生活と戦闘 1
この街に来ても結局仕事が見つからなかったライムとその一行は、魔法加工場を見学することになった。魔法加工場は魔法使い、かつ女が多く働く場所であった。
「ねぇ、ここら辺でお昼にしない?」
エリスがこちらに優しく話しかけた。
「もちろん」
アッキーの一件からセイラにアルスと、食事の事なんて忘れていた。これが昼を過ぎれば腹時計もなって気づくだろうがせっかくエリスが気づいたのだ、食べよう!
「お腹ペコペコよ、何か昨日喧嘩ばかりで言い出せなくてー」
モニカが言うと、
「モニカさん、よく頑張りました」
カタリナからお褒めの言葉。先に来ていたのでカタリナの方が食事には詳しいと思う。お腹が空くと怒りやすくなるって言うから喧嘩に発展したとさえ言える。
「私も」
エリスもお腹が減るのか。
「遅い食事だな」
「いつもこの時間よ、この世界は食料が希少だから一日二食、それは農家をする土地が少ない理由があるからよ」
「へぇ、そうなんだ。作物とか作れるのか」
「そうみたい、他の街へ言った時に偶然見つかった作物から種を手に入れてね」
「ところでお昼、何?」
こりゃー珍しいアッキーがメニューを聞いてきた。目をやると顔に影が差している。この体格である、体重を支えるエネルギー消費をどこから供給するのか考えるのは当然だな。
「まだ決まってない」
とエリスが答えた、ので俺は尋ねる。
「それで、当てはあるのか?」
「もちろん」
「ところでカタリナは、今までどうやって食べていたんだ?」
俺は食料の在処を探るためカタリナに尋ねた。
「私ですか?私はヒーラーなので回復魔術で手間賃を頂き、酒場で安い料理を注文して食べていました。どうしても困った時は、どこかの冒険者ギルドに一時加入しGoldをもらって生活していました」
「そうなんだ」
「エリス、どこへ歩いているんだ?」
「見ていれば分かるわよ」
そう言って、商会から交差する四方向に分かれたうちの一つの道を歩いていた。
「あそこ」
街の市民がざわついて集まっている。
「なんだ」
街の住人の話声や歩く姿がたくさん。この街には、こんなたくさん人がいたのか!みんな同じ所に向かっていた。
女が布製の包みを抱えて俺たちの横を通り過ぎた。何か良い事でもあるのか?覗き込むが盛り上がった膨らみが入っているとしか分からない。まただ!カゴを持った男がいる、フタがしまっていて中は見えない。
「あれ」
「どうしたアッキー?」
「わぁ~、タッタタタタ・・」
子供の手には大きく丸い紫色をしたリンゴみたいなものがあった。
「あれか?」
この先に食べ物があることが分かった。
「エリス、この先に市場があるのか?」
「そうよ、この時間は食べ物を売っているの」
どこの世界にも存在する朝市や市場、それがこの世界で直接、食料を入手する方法である。
各家庭は朝の市場でオアシスの湧水やツリーシードのフルーツ、種、テントさんが生産したサンドライスやサンド小麦を買い込んでいた。その行列に気づき俺たちもすぐに並んだが、買えたのは種とサンドパン、水だけであった。
「これだけか」
「たまーにラクーダや馬の肉も売ってることがあるけど」
「可哀想」
とカタリナが言う。
