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生活と戦闘 2

 魔法加工場の見学後、朝食の時間になる。といっても時間は昼なのだが。食料は市場で買う。さらに武具を買う、全て揃った所で特訓を開始する。(魔法は実際は魔術だが、街では区別されていない)

「そんなに驚くこと?、そこのモンスターは私が突き刺せる硬さよ」


「殻の下は柔らかい皮膚だからな。でも言うのとやるのでは全く別物だ!やるには相当な力と技が要求される。なにより一番の謎は、魔法使いがロングソードを装備している所だ!」


「最初から装備できた。それだけ」


「ふぅ~ん」

 まあエリスは守護だから、俺たちと違っていてもよさそうだ。


「開け、いやしの輪!」

「ヒーリング!!」

 カタリナが魔術を詠唱、俺の体から痛みがとれていった。


 ハローロッドはロッドに丸い石のような素材の球が付いている。球は銀河のように可愛い形だ。魔術を詠唱するとその球が淡く光り、そこから俺の体に緑の光がおりていった。


「それも、いいわね」

 まるで不良女のようにカタリナに絡むモニカ。


「え!」

 緊急警報発令、カタリナが一目散に走った。エリスの背中に隠れ、ひょこっと顔を出してモニカの様子を伺う。


「モニカさんはその高いロッドを買ってもらいました、これは絶対貸しませんから」

 カタリナが宣言する。


「ええ、そう高いロッドだった。私も、もしボルフライが近寄るの知ってたら買わないわ!」


「うむ」

 筋は通っている。確かにいうとおり狙われるのが魔法使いなら簡単にギルドは崩れてしまう。


「カタリナ、ロッド交換して!」

 それでもモニカは図々しく言った。あの言葉を!


「いやです、これは譲りません」

 頑なに断るカタリナ。


「使ってみたらどう?モニカ」

 エリスがそういって判断材料をあげた。


「ええっ!」

 モニカは口を尖らせた。


「それはいいけど、詠唱が悪いのか発動しなかったの」


「だからやってみましょう」


「射よ、突き刺す炎矢!」

「ファイヤーボウ!!」


「ィィィィィン!」

 歪な虹色のグレアロッドが光る、そこから放射状の赤い線光が出てグレアロッドの上に炎が生成された。


「きゃ格好良い!やっぱりこれでいいわ。すごいのねぇ、これー」

 ロッドを大事そうに持つモニカ。


「物の価値は使ってから判断すること、外見で判断してはいけないの。あと、それ魔法使いの武器だから」

 エリスは魔法使い専用のロッドなのを告げた。


「ところでさあ、エリス先生もロッド持ってなかった?」


 どうして女は、こうも人の持ち物を物色するのが好きなんだろう、また揉め事が増えるぞ。


「え、」


「エリス先生のロッドはもっと高価なのよね」


 次は嫌みを言って見せてもらう作戦か。


「私のロッドはこれよ」

 スタースティックという名のロッドはネクタイピンみたいな形の杖で、横に星形の金属がついている。


「あれっ、エリス。出会った時に持っていた杖と変わってないか?」


「ライムがそう言ってるけど・・何か隠してる?」

 髪が目元に少しかかり、見ているかわかりにくいがエリスをしっかり見ているモニカ。今の言葉をしっかり聞いていた。


 俺は余計な事をいったのかエリスの目がきつくなった。


「ええ、あるわ予備の杖」


「違うの持ってるって新しいの買ったとかー?私にダメとか言っておいて。さすが私の先生です。私より一枚上手」

 相手の言葉を利用し、かつ自分以上に我がままな奴だと押しの一手。


「いいわ、見せてあげる」

 エリスは、そのしつこさに飽きれて見せることにした。


「これよ」

 透き通る四角の箱がついた長いワンド。


「えーっと、どれどれ」


 ≪ガデスワンド  持ち主の魔力に依存するワンド≫


 ガデスという名の樹木なのか、変な名前だ。持ち主の魔力に依存する杖なので二人とも使えないかな。エリスは、ガ(・)デ(・)ス(・)で(・)す(・)が(・)何か?みたいなギャグは間違っても二人に返事として使わないから、結局諦めるしかない。


