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冒険 3

 街の外で修業を積んだライム。色んなモンスターを倒していくうち、その気持ち悪さに嫌気がさした。そこで気分一新、テントさんの話にあった場所に一緒に旅立つことにした。

 泳ぎ方は、この世界にはないと思うから、

「水がないのか?」


「オアシス湖にはあるが、湖には入りません」


「いっそ空のモンスターに捕まって、あちらに渡してもらうのはどうだ!?」


「そんな方法うまくいくか」

 アルスが眉をひそめて困った顔をしている。俺が悪かった。


「私は地面から足が離れただけで振るえます」

 それは誰でもそうだ、単に高い所が苦手な場合もある。教会の鐘をつくのはシスターの仕事だが、今は言うのを止めよう。




 話しているうちに、岩壁の丘についた。

 丘の天辺(てっぺん)にはモンスターが集まっていて、こちらを見ている。


「ボルフライだ!!」

 見ていたボルフライが、何の前触れもなく襲ってきたから俺は叫んだ。


 近づく、近づく、かなり早いぞ!


 アルスが斬りかかる、

「おりゃあああ」

「スパァーッ」

 羽を斬り落とした。


「おおおー!せやぁ!」

 俺もボルフライを斬りつけた。


 次から次へにモンスターが出現する。次に来たのはサンドワーム、地中から這い出てきた。


 「うえぇ、気持ち悪い」


 顔が不細工で生ゴミのような色とグミみたいな体が気持ち悪い。それがにょろにょろと砂から顔を出しギザギザの歯をみせて威嚇してくるのだ。ムカデを大きくして、ゴム状にしたといえばわかりやすいか。

 そのサンドワームがエリスの体を這ってきた。体をもぞもぞ揺らし気持ち悪さが一層濃くなる。


「カシュ!」

「毒牙、それはお見通し!!」


 エリスはローブから急いで振り払い、砂避けの青色の靴で蹴飛ばした。それが地に着く前に魔術を詠唱し放つ。


「眠れ、燃えさかる火と共に!」

「クリメート!!」


 地面近くから炎の柱がいくつも出てきて激しく燃える。サンドワームの体が地面に着地する前に体が燃えて焼きつける。

 焼きつけた後のサンドワームはその体を否定されるほど皮膚を硬直させ縮み黒くなっていた。俺は、その姿と魔術の威力に見入ってしまった。

 その後、地中に潜ることすらできず佇むサンドワームの死骸は薄れて消えていった。



「そちらも片付いたみたいね」


 アルスの前にいたボルフライは見事倒され消えていた。ノーダメージ完全勝利のアルス。空には他のモンスターがいるが危険な範囲でないから一先ず安心。


「このままでは、ずっとモンスターと戦闘になります」


「その事は、今考えている」


「またあそこからモンスターが来ます!!」


「たくさん」


 どうしよう!!一度戻るか、いやそれだと往復八時間以上になる。


「んっ?」


 岩壁の下にサンドワームが通った穴があった、偶然かこれが攻略のヒントになる。


「エリス、その穴広げられないか!」


「そこね、わかったわ」


「力を貸せ、地中の土竜!」

「クレイモール!!」


 見えない何かが、岩壁の下の穴を広げるように通っていった。エリスは、さらにバーストを追加で唱える。

 穴の中から熱い風が流れて来る、中は爆風で満たされる。砂は熱を吸収し熱い砂となっているようだ、微かに穴から熱が漂う。


 そこで立ち止まっているエリス。 


「モンスターが来ます!!」


 アルスがモスグリーンと戦う。


「まだかエリス!」

 俺も戦闘に加わる、


 エリスのいる方から声が聞こえた。言葉から魔術を連想させる。


「さあ、行くわよ」

 岩の下に空洞ができていた。


 ここはラクーダが通れない。テントさんをラクーダから下ろす。

「すみませんがラクーダから降りて下さい」


「見ればわかる。モンスターってのはこうも人間を襲って何を考えているのかわからんわい。モンスター同士は戦闘にならんからのー」


「おっしゃるとおり」


「さあ行きましょう」


 俺たちは戦闘を中断、穴の中に逃げ出した。中は凍結していてモンスターが入れない大きさだったのでうまく逃げ切ることに成功!


 砂の粒は肌を刺激するように冷たかった。

「冷たいな」


「爆炎の後、凍らしたからね」


「だから滑るのか」


「うむ」


「ひんやりするなぁ」


 穴の中は砂と氷で締め固められているのでサンドワームも地中から穴を破壊できないのだろう。セイラ、エリス、俺、テント、アルスの順に穴の中を進んだ。俺とアルスはテントさんを守るように前後に配置する。これなら介添えも、すぐにできる。アルスには最後尾でモンスターから守ってもらわないと。

