5話 生まれ変わり?(Re-in-carnation)
仲間に異世界の事を話した所、アッキーが協力を申し出た。覚悟の上でアッキーは金曜日にテレビCMを見た、そして土曜日全員がMeellで連絡をとる。
ん・・・
痛ぃ、
無理矢理、引っ張られた。
感覚的に言えば位置情報の変化で、頭のズキッとした痛みが体の痛みへと変化した状態と言えばいいのか。
「あいたたた」
と他人の声が聞こえる。
「おいアッキー、大丈夫か!」
俺は痛みに耐えながら、声が聞こえた方へ呼びかけた。
痛みが和らいできたので、俺は目を開いた。すると左横に目を閉じたまま、しかめっ面で痛みに堪えている太った男がいた。
しばらく、それをじっくりと眺めていたら、
目が合った。
その太った男の目が俺の瞬き一つの間に開いて、こちらを見ていたのだ。太った男はこちらから視線を外さない。その顔は焦りと衝撃に満ちていた。
なんだ?
二人とも体を起こす。これがアッキーと初対面。
「はじめましてアッキー、俺はライム」
俺は相手の反応に話しかけるか迷った。だが服装はこちらの服ではないのでアッキーなのは間違いない。
「は・じ・め・ま・し・て」
アッキーは片言の返事で言葉がおぼつかず、挙動不審でだんだんと声が小さくなった。
「アッキーだろ」
「アアッキーだよ、僕アッキー。こんな体でゴメン。キャラデザは面白い方がいいかなと思って」
俺に合わせ、慌てて返事をするアッキー。
「そうだ、アッキーだ間違いない。はははははは」
「あはっははっ」
アッキーも笑う。
「それはそうとアッキー、なんだその恰好は?」
青Tシャツに灰色のゴムパンツの出で立ち。ジーパンにジャージは女神様の事を考えていて、着替えるのを忘れていた。
「そんなよわっちい格好だとやられるんじゃないか?」
「それが、武装されるかと思ったんだ。ライムも同じだよぅ」
「そうか、俺は街の人になめられないようにオシャレしてるぞ」
俺はチェックのシャツにカーゴパンツを履いて来た。あまり変わった服装だと怪しまれるから、この世界に合う物を選んだ。
「いたたたた~」
「!?」
「!!?」
誰かの声、俺とアッキーの声ではない。
辺りを見回すと砂地の中に一箇所、不自然に盛り上がった小さな山があった。この地には珍しい斜面と起伏。
「なによこれ?」
砂の頂から声がした。
俺とアッキーは声のする頂を凝視した。
起き上がり立ち上がる謎の黒影・・。
「あ!」
「お!」
「・・!」
絶句するアッキー。
「お前は!」
「あんたは!」
「モニカさん!?」
「ライム!?」
スタイルの良い、綺麗なシルエットの正体はモニカさんだった。モニカさんは白のニットを着てデニムのパンツ、サンダルのような靴を履いていた。
「どうしてここに?」
「それは私が聞きたいわよ」
「もしかして外で上を見ました?」
「見た・・わ」
「見たらダメですよ、モニカさん。あれほど言ったのに~、ああっ!」
「う~んん、だよねぇ」
「そうですよ。俺は仲間が増えるのは嬉しいけど本当に良いんですか?」
「う、うーん」
視線を落とし俺の足元をみるモニカさん。辻褄が合っていないわけではないが納得がいかないらしい。
「どうしたんですか?モニカさん」
俺は笑顔で話しかけると、
「間違いなくここは違う世界の気がする。どうしよう・・。私は嘘かと思ったの。でもやってみないと気が済まないじゃない?二人で明日、遠足に行くとかハイキングに行くとか楽しそうにMeellで会話するんだもん」
今度は必死な顔で語るモニカさん。
「言ってません」
ピシャリと俺は述べた。
アッキーも視線をこちらを見る。
「冒険に行くんでしょ」
とモニカさんが言う。
「それは当ってますけど、ヤバイ方の冒険です」
「わかったわ、いいわよやるわよ。そこまで言うならやってやろうじゃないの」
立ち直りの早いモニカさん。
「ところで横の太っちょさん、あなたがアッキーでいいの?」
「・・・」
何も言わず太った男は頷いた。
「ビジュアルにこだわらないのはいいけど、それだと冒険者失格じゃない。服装はともかくとして剣とか持った時、体重と一緒に支えなくちゃならないのよ。わかっててそんな体格にしたの?」
