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ダンジョンマスター リリスロード 4

 リリスロードが使った闇魔術の中、暗闇以上に暗躍する者がいた。その名はアッキー、その姿を見て、かつていたヒーローウォリアを思い出すスカルベたち。だがそのアッキーも・・。


 回復を担当するカタリナは、常に全員の位置を見ていた。そして皆と自分のいた位置の記憶からひし形を作り、その中心点に目星をつけて移動した。闇魔術により視界が奪われているが、おそらくここだと。

「包み咲かせ、いやしの大輪!」

「マクスレイズヒーリング!!」

 中心点に着くと魔術を唱えた。魔術効果範囲内にいれば仲間全員が回復するがそれも賭けである。さらに続ける。

「授けん、神の息吹と加護を!」

「ゴッドブレス!!」

 聖魔術も合わせて唱える。これでしばらくはダメージを喰らっても耐えられるはず、そう思って唱えたカタリナのゴッドブレスは見事全員にその効果をもたらしていた。



 リリスロードは、さらに魔術で畳みかける。

「落ちろ、二度と抜け出せない夢に!」

「ナイトメア!!」


「うっ、ううう」

 項垂れて泣いているエルドラは、気絶し夢の中に入っていった。ドラゴン族で魔法防御は強いが、まだ幼いこともあり闇魔術の耐性が不十分であったことが眠ってしまった原因である。


 その姿を見ながらリリスロードは少し悩んでいた。戦っているうちに、少しずつライムたちの方も体を利用したいと思うようになったからだ。利用すれば実験的研究(キメラの合成や異国の事を知ることetc)が進むような気がした。

 それは実験材料として彼らの利用価値が認められた証拠であるが、悪まで利用するだけして最後には死ぬことには変わりはない。

 だから、抵抗できない体にするため痛めつけていたのだ。



「エルドラァ!」

 アッキーが叫ぶ。


「エルドラァ、どこにいるの!!」


 なんとゴッドブレスの効果はHPだけでなく、状態異常の治癒まで含まれていた。そして早くも耳の聴覚異常は少し回復していた。



「あなたたち、うるさいわよぉっ!」

 リリスロードは杖で攻撃する。


「バコッ!バキッ!ドスッ!」


「うぐっ!」


「ああっ!」


「おおっ、ごほっごほっ!」


「そして、さっさと死になさぁい!」

「消えろ、あてのない困惑の中へ!」

「カオス!!」

 アッキーとモニカは殺しても構わないと思ったリリスロード。


「うっくぅぁぁ」

「ああああーっ!!」

 二人は廃人と化していくように何かに縋りついている。周りが見えず頭が混乱し何も考えられなくなってしまった。正常な判断ができない状態、基準といったものがなくなってしまう。




「あれ?あなたは刃向わないの。そう♪あなたは攻撃できないんだぁ!」


 何も言わず黙ったままのカタリナは、自分の回復に努めていた。


「ビシバシッ!!」

「くあっ、きゃっ」


「ヒーラーは自分の回復ばかりよねぇ~、そうだぁ!」

 何か良いアイディアを思いついたリリスロードはカタリナの顔に自分の顔を近づけた。

「全員死んじゃった後であなたは食べちゃいましょう。おいしそぉだから、ジュルッ・・」



「!!」

「はぁはぁ、カタリナにげてぇ」

 モニカは何も見えない中、手探りで皆を探した。そして叫ぶ。微かだがゴッドブレスの治癒で視界も開けてきた。


「うっ、くぅぅううぅぅ!」

 子供のエルドラに、老人のような皺が入っている。血管を圧迫するほどとてつもない力がエルドラの中で暴れている。



 あぁ、耳がキンキンと音のように忍び込み奥に入っていって痛みに変わる。

「痛い痛い痛い痛い痛い痛いいぃぃ~!」

 俺の回復した耳には、何の音も聞こえない。聞こえてくるのは音とは別な精神的な苦痛の物事、悪い余韻と言えばいいか、耳鳴りに似た叫び声や笑い声、その他の嫌悪感を引き出す声だった。




「さあ、二人きりになったわ。攻撃出来ないのならしょーがなぁい、いっそここで暮らすのはどう?あなたなら私の使えない魔法が使えるんだし研究の役にたつかもぉ。もし、あなたが私の言うことを聞くなら命は助けてあげてもいいけどぉどうするの?」

