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ダンジョンマスター リリスロード 2

 ダンジョンマスターの手に落ちたライムたち、しかしアッキーは戦士にして闇属性の魔術防御が最高値を示していた。その姿に驚嘆するダンジョンマスター。

ライムの後ろにいたモニカも夢を見ていた。


 ~夢のような職業に挫折したモニカ。歳をとっても安定した収入がない、それでも明るく生きてきたのにつまらない平凡な日常はずっと変わらなかった。そんな生活の中、希望を見出す、アニメの英雄に憧れたことを思い出したモニカはゲームでその夢を叶える。

 ただ年甲斐もなくすることではないので誰にも言えない、それでも疑似的に英雄を体験できるので止めることができない。

 そのうちに正常に思考回路が回らなくなっていった。ゲームで課金した。カキンカキンとチャンバラのように強さを買う課金でお金を使った結果、生活を圧迫した~



 あれ、気付いたらモニカはアッキーの顔を下から見上げていた。ふと思った。あなたはどんな職種のキャラクターも似合わない、それでもなぜ戦士のようにやっていられるのか。決してアッキーは裕福で恵まれた環境のように見えない、体格も性格も問題があるように見えた。アッキーがなぜ自分以上に英雄に近い存在なのか疑問を抱く。

 アッキーに何かこう底力というか見えない力があるからだと考えた。それは一度、地に落ちてきた経験のようなもの。

 まさしくあなたは私の希望、私が求めるべき姿、ここにいる私は何をしているのか。英雄どころか普通の冒険者にも慣れていない・・。






 ~カタリナは友達が出来なかった。せっかく出来たと思った友達には別の友達ができ離れていってしまった。その状態はずっと続いて学生時代が終わり現在、私は何も必要としないしされない存在である。

 友達と呼べる存在がいない、このまま消えても誰も気にとめない。誰かを求めることをしてこなかったからだろうか?必要とされる存在にならなかったからだろうか?誰かと関わるのが嫌だからか?

 だから、このまま楽になりたいのか。誰も死なずに誰も傷つかずに全てが終わるから~


 カタリナの目にアッキーが映る。アッキーの首には死神の鎌がかけられていた。見えているのか見えていないのか分からない。

 その鎌の恐怖と脅威に信念を捩じ曲げられることなくアッキーは立ちはだかっていた。一人で戦う事になっても消えることのない存在を確立している。皆を助ける勇姿は輝いていた。

 その光がカタリナの方へ流れてきた。光に溢れたものは手を差し出しカタリナに話しかけた。

「一緒に遊びに行こう!」

 お姉ちゃん!?差しのべられた手をとる、そうだ、このままだと皆いなくなるんだ。






 ~この場所をあなたは、また言おうとした。誰とも関係を持ってはいけないと、あれほど注意したのに。この場所が狙われたら私たちは生きていけない。ここに住んでいられなくなるの、気づかれないうちにすぐに戻ってきなさい。

 そんな気づかれるような子はもういらない、もう戻ってこなくていいからどこかへいっておしまい。

だから僕は置いてかれるの、僕は誰にも愛してもらえない、僕は死ぬんだ~



 あれー、アッキー兄ちゃんが目の前にいる!?

 何で戦っているの?僕のことを助けようとしているのかな?僕と血がつながっていないのに命を懸けている、助けようとしている。僕はアッキー兄ちゃんを置いて逃げていくかもしれないんだよ。

 どこにいようが関係なく見守ってくれている存在、僕はここでスカルベさんたちと出会って生きてきた。そして今、僕を助けようとしているアッキー兄ちゃんがそこにいる。

 温もりに溢れた、優しい匂いのする人、その人の声がエルドラの耳に届いた。

「さあ起きなさい」






「まだ、粘ってるぅ~」


 全員が目を覚ました。


 ソウルゲートはきつかったのかリリスは魔術を中断した。召喚には莫大な魔力が必要になるのだろう、がくっと肩を下ろした。


「お前らウザイ。せーっかく簡単に終わらせてしまおうと思ったのに、なーにそのおデブちゃん、いっちいっち癇に障ることばかりして。門も臭いからしまっちゃったじゃーないのぉ!」