「僕はそこまで・・・」
アッキーは気が弱かった。
「元気がないし気が弱い、聞き役ムードメーカーのアッキーが台無しかな」
「それとも変身モンスターだったりしてw」
「でも、もしそうだったら倒すわよ。正拳突きとかで」
現実のゲームの時と同じモニカさん。いきなし顔合わせでアッキーに決闘挑んでる。冗談だろうけど、この世界でもなじられキャラのアッキーは変わらなかった。
「僕はアッキー、頼りない冒険者」
感情のない言葉だったがアッキーは言い返した。これは慣れるまで時間がかかりそうだ。自分で作ったキャラが文字から声に変わるんだ。誰でも対応には遅れをとってしまう。
だが、
「ふふっ」
「あはは」
俺たちは吹き出さずにはいられなかった。
最近のTVアニメやゲームと言えばガタイの良い冒険者しかビジュアルには使わない。まして太っちょなんて加えようとも考えない。発想の逆転なのか、これはこれで面白い。
「でもアッキーは珍しいわ」
「そうだ、レア冒険者になれるぞ」
アッキーは顔をぷんぷんしていた。
「あはは、なーにむくれてんの。もう言わないから怒らないで。逆に、のしかかりとかタックルできるから強いとか言えばいいのよ。あはは、でもそんな技、戦士は使わないけど」
「慣れてる」
アッキーが関心してモニカに言う。
「来ちゃったものは仕方ないからさ、でもやるからには真剣よ!」
モニカの表情が真面目になった。
「アッキー混乱しているんです、モニカさん」
「私は、もう落ち着いてきた」
モニカさんの第一印象はスタイルの良い女性。髪は栗色でクロワッサンのようにクルクルとしたカールにシャープナーが入る感じで、唇はツンとしたホワイトピンク。
女だとそういうキャラ選択・設定もできるんだなと感心したのも数十秒、アッキーが周りをキョロキョロしていた。
「どうしたんだアッキー?」
「女神様は?」
「女神様?ああー司祭の女か。以前もいなかった」
「誰よそれ?」
「ルーレイファワークのCMは見てませんか?」
「見てない」
「そうですか。とにかく、もう日が暮れています。今夜は休んで明日から活動しよう」
「それでライム、どうするの。まさかカマクラみたいなのを土をこねくりまわして作るとか言うんじゃないでしょうね?」
「どこの国でそんなことしてたんですかw」
こんなさらさらな砂だと掘ることもできないぞ。
「アッキーはどう思った?」
「・・・」
アッキーは焦点が合わず下を見て思い耽っていた。
「アッキー、この世界で一段と静かだけど元の世界で何かあったの?お姉さんが人生の先輩として相談にのってあげるから、なーんでも話してみなさい」
「ありがと・う。ミニカさん」
間違え探しじゃないが名前を間違えた。モニカさんは猫のように目を細めアッキーを見た。アッキーは視線に困り目を伏せた。
「そうだ、話しておきますが、この世界で俺リーダーなんです」
頷くアッキー。
「ライムがリーダーなの?ゲームで右も左もわからなかったライ麦みたいな名前のあなたがねー、すごいわ。このゲーム」
「この場所で馬鹿にされたのは二度目です」
「私、他に何か言った?」
「いいえ、言ってません」
期待させるから、まだ言うべきではないな。魔法使いエリスの事を。
「それより、ここにいるとモンスターが襲ってくる可能性がありますので街まで移動しましょう」
「街?それを早く言ってよ」
「すみません、では急ぎましょう」
アッキーは何も言わず、俺とモニカさんの後を歩く。
俺たちは、草も木も生えてない砂地一帯から冒険が始まった。まずはサンサンドの街を探す。
歩けど歩けど街の影も形も見えて来ない。それどころかモンスターの気配はむんむんとして増えていった。空で羽ばたくボルフライ、砂地で横たわる団体のペンタン。
俺は最初の冒険のステータスは引き継がれていた。技に一刀とダッシュ、アイテムにロングソードとトータルガードとあった。元の世界へ行った時、装備品は外されたようだ。
今にして思えばどんな場所かも分からないのに、こんな安価な武具だけで行くとは何と愚かな事をしたのかと思う。
