仲間 1
街を探していたらダンジョンが見つかった。テントさんを街に送ると中に入るライムたち。
しかし、ダンジョンの扉には、いくつも罠が仕掛けてあった。その罠でドラゴンとモンスターに気づかれ囲まれてしまう。ライムたちは、空しく虚しく全滅し異世界を閉じた。
―ダンジョン最上階―
「きゃははははは、あぁ~おかしぃ~。修業しても駄目だったって、そんなの当たり前でしょ!ダンジョンは簡単に次へ進めないから面白いのよ!もうバカバカお馬鹿さんな冒険者たちぃ。
こういう人間たちの心を打ち砕くとスカッとするわ、おまけに体はグチャグチャになっちゃってるしぃー。体!あ~そうだった、でももう遅いかぁ。
このダンジョンの扉を開く魔法使いまでいるからドラゴン送りつけたけど、久しぶりでやり過ぎちゃったかなぁ~。
それにしても、このじゅるりと流れた体液と血液が相まった感じが堪らないわぁ。もっと来てくれないか・・いけない本音が出ちゃった。だって~これまで過去に来た冒険者は一人しかいないんだものぉ。
ところであれっ?冒険者のアホリーダーの死体がないっ!あれれ、あれれ。もぉ、いつもトロリンたち好き勝手やるんだから、ぷんぷん。お仕置きねっ!!」
とダンジョンマスターは月水晶で一階層の様子を見て独り言を言う。他にフロアに他の者もいた。
ドラゴンやモンスターの姿が消えた。その後・・・
そこに手を翳す死体が一体、口から煙を吐き出すエリス。
焼け爛れたモンスターの死体の山が消え去った後、土や草で見えなくなっていたエリスの生存は幸運にも主に知られなかった。
「勝手に殺さないで、私は生きている」
うつ伏せ状態から手を上げて魔法を唱え終えていた。
「ふぅ、それにしてもライムでは全く敵わないか。このまま死んでもいいんだろうけど最初の一か月は私が助けるルールだから助けてあげましょう。守護の私に感謝しなさい。
話してあるけど、この世界に一度来たあなたは、元の世界では普通の生活は送れないわよ。
あなたは無事だけど、アルスとセイラさんは可愛そうに、悲しむと思いますが助けてあげられな・かった。
「これは全て現実、正真正銘で本当の出来事、異世界も、出会いも、キスも」
「さぁ、未来を開きなさい」
エリスはライムに願いを込めて言った。
「仲間・・」
―元の世界―
「シャリ!」
「ジャリ、ジャリ!」
「ジャラ、ジャ?」
気がつくと俺は現実の世界のベッドの中にいた。俺は棍棒で叩かていたはずだ。耳元で鳴っていた砂の音は、そば殻枕の音だったのに少しして気づいた。
しかし、眠っていたにしては体中が痛いのはおかしい。モンスターに襲われた記憶は俺の五感が覚えている。棍棒で叩かれ体に走った激痛、音、見えた化物の体の一部、獣のような臭い、血か汗か唾液か区別のつかない液体の味。
「まあいい、今は何時だ?」
スマホを触ると、電源はついていた。ホームボタンを押し、何日か確認する。”8:00 7月21日月曜日”の文字が画面中央上に表示された。学生の登校時間や会社員の通勤時間より少し遅い起床である。
「げぇっ、二十一日の月曜日?やばい!」
俺はスマホでゲームしていたのが土曜日の記憶で今日は月曜日・・だから、
「ああああっ、日曜日の仕事サボったー!」
無断・無遅刻・無欠席でバイトに言っていたのにそれが水の泡。
「最悪クビで、まだマシで罰金、悪くても怒られシフト減らされるぞ!仕事時間は、まだだけどすぐに謝らないと。ああっ急げぇえ!!」
すぐ着替え、コンビニに自転車で行くと、レジに女性従業員の澤田さんがいた。
「あっ、村井さん日曜日仕事無断で休んじゃった?」
「あはは」
休んじゃった。笑って誤魔化そうとしたが澤田さんを見ると冷ややかな目をしていた。
「すみません」
「まあいいです。でも店長怒ってましたよ、なんだあいつはって」
「本当ですか?」
「うん、でも許してくれると思う。何かあったの?」
「いや、それが自分でも訳がわからなくなって」
まさかゲームのような世界にいました、なんて言えない。
「シフトで頭がこんがらがっちゃったのならそう話せばわかってもらえるから。シフトの入れ替え、ちょくちょくやるから仕方がないかもなぁ」
そう最近は多かった。だが、それで間違えた事を許されるのは新人だけだろう。どうやら澤田さんはそんな怒っていなかった。無視しないで話してくれるだけで気が安らぐ。
「澤田さんが交代で出てくれたんですか?」
