屋を出る。
一昨日と同じようにアルスに会いに行く。目的はツリーシードの森の場所を教えてもらうためだ。
「おはよう、アルス!」
「おおう、見違えたぞ!得物も一回り大きくなって」
剣と俺をジロジロと見るアルス。
「剣だけです。それよりオアシスのモンスターの事を教えてもらえませんか?いつからあそこにいるんです?」
「モンスター?悪いな。俺が行った時は湖に何もいなかった。モンスターは何匹もいるのか?まさかダンジョンの影響か・・」
「いや一匹だけです、ダンジョンとは無関係だと思う」
「そうか」
「知らないのならいいんです。忙しいと思いますが、ツリーシードの森の場所を教えて下さい」
「そう来る事は分かっていた、さあこれを受け取ってくれ。それと街の入り口の女性なんだが、実はあれは商会の見張りなんだ」
「う・そ・」
俺たちは絶句した。
「『サンサンドの街へようこそ』は探りを入れているのか」
「情報屋ね」
「それが彼女の仕事だ。ライムたちのように名前も分からない者が突然、外から来たり、いなくなったり不審な事が多いんだ。この街の生活を管理するのは商会の仕事だからな」
「教えてくれて、ありがとうアルス」
「いいんだ。俺は仕事があるから、またな」
ライムはツリーシードの森の情報を入手した。
酒場に行って料理を注文、オアシス湖の状況から持っていく必要はないが、買っておいて損はない。もしあるとしたら持ち出しが見つかって酒場のマスターに怒られる事くらいだろう。
俺たちは、フタコブの店に預けてあるラクーダを引き取り街の外へ出た。
「ツリーシードの森へ向けて出発!」
「おー」
ツリーシードの森は地図上、サンサンドの街を中心点としてオアシス湖の対角線上、真逆の方向に位置する。距離はここからオアシス湖と同じ位。
軽快な足取りだラクーダ、いいぞその調子!
「おお」
俺はお尻が浮き前方に落ちかけた、これでラクーダに踏み潰されて死んだらお話になりません状態だ。
「きゃあっ!」
ラクーダの体に付けていた足が滑りカタリナの体は後ろに倒れかけた。手で宙を掻くように泳ぎをするカタリナ。なんとか耐えきって体勢を立て直した。
出現したモンスターを圧倒し、俺たちはツリーシードの森に着いた。もちろんラクーダを乗りかえたよ。
ツリーシードの街の中に入ると木造の家々が立ち並ぶ。その横に大きな森林地帯が広がっていた。
「ご飯でしょ」
「あそこでいいか?」
「うん」
皆、いいようだ。
丸太を切った椅子がキノコのように群がっていた場所があるので、そこに座った。五人で周りの様子を見ながら朝昼飯休憩をとった。
「最初どこに行く?」
「・・・」
街の店を見るエリス。食べながらは話せないかエリス。おそらく見ている武器屋やアイテムショップだろう。
朝昼食後、必要な物を購入する。
「使えそう」
アイテムショップでは、土地柄に合うダミーペイントと防水オイルを買っておく。木のある場所ならモンスターから見つかりにくくなりそうだ。売られるアイテムは偶然作られることは少ない、必要かつ使えるから作られ売っているのである。
アッキーが、じっと見つめている。
「これ買うわ」
「ええっ!?」
エリスはグレートアックスを購入した。木鉄の斧から比べると、かなり差がありそう。
「はい!」
エリスはアッキーにグレートアックスを手渡した。見つめていたから単純に欲しいと思ったのかエリス、アッキーからしたら余計なお世話だ、きっとエリスが鬼か悪魔に見えているに違いない。
ほらアッキー、ググッと重みがかかり前のめりになっている。
何も言い出せないアッキー武器を持ったまま、固まっていた。どうするべ、畑仕事でもするかアッキー。お前がいやだと一言、言えばもう少し軽いもので済むんだぞ。
・・・いいんだな。
エリスがそれを買ったのは持っているだけで、お前の修業になるからだろう。
「俺もコレいいかエリス?」
「いいわよ」
許してもらえたので、ランクが一つ上の疾風マントを購入。
≪疾風マント 走ると風を利用し体重を軽くする、素早さがあがるマント≫
「準備が整った所で森へ行きましょう。これまでと違うモンスターがいるから良い特訓になるわよ~」
嫌な呼びかけだ。要するにまた、あの気持ち悪い奴らの仲間と戦ってこいということだろーっ!