 アッキーは少し震えていた。闇の魔術には強いがマスターの文句には弱かったか。




「リリスロード、俺たちを元の世界に返せ、そして元の生活を返せー!!」


「あなたたちはこの世界でいーっしょう暮らしていくの私の研究材料として、それでいいのよぉ。よく知っているのねぇ、混沌化したこの世界に招き入れたことぉ、あなたは馬鹿で無知で面白いように罠にかかってくれたぁ、きゃはははははははっ!!」


「やっぱりお前の仕業か。そのせいで俺の人生、滅茶苦茶になったんだ!!」


「うっふふっ、そうなの。かわいそうなお馬鹿さぁん!」


「俺はフリーターだった」


「何を言っているの?」


「学校を卒業後、就職もうまくつけずバイトで暮らしてきた。そしてバイトで頑張っていたのに、お前が邪魔したんだろぉ!」


「それが私のせい、うぎゃっははははっはははぁ可哀想な人間。私のせいなら、気の済むまでやり返せばいいんじゃない?どちらが殺されてもお互い様よぉお~」


「お互い様じゃなくておばば様のせいでしょ!!」

 まだ年齢を馬鹿にする発言を連呼するモニカさん、どの世界でも歳の事を言う程通じる言葉はないのか。


「それは、これから死んで歳をとらない人達には関係ないのよねぇ~。あなた確か魔法使いだった?火の魔法が得意ならやってみれば?」


「得意よ、だからあなたには負けはしない」


「じゃっあ~、私も火魔法で悔恨ごと焼き尽くすわぁ~っ」


「望むところよ」


 魔術の詠唱に入るリリス。

「沸き起これ、この世の全てを焼き尽くす!」

「インフェルノ!!」


「あつっ!!あれを見ろ!!炎だ、炎の巨大な悪魔が出たぞ!!」

 詠唱から発動までの時間がかからず悪魔が出現する。


「気をつけてぇねぇ、触れただけで全身火傷率100%になるからぁっ!」

 嘲笑うようにリリスロードが可愛く言う。

「さあ行くわよ」


「敵を滅ぼせ、メギドの丘で終末を告げた業火よ!」

「メギドフレイム!!」

 モニカは最高火魔術を唱えた。炎対炎の勝負で、地獄の炎を黙示録の炎が封印するように焼いていった。だがインフェルノは留まるところを知らない、燃え散らす。


「消えない!?この火魔術で火力負けするなんて!」


「おいエルドラ、水魔術で消してみてくれ!!」


「うんっ!」

「撃て、詰められた鉄砲水!」

「ウォーターガン!!」

「パシャッパッ!!」

 水は炎に達する前に蒸発した、水でも炎に勝てないのか、水の意味ないじゃん。



「ぎえっ、熱いっ!」

「まとえ、魔術の防護布!」

「マジックバリア!!」

「ジュッ・・ワリ・・、パリィィイイン!!」

 モニカは魔術防壁を詠唱するが、熱で破壊される。防護魔術を破るほどの火力。


「まだっ!!」

「流れる、帯は幾重に大波!」

「アクアウェーブ!!」

 エルドラはより高位な水魔術を詠唱した。


「そんな波では止められるかしらぁ~?」

 リリスロードはそう答えた、炎の悪魔が体をこするように近づけて来るっ!


「いたたたたっ」

 熱がチリチリする。これ以上寄られたら一瞬のうちに焼かれる。 


「あちいっ!」


「いやああっ!!」


「みなさん、私の周りに集まって下さい」

 カタリナが叫ぶと全員がカタリナの周りに集まった。


 襲い掛かる炎の悪魔、全てを焼き尽くす火力!


