開放と変化 3
エリスは酒場にいた沈黙の女ヒーラーことカタリナを仲間にしていた、カタリナはアッキーを治癒した。眠ったアッキーと一緒に全員で宿に行くと、エリスは全員にアルスとセイラの事を話した。そして次の日、その二人に会いに行くことになった。
「これから二人に会いに行くけど、準備はいい?」
「昨日あれだけ考えたんだ、俺は大丈夫」
「私とアッキーは二人のことを知らない。だから私たちはライムの仲間として会うつもり」
「私は先日、教会でセイラさんを見かけたから知っています」
「それじゃ、まずアルスに会いに行きましょう。アルスはギフテーク商会にいるわ。ギフテーク商会は街の中心にあってギルド同士の揉め事や喧嘩、戦闘、モンスターが街に出現した時もその解決にあたる仕事をしているの」
ダンジョンでの戦闘後、アルスはこの街のギフテーク商会に所属したのか。
「今もアルスはモンスターと戦えるのか?」
「いいえ、戦闘は負担が大きいから商会や協会に連絡したり、街の人の避難を誘導する仕事をしてる」
「それ危険じゃないか?辞めさせた方がいいと思うけど」
「それはアルスに聞いてから判断しましょう」
アルスが選んだからその選択に間違いはないと言いたいのか、とにかく行ってから判断しよう。
商会に着く。
街の中央に商会があるのは、街のどこで何が起こっても対応するためである。ドアから見ると商会の中には人影がいくつも見えた。
「おい、早くしろ!夫婦喧嘩がすごくて、街のあちこちに被害が出ていると近くの住人から連絡があった」
「ま~た、ニックとぺティーナの二人だな。用意が終わった、行こう!」
「俺たちはニック夫妻の家まで行ってくるから!テラ、あとの処理をたのむ」
「はい、わかりました」
ギフテーク商会から二人の男が出ていった。
「ほらライム、あなたから行きなさい」
「そんな、もじもじしていないでライム」
エリスと一緒にモニカさんまで俺を押す。いずれ会わなければいけないんだが。
「お」
「あ、」
入り口からすぐの場所にアルスが立っていた。
「ライム、おまえはライムか?」
「はい、ライムです」
驚きに満ちた表情と声のアルスが俺に近づいてきた。
「あれから、どこ行ったのか探したんだぞ」
「すみません、自分でも状況が分からなくて」
「それでライム、お前は怪我はなかったか?」
俺の体の所々をみるアルス。
「はい、運よく怪我はありませんでした」
俺はアルスに気を使い敬語になってしまった。
「そうか、そりゃよかった」
「いえ」
リーダーの俺が先に体のことを心配しないといけないのに言い出せなかった、俺は申し訳ないと思いつつ答えた。
「俺は、ほらこれだ。命からがら逃げ出せたからよかったが」
右手が肘でなくなり包帯が巻かれていた。まだ完全には回復していないようにも見える。
「俺には、もうギルド冒険者は勤まらないから商会の仕事に転職することにしたんだ。元々冒険のこと以外は何もしらない俺だ、他にできそうな仕事はなくてな、ははは、は」
「そんなこと・・」
「お前が辛気臭い顔するなよライム、なんせ俺は”ドラゴンから逃げ出した男”だぞ。
最近この街ではドラゴンが人気なのを知っているか?最初は俺も知らなかったが履歴のモンスター欄に偶然、そのモンスターの名前が残っていていたんだ」
≪エンシェントドラゴン 金の咆哮、????≫
「大きなモンスターに腕をやられたと言うと、特徴がどんなだったかしつこく聞かれて大変だったんだ。それで表示を見せるとこれが世紀の大発見。この街の図書館にも記録され大騒ぎになったんだ。早速、その本で新しいモンスターを知ろうと図書館には街の住人やギルドが押し寄せた、遭遇した俺は一躍有名人ってわけさ。この商会に入れたのもその功績のおかげなんだ」
「それはよかった、それでここの仕事はどうです?」
「そうだなー、ここ・・」
「はぁはぁ、あのー商会の方でしょうか?はぁはぁ、ま、街の木のある高台に、モンスターが出た!街の角の家の住人が危ない!!」
木のある高台と言えば、テントさんの所か!?