「上から何か落ちてきそうですね」
うわっカタリナ、嫌な事を言うな。想像を言葉に出さないでくれ、あ、足が震えてしまう。
「おーわぁっ」
早速お出まし。
「木と同化しているぞ、この蛇モンスター!」
「シュルシュルシュルル!」
モンスターは、木々に巻き付いて上に上がって逃げていった。
「おいおいおい、こんなのと、どう戦えって言うんだ。攻撃して逃げていくぞ」
「モニカ、無闇に魔術使わないでね。木で暗いけど大火災が起きたら、この街の人たちが生活できなくなる」
「それは安心してエリスさん」
≪シャドースネーク 木や植物の陰に隠れる蛇。大きくはないが、足にからみつき毒牙をたてる≫
「ボルフライだっけ、あんなのに比べれば弱いわよ」
「モニカさん、首が痛くないですか?あ~首が痛いっ」
「そうなのよ、カタリナ。真上にばかりくるから困ったの」
「ここは地上ね」
近くに気はない地があった。土の上に草が生えている。
「俺が見ます」
「ああっ、綺麗な花」
「ドット柄ね」
「それ、」
「スポンッ!!」
「臭い臭い、ヒリヒリするこれは何なのぉ―――っ!」
「バシバシデシ!」
「たすけでぇええー!」
モニカは花のような生物に挟まれて、足をバタバタしている。
「おりゃーっ!」
剣で一刀を放つ。切れ目が入る花だが、挟んだモニカさんを離さない。
「剣で斬れませーんっ!」
≪ラフレシア 人食い花、口で手を体をあらゆる部分を噛みついて飲み込む。中は消化液があり、じわりじわりと溶かす≫
急がないと!!
「付け根から斬って!」
ここには、ラフレシアが密生していてどこが付け根か区別がつかない。斬る時、他の奴に食われるかもしれないんだぞ。
「とげてぇるーっ!わぁ~っ!」
「カタリナ!ヒーリングをモニカに」
「はいっ!」
「ヒーリング!」
モニカさんの足に手をあて唱えるカタリナ。自分までラフレシアに食われないようにカタリナは屈んだ。
「ガッ!!」
「痛っ!モニカさん、私の顔蹴らないで下さいっ」
手も一緒に挟まれているからモニカさんの状態を見ることができない。HPの残りが知りたいのに!!
「シャル!」
「デェィ、シュウ!!」
俺とアッキーがラフレシアを斬りつける、しかしどのラフレシアを斬っているのか見分けがつかない!
「こんなモンスター相手に私が手を貸さないといけないなんて」
モニカにスティックを翳したエリス、は魔術を唱えた。
「力を貸せ、地中の土竜!」
「クレイモール!!」
土の精霊はモニカの下、地中に穴をあけるように掘り削いでいった。モニカを挟んだラフレシアの動きが止まった。
「ガバァッ!」
「はぁはぁはぁはぁ、ふぅ~はぁはぁーっ」
「モニカさん、しっかりして下さい」
「いき、てる・」
すぐにその場を離れた。他のラフレシアは手を出してこなかったのが幸いした。
「エリスさんありがとうございましたぁ」
まだ不調だが、モニカは頭を下げる。
「いいわよ、一度なら」
「アッキー、エリス一度しか助けてくれないって」
「・・リッ」
おい頷くなよ、アッキーは賛成派のようだ。
「モニカさん、中はどうでした?」
カタリナがモニカさんに話しかける。
「最悪よ。べっとりと溶解液で溶かされてたの、そんなどうとか見てる暇ないわぁ!」
「ふふふっ」
「カタリナ今笑ったわね」
カタリナの頭を掴むモニカ。
「ガサ・」
「敵の気配!」
「プシューッ!!」
「何かとんできた!」
「そこに何かいる!」
