生活と戦闘 3
エリスは剣が使えた。また武器も変えていた。謎だらけのなかスキルを覚える特訓が始まる。一日のメニューは特訓(技と魔術の習得)に食事(酒場)、風呂(教会)、睡眠(宿屋)となっていてその日は終わった。
エリスの守護、残り18日
「コンコン!」
両方の部屋をノックする宿屋のご主人。起きてこなければ、これが繰り返される。しかし、エリスの眠る部屋は少し音が違っていた。
朝は気持ちよく起床、洗濯で下着もつけずバスローブ一枚、脱げば丸裸だ。下着、服は乾燥した地帯なので部屋干し乾燥で十分乾く。
アッキーの着替えに遅れ、俺も着替えた。体が痛いのか揉んで装備品を装着、こんな日々が毎日、いや考えるのはやめよう。
「アッキー、女たちが用意するまで休んでおこう」
まだ呼びに来ない。
「うん」
エリスたちの準備が終わるまで眠気をとるため準備運動をする。
カタリナはエリスより早く目が覚めた。ベッドに座ったままでいると遅れてエリスが目を覚ました。動きに反応したようである。木の天井がエリスの目に映る、そして横にはカタリナがいた。
起きたエリスは、体を起こしカタリナに話しかけた。
「カタリナ、昨日何か言いかけなかった」
「な、何も・・」
カタリナは言葉を詰まらせた。
モニカは二人の話が聞こえ目を覚ます。片目を少し開いて様子を見ていたが起きることにした。
「気持ちいぃ。こんな熟睡・快眠は久しぶりだわ―」
両手をぐわーっと上げ背伸びする。
「あ、いたたた」
モニカの体は筋肉痛であった。
「それより着替えましょう」
モニカが声をかけると エリスとカタリナの蟠りは流された。
「ローブ、乾いてすべすべよぉ」
「本当ですねぇ」
着替えが終わり話す三人。
「少しずつこの街の生活にも馴染んできたわ」
「そうですね、私の場合皆さんと一緒に旅をさせて頂いて変わりました」
とカタリナは話した。
みんな目が覚めてきた所で出発!!
「さあ行くわよー」
部屋の鍵を開け廊下に出る。
ライムとアッキー二人を呼んで『おはよう』の挨拶、カウンターに行くといつものご主人がいた。
「おお!おはようございます、エリスさん」
「おはよう」
エリスだけか、おはようは。俺たちも客なんだけど、どちらでもいいようだ。
「何でしたら部屋を貸切にしましょうか?」
「いいえ、いいわよ」
エリスは少し苦手みたいだ。借りたバスローブを見ていたので俺たちは足早に宿屋を出た。
街に出ると、俺は教会に向かった。
「教会へバスローブ返しに行ってきます」
「ええ、頼んだわ」
入り口にはいつも立っている女性が入ってきた冒険者と話している。
街の外に出て新しいスキル(技と魔術)の特訓である。
俺は斬撃を練習していた。一度、外で見たことがあるからイメージを思い出せばいいだけ。ただ戦闘でないと例え成功したとしてもステータスに履歴が残らない。 そこで地面にいるモンスターのリコイルを練習台として試すことにした。
俺はリコイルの回転を1m前で横に跳んでかわし剣を振り下ろした。これを五回、十回と何度も斬っては、かわしを繰り返す。
そして五匹目のリコイルを相手にした時である。運よく一度目の斬撃で殻に剣が刺さり仕留めることができた。さらに履歴に斬撃と表示され、この時にスキルを習得した事がわかった。
≪斬撃 力を入れて敵に深く入るよう斬る攻撃、縦横斜めの斬撃がある≫
「ライム、剣先はあんまり途中で傾けない。変な癖がつくし剣が折れるわ」
お前はやはり別の職種だ。それとも職種二つ持ちか、魔術とナイトとか。
今度は、俺が弱らせたリコイルをアッキーに譲る。ただでさえ戦闘に不慣れなアッキーが相手するには敵は強く、動きについていけないからだ。
「ふんっ!」
アッキーは木斧をもってリコイルに振り下ろすがかわされた。何回やっても重いのか、ふらふらとするアッキーの木斧。
履歴には、戦闘中の近接したすべての冒険者の履歴が表示される。それを見てもアッキーの攻撃は全く当たっておらず空を切るだけ。
モニカさんは魔術の練習をしていた。
「榮えん、燃え滾る火火!」
「ヒートバーニング!!」
・
・
しばらく待つがグレアロッドから光は発しない。
「榮えん、燃え滾る火火!」
「ヒートバーニング!!」
・
・
やはりうまくいかない。
今度は、少しだけロッドが光った。
点滅した光が連続している。それは消えかけの電灯みたいなフリッカー現象でそのうち光過敏症になりそうな程、光が消えたり点いたりしている。何とかショックと言えばわかりやすいか。原因は魔術の詠唱がうまくいっていないのか、精霊に力を貸してもらえないのか、ただ魔力があるだけでは発動しない。