「派手でなく透明でシンプルなワンドか、なんで杖変えたの?」


「あまり見せたら、モニカの事だから欲しがったりするかなと思ってよ」


「そういえばモニカさん、ゲームの時はシロップにあげてませんでした?ここに来てから性格が変わったような気がします」


「そうなのよ。いえねー、私も名前だけなら、そんなに欲しがったりしなかっただろうけど、こうやって形にされた実物を見ると、どうも手がのびてしまってさー」


 アッキーは俺たちの杖会話に飽きて欠伸をしていた。つまんないよな、アルスも付き合わされたって言ってたし。


「あとはリコイルだけか」

 あれはあれで、放っておいても良さそうだけど。


「この砂地の中には星の形をしたリコイルというモンスターがいるんだ。迂闊に星の内側(人間でいう手の平)に触れれば針を刺し血を吸われるから注意すること。棒で砂を穿り探したいが、棒が落ちてないから倒し方だけ教えておく。上から剣で刺すか足で潰せば倒せる」


「まるでヒルみたいね」


「かわいそう」

 何言ってんだ?カタリナやモニカでもできる簡単な倒し方だぞ。

「それは戦闘よりイジメや殺しです」


「お前たちの簡単レベルアップ法と言っても過言ではないぞ。まあ50%の確率で逃げてしまうが」


「何か血を吸われて貧血になりそうね」


「そこまで言うならやめておこう」

 俺も血を見たり吸われるのは嫌だったのでやめることにした。もし出血して、臭いでモンスターが襲ってきたら危ないもん。


 それから、戦いに明け暮れた。俺が説明した敵の習性や行動を、その場その場で状況に応じ説明する。俺の指導不足分や補助はエリスが行った。

 モニカさんの魔力はすぐに底をついた。ファイヤーボウは使えて計四回ほど。

 そういえば言い忘れていたがステータス欄を見ると、記録の中に俺のモスグリーンに放った剣が一刀と載っていた。意識していないが仲間を助ける時に習得できたようだ。熟練度みたいなものもなく、意識してやったことではないので普通に修業している。

 よくゲームプレイ中にあったダメージの変化がこれかもしれない。スキル習得の前兆としてそれが現れるというやつ。それとも急所をついたか、剣筋が良かったか。


 ずっと外で戦闘の特訓をしていると二つの光球が地平線に重なる様に落ちていった。ここにきて考えるとあれは地平線ではなく、岩壁であるのがわかる。まあ遠くの岩壁なら視界で見た高さも低くうつるだろうけど、そこに隠れると夜になるのだ。