ステータスのHPと履歴を確認、モンスターからダメージを喰らったことがわかる。
「いるんだが草や木でよく見えない」
「逃げよう」
俺たちは走った。
≪マルバガリ 草や木々に色を変え、人間の皮膚を荒らすような液を吹きつける≫
あっちに行けば、あっちでまたモンスターと出くわす。倒せる時だけ敵を倒すが。
「きゃあー」
走って風が起きるだけじゃなくて草があるわけだから、ローブひっかかってん、モニカさんw。
「きゃあぁあぁっ」
今度はカタリナどうした?背丈の高い草がローブの中に入ってん、くすぐったいかカタリナw。
「ふふっw」
エリスが笑った、やばい場所だな。こそばゆい攻撃をする雑草がワラワラといやがる、まさに草不可避だw。森林地帯は肌を守る装備品でお越し下さいと看板でも立てておこう。
モンスターに木々や草の中に隠れられたら見つけ出すまで相当ダメージを受けてしまう。
「サ」
「ス―――」
「ザザッ」
シャドースネークを倒した。
「皆、不意打ちの特訓は十分にやった?」
「まだ少ししかやってない」
「それなら夕食後、また続きをやりましょう」
「まだ、するのか」
エリスは頷いた。
充分戦ったし、三種のモンスターのデータを入手できたので一旦街へ戻った。
ツリーシードの街に戻り、夕食の店を探していると、
「うぎゃっ!」
「うわああーっ!」
「誰か誰か助けてくれ!!」
森が夜にかけて静寂に包まれていく最中、森の方から助けを呼ぶ声がした。
俺たちは森へ走った。街の男たちも駆けつける。街の冒険者はダンジョンに出計らって、ほとんどいない。
「どこだー!」
「ここだ!!」
「あっちか」
俺たちは声のする方へ急いだ。
「おい大丈夫か?しっかりしろ、何に襲われたんだ」
「例の奴だ」
「毛むくじゃらの人型モンスターか?」
「ああ、俺の前に現れて体を引き裂いていった」
「かなり血が出ているぞ」
「心配ない。ポーションを使ったから傷口はふさがるさ」
いた!街の人が二人いた。
「私が治します」
まだ傷口は完全にふさがっておらずポーションだけでは全部治らないのでカタリナは魔術を唱えた。
「ヒーリング!」
「くっそぉ、これからみんなでモンスターを探し出してぶっ殺してやる!」
「おーい、おーい!」
「おおーい!」
他の住人も加勢にやってきた。
「また、例の奴が出た!」
「それで見つかったのか!?」
「まだだが、そこらに必ずいるはず。俺たちみんなで見つけ出して退治しよう!!」
「おおー!それじゃー俺たち三人はここを行くぞ」
「お前達も見つかっても二人で行くなよ、あいつは強い、皆でやりゃーそんなに強くないさ」
「ヒーラーさん、手当てしてくれてありがとな。あんたたちも気を付けてくれ」
「はい」
「もし、毛むくじゃらのモンスターがいたら俺たちを呼んでくれ、すぐに行くから」
「はい」
とりあえず俺は返事をした。しかし、帰らない。俺は別に探すことを決めている。
しばらく森の中を探す、その間は住人の声が何回か遠くで聞こえた。
「ガサガサ、ササササッ!」
少し離れた所で草の音がする、揺れる草を見て俺たちは足をとめた。俺は手で停止の合図をする、自分たちが立てた音ではないことを皆に教える。
「カサッ」
「カサ・・ァ」
草陰から片足が見え、木陰から黒い上半身が現れた。
そして、
「ウババババァー!!」
「ウババ、ウバウバウババァ!!」
俺たちを見ると奇声をあげて、こっちへ走ってくる毛むくじゃらな猿?