ゲームのRPGなら、もっとアイテムや魔術、技を覚えてからダンジョンや洞窟に行くのが鉄則。それが現実で生身の体なら尚更、そんな甘い考えだから正社員になれず、アルバイトから昇進も出来なかった
のだ。
今度は、最初から用意周到に抜け目なく万全の態勢をとって、旅立つ先を研究しつくす。
「なーんか、ライム気を張ってるわね」
「俺は一度死にかけたから」
「まっ、ゲームでは私たちの方が先にやっていたから強かったのは理解してるわ」
「ところでモニカさん、何か魔術とか使えますか?」
「いきなり何言うの?ゲームは上級者だったけど、この世界はど素人で、初心者よ」
「ライムのそれって、普通に出るの?」
アッキーが俺に尋ねた。
「いや違います」
「そんなライムばっかり教えてよ。ゲームの時、私も教えてあげたじゃない」
「もちろんです。それではメニューの開き方を教えます。手の甲を三回タッチして下さい」
俺はモニカさんとアッキーの二人にメニューの開き方を教えた。
「わぁーメニューよ!現実に目の前に出てるっ!」
「すご、い」
「ライム、魔法のことなんだけどメニューの魔法の欄に覚えていくと書かれていくの?記述式みたいに」
「おそらくそれで合ってます。それと魔法使いが覚えるのは詠唱つきの魔術の方みたいですよ。詳しく知りませんが、魔術は習ったり書物を読んだりして覚えられるそうです」
俺の話にモニカさんは聞き入っていた。
「魔術ね、これからそう言うわ」
エリスの使った魔術と言えば・・、
「魔法使いはアースレインだな、これは媒介が必要で他にアンチロックとか覚えられるのかな」
「媒介?」
「合体魔術で水と土を合わせたもの」
「それって・・高等魔術でしょ。それをライムの仲間が使ったの?」
「いいえ、それは別の冒険者が使って」
「でも戻ってきたわよね。高等魔術が使える魔法使いがついていんでしょ」
「まあ、エリスという魔法使いがいます」
「それで殺されかけたの?」
「そのドラゴンが出て」
「ドラゴン!?」
「それは負けるわ。ドラゴンは天空にいて何千年も生きている伝説の生物よ、炎吐いたりしたら丸焦げ!で負けたのね?」
「はい、それで戻ってきました・・。あと戦士は振落しかわからない、すまないアッキー」
「いいよ」
「魔法や剣によるスキル・技や魔法は言葉と動作によって発動するから」
など俺が知っている事を全て話す。
「俺は武器と防具をアイテムとして持っている。このままの方が動きやすいが外だと危険だから装備しようと思う、見てててくれ!」
メニューを開き、空に浮かんだ画面の装備欄のバーを手で押してとりかえた。すると俺の服が消えるのと同時にトータルガードに覆われる。着せ替えマジック並みのはやさで裸体が見えない。と思う。
「へぇ~いいわね、その鎧と剣」
「うん」
「そうかな、さあ街へ急ごう」
まだ俺は初心者を抜けた冒険者、戦闘経験のないモニカさんとアッキーを庇うのは不可能。さらに連続の戦闘となると今のステータスではやられてしまうのがオチだ。
だから、俺たちは駆け足して砂地の荒野を進んだ。
だが街が見つからない、進んでも進んでも。
「どうなっているんだ、以前と違うのか!?」
「はぁはあ~、ねえライムどうして街がないの?」
「いや、ここにあるはずなんですよ」
「ぜぇぜぇ、っ・・・!?」
と息をしながらアッキーも俺の方を見た。
「んんっ・・くはぁ、ここにあったのぉ?」
「あった」
俺は何も言えなかった。この場所は間違いないはず。
Reincarnationはいくつかの単語から来ているそうです。この物語では生まれ変わり風な感じと砂地の(肌色の)中へというイメージでつけました。再度、戻ってきたという意味も込めて。
虫が鳴く季節ですね。秋の風情といいましょうか。夜遅いのにまだ鳴いている。
輪廻転生と同じ意味とは言えませんが、乾燥した砂地(肌色の土)に人間の水分(肌色の人)や雨が降り、カーネーション(花)が咲く。何もない地に大輪の花が咲いて、その地の生命になればと思っています。