「リリスロード!俺たちの体が手に入らなくなってもいいのか!!」


「うんっ!!」

 目を細め答えるリリスロード、納得の笑み。


「出でよ、聖なる盾!」

「ホーリーシールド!!」

「フゥゥウウウウン!!」

「ゴォオオオオオオッ!!」


「トルントルントルン・・・トクトクトク」

「ゴォッ、ォオオッ、ホォォン、フォンッ・・・フッ」

 ホーリーシールドが炎と中和するように消滅していく。



「カタリナすごいぞっ!!」


「カタリナありがとうございます!」


「ありがとう」


「皆さんを守れてよかったです」


「ヒーラーの分際で魔女の邪魔をするとは、生意気ぃいぃい!」


 火属性でも悪魔だからか、聖属性の盾が有効だった。

 消えるとエルドラがブリンクで左右を移動し攻撃する。間合いで足の着いた先に杖を出すリリスロード。

「おぐっ」

 あの速さで対応可するリリスロード、魔女とは思えない。腹を抑え後ろに下がるエルドラ。俺はダッシュし近づき一刀を放つ、これなら杖に当たらないはずだ。


 だが!!


 杖で剣を受け止めるリリスロード。

「そんな遅い一刀はきかなぁーい」

 それと同時に杖を振る。

「バシィッ!」

「ごほっ」

 俺の左頬に激痛が走る。


「グリタータズル」

 それに合わせブリンクでランダムに地を蹴るエルドラ、横からクイックカットを出す。それをあっさりかわすリリスロード。

 アッキーはかわした位置を狙い振回した、杖で立て受けるリリス、逆振回、90度移動し受けるリリスロード。杖はビクともしない硬度を誇る。

 俺がダッシュ、ファーストステップしスライディングした。軽く跳ぶリリスロードのフリルドレスをバサリと捲った、リリスロードの視界が奪われる!

「バサッ」

「きぃっ!!」



「クルックルッ、ババッ!!」

 リリスロードは杖を交差に連続で振る、同じく足を回転し蹴りを出す。黒のフリルドレスが直る、その陰から杖が来る!


「カキンカキン、バッ!カキンッカキ、ドッ!カキカキカキン!!」


「ちいっ!」

「んぅっ!ぉおお!」

「うあっ!!」


 陰から攻撃が見えている?動いている最中にこちらの攻撃を何かで読み取り対応するリリスロード。


 エルドラとアッキーはナイフと斧で受けるだけ、防ぎきれなかった杖の攻撃をいくらか喰らった。俺は杖を剣で受けた、力づくで何とか止めた。しかしリリスロードは、その力をものともせず回転していた。さらに、


「ふわっ・・」


 空に浮かぶリリスロード、フロートを唱えたのか!


 エルドラの翼がバサリ!ウィンドウィングして勢いをつけ斜めに飛び立つ!ナイフの刃を疾風のごとく立てる。


「パチィッ!」


 エルドラはナイフを杖ではたき落とされる。


 エルドラが飛び立つのに等しく、アッキーはパワーアクスを出す、が当たらず!


「ふんっ!!」

 続けざまにアッキーはトマホークを出した。さすがにヘルメスの斧のトマホークは簡単に打ち落とせず、杖を何回か振って応じる。神の武器を手放すアッキーも多少のリスクを負う。


 俺はすかさず、

「シュランッ!!」

「シィリ!」

「光球斬り!!」

を放つ。当たったか!?


 空を舞う髪の毛が数本浮かんでいる!しかし、ドレスには全く傷がついていない。破天荒な攻撃をしたところで会心の一撃は決められない!それとも強い防具を装備しているからなのか。


「っ、ダメか」


「で、でえ、なにぃ?それで私の髪の毛切ったってわけ?よくもぉ~っ!!」

 フロートのような魔術の状態のまま俺の前に斜め急降下するリリスロードが杖で攻撃した、杖の先端で素早い突きを何回も繰り出す。


「カッ、カシッ、パキッ・キ・・キン」

 剣の刃が途中で折れ、滑り落ちた。


「剣がっ・・」

 剣を折りやがった。


「これがあなたの実力なら最初に息絶えるのはあなたよぉっ!」


「グスッ!」


「ぐああっ!!うぁあ、うぁあ!!」

 足に杖が刺さる、さらに押しながら揺すった。


 リリスロードの瞳がまん丸になり、感情が高ぶっていた。

「私の勝ちよぉお、あなたは死んでいくのが相応しいんじゃないいぃぃ~!」


 エルドラが走りドラゴンパンチを出す、リリスロードはそれをかわし蹴りとばす。勢いづいたエルドラはあっちへ跳んでいった。


「ちょっとま・」

 モニカが魔術を詠唱する。


 俺は急いでリリスロードへ向かって走る。


「サンダーアーク!!」


 マジックバリアで魔術防壁を作ったリリスロード!当然読まれて防がれる。

 しかしリリスロードとモニカの間に俺が入り込むことでその読みを外す。サンダーアークの雷狐は間にいた俺の剣にとんで移った。剣は電弧を帯びる!