「魔力が少ないからもっと放出して、違うこと考えないで魔術だけに集中するの!」
エリスが指導する。
カタリナも新しい魔術の練習に取り組む。
「包め、いやしの輪!」
「レイズヒーリング!!」
これは広範囲にヒーリングをかける魔術らしい。この魔術の効果を確認するため全員がダメージを食らう必要がある。どれだけ回復するか、均等に回復しているか、全員に行きわたっているか、みんなの中心にいればいいのかなど、調べることがたくさんあるらしい。俺たちはカタリナに言われて何度も移動したり、戦闘しダメージを喰らった。
エリスがメニューの履歴を見て魔術がうまくいっているのか調べている。
「もう少しかしら」
ハローロッドが光らなくなり止まる。
「もう戻っていいか?」
「はい、魔力が切れました」
「そう、か」
ヒーラーが唯一の命綱なのに、回復アイテムも買っておこうと俺は思った。回復量はHP30、範囲は3m弱。今の俺を回復した時のデータである。
この日は時間を調べていなかった。
朝昼食を買い損なう所だった。ぎりぎり買えたのはカラカラボールとデュラムナン。夕食は酒場で塩辛く味がついている岩塩の魚帳と藻のスープにサンドライス。
一概にサンドライスといっても、調理前と後があって両方をさす。ここでは調理後のライスだ。
俺はボルフライやモスグリーン相手に斬撃の練習、スキルを使えた所で、決まらなければ決定打にはならない。外の敵に当てなければ、ダンジョンの強い敵には当たらない。
アッキーは俺が弱らせたボルフライに斧を振り下ろす。だが当たった直後、斧は何故か傾いていた。
「ふぅ~っ」
アッキーは汗だくだった。その姿から一人とり残されるのが嫌なのが伝わる。攻撃がきっちりと決まらないから、瀕死のリコイルから回転攻撃を受けた。またボルフライが倒れた時、アッキーの体の上に覆いかぶさってきたので、アッキーは逃げ出した。
俺は、そのボルフライにトドメの一撃を決めた。ただ、いくらモンスターでも殺すのは残酷だと感じる。
モニカさんは次の新たな魔術に取り組む。
「羽ばたかせ、風の翼!」
「フロート!!」
「あれ、何も起こらない?どうして、ふわっともしないの?」
「そうですね、イメージが違うとか?」
「カタリナ、素人の意見は聞かないわよ。私はアイスが思い浮かんでる」
「あはは、アイスですかー。それで浮き上がりますか?」
「モニカはイメージを払拭するため、空のことを考えてみて。違う事を考えると、それで頭が満たされてしまうわ」
「そう言われても」
モニカは歳をとって大人になっても、まだアイスを食べたいと思うのであった。
カタリナは詠唱、範囲など条件を考慮して魔術の特訓をする。
「包め、いやしの輪!」
「レイズヒーリング!!」
全員の体力が均等に回復したのを見てカタリナは、
「これで大丈夫ですか?」
とエリスを除いた全員に確認、それぞれ頷いた。それを見てエリスも頷く。カタリナはレイズヒーリングを習得し喜んでいた。
夕食は酒場でミトンハムという名称のものとルーベルという分厚い葉っぱを食べた。
ミートハムは肉の食感の黄色のボールでスパイシー、ルーベルは黄と緑と燈の色の部分があり、セロリのような味がした。
教会で体を洗う、もう疲れてほとんど洗うだけしかやっていられない。
宿屋に着くと、ご主人がエリスを見ていた。疲れているから遠慮して話しかけない。ランプで帳簿を見てわざと知らんぷりし代金を受け取る、がエリスの後ろ姿は見ていた。
エリスの守護、残り17日、
俺は外で金属の鎧を装備した他の冒険者を見かけた。モンスターと戦闘中だったのでうまくそこに近づいた。。おそらくナイトか戦士だろう、素早く前進する技を目のあたりにする。メニューの履歴とスキル欄の技に説明が記録されたのを確認し、その場から離れた。
これは攻撃技ではなく補助の技である、しかもナイトの技だ!まずは素早く走ってみたができない。砂地を利用しザザーッと滑ってみるが何か違う。
遠目でじっくりと他の冒険者を盗み見て観察する・さらに練習すると、スキル欄の技にダッシュと表示されるようになった。半透明から濃い文字になったのがその証拠、ナイトのスキルは身に着けやすいのか実力があるのか、俺はリーダーだからまっ、当然だな。
≪ダッシュ 短時間で走る技で攻撃や技、手段と連携し使用可能、瞬発力が必要になる≫
サンドワームが出現時、アッキーは俺が弱らすことなく即座に木斧を振り下ろしていた。偶然、一撃で倒すことができたアッキー、振落を習得していた。それで感覚をつかんだのか、アッキーは次々とモンスターを倒せるようになった。アッキーは”マキヲキル”と言い薪割りの要領で木斧を振り下ろしていた。
モニカさんは、