 そう耳に囁くリリスロードは、耳の回復を知っていた。



「こあっ・・・」

 ライムは横たわっていた。



「うぁ、はぁはぁ。うぅっ、はぁはぁ」

 アッキーは闇の魔術に抵抗できたが炎の魔術には弱かった。それに攻撃が加わり体力の消耗が激しく息が切れそう。

「うっぐぐぐ」

 突然死、それが舞い込みそうなくらい胸が脈打ち体力を奪っていく。それでもアッキーは立ち上がろうと力を溜めている。


「またぁ!?」

 それを見るなりリリスロードはアッキーに攻撃した。


「ドッ、ドゴ」


「ファイアボール!!」


「うぐぉっ!!」

 杖で殴りつけ、魔術でアッキーの顔を焼いた。


「うううぅ、くぁっ」


「そうやってて近寄らないで、汚らわしい」


 今のうちと思ったカタリナは、

「シスターロザリオ!!」

を唱え魔術の効力を高め、

「メディシン!!」

「ドラグケア!!」

「シエルアトモスフィア!!」

 出来る限り素早く魔術をいくつか唱えた。全部効果のありそうなものばかり。運よくエルドラ以外全員、闇魔術の影響が消え去った!!


 しかし正気を取り戻した時、カタリナの周囲にいる全員は瀕死状態。闇魔術に抵抗するため体力を削られ攻撃も受けている。


「私はあなたと手を組めません!それよりエルドラ君をどうする気!?」

 エルドラを介助するカタリナがリリスロードに問う。


「実験よ。もちろんしばらくは生きていられる特典つきのぉ」


「お断りします!!あなたは魔女じゃない、悪魔よ!!」


「そう。それと悪魔っていってなかったぁ~?それならあなたは、すぐに実験材料にしちゃおう!」

「宿る、悪魔の心と敵意の眼差し!」

「デビルアイ!!」


「あぁああああぁ!あぁあぁ!・・」


「まずはヒーラーの悪魔化から調べてるんだけどぉ、ヒーラーの体でも悪魔が憑依するんだぁ。見物よ~、聖人気取ってどこまで耐えきれるぅ?」


 倒れながら、苦しむカタリナは喉を掻き毟った。

「ああ・・・た、た助けて・・」


「そうだ!他のいらない奴も片づけちゃおう」

 リリスロードが魔術を詠唱する。


 カタリナは自分に向けマイリーロッドを翳す!

「見よ、悪魔祓いの十字架!」

「エクソシストクロス!!」


「シューゥゥウウウゥ!!」

「ぎゃ~あっ、ぎはっっ!」

 自分に聖魔術を唱えたカタリナ、例え敵を攻撃出来なくても自分は攻撃できるのだ。かなりのダメージを喰らうが、正常な状態に戻った。


「っくぅっ。まだぁ、戦える。リリスロードー!」


「へぇ~!憑依は解いたのねぇ。それでぇどうするつもりぃ?」

 余裕で眺めているリスロード。



「お姉ちゃん・・」

 上に手を伸ばして名前を呼ぶエルドラ。


「今すぐ助けるから、死なないでぇ!!」


「可哀想、あなたたちには死が見えてないんだ」


 この場にいる全員の生命力が失われつつあった。


「・・・・」

 カタリナは天井を見上げていた。全員が死を待つだけで動けず言葉も発せられない、闇魔術に抵抗力のあるアッキーでさえ火魔術と攻撃を受け瀕死の状態に陥っている。




 死が待っている。

 しかし、カタリナの目には光が見えていた。闇の者や悪魔ならいくらでも聖魔術で攻撃すれば効いたはずなのに、それができなかった。


 天井に覆いつくせない柔らかな光が見える。誰も傷つけなければ誰からも恨まれないと信じて、この世界で生きてきた(冒険してきた)カタリナ。

 その光が自分の胸に降りてきて、くっ付く。


 カタリナの心に光が宿ったのか、メニューのスキル・魔法欄には一文入っていた。それも元々あったスキルなのか現在となっては分からない。それを何気なく詠みあげる。

「生死を与えん、憐みの心を持つ白愛の天使!!」


「ホワイトエンジェルラブ(エンジェローブ)(オーブ)」

 マイリーロッドの上から発光するオーブが出てきた。、そのオーブは赤、白、ピンク色と輝く。


「何を言ってるの、いひひ狂っちゃったぁ?どんな言葉並べてもむだむだむだぁー!魂まで枯れ果てた心に何したって変わらない!」


「ないわよねぇ~##」

 リリスロードの声が震えていた。そしてメニューを確認する、敵がそんなことするなんてこれまでなかった・・・。

 リリスロードは気づいた、自分は作っていないし登録もしていない魔術がある事に。そして恐怖を抱いた!冒険者には愛があることを知った!