「いーや違う違う、店長が出たけど私とペアだから」
「え、マジか」
素直に謝るしかない、それ以外俺に出来る事はなかった。
店長が来るまで、おどおどしながら待った。だが謝ったら案外すんなり許してくれたからホッと胸をなでおろした、よかった・・怒られなくてバイト続けられて。
それから・・・、
「いらっしゃいませー」
の言葉で日常の仕事が始まった。現実の世界で普通にバイトに行って生活をしていた。モンスターに襲われて死にかけた事なんて、まるで夢のようである。
ただその間、俺の記憶は曖昧になった。今の世界の一日半の時間が、ルーレイファワークの世界で何日もモンスターと戦った時間になっているからだ。これでは釣り合わない、どちらが正確な記憶かはっきりしなくなった。
仕事帰り、スーパーで夕食の買い物をする。
今夜の夕食は中華風焼き肉と味噌汁、ご飯にする。中華風といっても市販の元を使うだけだがこれが簡単に作れて美味しい。量も百円で三回分とかなりお得で野菜を入れても中華風だ。
「あー美味しい。これだ、この味噌汁。豆腐を入れてわけぎも入れた」
以前、合わせみそを使うと市販の味噌汁のように美味しくなる事を俺は発見した、それを使い味噌汁を飲むと、やっと日常の生活が戻ってきた感じがした。
その安心から手を付けていない物を触る決心がつく。
まだ記憶が鮮明に残っているので怖いが、スマホのアプリを立ち上げてみることにした。アプリのアイコンはデザインが変わらず、青色の丸いランプが点灯し更新がきていた。
しかし、俺は気が変わりゲームのデータを消しやめることにした。それは、アプリを消せば嫌な記憶も消えると思ったからだ。
ゲームを一緒にしていたメンバーのMeell番号は残っているし、事情を話してゲームをやめたことを告げれば、それでOKだ。ゲームをやめるうえで最低限のマナーは守るのが暗黙のルール、今後の俺の私生活にも不可欠なことであるから常識ある行動を心がける。
アプリを更新せずに、ゲームアプリのアンインストール。
【!】
『アンインストールエラー』
ん!!?どうしてできないんだ!!
【!】
『アンインストールエラー』
設定からやっても、アプリをしばらくタッチして操作しても、何度やっても削除できない。
「ああ!!」
誤ってアプリを起動してしまった。更新三
秒後、自動的に開く。
「おい、ちきしょう」
強制終了だ、電源ボタンを長押しした。
しかし、ホームボタン、電源ボタン無効状態で画面は固まったままアプリは作動中になった。
メールが開いている。
――――――――――――――
宛先:Roux layfer workライム@Feather.Co.dw
タイトル:ヘルプの守護
まだゲームは終わっていません。一か月ルールにより、あなたの命は私エリスが守ります。そのためライムが死ぬ前に現実の世界に魔法で送り返しました。確認のためメールを送ります。なお、あなた以外のメンバーは私を除き助かりませんでした。死んだら復活はしません。二度とこの世界で、生活を送れません。
――――――――――――――
と画面に表示されていた。
なんだよ、スマートフォンは電源を落とせば全て作動しているアプリは落ちるんじゃなかったっけ?
お・い・。
「・・ックン・・ックン!」
やめてくれ。
「ドックン、ドックン!」
「ドクンドクン!」
「ドクドクドク!!」
「ドドドドド!!!」
心臓の鼓動が体の脈を撫でる、胸から血液を送る動きが膨らみでわかる。いつもと違う異常な状態が体で起きた。さらに心拍が早くなり脈打つ音が激しく耳まで聞こえるほど大きくなる。続いて舌がカラカラになり味覚を失うかと思ったら血の気が引いた。
そして過呼吸なのか呼吸が苦しくなった。まるで心臓がトロリンたちの足音や叩く音のようにドドドドド!!!と脈打っている。打つから胸が痛む。
こういう時はゆっくりと呼吸をする。冷静になるんだ!落ち着け。
「すうーーーっ、はぁ~~っ」
ゆっくりと、
「すーー、はぁ~」
少しずつ。よかった落ち着いてきた。
届いたのは最低最悪のメールだった。俺は、これまでお悔みメールより悪いメールを一度も受け取った事がない。今、それを受け取ったのだ。
まだ覚えている。ゲームの世界の中で俺の後ろから聞こえた足音を、そして掴んだ足を、殴られて俺は、やっぱり夢じゃなかった。俺は思い出したくないが、色濃く嫌な記憶は脳裏に焼き付いている。
まだゲームは続いているって言いたいのか?
