冒険 2
情報を狙う冒険者四人に殺されかけたライムは、街の警護をする商会ギフテークによって命を救われる。それから心機一転ライムは外で修業をすることに。ボルフライ、モスグリーンと戦う。
息を殺し耳を澄ませ肌で感じる。
「スッツ・・パシャア!」
「おりゃああー、ズババババッ!」
アルスは青白く燦爛したモスグリーンの体を長剣の一刀で薙ぎ払った。頭が斬られ地面に落ちる。そして倒れたモスグリーンの体は動かなくなり羽が風に揺れていた。
「すごい、アルスさん今のって居合切りですか?」
「イアイギリ?なんだそれは虫か?」
「いえ、いいです」
この世界には剣の型はないのか、メニューを開き確認する。それは戦士のスキル・技で振回という技だった。
あはは、そもそも居合斬りと言っても、俺もどんな型か知らなかった。剣術知識のない俺が適当に使っていただけである。
「へぇえ、目を閉じていても使えるのか・・・」
「目は閉じてない!何せ鱗粉が目に入るから薄目で防いで、技をとまぁー」
「それ、一歩間違えば死ぬことだってありますよ」
「モンスターに有利な天気になってきたから、あまり時間をかけたくないんでな」
「そうなんですね。ところでアルスさん、スキルの技はどうやって身につければいいんですか?」
「まあどうしても教えてほしいのなら今使った技を教えてもいいが、これは戦士の技でライムは覚えられない。それよりも剣の腕を磨く方に重点を置いたらどうだ?その方が簡単に強くなれる。そういえばナイトの技に斬撃ってのがあるがそれを身につけたらどうだ?」
「斬撃ですか?」
「ほらこれだ」
そういってメニューを開き、ナイトの技の一覧を見せてくれた。
≪斬撃 力と技を合わせ斬る攻撃。正確には縦、横、斜めの斬撃がある≫
「俺のメニューには載ってないんですけど・・」
「それは、実際に見た事が一度もないからだ。他の冒険者の技を見ると自分のメニューの【全スキル】欄に情報として書き込まれる。例え使える職種で知っていても身につけないと使えないぞ。それより問題は俺が教えられないことだ」
戦士はナイトの技が教えられない、意味はわかる。最多の職種に当たる戦士は、人数の点で皆から学び鍛錬出来るから身につけやすい(技を覚えやすい)なと思った。
「私は、回復魔法の出番がなかったのでほっとしています」
「いや、俺についた鱗粉があるんだけど」
「セイラ、ライムが甘えるから確かめるような事はしない方がいいぞ。ライム、男は多少の事は気にしないもんだ。バトルでの汚れ何てどう思われたって些細なもんだ」
「は、はいっ。勉強になります」
セイラが敬服した。
「はぁ」
それ以上、他人の目を気にする俺は言い出せなかった。アルスは女のセイラにも厳しく指導したので余計に言い出せない。
それでもタイミングを見計らって”目がぁ見えなくなった~”とか言い出そうかな?えーっとセイラはどこだ?
おお、隣にいた!
こちらをジト目で凝視しているセイラ。テヘッ考えていることわかっちゃった?
「なあエリス?」
「お前の方から回復魔法を頼んでくれないか?」
「頼む?あなたが我慢すればいいだけでしょ。それと、この世界の魔法使いやヒーラーが使うのは魔術の方かな」
「メニューやステータスにも魔法って文字があるのに?」
「あるのに、それよりあなたは剣術の練習をしなさい」
俺は二度頷いた。
この世界は、モンスターや他ギルド冒険者との戦闘もあり大変そうだが、それ以外は現実と同じで楽しかった。これならしばらく諦めないでやっていけそうだ。
「一息、入れましょうか?」
「ここで休むんだな」
「ライムさん、ここ砂地ですよ」
「そうだぞライム、顔がべとべとで、これ以上ここにいたら砂男になってしまうぞ」
「それ、かなり渋いです」
俺の顔で笑うなセイラ、
「一旦帰りましょう。そしてまた休憩後モンスターと戦いましょう」
「そうだよ、でも笑えねぇ」
俺はベトベトで泣き泣きだった。そして今日は終わりにしたかった。
「これ位ではレベルが上がらず、戦闘経験が身につかないぞ。一日二十回は攻撃しないと物に出来ん」
俺はまだナイトとして頼りなく、どこに行くにも体力不足だ。
「はぁぁーい・・」
まだ説教か、厳しいな。もうダメかも。
街に着いた。
さぁ、ベトベトを落とそう。
「パシャパシャ」
「うわあああっつ、きもっちいい~!」
「おおぅっ、くうぅ~」
澄んだ水は、とても冷たく気持ちが良かった。
「水は貴重だから大切に使ってね」
街の少女が俺の横に腰かけ話しかけてきた。そう言えば、この水は何の水だ?テントさんの家の横に水が貯めてあったので、それで顔を洗わせてもらう。
「テントさんが作物用の水だから使って良いって言ってました」
セイラが言うので心配ない。
「そうなんだ」
「おじいちゃんは、この街で一番の働き者。でも、もうおじいちゃんは歳だからお父さんが引き継いでやってる。私も一緒に手伝うの」
少女が俺に言った。
「おじいちゃんは何をやっているんだい?」
「おじいちゃんは食べ物を育ててる」
「へぇ~格好いいね」
テントさんの孫かな?