 カタリナはちょうど全員が倒れている中央にいた。偶然か本当自然にいたのでリリスロードはその状況の意味を悟ることができなかった。そこで魔術を詠唱しているのだ。その光は全員を生に一気に近づけた、そして押し上げる!!


「まさかぁー、その光はぁぁあ!!」


 正真正銘本物の魔術、それもこの世界で成立する。ヒーラーのカタリナは天使を呼び寄せていた、攻撃が出来ないカタリナが、まさか大神官クラスのヒーラーになるとは誰が想像ついただろうか。もちろん大神官は職種にないので登録はされない。しかし間違いなく、その光は神に仕える光である。

 その放出する光はこれまでのルクスとは比べ物にならない。教会の銅像と同じようなものが全員の上を羽ばたいている。まるで愛を注ぐように羽ばたく天使はその頭上で光を溢した。光はカタリナを始めライム、アッキー、モニカ、エルドラの胸へと入っていった。


「眩しぃいいぃぃ!!」

 光を嫌うリリスロードは目をおさえ苦しんでいる。


「おあっ、体が治っているぞ!?」

 気づいたら俺の体が治っていた。体(傷)も心(精神)も完全に癒されていた。

「みんな、俺助かったぁ」


「はっ!おおぅ、体が治っている」


「僕、僕どうなったの。お姉ちゃんはどこ?」


「あれ?治ってる、どうして」


「カタリナ、その魔術!!」


 そしてカタリナはリリスロードに言った。

「私のお姉さん返して下さい!」

 


「あなたの姉なんて知らなぃわ」

 少し怯んだリリスロードは答えた、眩しいので下を見て。リリスロードは光に心が浄化されるからか、動きが鈍かった。


 そして光は消えていった。






「俺たちはお前が誰か知らない。お前は俺たちの事を知っているだろうけどこの世界にあるもの全てを知っていることは絶対にない。この世界・武器・システム・冒険者たち全ての事を知ることは不可能!」


「いいえぇ、この世界は私が作ったのよ。だから私の研究内の範疇、知れないはずはない!」

 そう答えるリリスロード。

「あなたたち、私を油断させようとでも思ったんでしょ」


「書庫さ、お前はそこで調べて実験していた。作っても出来ないことが、いくつもあったという証拠だ!」


「そりゃーあるわぁ!!」


「認めたな、この世界でも出来ないことがあったよな」


「いいえ、それはない」


 嘘だな。

「お前、自分のミスが恥ずかしいんだろう」


「ライムさん、そんな言い争ったって」


「永遠の命の研究とでも思った?目的を教えてあげる。それはあなたたちの世界に行くこと、そうすれば実験なんていくらでもできる。何よりあんたのような馬鹿を利用できるのよ、最高じゃ~ない?」


「なるほどな、でもそれは難しいな」

 そんな事、神の力でも不可能だと思う。


「私はね、ずっと実験してきたの。だからもうじきそれが叶うの」


「じゃあー変わったと言おう。この世界の変化に気付けなかったと」


「変化?ああ更新は私がしたのよ」


「ラクーダや馬はお前が呼んだのか?」


「街から遠ざけるため用意したの。そうしないと見つからず人間を確保できないから、はぁ~、故意よ」


「それでも完全に世界は操れないし理解できない!魔女の世界、神や悪魔の世界、この世界、どこの世界であろうとも未知の事があって、世界は絶えず変化している。

 お前が敗北する原因を教えてやろう、それはずっとここにいたことだ!!どんな変化が起こったのか実際に自分の目で確認していない」

 ここには、俺たちがいる、そして秘密兵器もある!!