 犬のように四つん這いになって進むが遠い。


「むにゅっ」

「んっ!?」

 柔らかい何かが俺の顔に当たる。


「ちょ、ちょっと止まります!」

 俺はテントさんとアルスに声をかけた。今の感触はエリスか、いやエリスなら絶対言う。


「中に何かいるぞ!」

 俺は警戒指示を出した。中は暗く見えない。どんな敵が現れたのかゆっくりと手を伸ばし探ると、


「スベスベ、むにゅむにゅっ」

 布のような肌触り、そしてまた柔らかな弾力が跳ね返った。


「ガッガッガスッ!!」


「うわぁああっ!!」

 俺は攻撃を受けた。後ろにテントさんがいるので退くわけにもいかず、硬い靴でもろに蹴られた。


「どうしたライム!!」

 さらに後ろから叫ぶアルスの声だ。


「大丈夫か?」

 俺は、テントさんにまで心配をかけた。


「平気だ、エリスにぶつかっていた」


「中は暗いからなぁ」


「うん」

 モンスターがいたから距離をあける事を忘れていた。


「みんなー、時間をおいて進もう!」

 俺はぶつからないよう指示を出す。


 50m~100mは歩いた気がする。かなり遠い、またエリスに当たるわけにいかないのでゆっくりと歩いた。



「着いたわ!」

 前から声がする。


「おおーっ!!」

 それに続くと、岩壁の向こう側につく。


 そこにはアルスの話の通り川岸があった。エリスはこちらを見ていない、よかった~ぶっとばされるかと思った。

 安心していたが、ただ俺の足を踏んづけているエリスの靴は拒絶の意思表示である。俺を見ないで足をグリグリと踏む、痛い痛いぞ・・。




 川を見る、

「流れが速い」


 そして、すごい濁っている。


「かなり大きな川だぞ」

 川は左から右(上流から下流)に流れ、他の岩山の下に流れていった。うまくここだけ川を遮る物がなくてよかった。


「飛ぶのはどう?」


「フロートで飛んでもモンスターに邪魔される危険性がある。ここは私が手を貸しましょう」


「エリスさん」


「魔法使いの出番ってことか、これは楽しみだ」


「おいエリス・・」

 あんまりすごいことすると普通と違うのがバレてしまうぞ、耳打ちに俺はエリスに話しかけた。


「そのことは気を付けてる、そんなまずいことしない、ただちょっと粗い魔術を使うだけ」


「粗い・・・って?」


 期待感絶大に、


 ドッキドキ、胸を押さえ高鳴る鼓動を確かめるセイラ。まるで王子様を待っている少女のように。

 ブルッブル、腕を組み武者震いするアルス、実力を確かめる試験監督のように。

 ワックワク、浮き足立ち心躍るテント、この世に未練を残さずあの世にいくための余暇を過ごすご老人のように。

 ソワソワ、あっちにいったりこっちにいったり、正体を隠す異世界人として。


「ねえ、アルス」


 エリスしないのか。


「どうしたエリスさん」

 反応が遅れるアルス、


「この木の棒を川の向こうに投げてほしいんだけど、できる?」


「向こうの岩まで投げるのは不可能だが、川岸までなら簡単」


「岸に投げるのでいいからやって、お願い」


「わかった。おりゃあ~!」

 アルスは気合いの入った掛け声と共に、木の棒を投げ飛ばした。


「ブンッ!」


「・ ・・ストン!」

 向こう岸に木の棒が落ちる。


「それも投げようか?」


「いえ、これはいいの。ここで使うために持っているんだから」


「そうか」


 エリスはもう一つ持っていた木の棒をポイと地面に捨てた。


「降れ!恵みの雨と温もりの土と!」

「アースレイン!!」


 水からウンディーネ出てきてトントンと土を叩くとノームが顔を出し跳び出す。二人は踊り回りながら空に上がっていった。

 俺は初めて精霊を見た!!言い直す、見えた!!


「ババババダバダバババダダダバダバダッ。バシャバシャバシャバシャザッパーン!!」

「ダダダダアダダダババッ。パシャパシャパシャパシャ!!」

「ダダダダババババダダダダドドドドッドシドシドゴゴォーン!!」

「パシャッ・・・ピチャッ!!」

 

 そして雨でない()()()()()な土と木は川を埋め尽くしていった。


「あれが魔術だライム~!!見ているか!!」


「ちゃんと俺も見てるから放して」

 「近い、顔が近い。俺は適当にかえした。


「わわわわぁあ、み、道が出来てます!!まるで神様みたいに大自然を操って!」


「おおおおおおおっ!!」

「グキッツ!!おわあぁああ、あれっ?あれれ腰がぬけてしまったわい」

 びっくりしてテントさんはひっくり返ってしまった。



「た、大変だアルス!テントさんの腰が抜けたって」

 ナイスタイミングのテントさん、人の不幸を面白がってるわけじゃないが悪役に徹する俺。


「やってしまったな」

 アルスはやれやれとした顔、 


「どうしようか?」

 俺はアルスに相談し気を反らした、


「それより見ろ」

 アルスは川に真剣だ。


 気を反らし作戦失敗!なら、


「エリス、道が出来てるぞ。しかも川の水はちゃんと流れてるし道が出来ているしどうなっているんだー」

 驚いてみせた。こうでもしないと正体がばれてしまう。


「複合魔術アースレイン、文字通り”土砂降り“が降って辺りを埋め尽くす。投げた時に使った木々は媒体となる物と、その範囲を指定している」


「へぇ~便利だな、その技」

 それとなく調子を合わせた俺、そんな魔術を使うとバレるわ!それとなく首を傾げて訴える。


「木々で良い点はね、媒介をノーコストで済ませられる。これは木々がノームやウンディーネのいる水や土から育まれた物だから使えるの。でも魔術を使うには詠唱と魔力が必要だから大変よ」