「うん」
少女は顔を赤らめて微笑んで答えた。子供の笑顔は太陽のように明るかった。
「ちょっとライム、なーに若い子ナンパしてるの?さっきの続きがあるんだからサボらないで」
「いててて!」
「耳引っ張るなって」
セイラが見下している。
「私は神に仕えるためにあなたのギルドに入りました。子供は神様から賜った大切な宝物です。邪な考えは悪も同じ、成敗します」
「ち、違うんだセイラ。助けてくれ~」
「痛い、痛かった」
セイラに叩かれ逃げた俺は、アルスの方へ逃げた。
「街の若い女には手を出すな、ライム」
アルスは少し怒っている。
「どうしたアルス、何で怒ってるんだ?」
「お前はどうみても大人だ。子供を狙うのは盗賊のすることと同じだぞ」
勝手に決めつけやがって真面目っこアルス、
「誤解だ!」
このまま順調にクリアかと思ったが、問題発生!!
「とにかく、しばらくテントさん家で食事と体を洗う水をもらうんだから滅多なことはしないで」
「気をつけ・・ます」
渋々謝る、しかなかった。
それから、また外に出て戦闘し経験値を稼いでレベルを上げた。途中、アルスに学んだことを思い出し声に出して復習する。
「ペンタンはダンゴムシの形をした厚い殻のモンスター、これが鎧の働きをする。足の付け根まで殻がつくため攻撃が効かず。
攻撃は球になり転がる事、まともに喰らえば負傷では済まされず重傷化し死ぬことも。
ただ皮膚にひび割れた箇所がいくつもある。そこを狙い皮膚の奥に剣を突き刺す腕があれば倒せる。それが出来ないと攻撃を喰らう可能性が大きい」
「あと向かってくる時は絶対に目を離すな。攻撃さえかわせば、あとはカスだ」
「リコイルは地面の中にいる小さなモンスター、星の形をして皮膚が石のように固い。動物や他のモンスターに寄生して血を吸い体を潤す。経験値は1しかないがたくさん倒せば稼げるってわけだ。
ただ砂地を穿るしかないので経験値を稼ぐうえで効率は一番悪い。さらに見つけても逃げ足が速く倒せる確率も50%。レベルが低いうちはこいつを倒していくしかない」
「合ってるぞ、ライム」
アルスが隣で聞いて俺に言った。
ボルフライ、モスグリーン、ペンタン、リコイルと散々戦い、締めにサンドワームに挑んで勝利した。結構強くなった気がする。
「さあ宿屋に行くか?」
「泊まるお金は?」
エリスが尋ねる、
「それなら、ほらっ」
アルスが手の中の物を広げて見せた。
「うわ!気持ち悪い」
「これも貴重な資金源になるんだぞ」
「そんな粉どこから」
「これはモスグリーンの青の鱗粉だ。安いが珍しく買い取ってもらえるし取りやすいからな。これで結構お金がたまるぞ」
それって【粘着】とか言う決まったパターンで稼ぎを繰り返す方法か?違った、モスグリーンに勝てるまで戦闘を挑む事だった。金になるにしても、俺はよくあんな得体のしれない粉に触るなと思った。
それより食事だ、俺たちは戦闘の後、テントさんの家でシャワーを借りた。こんな世界にシャワーがある事に感動した。すばらしい!ずっと汗で臭かったのだ。水は少しだけ冷たかったが全員汗を流した。着替えもテントさんの家族が用意してくれた。その後、なんと食事まで。なお、その水は畑に使う水なので捨てずに下に貯める。
そして五日間、戦闘と水浴び、食事、宿屋での睡眠が続く。