「それで勝ったつもりぃ?きゃははぁ!!」


「お前は俺たちの世界を知らない」


「知らないけどぉ、それが関係あるー?」


「このフロア、いやこのダンジョンにおいては、確かにお前が一番強いだろう。だがこのフィールド(情報、経験知、未知)において俺たちの方が遥かに強い!」


「自信ありそう~、パチパチパチ」

 面倒くさそうにリリスロードは手を叩く、杖は自分に立てかけて。


「見せてやるさ、いくぞっ!!」


「付き合ってあげるっ。でもここは大事な場所だから屋上でしましょう。話を聞いてあげたんだからそれ位するわよねぇ?」

 魔力消費が大きいのかダンジョンが壊れるのを恐れているのかリリスロードは移動したいようだ。


 騙しではなさそうだ、皆も頷き賛成した。

「わかった」


 屋上へ上るリリスロードとライムたち。


「――――――サ・・」

 リリスロードはフロートで上に上っていく。


「カッカッカッカッカッカッカッカッ!!」

 階段を上り、ついていくライムたち。



 屋上に着く。ダンジョンのフロアと同様の面積がある。でもここはフロアではない、ただの屋上。なぜなら上は空で下は外壁になっているからだ。それは入り口に入る前に見たものと同じ鉱石の物でできたもの。




「さぁ、ここからは手加減しない。からっ!」

 手を抜いていたのか!音速でリリスロードの杖が俺の視界に入る!


「ガシ!ドッ!ビシッ!バシッ!ズッ!」


「カッ!」

 俺は剣で受け止めた。


「ああっ!」

 カタリナは膝を杖で突かれた。


「うぁっ!」

 エルドラは肩を叩かれる。


「ガッ!!」

 アッキーは盾で受ける。


「きゃっ!!」

 モニカは胸を突かれた。ローブに杖が食い込む。



「のおーっ!!」

 リリスロードが威勢よく声をあげた。


「動揺隠せてないわね、リリスロード!!」


「胸押さえて、偉そうに説教かしらぁ?」

 リリスロードは笑っているが、額に汗を浮かべる。


「ライムー、水魔術が効いたんでしょ!」


「ああ、おそらく水魔術に弱い!弱いがモニカさんの魔力で攻撃してもダメージは0になると思う」

 魔術はだいたい全て使った。その中で水魔術に少し反応を示したのを俺は見逃さなかった。


 エルドラが速早の翼羽を使う、そしてナイフを引っ提げ光速でリリスロードに向かう。


「ウォーターガン!!」


「だから、おばさんは水魔術の素質ゼロだってぇ」


「るさい!」

 モニカは、水魔術で援護しようとしたが発動しなかった。


「キィン!カン!!」

 リリスロードは光速で動くエルドラの攻撃を受けている!!それならと、


「ウォーターガン!!」

 エルドラが一度離れ、水魔術を唱えた。


「バシャッ!」

「くすくす、危なぁい」

 リリスロードはかわせばいいだけ。仮に当たってもダメージは0だったが、リリスロードは何故か嫌がっていた。


「カカカッ!」

「ガッ!ガッ!」

 アッキーと俺が左右から斬りつけたがリリスロードに受けられる。その上、杖を振り俺とアッキーの体を打つ!攻撃回数は二回(二人分)以上、それでいて一振りが重く強い。

「バシッ!!バシッ!!」

 リリスロードが杖を腹に向けた。

「ワールウィンド!」


「うわっ!!」

「うわぁあっ!!」


「ドタッ!」

「ドドッ!」

 危なっ、体が上でなく前に飛ばされかけた!ああいう状態で使えば横に旋風が起こるのか! 俺は身を翻し旋風から抜け出した。一方、アッキーは風に飛ばされないので余裕があった、しかし体が揺れたので逃げる。


「マドレレイズヒーリング!!」

 すぐに傍に来てカタリナがダメージを回復する。


「ウォータースプラッシュ!!」

 ウォーターガンは止めてモニカが唱える。


「その距離じゃー、あたらなぁいっ!」


「発動しない」

 また不発だ。


「ウォーターガン!!」

「きゃあっ!!」

 リリスロードが唱えた水の球はモニカの顔面にぶち当たる。


「ぷふっ、あなたが出せなかったから私が先に使っちゃったぁ~っ」

 斜め目線でモニカを見るリリスロード、どれだけ嫌味たらしいんだ。


「水が苦手なんでしょ?」

 水のせいか涙目でモニカがダンジョンマスターに尋ねた。


「当たり、魔法防御には属性がある。その中で私は水が一番弱いっ。でも魔法防御の値は最高よぉ」

 