アッキーにはそっち方が良かったと思うが、乗り物になってくれているお前たちを食べる事は可哀想だと思う。
「カタリナ、いつかは死ぬ命だ」
「そんなの可哀想すぎです。この世界に来てしまった動物も同じように生きたいと思いますよ」
とカタリナは食料とすることを否定した。
モニカさんはそのカタリナの姿を横目で見ていた。
列に並んでいる時にエリスは一人でどこかへ出かけた。買い終わるといつの間にか合流、どうやらアイテムショップでスプレッドクローズを買ったらしい。
昼ご飯は商会から教会に行く途中の広場で食べる事になった。ここには穴ぼこがいくつか空いている場所だ。
以前の俺たちはテントさんの家の畑の水を使わせてもらっていたが、飲み水でこれだ、水が少なすぎて体が洗えない。あまりにも水が貴重なため、みんなこの世界では体をどうやって洗っているのか?気になり市場で尋ねると、教会の身を清める水を使ったり、オアシス湖から運んだ水や魔術の水(雨)がそれらに使われるそうだ
まったくここは不便である。
お昼ご飯をとりながら、俺たちは穴の開いていない場所にスプレッドクローズを引いて座わりピクニック気分で朝&昼食をとった。
俺はバイトに行く前のように空を見た。普通に呼吸ができているから酸素は申し分ない。無いのは景色くらいだ、空は砂が舞い上がり黄色くなって何も見えなかった。
空を見ながらパンに茶色の実を埋め込んで噛む。乾燥したパンとカリッとした硬い実でほろ苦い味になった。今度は少しすき通る赤黒い実を埋め込んで噛む。乾燥したパンとしっとりとした甘い実で甘い味に変化した。
この穴ぼこは何の穴なのか?蛇や土竜の存在は、まだ一度も聞いたことがない。この世界は不明な部分が多いな。
「これからどうするんだ、エリス?」
「決まってるわ特訓よ、私が教えられる日は、明日から数えてあと十八日間。今日は午後から外で戦闘訓練、そして夕食、就寝の予定」
「僕は・・」
「アッキーは戦士だから力のあるモンスターに対抗する事ができるように特訓する。いくら魔術で回復しても、それに耐える体力と力がなければ全滅するから」
遮るようにエリスは言う。
太っていれば力があるように見えるのだが、実際は違う。ただ、この世界では多少その要素があるように感じられた。制約を受ける分、得れる職種分もあり・・と。
「アッキーさん、別に戦わないでモンスターから逃げてもいいですし傷は私が治しますから心配しないで下さい」
カタリナが添えるようにアッキーの方を見て言った。
「おいカタリナ、敵と戦わなかったら経験値が貰えないしレベルも上がらないぞ」
「逃げてもあたることはあたるけど・・」
エリスが横から言う、そうだったのか?知らなかった。
「アッキーさんは無理をしないで下さい。はいっ!」
カタリナがアッキーに紫色のリンゴを手渡した。いつの間に買っていたのか、よく買えたな。
「ちょっと、それもしかして魔女の毒入りリンゴじゃない?」
せっかくカタリナが良い雰囲気を作っていたのに何を言うんだ、モニカさん。
「魔女はモニカさんです」
「なら食べてみて、ほら」
「ザクッ、モグモグ」
「ほらー美味しいですよ」
「はい、アッキー」
「ザリッ」
アッキーは抵抗なしにムシャムシャ食べた。早っ!