「誰か!!アルスは商会の中に走っていった」
体が安定しないのか少しふらつくアルス。
「テラ!モンスターが襲ってきたらしい早く応援を!」
「アルスさん、さっき出計らって誰もいません」
と受付のテラが申し訳なさそうに答えた。
「ここに俺とテラしかいないのなら俺一人で行くぞ」
「それは危険です。せめて戻って来るのが見えてから」
受付のテラが制止するが、アルスは話を聞かない。
「大丈夫、ここに冒険者仲間がいる。それじゃ皆、時間がないから行くぞ!」
アルス他、こちら四人が木のある高台へ急ぐ。
「あれはボルフライ!!」
「アルス、俺たちに任せてくれ」
俺はモンスターを引き受けた。
「いや待て、ここは俺が自分で片づける」
「アルス、お前には腕がないんだぞ」
「そうだ、だからこうやるんだ」
アルスは腰に付けた袋から何やら取り出し利き手と逆の手(腕が付いている手)で放り投げた。
「おりゃ、おりゃあ、お~りゃあー!!」
段階的に遠くへ放り投げた物が三つ、芳しい香りを放って飛んでいく。その匂いにつられボルフライは投げた球を追いかけて飛んでいった。
「それは?」
「フードコロン」
≪フードコロン モンスターの好きな香りつけた疑似餌、遠くへ投げられるよう球になっている≫
「これが俺の戦い方だ、時間さえ稼げればあとは家の中に避難したりどうにでもなる、助けを呼びに行く時間も稼げる」
「カラン!カラン!カラッ!カラン!カラッ・・・」
教会の鐘が何度も鳴った。
「合図だ、あれはモンスターが街を襲ってきたことを街の人に教える警鐘。テラが教会まで走ってくれた、これでひとまず安心だぞ。街の人は皆、家へ避難した頃だ」
「テラ?ってさっきの受付の女の人か。モンスターが出た時、教会に行くのが仕事か」
「俺とテラは二人で、いつも留守番だ。俺はその他、雑用もやっている」
「そうか、お前には新しい仲間ができたんだな」
「ライム、さっき俺はお前を冒険者仲間とテラの前で言ったが今は友達だ。だがこれでは、お前のお荷物にしかならない。だから俺は商会にいる。
お前はこの世界を旅しろ、そしてその話を聞かせてくれ。それを元に、俺は街の発展に役立てたい」
「そうするよ」
俺を必要としてくれているんだ、目に涙が浮かんだ。手をなくしたアルスだったが、新たな希望と未来が出来たんだなと伝わった。
「そこの三人はライムの仲間か?」
「うん、アッキーとモニカさん、カタリナです」
「お前、戦士だろ」
「ぅん」
「そうか、それならもっと体を鍛えないと、俺みたいになってしまうぞ。しかもそんなに目立つ体だ、モンスターがウヨウヨと襲ってくる」
アッキーの背中とお腹をバンバン叩いて念を押すアルスに、うんうんと頭を下げるアッキー。
「そちらは魔法使いか?」
「そうですけど」
「エリスさんはすごい魔法使いだからしっかり魔術を学ぶんだぞ」
「はい、エリス先生に魔術の神髄を余すところなく教えて頂きます」
先生?何か話が変わってないか。昨日絶縁(破門)状態になってたはずだが、エリスの方はモニカさんの方を見ていた。いいのか、何があったのか正に魔術だ。
「で、そこ二人はエリスさんと新しいヒーラーでいいか?」
「ええ」
「はい、私はカタリナと言います」
「以前どこかで出会ったような・・」
「おそらく酒場で会ったのでは?」
「おお、あの時の!!」
「それなら俺より街のこと、モンスターの事も分かるかもな」
「いえ、そんな」
「はは、謙遜するな」
「四人ともライムを頼んだぞ」
「ぅん」
「ええ」
「任せて」
「はい」
「よし(木のある)高台に来たついでだ、セイラにはもう会ったか?」
「いや、これから会いに行く予定だけど」
「それなら俺も一緒に行こう!」
俺たち六人は教会に行きながら、世界の事をアルスに教えてもらった。
「世界は、サンサンドの街を中心として外はずっと道を行くと岩で囲まれている。その途中にオアシス湖やツリーシードの森があるわけだが、二つの街は、この街の発展のために出来たんだ」
後から建てられたということかな。