「それはご丁寧に」

 お答えいただきと目を伏せる、モニカは近づき魔術の詠唱をはじめた。


「いこっかなぁ?」

 目をくりっと開いて頬を膨らませたリリスロードが言う。



「ウォーター・・・――」


「だから不向きだって言ってんのよぉ。死んでしまぇえ、ほらぁ!!」

 リリスロードは杖をモニカに向かい振る。


「バシッ!」


「バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!」

「あぁっ!あぁっ!あぁっ!あぁっ!あぁっ!あぁっ!あぁっ!あぁっ!」

 次から次へとリリスロードの杖がモニカの体を打ちつける。モニカは全身を強打し打撲や骨折していた。


 モニカは痛みに耐えて魔術を唱える。

「ウォーターガン!ウォーターガン、ウォーターガン!ウォーターガン、ウォーターガン!ウォーターガン、ウォーターガン!」


 下手な鉄砲も数撃ちゃ当たるというが不発の鉄砲は、まず当たらない。カタリナはモニカの回復に当たった。途中に死ぬ危険を感じて。


 俺たちはモニカさんを援護をするため、リリスロードに攻撃した。

「はぁっ!ダッシュ、縦一刀、斜め一刀、横一刀、斜め一刀、縦一刀、横一刀!!


「ふんっ、ぬんっ、やぁっ、はあっ!!」


「たぁ!とう、せい、さぁ、これはどうだぁ!!」


 だが、リリスロードの杖さばきと魔術の前では数にしても威力にしても勝てなかった。武器で攻撃する者が三人、魔術が一人(二人)、回復が一人いるのに、たった一人の魔女に凌駕されるなど普通は有り得ない話だ。


「ウォーター・・

「ミズ!!」

 ナイフ!!」

「シュフッヒィーン!!ズォオオオオバシュッ!!」

 どんな鉱石よりも固くて鋭い水のナイフがモニカの杖の上に現れた。そのナイフをモニカは斜めに薙ぎ払う。


「ブシュッ!!」

「ぎひぃぃいいやあああっ!!」

 鋭い刃はリリスロードの胸を切り裂いた!!フリルドレスが切れ胸には大きな傷が!そこから吹き出し血がトクトクトクと流れる。虚を衝く攻撃は間違いなくリリスロードを斬りさいた。


 不敵な笑みをするモニカ、形勢逆転である。

 モニカは、これまでウォーターガンを練習してきたが結局できず未完成のまま終わった。その練習中に偶然出来たのがウォーターナイフ!モニカはそれを誰にも知られずにここまで隠してきた。

「これは私がこの世界で作ったオリジナル魔術よ、正確には魔術剣と言った方が正しいのかもしれないけどっ」


「人間ごときが魔術詠唱破棄だと・・・。調子に乗らないで!よくも私の胸を、よくもよくもぉおおお!」

 リリスロードは胸に手を当て止血した。胸に傷が残る。


「今だー!!」

 俺たちは作戦のごとく突っ込んだ。チャンスはここしかない。


「這い出せ、死神の手!」

「デスハンド!!」

 

「おわぁああっ!!」

 悪魔の手が下から俺たちの前に這い出た!!俺は、ファーストステップで退き、スレスレでかわす。闇魔術を使う前に速攻すれば間に合うと思ったが、防御と攻撃が一体となった闇魔術があるとは思ってなかった。


 迂闊に近づけない、こちらの戦術・戦法がことごとく潰される。なら、

「ゴニョゴニョ」

 俺はモニカさんへ耳打ちした。


「ゴニョゴニョ」

 モニカさんはエルドラに耳打ちした。


「みんな総攻撃ー!」

 エルドラが大声で叫ぶと全員がリリスロードへ向かい一直線で走った。


「ホッピングボール!」

 俺はホッピングボールを投げた。こんなの使えない思っていたが工夫次第で使えるかも。バビューンとリリスロードに跳んでいくボール。もちろんリリスロードはどんなものか知ろうとは思わない物だ。


「くだらなぁい、ムカツくぅう!」

 ライムの馬鹿な行動にため息がでる。そして怒る。たかだか三年冒険者に軽く扱われたのが癪に障った。


 そう思って甘く見るんだ。ボールが近づけば近づくほどリリスロードの視界を遮る、つまりお前の視界から見える範囲が減る。


「邪魔ぁー!!」

「ファイアボール!」

「ゴゥンゴゥン!!」

 ホッピングボールは空しく燃え尽きた、だがリリスロードの魔術詠唱のための時間と動作を一つ奪った。俺は最初からそれ以上の事は考えていない。

 この『楽しい異世界を探して』は火、水、風、氷、雷、魔、幻、土、闇の各九種の魔法防御を合計し(総合)魔法防御として示します。それぞれの最高値を111として最高魔術防御999。回復や光は含まず。リリスロードは闇のかわりに聖が入る。

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