「結構、戦闘経験を積んで知識や経験値が稼げたな。これからもライム、気を引き締めていこう!」
「おおぅ・・」
この気持ち悪いモンスターがこれから続くとなると、戦闘が苦しくなってきた。おえっとするようなゲテモノばかり。
さあやるぞ!何を嫌な顔をしている。戦闘は我慢、忍耐、そして鍛錬だ!明日はもっと強くなるぞ。
俺たちは次の日も戦闘に明け暮れた。外で俺とアルスは攻撃と技を、エリスとセイラは魔術の呪文をそれぞれ練習した。
「剣術の腕も上がったようだから、一刀について教える」
「知ってたんですか?それなら早く教えて下さい」
俺はアルスに教えを乞う。
「基本が先だと思ってな。以前見た事を説明するだけだ、具体的には教えられない。もし習いたいなら、他のギルド冒険者にお金を払うか、戦いを挑んで盗み学べ。そうやって身に着けていくのがスキルというものだ」
「危なくないか?」
「命懸けだ、命を懸けたくないならお金を払う」
「はい」
「セイラは回復魔術のヒーリングはできるのよね」
「それだけできます」
「それじゃー広範囲の回復魔術を覚えてもらうわよ、広範囲の回復魔術でレイズヒーリングという魔術。言葉は分かるから、セイラが唱えてみて。
「開け、いやしの輪の後にヒーリングよ。さあ、やってみて」
「はい」
セイラはレイズヒーリングを練習した。
街では武器やアイテムショップで知識を習う。
「まだ魔力がないからアイテムショップでアイテムを買う事。HPはポーション、MPはエナジードリンクを使う」
「エリクサーはないのか?」
「エリクサー、ああエリクシル?良く知ってるわね。エリクシルは霊薬ともいわれる高価で希少なレアアイテム。過去に入手した冒険者がいた話は聞いたけど、どこにあるのか。私たちは使う事がないわ」
「いつか手に入れて、使いたいなと思っているんだが」
「言っとくけど本当、貴重なのよ」
「二人ともいいか?武器屋は俺が説明する」
間に割って入るアルス、
「武器は職種にあった物を装備する。ライムはロングソードに変えてもいいと思うぞ、ほらっ」
武器屋でロングソードを買った。
「一つランクが上の武器を買ったら前の武器は売る」
「待ってほしい」
俺はショートソードを売るのを躊躇った。これはエリスが大事な靴下を譲って得た武器だ。
「いいのよ」
エリスが俺の横で言う。
「どうした?」
「あはは、二刀流を考えてまして」
事情はアルスに話せない。
「二つ持つのか?そんな事すると重みで動けなくなるぞ。じゃあー売るぞ」
「それなら95Goldだ」
武器屋にショートソードが渡った、安すぎて気が重くなった。
「おぅ、こんなに長くなるんですね。少し重みも増し」
リーチが伸びた分、安全にもなるし攻撃範囲も広くなるが少し重い。
「セイラも買っておくか?今のコットンローブではちょっと着心地悪いだろ」
「私には、これで十分です」
「いいから、ほらシルクローブだ」
「エリスさんの装備品は、それ以上の物を探しても街では手に入りませんね」
「アルスは審美眼があるのね」
「お褒め頂いて恐縮です。これでも他のギルドで皆についてまわった時さんざん待たされた挙句、最後には俺が選んで決めたという逸話を持っているぞ」
買い物、名人アルス本領発揮!
「ふふふっ」
それから装備やアイテムを整え、戦闘で使い慣れ3日の日々が過ぎた。
ついにその日が来た!