「ここまでにしましょう」


 待っていました、その言葉。すぐに帰ると酒場に行く。




 待ちに待った夕ご飯、酒場は人がいっぱいでテーブル席で話す人、カウンターで寛ぐ人で賑やかだった。


「もう少しだ、もう少しであそこに橋ができるぞ」


「楽しみだ。あそこを渡るとダンジョンがあるって話だぜー、すげぇお宝が眠っているかもしれないな」


「久々のお宝発掘!」


「それまでは俺たちもレベルを上げよう」



「何で知っているんだ?」


「知らないわよ」

 俺はテーブル席の端で、顔を寄せ合い話し合う。


「ドラゴンが知られているから、見つかっても不思議じゃない」


「そうだな」



「そう言えば、外のモンスターも多くなったな」


「俺なんか、ほらサンドワームの色違いだ、きっと高く売れるぜー」



「うっ、気持ち悪いよくこんな食事の席にそんなん持ち出すわねぇ」

 モニカさんが言った声があちらのテーブル席の奴らに聞こえたみたいだ、こちらを見ている。


「あれ、聞こえた?」


「そういやお前たち、前にも来ていたけど以前の仲間はいいのかよ?」


「そうだそうだ、ありゃー惨いよな。よくそんなこと言っていられるぜ」


「俺たちの戦力より低くレアも捕まえられないくせ、ダンジョンにいくからだぞ」


「馬鹿はさっさと寝な!」


 とても食事をする気分ではなかった。全員がアルスとセイラの体がどうなったのか知っているようだった。


「食べましょう、食べないと生きていけない」

 エリスはそういってスープを口に運んだ。


 俺たちも後に続いた。アッキーも強張って食べる。




 食事の後、体を清めるため教会に行った。神聖で安全な上、行きやすい場所だ。水魔術も考えたが、そんな原始的な方法でどう体を洗えばいいのか思いつかない。


 教会のシスターに聞くと

「まず、寄付をして下さい」

と言われる。


「!」

 セイラだ、教会で体を清める仕事の手伝いをしているのか。


「おー、セイラ!」

「あ!ライムさんどうされたんですか?」


「いや俺たちも体を清めに来たんだ」

 実は汗を流しに来たんだけど同じ事だろう。


「それならこのソープピーとハニーシャンプーを使って下さい。木の実と蜜から作られたもので泡立ちもよく艶立ちがいいので綺麗になります」


「おお、そりゃーいいものを、みんなシャンプーとかもあるって」

 セイラの方は俺たちの事を分かっていた。


「私、この世界で、ずーっと水だけで洗っていました」

 カタリナが泣いて喜んだ。


「運いいわね」

 モニカさんは楽天的に言う。


 アッキーは俺達から離れていて、エリスは髪を触っていた。


「着替えは、どうしますか?」


「みんな着替えは最初に着ていた私服を着てほしい。その後装備品を洗おう」


「それでしたら、これを使って下さい!」

 セイラが棚から取り出したバスローブ。服とパンツがこれ一枚で兼ねられる優れ物だ。見た目には白のローブで魔法使いのローブのように見えた。


「いいのか」


「はい。明日、教会に返してくれれば、問題ありません。私が洗って返しておきます」


「セイラ、ありがとう」

 みんながセイラにお礼を言った。


「それではこちらです」

 男女で清めの場は異なる。


「水は貴重なので、大切に使って下さいね」


「どれ位、使っていいんだ?」


「そうですね、体が清まる位です」


「分かった」


 清まる位って何リットル位だろうか?


 俺は服を脱ぎ清めの場(男用)に入った。すると男の白い銅像があった。その銅像は壺を持っていて丸い窪みに水を流していた。これは地下の湧水か?ずっと上から水が流れている。