「なんですか毒見ですか?」
「こういうイベントもあるの」
「それイベント自分でつくったんじゃー」
「こういうのもカプリッ!」
こうなればモニカさんお一人天下。モニカが暴走した。
モニカさんがカタリナのパンにかぶりついた。
「それ私のパンです!」
「イベントよ!」
「あ~ん」
「ちょ、ちょっと食べないで・」
パンを取り合う二人。しっちゃかめっちゃかやった挙句二人は睨み合う。
「はぁはぁ、はぁはぁ」
「はぁはぁ、やっと取り返しました」
「これで三度目、仏の顔もサンサンドまでです」
カタリナが怒る。
「サンサンドが、なーに?」
「ガボッ!」
カタリナはモニカさんの口にあえてパンを突っ込んだ。
「そんなに食べたいなら存分に食べてください」
「ままま、」
「私には、先制攻撃もありますからっ!」
「ケホッ!はぁはぁはぁ、息が出来ないわよっ!お返しーっ!バックアタックもあるかも!」
「ももも、」
「ゴホッ!」
「はぁはぁ・」
「はあはぁ・・」
こうして二人は思う存分、齧り合ったのだった。
食後三十分ほど休憩してエリスはみんなに声をかけた。
「じゃあ行きましょうか、まずはその服をどうにかしましょう。そこでみんなの武器と防具を一式購入します」
「はいはいはーい、安くて丈夫なら何でもいいでーす」
挙手するモニカ。
「モニカはコットンローブとプラント靴、ハローロッドでいいわね」
「えーっ、ハローロッドはカタリナにして。私はもう少し良いのがほしいっ」
「それってエリス、魔法使いとヒーラーは一緒の武器でもいいのか?」
「ハローロッドは兼用だから、どちらが使ってもいいわよ。専用だとその職種のみ使えるわ」
「もう少し高いロッドを購入できないか?」
「なら、やめましょう」
「ここに来たのは俺のせいだから、我がままの一つも聞いてやりたいんだが。それに弱い時ほど武器は強い方が良いって言うからさ」
エリスは少し考えていた。その間にカタリナはキャタピロッドからハローロッドに装備替えする。
「買えて、これかな」
グレアロッドをエリスは手に取った。
「なんかグロい輝きね」
歪な虹色をしているロッドをモニカは掲げた。
アッキーには木鉄の斧とトータルガードを購入した。アッキーはすぐに装備。かわりにメニューバーでアイテムの一覧に着ていた服が????と表示された。
「それじゃー、外にいくぞ」
俺たちは街から外にでた。最近の変化でモンスターにはすぐ会えるはずだ。
外に出ると、すぐにボルフライが現れた。
「早速敵が出たぞ」
「何あれー!」
「きゃあ~!」
「私ばかり、どうして変なモンスターに好かれるのー!?」
匂いが原因かモニカさんの頭上にばかり集まるボルフライ、ハエのようにたかっている。モニカさんは逃げるがボルフライは離れない、下りてきて掴みかかる。
「カシッ」
「逃げろ!」
「きゃー!」
かわしたモニカさんだったが地面でもボルフライは執拗に追い回す。逃げる時にモニカはロッドを手放した。ボルフライは気に入ったのかロッドを掴んで空に上がっていった。
「武器は離さないで!」
エリスは魔術を詠唱、
「射よ、突き刺す炎矢!」
「ファイヤーボウ!」
「ボワッ、バボシュッ!」
「カッ・・・・・・・・・・カランッ!」
ボルフライの体に炎矢が直撃し、手からグレアロッドが落ちた。
俺はアルスから習った事をみんなに教えた。ボルフライはこちらに近づいて掴むと、空に連れて行き、上から落として攻撃をする。敵が前進したらこちらも前進するが先にすること。そうすれば敵は身を翻し逃げようとする。その隙を他のメンバーが斬りつける。また微かに動くと敵が警戒して襲ってこないことも話した。
「ロッド狙いみたいだったけど」
「それはないと思うぞ」
「それよりモニカ、あなたロッド手放してどうする気だったの?」
「え?逃げる気だったっていったらダメかな?」
「せっかく高価な武器を買ったのに無意味だったわね」
「そ・」
モニカは何も言えなくなった。
次に現れたのはモスグリーン一匹。
「あれよエリスさん、あれにやられたの」
アッキーが震えていた。かなり鱗粉散っていたからトラウマになっているのだろう。
俺はメニューを開いた。そして履歴をアッキーに見せて振落の解説を教える。だがアッキーは手が震えて木鉄がうまく持てない。
「おい、モスグリーンがアッキーの頭上に位置しているぞ。アッキーそこから逃げろ、こっちだこっち!」
手招きするが動かない。ちっ、またか、俺はアッキーにタックルした。
「ドッ!ズササッ・・」
アッキーとともに地面に倒れた。もしも空中に連れて行かれたらアッキーは重さの分だけ加速度が増しダメージが大きくなる。脂肪の防御力もそんな期待は出来ない、おそらく死ぬ。
モニカ、カタリナはエリスの後ろで様子を見ていた。
「簡潔に言うと、モスグリーンは上から下に落ちるようにタックルする!だからかわして、そこで斬るっ!全員小刻みに動くんだ!」
俺は、モスグリーンが落下するように降りたのを退いてかわす。
「アッキー見てろ!!!」
「ザザザザザーー、ジャジャジャ!!」
前方へトトンとスライディングしモスグリーンに接近、勢いを利用し剣を振り下ろした。
「ズシュッ!!」
剣がモスグリーンの顔を斬る!