「逃げろ」
ここは草木が多くて戦いにくい。だから、とりあえず距離をとる。
「何よ、あれっ」
「知らない」
「人型モンスターみたい、だけど・・」
「はっはぁはぁ~」
「追いつかれる!!」
「来たわよライム、アッキー」
戦えってことか、どっちみち逃げきれない。
「はい」
「はっ」
二人が前に出る。
モンスターは立ち止まって頭をかかえた。
「ウガォガ、ぎゃ」
「様子が変・・・・?ちょっと待って!」
俺たちは剣を携えて出方をみていると再び襲いかかるモンスター。
アッキーが盾を取り出しスキル・技、ガードの体勢をとる。巨体であるアッキーのガード、体重なら負けていない。
「ウォオオガァ!!」
「バシッツ、ゴワッツ!!」
盾を構えるアッキーだけでなく俺も一緒に吹っ飛ばされた。
俺の上に飛び乗ってくる人型モンスター!
「飛べ、怒り怒る炎の球!」
「ファイアボール!!」
モニカは魔術を唱える。
「ゴウゥウウウンッ!!」
俺の前にいた人型モンスターに炎の玉が当たる、と炎で毛が燃える!
「ウギャアァ~!!」
「流れる、帯は幾重に大波!」
「アクアウェーブ!!」
モンスターが波に揉まれる。エリスがモンスターについた火を水魔術で冷却消火した。
なぜ火を消した?
草、木、森が燃えるからか?
「ギャギャギャァ~!!」
「手を出さないでモニカ!」
「だってライムに襲いかかっていたし」
「そこにいるのはモンスターを被った人間なのよ」
「被った?」
「ギャギャぎゃぁ」
「ぎゃあぁ・・」
「バタン!パタッ・・」
モンスターは意識を失った。
「どうする?」
「息はあるから大丈夫よ」
カタリナは近づくとすぐにモンスターを被った人間に魔術を唱えた。
「ヒーリング!!」
「何かモンスターと違う感じがする」
「違和感ねぇ」
「あああ、」
「気が付いたわ」
「私はドローシラ、森を走っていたらいつの間にかこの森にいた。私は森から抜けようと来た道を戻った。だけど戻れなくて、どうすれば分からなくなって泣いていたら・・・、その後の記憶がなくなってしまった。今、私はここにいる。だけどなぜここにいるのか分からない、私はどうしてここにいるの?」
「つまり、記憶がなくなってどこにいるのか分からないわけね。エリスさん、これって何かありそうよ」
「私は動いている間の記憶がない」
「それ二重人格じゃない」
「二重人格?私の中に誰かいるの?」
「でもメニューの履歴欄・モンスターにもドローシラと書いてあるぞ。嘘をついているんじゃないか?」
「それはないわ。モンスターならまず止まらない。止まるのは自我があってコントロールできる人間だけよ。高位のモンスターならしゃべれるのがいたりするけど彼女は違う」
「どうするの?ライム」
「やめて、ライムさん」
俺はそれでもモンスターだから退治するべきだと思った。
「パタッ」
アッキーがライムの体に触れる。
「そうか皆」
倒すことに反対のようだ。
「私を・・・戻して」
「ウガッ、ウガガッツ」
「これって獣と人の人格じゃないか?」
「まさか」
「うわわっ」
アッキーの腕を掴むドローシラ、
「うぐうっぐぐぐグア!」
「アッキー!」
「ああああっ!」
アッキーの腕をドローシラが強く握る。
「た・す・・・け・・・てぇ」
「ズ、ズズズウズズッ」
アッキーとドローシラが互い押し合う。
「ドッツ!」
ドローシラを地面に押し倒したアッキー。
「アアガ、、、ッツ、、」
ドローシラは意識を失った。
「また、変わったら襲ってくるから木に括り付けておきましょう」
ドローシラを木に括り付けた。
「次に目を覚ましたときに人間の人格が出るようなら彼女は交互に変わっているわけだけど、どうしてオアシス湖のように半分だけ魚や獣になっている生物がいるのか不思議ね」
「そんなこと言ってて、お前も不思議だけどエリス」
「ライムその話はやめて」
「疑いは晴れぬ」
「今は夜よ」
「・・・」
朝いうべきだった?