でも俺はあの世界に二度と行く気はない。
死んだ仲間は・・・。
何も言えなかった。俺が戻った所で死人を増やすだけだし、ここでやめておいた方が皆のためにも良い。
ご都合主義者の俺は合理的に自分に有利な理由をこじつけて諦めることにした。
そして、これ以上同調しないように考えるのをやめた。嫌な記憶が頭に浮かんだら、何でもない、関係ない、大丈夫、大丈夫と気持ちの落ち着く言葉を唱えた。
手紙を一応書いておく、念のため、恐怖に打ち勝つため、保険として。
ルーレイファワークのゲームの世界に行ったこと、仲間がやられ戻ってきたが世界はまだ続いていること。
こうやっておくのは、俺が万が一強制的に連れて行かれた時に助けてもらうためだ。もし奇怪な・奇妙な事故にあったり病気になっても、病院へ運んでくれる。
これは遺言ではないのだが、机の一番上に置いた。きっと家族が見つけてくれるから。
さあ仕事仕事、このことは忘れよう。いつものように仕事に行く。
「いらっしゃいませ!」
コンビニの仕事で、また新商品が入って来た。物の位置も変わっているし時間が経つと記憶も物も人もすべて変わる。
「ありがとうございました!」
レジやゴミ、品出しがあって仕事が終わる。
仕事帰り、なくなりかけていた朝食のパンをコンビニで買うことにした。コンビニ食パンはどこも安い物がある。
俺は学校卒業後、衣食住すべて自分でやろうと自分の事は自分でした。それでも全然自立にはほど遠い。家にお金も入れず働いている親に、ご飯を作ってもらうなんてできないから食事だけでも迷惑かけないようにしないと。
さあレジを済ますか、
「ってあれ?」
お金がない、そうだった銀行でお金をおろさないといけないんだった。カゴをそこに置いて俺はATMに向かった。
ATM、銀行、引き出し、カード、金額で一万円と入力する。
「ブーッ!」
【お取り扱いできません】
と画面に表示される。
俺のカードには二十三万以上残高が残っていたはずだ。それがどうして?
俺は家に帰り通帳を持ってATMがある銀行へ向かった。
ATMで通帳記帳を入力、通帳を入れる。
「ガガガガッツ、ガガガガガー!」
「キィイイイ、キィイイイイ!」
「ガガガ、ガガ」
記入された通帳が出力される。
【残高 0】
「んっ?」
ええ!何で、どうして俺の金がなくなってるんだ!?
「なんだ?」
「あれ、あれぇ、何でなくなるんだ」
出金の所にルーレイファワークという文字と一緒に、貯金額と同じ引出し金額が記載されていた。俺はこのゲームに課金した覚えはないぞ。
銀行に聞いて調べてみたが個人のゲームトラブルの事は、こちらでは責任が持てないと電話を切られた。最近アプリの課金による高額な出金やトラブルが多いそうだ。そういった場合はアプリ制作会社に、まず電話するらしい。
ルーレイファワークのゲームアプリ制作会社って運営か、どこだ?俺は急いで調べた。
アプリの立ち上げ画面にFeather Companyと記載があった。
電話番号が記載されていない。他のアプリと同じ連絡方法で、メールを送ることに。
――――――――――――――
ゲームに課金していないのにゲーム名で金を通帳から引き出されています。何に使われているのか知りませんがそのお金を返してください。
――――――――――――――
メールにそう内容を書き込んでプレイヤー名を記入、送信した。
二、三時間程してメールの返事が届いた。
――――――――――――――
当社で課金額を不正に引き出すことは絶対ありません。また支払いの際、会社名でなくゲーム名でお金を銀行から引き出すことも絶対にありません。当社が関わっていないトラブルに関しましては保障は致しかねますのでご了承下さい。
Feather Company
――――――――――――――
お金ゼロは保障ゼロ補償ゼロ保証ゼロを意味し、悪魔に憑りつかれたような気持ちになった。
落ち着かない、立ってすぐに座る。
不安と恐怖で下手に動くとケガや事故が起こり、さらに悲惨な目に合う予感がした。
最近、急に寒くなりました。もう秋です、ああ風邪ひきそう・・。
私の秋は、食欲と行楽と芸術の秋です。他に読書やスポーツなんてありますが”小説家になろう”で読書はいかがでしょうか?