「羽ばたかせ、風の翼!」
「フロート!!」
風がモニカさんを中心として外に向かって吹きつける。その風が回り、少し砂煙が巻きあがり風のように浮かんでいった。モニカさんのローブがパタパタと揺れ、ローブが風に靡いている。
「うわぁ、私、空を飛んでるー!鳥とは違うけど羽が生えたみたいっ!!」
・・・それはいいんだが、
「カタリナたちは、体を鍛えないのか?」
俺は修業不足を指摘した。
「ヒーラーは回復が大切です」
「そうだが俺たちは技を習得するだけでなく、体を鍛える意味でも特訓している。だが二人は魔術だけ、俺は魔法使いとヒーラーは体力面で弱いからこそ鍛える価値があると思うんだ」
「二人は魔術が優先よ」
エリスが言う。
「どうしたの?」
モニカさんが空中から下りてきて話に参加した。
「お前たちが集中攻撃されたら、どうするんだ?」
「それはライムたちが敵の攻撃に当たってくれればいいのよ」
途中から入ってきたモニカさんが人間防壁策を立てる。
「それズルくないか」
「ライムに言われたくなーい!いつもローブがひらひら揺れている時に見てたくせに」
「あれはだな、靴下が気になってだな。ローブの下に履く長い靴下は一体なんのためかと思って」
俺は、無性にローブが気になった。
「はっ!」
「ほーら、図星ー!」
「だからどうした?」
見てたのは本当だから、開き直るしかない。
「みんな~、ここにローブ覗き魔がいまーす!」
「認めよう」
俺はローブウォッチャーだ。
「ローブ覗き魔よー!」
「おい、アッキー止めてくれ!モニカが犯罪者扱いをするっ」
このままでは他の冒険者からも変態扱いされてしまう。今こそ、この異世界で唯一の男仲間、ゲーム友達であるアッキーの助けが必要なんだ。
しかし、アッキーは特訓で瀕死の状態だった、頑張りすぎだアッキー。
「それよりアッキーが大変なんだ、カタリナ!」
ロッドを翳しドラグケアを唱えてみたが、まだ発動しない。
「ドラグケアはまだしばらく時間がかかりそう。ゴメンね、教えるのが下手な私のせい」
エリスが傍で見てカタリナに言う。
「そんなことありません。エリスさんのおかげて早く魔術を習得できました、きっともう少しで出来ます」
かわりに、ヒーリングを唱えるカタリナ、
「これはHPじゃなく体力の方ね。もう少しで特訓が終わるから待ってて、アッキー」
エリスが倒れているアッキーに声をかけた。
どうやら、このままにしていも心配ないようだ。
「まだ使えるスキルが少ないけど、次からは個人で連携させて使ってみる練習をやりましょう。体力や魔力の消費が著しいからくれぐれも無理をしない事」
「はい」
とみんな返事をした。
「ライムは連携でダッシュ、ローブチラはしないこと!」
「やめて下さいモニカさん、そんな言い方するとみんな信じます」
「先生、魔術で個人の連携とはどんな意味か、よく分かりません」
モニカさんがエリスに質問した。
「例を挙げると、ライティングで目を眩ませファイヤーボウを放つとか」
「面白そう~!」
「卑怯じゃないか?」
魔術で目をつぶし、矢を放つ。それは悪魔のすることだと思うぞ。
「相手も連携、大勢でやってるからいいのよ」
「よし、俺いけます」
その日は、時間割りが順調に進んだ。
朝昼食は市場で買い、インカロールとアパチャというお茶?だった。インカロールは乾燥しているが、もちもちとした食感の穀物で、アパチャは茶色いが中心が緑色をしている植物味の飲料である。
夕食は酒場でサンディカレーを食べ、麻湯を飲んだ。前者はカレーとついているが無味に近く甘い味で、麻湯はお湯に近かった。
食事を済ませ、教会に行って体を洗うと宿屋に直行、別の瀕死状態である。
そして宿屋に着くとすぐ、俺とアッキーは寝床についた。隣の部屋からトントンとノック音、またご主人だな、まるで狼の如く何をしたいのか?
「なーに?」
鍵を開けずモニカが尋ねる。
「あのー、エリスさんはいらっしゃいますか?」
「カチャ、バタン!」
「何?」
「おお!いらっしゃいましたか」
「?」
「これをどうぞ。いつも朝、髪が乱れています。美しいあなたが台無しです」
「え」
「もちろん、只ですので受け取って下さい」
「ありがとう」
「バタン、ガチャリ」
「気前がいいわね」
「櫛は重宝しますよ」
≪ツリー 髪をとく道具、表面に樹液が塗ってあるので髪に優しい≫
「エリスさん、私も明日から使っていい?」
とモニカが尋ねる。
「どうぞ。それじゃー寝ましょう」
三人が寝床につく。三人とも疲れていたので、すぐに眠っていった。
エリスの指示で二日特訓する、他を気にする余裕がない。あっという間に一日は終わっていった。