「この土地の主要産物は岩つまり鉱物で他に水、木々を合わせ三つある。ただ、水や木々は決まった二か所にしかなく、どこでも採れるのは鉱物のみ。あとは馬とラクーダがいるくらいか」
「馬とラクーダはいつからいるんですか?」
「それがな、他の場所からやって来たのか、突然この地に現れたんだ。オアシス湖やツリーシードの森の食料を食べるから最初はモンスターと同様に倒していたんだが、他はおとなしいから捕獲して使ってみるとこれが便利、それからは移動手段として重宝している」
「なお、Goldは採掘場から出てきた金色の鉱物を溶かして固めたもの」
「へーそんな技術が~。ところでどうやって溶かしているんですか?」
モニカさんが不思議そうに尋ねた。
「それは魔術で溶かしている」
「それじゃー、家を建てる人とかもいるんですか?」
「そうだ。魔法使いは家を建てるために鉱物を溶かす仕事につく、さらに建てる仕事はまた別の職業の仕事だ。魔法使いの職種を選ぶ女が多いのは鋼材を作れて、それで生計が立つからだ」
「着いたな」
教会の周りには誰もいなかった。扉を開き中に入ると長椅子がいくつも並んでいる。その椅子に座っている人が数人。今はモンスターがいるから警戒して誰も来ないのだろう。
魅了する蝶の羽のような模様をしたステンドグラスの窓が、教会を一層彩り豊かなものにする。歩を進める度、蝶がひらひらと羽ばたくように模様を変える、それでいて窓だから平面で硬い。この土地に現代技術の物があるのかと目を疑う。
「すごい綺麗な窓」
「そうだろ、教会の窓は透き通る鉱物の特徴を活用して作られているんだ」
石英のようなものから特殊な鉱物まで使っている。
「ここで待っててくれ」
アルスがセイラを呼びに行く。
すぐに、セイラは錫杖をもって前方に端を当て、ゆっくりやって来た。
「セイラ、今日は珍しい物を見せてやるぞ!」
「何ですか?アルスさん、私は見えないんですよ」
「それがな、ほらっ!」
アルスは俺の手をとりセイラの手にくっつけ上から握った。
「お前の待っていた人だー、驚くぞぉ!」
「??ももも、もしかしてライムさんですかぁ!?」
「そうだ、ライムだ!」
「アルスさん冗談はやめてください。ライムさんは死んだのでは・・・」
「でもこれは、誰だ?」
「大人の手ですね」
戸惑っていたので俺はすぐに言葉を発した、
「セイラ、あの時は助けられなくてすまなかった」
「その声は、ライムさん!生きていたんですね!あーよかったぁ~」」
セイラは声が上調子になる。
「俺は生きている」
「私だけ幸せになったら不公平だと思っていたんです」
「幸せって何かあったのか?」
「はい。実は私は、この教会のシスターになれたんです。夢が叶った上に、毎日素晴らしい日々を送る生活です」
「それは俺も嬉しいぞー、俺も幸せだ」
「昨日すごいことが起きたんです。私は足をつまづいて頭から倒れたんです。そしたらフワッ体が宙で止まりました、私はもう片方の足を出して体勢を戻しました。怪我なく無事済んだのは、きっと天佑のおかげです!」
天佑か~、
「セイラは日頃の行いが良いからだな」
さっきから、あそこの子供たちがこちらをチラチラみている。
あれは遊んでいて怪我をした子供たちだ。セイラが治癒してくれたお礼に、セイラの補助をしているんだな。全力でローブを押さえたんだろう。
「私はいつか、いつでもいいんですが魔術で自分の目が治せたらいいなと、新しい夢をみています。夢は叶ったのに新しい夢を抱くなんて贅沢かもしれませんね」
「いいや贅沢じゃない。叶うといいな、次の夢も。俺も手伝えることがあったら協力する!」
「はい!」
セイラは明るく返事をした。
「また会いに来るよ」
「楽しみに待っています」
顔全体でつくられた笑顔は輝いていて希望溢れるものであった。
セイラは楽しく過ごせているみたいで俺は気持ちが少し安らいだ。これ以上ここにいても居た堪れないので、俺たちは一度ギルド協会を見にいくことにした。
それぞれが、どんな状況になっても夢と希望を抱き人生を前向きに進んでいる、そんな姿を表現したいと思い書いています。街の設定が増えると、補足内容も増えます。