「街の人の話じゃーこの森からは出ないようだから、よかったんだけど人間を襲うから野放しにはできない」
「ガッササッ」
「ガサッ」
「おい、ここにいたぞー!」
「おお、みんなあーここだここ!」
「ああ、そいつだ」
「おおおお、お前ベッツィを襲ったな」
「ちょ、ちょっと待ってよ!」
モニカさんが手を広げて住人を宥める。
「何言ってんだよ。このケガはこいつのせいだ。他に襲われた住人もたくさんいる!」
「お前たちがそいつをつれて来たのか?」
「おお!ここにいたのかー」
「おお、こいつだ、こいつだけど・」
「この冒険者ギルドたちが連れてきたかもしれないんだ」
「そうだな。普通なら今はダンジョンに行ってるはずだ」
「違う!理由があるんだ」
「理由?連れてきた理由か?」
「いいえ、彼女は人間」
「えっ?」
「でも俺たちを襲ったんだぞ」
「彼女は・」
「彼女は?」
「彼女は狂戦士といって、バーサーカーよ」
エリスが上手く言ってくれている。
「戦士か馬鹿か知らないが、なんで人間が人間を襲うんだよ?」
「冒険者ギルドでも戦闘する連中がいるじゃない?馬鹿かもしれないけど」
モニカさんも話に加わる。
「そうだが俺たちは街の住人」
「そして彼女は森の狂戦士」
「同じツリーシードの森の人間よ。彼女は狂戦士で、闘争心だけで行動するから人間を襲うけどモンスターも襲うの」
「まあどっちがどっちとか関係はないみたいだし、人間を殺すといったことはなかったかな・」
「でもかなり大けがをしたんだ、それなりの罪は受けてもらうぞ」
「ねえ、あなたたちはこれから彼女をどうしようっていうの?」
「どうしようも何も仕返しだ。なあ皆」
「ああ」
街の男は仲間を見ていた。
「森にしか出ないでしょ」
「そこをなんとか、モンスターの中で他のモンスターを倒す狂戦士だと思って許してあげて下さい」
「なんだよそれ」
「つまり味方にもなる、敵が襲ってきて森に入れば彼女に倒されることもある。森のモンスターが増えすぎて、街に溢れかえるのを減らしている人間だ」
「でも、そんなことしたら森の食料がとれなくならねえか」
「そうね。その方法を考えるため、少し相談していい?」
「相談するって」
「おい、」
「まだか」
「ないのなら俺たちで始末させてもらう。譲歩しても拘束だからな」
「決まったわ。私たちが場所を教えてあげる、これよ」
「なんだこれは?」
既に夕食の時間は過ぎて、遅い食事となった。店の名前はフォーレス。
料理はサイザイモとラグビーン、グレープルの三つで、かなりカラフルな組み合わせの食べ物だ。ほとんど手はくわえられておらず、皮を剥いで切ってあるだけ。あとはそのまま食べられる。
「薬のような味がする」
「これ健康食品みたい!」
「何々これ、ほらぁ見て」
「えっ、パクッ!あっ口の中に入って行きました」
「黒い実を口に突っ込むモニカ」
木で出来たスプーンがカタリナの口の中へ放り込んだ。
「何するんですか?」
カタリナが舌を見せると、黒光りする形の実がのっている。
「カタリナ、女性が口から出さない」
「ゴリ、ゴリゴリ」
渋々舌を引っ込め、噛むカタリナ。少し怒っている。
「お前勇気あるな、カタリナ」
「えーどうしてですか?ライムさん」
「それ虫みたいな形だったから」
「えっ、ぺぱっ・・」
「ぶちゃっ」
アッキーの顔にくっつく黒い粒。
「うわぁあ!ボフッ」
アッキーがひっくり返った、大きい図体の割に度胸の小さいアッキー。
「これタピオカ風で美味しいですよ」
「あ、わかる。それだそれ!」
「チリン!リン!!」
「例の奴だ、逃げろ!!」
食事中に森から鈴の音が聞こえた。
「鈴が鳴った!」
「リングブレスレットのおかげね」