「でも使えたわけだよな」


「まあ私が魔法使いとしてできることはこれくらいだから」


「さぁ、渡った渡った。しばらくすると土が全て水に流されて元に戻るから急いで!」


「わしのこと置いてかないでくれ!!」


「はいはいテントさん、わかりました。俺の手を取って下さい」

 俺はテントさんの体を支えながら即席の岩か土か区別がつかない道を渡った。途中何回もテントさんの体重で重心がブレたので大変だった。


 橋を越えた土地は砂に混じって黄色い草が生えていた、珍しい。ずっと砂漠地帯みたいな砂地を歩いてきたのに、ここはなぜ自然の植物がある!?


「水は、こちらの土の中にも流れているようね」


「それでそこまで変わるのか?」


「自然だから環境に比例するって結果で、画一的な土質ではないんですね」


「それにしても、この差はおかしい」

 アルスが怪しむ、


「アルスの言う通り、何かの力が働いたとしても特定はできないわよ。これから向かう建物にその手がかりがあればいいけど、それも期待できるか」


「そうだな」



「それにしても重いぞ、これは」

 テントさんは小柄な体格なのに重かったが俺は口に出さず我慢して介助し歩いた。


 岩壁 川岸 川 川岸 岩壁 (すきま)岩壁 となっている。渡った先の岩壁の後ろを注意深く見ると、人が一人分通れる隙間があった。

 行き止まりかどうかはここまでこないと見分けつかない、この位置から見たことで新たな道の発見につながった。そのまま道を抜けると真っ直ぐな道がある。左右を高くそびえる岩壁に挟まれた幅が大きい道だ。

 進むと岩壁がなくなり、広大な土地に青々としたものが群生していた。


「森よ」


 あったのは大森林、


「こんなところに木々が多く生えた場所があったのか」

 アルスが言った。


「地図で知られてないのか?」


「ない。俺も皆も探していないはずだ。これだけでも貴重な財産になる」


「植物は教会のお供えに良さそうです」


「いいかもな」 




 森には乱雑に木が生えていた。そして広い道が一つある。


「ここは、ずっと真っ直ぐ進むのか?」


「森の一本道、こういう場所は危ないから気を付けて」

 エリスが言う。


「一本道だからか?」


「敵が襲ってくることが多いわ、他に逃げ道がないから」


「来たらどうしようか?」


「そういう時は、森に逃げればいい」


「森の中は木々と草で見えない。罠やモンスターが団体で待っていたらどうするんだ・・」


「それは戦うだけ」


「テントさんを背負っての逃走はライムには荷が重すぎる。悪いけどアルスが背負って上げてくれない?」


「もちろんいいが、それでは俺が戦えないぞ」


「構わないわ」


「ならまかせろ」


 アルスが俺の前に来て背中を見せた、そして屈む。


「ライム君、ありがとうなぁ」


「いいえ」


 俺はテントさんをアルスの背中に乗せた。


「おお、こりゃー楽だ。景色の眺めも目線が高くなれば良くなるわい。年寄りのわがままで重い荷物を背負わしてしまってすまんのぉ」

 テントさんは進みながら背負ってくれたアルスにお礼を言う。


「何かあったら言ってくれ」

 今度はアルスがそれに応える。


「おお~」

 テントさんは街から出たことがほとんどなかったようだ。ただの森の木々をずーっと眺めて関心していた。二度と、こんな機会はないと目に焼き付けているのかもしれない。


「セイラ足は大丈夫、痛くなったりとかない?」


「大丈夫です。私の修業になるんですから、このくらい平気です」

 セイラは額に汗をかいて呼吸も少し乱れていた。


 そう聞いていたエリスも首元が汗で光っていた、だいぶ疲れているようだ。魔術は、ほとんどエリスに頼りきりだったから。


「静かですね」

 セイラが言う、


「静かだ」

 俺は答えた。


 ここにはモンスターが寄り付かないのか、全くいない。サンサンドに自然が少ないのなら、全てのモンスターがここにいてもおかしくはないんだろうけど、とても不思議だった。


 一本道を歩き森を抜けた、敵に会わなかったから順調だ。


「ほおーっ、こりゃーまたまた」

 岩山である。大きくそびえる岩山が連なる。


「大きい岩がたくさんあるのう」


 それは大きな岩山で天にも届く高さ、どうやってできたのか?大陸と大陸がぶつかったのか?謎は深まるばかり。


「着いたわ」


 岩山に囲まれた中央にそれはあった。

 見た目に出来そうと思っても出来なかった理由は威勢だけだから、力みすぎたから。結局は、日々の鍛練が足りないから。

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