「バササッバサッ、バササッ」
逃げるように飛ぶモスグリーン、だが羽を動かす力が弱い。
「バサバサ、バサ・・」
羽が止まって落下していく。
「バサッ・・・・ドサッ」
「ひっ!」
モスグリーンを倒し動きが止まっても、アッキーはその姿を恐がっていた。
「アッキー、これから自分の命は自分で守るんだ。そうしないと自分も仲間もやられてしまう」
「・・・」
モニカとカタリナ、エリスはアッキーの姿を黙って見ていた。
「おっ、あそこにペンタンがいるぞ!」
「タイヤのように土の上に転がっているモンスター、こちらの足音に気付いて起き上がり回転し近づいてくる。直進してくるから構えて直前でかわせば問題ない。
ペンタンは急に曲がったりは出来ない。戦闘はモンスターの特徴・特性を覚えていけば楽勝だ。ただ各々単純でも数が増えれば増えるほど複雑な攻撃になる。人数がいる分、一人につき一匹相手が出来れば戦闘もやりやすくなるはず」
「よし」
「それなんだけどライムとアッキーは攻撃的な武器があっていいわよ。私らなんてロッドじゃない?そんなのでビシバシ叩いても切りがないと思うの」
とモニカさんが言ってきた。
「モニカには魔術を教えるから」
「何々?どんな魔術」
跳びつくモニカ。
「ファイヤーボウよ」
「一度、見たあれよね。詠唱は何だったかしら?」
「ちゃんと覚えて。射よ、突き刺す炎矢、よ」
「見てて、みんなー」
「射よ、突き刺す炎矢!」
「ファイヤーボウ!!」
「ボワッ・・」
失敗、した音でペンタンに気づかれた。こちらに向かってペンタンが回転してくる。
「ライムお願い!」
「仕方ない」
俺はペンタンを構えてかわす、転がっているペンタンは背中をとられて対応出来ない。殻は固くで武器は通らないから、乾燥でひび割れた体の節と節の間に剣をさすっ!
「うっぉおお!」
「ガッツ!ギリ」
「ピクッ」
外した!突き刺さらない。しかしペンタンは微かに動いた。
もう一度だ、さらに俺はペンタンの後ろに回った。
「うぉお!」
「ガガッ!スーーーッ」
「おおおお!」
剣がペンタンの体の中を通るように剣が刺さった!ように見えたが表面だけで、見間違えた。間合いが近すぎたようだ。
「バダンッ!!」
「ボフッ!!うぐぁっ!!」
「サザ、ザザザザーーッ!!」
俺はペンタンの回転に巻き込まれ吹っ飛ばされた。ミスしたんだ、隙ができて攻撃を受けるのは承知している。
「ザシュッ!シュパッ!!」
俺が落とした剣を拾い、エリスが突き刺した。
『エリスはロングソードでペンタンを突き刺す。何とエリスはペンタンを倒した』
エリス、お前は何者なんだ――。
読み返し読むと、もう混乱している。ここからは戦闘訓練が始まります。剣と魔術、それぞれを使いモンスターと戦う。
書けないので飛ばす、ロッドに杖に錫にワンドに・・・うわぁ~、頭が回る。