「オシャレアイテムのこれがあれば、あなたも可憐になれます、と言われたから買っておいてよかった」
≪リングブレスレット 鈴がついた腕輪≫
「可憐なのはブレスレットで本人はあまり変わりません」
と物にこだわらないカタリナ。
俺はエリスもそういうので買うんだなと思った。
「でも身に着ける装備で知性や印象は変わるわ~」
一枚上手のモニカだった。
それとダミーペイントを使い、ドローシラの顔にインディアンのような線(特殊メイク)を入れ闘争心を現した。その上に防水オイルを塗れば水で濡れても弾いて落ちない。
「体を洗うのはサンサンドに帰ってからにしよう」
「おう」
全員賛成だ。
街の宿屋に行って部屋を二つ借りる。部屋は木造で心地よい木の香りだ。しゃべらないアッキーに話しかける俺。アッキーはまだ心を開いてくれない。
「うん、んー」
ベッドで跳ねているアッキー、
「ベッド弾力性が面白いなぁ、ポヨンと押し返してくる」
ベッドは気に入ったが横は森、ヘビや虫が出ないかアッキーは周囲を警戒していた。
「もうすぐダンジョンか、待っていてくれ皆」
「・・・・」
アッキーがおやすみと言った感じがした。俺はアッキーを見たが向こうはこちらを見ずに眠った。
「明日はどうするんですか?エリスさん」
とカタリナ。
「戻って明日に備えるだけよ」
「それからは?」
とモニカ。
「ダンジョン、中で時間の許す限り特訓よ。おやすみ」
エリスは上を見たまま目を瞑った。
「寝てしまいましたね」
「そうね」
「モニカさんの方は特訓どうですか?」
「順調よ。あとは早く帰りたい」
「私も・・」
「家族・・」
「家族がどうかしたんですか?」
「いい、おやすみ」
「はいっ・おやすみなさい」
エリスの守護、残11日
「ボンボン!」
朝、目を覚ます、鎧を着て寝返りを打つことはできない。そこで私服に着替えて寝ていたせいか、寝床の敷布団は少し冷たく感じた。明らかに木や植物の温もりはない。
アッキーが目を覚まさないので体をボンボンと押した。
「おい、朝だぞ」
「ボンボン」
「んん、んんーっ!」
手で鳥のポーズでモニカは目が覚める。
「あーっ」
背伸びするカタリナ。
「――」
すっくと何事もなくエリスは体を起こした。
「エリスさん、服を何着も買っておいて着替える要領で装備替えする方法はどう思いますか?」
とカタリナが提案する。
「持てる道具の数は決まっている。必要のないものは正直な所あまり持ちたくない。それに体が汚れているのに綺麗な服を着たい?」
「着たくない」
「よね、さあ着替えて」
エリスたちと部屋の前で合う。
「ライムさん、ドローシラさんに会いに行きますか?」
カタリナが俺に尋ねる。
「やめておこう」
街の男たちは気持ちが和んでいた。それは前より行動しやすくなったからだ。
「帰りましょうか」
街の外に出て、ラクーダに乗り出発した。サンサンドまでペンタン以外は出現せず。相手にしないでサンサンドの街までラクーダを走らせる。
昼過ぎにサンサンドの街に到着。
もう市場は終わっていて食料が手に入らなかったので酒場に行き、朝昼食をとった。昼に行くと冒険者というより、少し変わった奴らが多いから嫌だった。
「カリカリッ、ブチッ?」
この酒場の料理はいつも変だ。
「ねえ、これ面白くない?剣みたいな形で」
「それは植物ですよ、ツリーシードの森で同じ草を見ました」
「私も見たわ」
「それ、いっぱい生えてましたよねぇ~」
「うん」
「それで摘んでおいたわ」
「どれ?」
「えらいぞ。エリス」
「おい、あそこの冒険者の話聞いたか?」
「希草か、あれは料理に良く使ってないか?」
エリスが皿を見つめる、モニカさんが上目使いで俺に視線を送る。カタリナもそれに合わせる。俺に何かを伝えている、そうだ!