 俺は水を桶のような器にとり、ハニーシャンプーで頭を洗い、ソープピーで体を洗う。濯いだ水で私服や装備品を洗った。シュミレーション通り、シュワワとウォッシングする。


「ここに入るのか。うわぁあっ、冷たいっ!!いや、冷たくないかな?ああっ気持ち良ぃ」

 おっとあまり水は大切なんだった。あとはタオルさえ忘れていなければ・・。


 がくっ・・、俺は、俺としたことが・


「どうする?アッキー、あー!」


 見るとベージュの布を持って拭いていた。

「それはなんだ?」


「サンドタオル」


 名前に街がつくので名産のタオルのようだな。


「どこにあるんだ?」


「エリスさんが、一緒に使ってと」

 アッキーは、その巨体を小さなタオルを絞って拭くのか。


「セイラ」

 呼ぶと、ゆっくりと清めの場(男用)に入ってきたセイラ。


「はい、なんでしょうか?」


「い、や、あのー、拭くタオルを忘れてしまって、何か借りれないかな」

 裸は見えていないが、そんなに堂々とされるとこっちが参ってしまう。


「ふふふ、それなら良いのがあります」

と足元が滑るので壁に手を掛け、ゆっくりどこかに歩いていくセイラ。


「これは何だ?」

 茶色のキャメルタオルを持ってきた。


「私のタオルを使って下さい。ラクーダの毛から出来ていて、とても触り心地がいいんです」


「いいのか、これ」


「はい」


 セイラ、おまえは神だ、神様でいい。俺はそう思った、セイラの眼光には嘘一つなかった。欲だらけの俺は、後ろめたく目を落としていた。


 体を拭いてから、教会のバスローブに着替え、私服や錆びない装備品を洗った。




 同じ頃、

「きゃーきゃー、パシャパシャ」

 女の白い銅像がある。その銅像は聖杯を持っていて、水は下にある大きな花のような包みの中に流れていった。男用と同様で地下の湧水か?ずっと上から水が流れている。その包みの中にモニカは入っていた。


「モニカさん、早く出てきて下さい」

 モニカが水を占領していて後ろが詰まっていた。


「わかったわー」


 水を浴びて髪と体を洗う三人。


「あれっ?水が流れないわ」 

 水が銅像から流れない、また丸い窪みに溜まった水はなくなっていた。


「モニカが教会の水で遊んでいるからよ」


「どうしよう」 


「モニカの泡は私が魔術で流すわ、カタリナはこっちへ来て」

 そう言ってタオルを壁の裏に隠す。


「流れる、帯は幾重に、大波!」

「アクアウェーブ!!」


「ザザザザザッ、バシャバシャン!!」


 天井にも届くような大きな波が三人の泡を流していった。その後、銅像の水は再び流れ出した。


「何、何か水がザプンッと来て!」

 桶が下に転がり、モニカのサンドタオルが水にぬれ床にベットリはりついていた。


「私のタオルがーっ!」


「天罰です!」

 すかさずカタリナの一言。


 モニカは、その後二人に拭き終わったタオルを借りたのでした、めでたし、めでたし。




「エリス、俺タオルなかったぞ」


「ライムはリーダーだから、アッキーに貸してもらって」

 やはりそんな扱いか、俺はリーダーだから我慢を強いられる。


「そっか」

 やはりお前は守護ではないか。まあ、俺はシスターセイラがいたから助かったけどね。






 宿屋に行くと、いつもより遅いからかご主人はいなかった。別の人がカウンターにいるので少し安心。なぜならエリスは教会のバスローブ姿だからだ。俺でさえ色々考え悶々とする。


 二部屋借り、そそくさと移動し部屋の前で分かれた。


 俺とアッキーは就寝準備、泊まる度にベッドと床の寝床を交替する。寝床の布団は受付で借りれたのでよかった。


「今日は俺、床でいいから」


「うん」 


 天井を見ながら俺はアッキーに言った。

「アッキー、お前はここに来てあまり話さなくなったけど事情があったらいつでも俺に行ってくれ。これから冒険は長くなる、お前との協力が大切だ」


「うぅん」


 アッキーは、すぐ目を瞑っていた。きっと両親や皆のことを考えているのだろう、俺も同じことを考えていた。あとは毎日どうしようかとか、これからの事。


 俺は心の中で両親と仲間にお休みと挨拶し眠っていった。




「エリスさん、今晩そこで眠らせてもらっていいですか?」


「えっ!?」

 カタリナの言葉にエリスは一瞬焦った。


 いつも一緒に寝ていたモニカは『メ』の体勢で既に寝ていた。


「モニカ、疲れたのね」


「いつもふざけていて明るいけど、内心は強がってます」


「どうして?」


「あんなに転がっているから」

「ふふ寝相が悪いのよ」


「私はもっとお役に立てたらいいんですが」


「今は毎日の修業を頑張って」


「エリスさん、私・・・」


「何?」


「いいえ、また明日にします」


「おやすみ」


 モニカ、カタリナも家族、仲間の事を少し考え、深い眠りについた。その後エリスも。

 魔術が出るたびに詠唱を考える。良いのが思い浮かばないので途中段階を一時的に埋めておきます、スミマセン。この世界は砂漠地帯ではありませんが、砂地で雨が降らない所なので水は貴重です(魔術では雨は降ります)

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