「もうゲテモノばかりは飽き飽きだー!」
俺は朝、みんなの前で言った。
「それなら早いがテントさんと例の場所まで行ってみるか?」
「俺は行きたいがセイラはどう思う?」
「私はどちらでも。エリスさんはどうですか?」
「一度行くだけなら構わないわ」
「じゃあテントさんの家に行こう、約束だし」
「はい」
「ええ」
テントさんを迎えに家を訪ねると、どこかに外出していた、テントさんを探すと街から少し行った先にいた。木の下で小さな子供たちと話をしていたので声をかけた。おでこにしわを立て明るい顔でテントさんは立ち上がった。
こうして俺の何でもない一言から出向の日が訪れた。
「いよいよ、わしの出番じゃな」
「はいお願いします、危ないので気を付けて下さいよ。ではラクーダに跨って下さい」
ラクーダの上に布を巻くエリス。ラクーダはもう一匹いた。
「うむ」
ラクーダに乗ったテントさんは布をしっかりと持った。ラクーダはフタコブという店で買えなかったのでエリスが捕まえたものが3頭。この土地にいたもの。他に馬がいるが、ほとんどはサンサンドの街に捕獲されているらしい。
「おじいちゃんは私たちの真ん中にいて下さい、男二人が左右に付きますから」
とエリスが言う。
「これじゃ、景色がよく見えんのう」
足腰が不安定なテントさんにつけた布の袋から眺める景色の中、隣には俺とアルスがいた。テントさんはラクーダに巻き付けた布を持って寄り掛かる姿勢で乗っていた。でないと腰に負担がかかってしまう。
「テントさん、困っても起きない下さい。起きると一緒に行けなくなります」
とセイラが言って再度忠告する。歳をとったテントさんよりセイラの頑固が優勢だ。
「これで我慢するわい」
セイラとエリスは、残りの二頭のラクーダに乗った。
「それでテントさん、ここからどこにいけばいいんでしょうか?』
テントさんは、あそこじゃーと、遠くの岩の方を指さす。
「あれ?」
何も見えなかった、
「あれは岩壁の丘だな」
アルスが指さした場所を知っている。
「岩壁の丘、名前だけなら、わしも知っている。南東の果てに極大の岩の壁があるとな」
そんな有名な場所が目的地!?
「よぉーし、これで目的地は知れた。目指すは南東、岩壁の丘!」
それから、しばらく歩くことになった。どれくらい歩いたか3時間位か?
「テントさん、どこか痛くありません?」
「大丈夫、それよりセイラちゃんは大丈夫かの?」
「大丈夫ですっ」
そりゃーお前たちは問題ないよな。俺とアルスは死にかけだぞ。
少し休み、街から持ってきた水を飲む。
「かなり遠いな」
「遠いわね」
そしてまた進んだ。
――――。
もうすぐだ。
遠目から見えない場所。この世界が球体を成すからか、砂で空が濁っているからか。街から出た時は、こんな岩壁は見えなかったのに今、目の前には大きな岩の壁が1km先に見えた。
「あれですか?」
「ああ」
「大きい」
「こんな岩があるんですね」
「・・・」
岩壁の丘についた。
「ここは以前知ったんだが岩壁を越えた向こう側に陸地があり川岸がある。他は何にもないところだぞ」
「こんな砂地に川があったとは意表を突かれるな」
「他でも川を見たことはあるが、その合流地は地下か?ここは雨が降らない、それで川があるのならその上流もどこかにあるはず」
「へぇ~」
「アルスさん、頭良いんですね」
「じゃな、わしに劣るが戦士にしたら賢いぞい」
「次は、そこに行けばいいのね」
「そうじゃ」
「皆、これから岩壁の丘に行く。そこにはモンスターが住み着いているかもしれない。敵の縄張りに入るから細心の注意を払ってほしい!」
「もし戦って勝てないと思ったら逃げよう」
俺は提案した。それしかできないもん。
「逃げればいいんですね」
「逃げは俺にまかせろ!」
街から離れた場所も、アルスは詳しくてよかった。
「ところで皆、なんで川岸から川を渡ろうとしないんだ?」
「渡れないんじゃな」
「渡れない?」
「大きな川に流される。橋を作ろうにも川にいるモンスターに襲われる、そんな所か」
「だからみんな、ここで妥協するのか」
「そうだ」
今度こそ一度でと思い書きましたが、読めばすぐにおかしな文章が見つかって修正することになります。今日は意外と早く終わりました、寝よう。