「エリス、次から採取はしないでほしい。もしダンジョンの開放と一緒に出現したドローシラに会ったら、あの世行きだぞ」
「そうねライム、こっちは命懸け。もう、あなたたちが頼りないからよ!」
「なんだ、俺は一生懸命やってるだろ!!」
「それでやってると言える!?」
迫真の演技のエリス、お前は明日の女優も夢じゃない。
「二人ともやめて。私たちも、こっちのぽっちゃり君も真面目に働くからお願い!」
「ぽっちゃり君、よく食べるから」
「ぐーぐぅるる」
おいアッキーは何を表現したいんだ。
「あそこのぽっちゃり君、何か変な事言ったぞ」
「別の冒険者が言っていた、あいつら、頭がおかしい連中らしい」
「希草はやめておこう」
俺達は食事が終わったのでさっさと席を立った。
昼食後は体を洗いに教会に行く。いつもより早い時間だがセイラはいるだろうか。
教会の入り口傍にセイラがいた。どうやら床を拭いていたようだ。水は長椅子の下に置いてあるから本人もお客さんも踏まないようになっている。
「セイラ、元気だったか」
「はい、皆さんの旅の安全を祈願しておりました」
セイラは俺の手を触った。変わった出迎え方だが嬉しかった、こうしていると友達以上に心が許せる仲間に思える。
そして清めの場で体を洗う。
俺とアッキーはのんびりと、体と服を洗った。そう言っても水に浸からないから早いんだけど。
「明日はダンジョンだ、向こうでは体を洗えないからな」
「わかってるよ」
お!?言葉を返してきた。だが反応するとまた引きこもるので、見ないで普通に接する。
「水いつもより多めに使おう!」
「それは、いけないよ」
「痩せたかアッキー、バシッ!」
体を叩く、そのアッキーの体も太っている割に筋肉がついていた。
「痛っ!」
「ふりゃっ、バシッ!」
「ぐげぇっ!」
俺の背中をアッキーが叩く。
「やったな、ほおっ!バシッ」
「ふわっ!!パチパチパチチ!!」
「ほっ、おおっ!ザバァーン!!」
「おおぅ、あぶねぇ」
白い銅像の中に溜まった水の中に滑り落ちてしまった。
「俺は綺麗になったかアッキー?」
頷くアッキー。
「エリスさん、もったいなくありませんか?その人形のように白い脚線美でローブを着ているなんて、たまに普通の服も着たほうがいいですよー」
白い石像の前で体の泡を流し終わったエリス、その次を待っていたカタリナが言う。
「見ないで。カタリナの方こそ胸が大きいのにローブばかり着てない?きっと、みんな羨ましがるわよー」
カタリナの豊満な胸の膨らみは、泡で隠せないほどである。これまで特訓で他人の体を見ている暇がなかった皆が、ここにきて少し変わった。
モニカも二人に近づいていく。
「そうよね~、私はお腹が出てて嫌だー。あ~っ、お腹がへこんでほしい~!」
エリスの後ろで聞いていたモニカは、そういうとエリスのお腹を触った。
「きゃっ、触らないでよモニカ!そういうのも隠せるからローブはいいわよ」
「ふっ、ふふふ、エリスさん私の場合は隠せるから逆に良いと、よくも言ったわねぇー!」
下を見て微笑するモニカの目が光った。
洗い終わったエリスはサンドタオルで拭いてそこから出た。
「あれ、エリスさんは?」
「行きましたよ」
「ちぃっ、逃げられたか。歳をとってもあれだけ体が若ければいいのになぁ~」
「エリスさんの年齢が分かりませんけど、そう思います」
「私の事よ、私の体の話!」
教会を出る。
「エリス、この後どうするんだ?」
「自由行動はどう?」
「いいのか?」
「うん」
「それでは、鐘が五回なったらここに集合よ」
結構街に着いては知っている。俺は思いにある場所へ行ってみた。今なら一人でも、襲われたときに対応がとれる。
夕食時間になり酒場に行く。
ダンジョンから帰って来た冒険者が数人。あまり良い成果は上がっていないようだ。俺達は、また新たな料理を注文して食べた。食事には当たり外れがあるから、いずれ固定食になるだろう。
宿屋に行って部屋の前で分かれる。
寝床に入る。
「おやすみ、アッキー」
「おやすみ」
やっとアッキーが返事してくれるようになったので俺は心強くなった。一人だと心の拠り所がなくて困っていたから。
話の内容に手間取り、書き上げに時間がかかる。間がぴったり埋まったので、丁度考えていた内容に納まったような気がします。
必要でない文と、間違った日本語がありましたら言って下さい。