「くらっえええぇ!!」

 無防備、完全に隙を突かれた焦り顔のリリスロード。少し怯えているようにも俺の目に映る。こんな事一度もなかったのだろう、俺の一番得意な技を決めるっ!縦に一刀を入れた!!

「スィイイイイイイッ・・」

 剣はリリスロードの腕を斬った、確かにドレスの上を剣は斬るように流れた。

 だがドレスは切れていない、早すぎてまだ服の変化が表れていないだけか。肉体は切れているかもしれないと期待するがリリスロードの顔は変わらなかった。杖を回転させるリリスロード、

「シュ!パシィーン!!カランッ・・・カラカラン」

 杖が伸びた!!?前から蛇が噛みつくように杖のリーチが伸びてきた、俺の腕は折れていた。


 ならとモニカは接近戦を挑む。杖の攻撃や防御の型は三年の修業で身についている。杖を振るが、リリスロードはその内側から攻撃を押し返し、魔術を詠唱する。


「突け、歪な悪魔の矛!」

「デビルスピア!!」

「ビヒィイイン!!!」

「シキュ・・・グスッ!グサッ!」


「ぐぁあ!!」

 黒い爪がモニカのローブ上から体ごと突き刺した。モニカは傷口を手で塞ぎながら蹲る

「いったぁぁ・」

 ローブが血で染まっていく、染みはどんどん広がり死の喪服に近づくように赤黒く染まっていく。


 俺に回復魔術を唱えたカタリナは、すぐにまた詠唱して待っていた。放つ!

「マクスヒーリング!!」


「切り刻め、結晶と化した凍鳥!!」

「アイスバード!!」

 氷が鳥たちのくちばしで突き刺した。モニカの体に割れたガラスの破片のような氷の塊が飛んで突き刺してくる。冷たくて麻痺しているので痛みは感じない、体温が氷を溶かして始めて痛みが響いてくる。じわん、じわん、チクチクチク、グサグサグサッ!!

「きゃぁあぁああっ!!」


「ザッ・・」

 アッキーがリリスロードとモニカの前に立ちはだかる。

「サクサクサクザクザクザクッザクザクッ!!!」

「ぐうっ、うぐぐぐっ、ううっ!!」

 無数の氷がアッキーの体に刺さっていった。まるでハリネズミのように。まだ凍鳥は飛んでいる。ガードしていた盾にまで氷が張りついている。


「マジックバリア!!」

 モニカが魔術の終わり頃の凍鳥から攻撃を防いだ。

「パキパキパキッパキパキパキン、パクッ!!」


「さぶっ、さぶいいいい~」

 (かじか)んで手から力が奪われていく。寒い分、余分に力を出さなければいけない。


「モニカさん、アイスバードなんて魔術あるんですか?」

 俺はモニカさんに尋ねた。


「いいえ、なかった。魔術書にもそんなものは載ってない。あれは更新前の魔女のみが使える魔術だと思う」


「ったぁ~っ」

 カタリナは回復魔術を自分に唱えていた。アイスバードはHPだけでなく、体の熱と体力も奪っていった。

 マジックバリアでモニカさんは大半の凍鳥を塞いだ。それでも掻い潜ってきた鳥のダメージは許容範囲である。九死に一生を得る。


リリスが普通の魔術を使える、ということは、

「精霊はリリスロードに従っている!!」


「合ってるわよ」



 それならそれで攻撃でいくまで。魔女なら普通の攻撃の方が通じるはずだ!!


「おりゃああっ、縦斬撃横斬撃斜め一刀、ダッシュ、背後に回りダブルキル、ダブルステップで斬る。

「シュッ!シィッ!キンッ!カシッ!」

「カカカッ、カラ!!」

 杖で応じるリリスロード、体の体勢を変え足を動かした。


「シュッシュッシュンシュン!!ス!」

「カタカラカカカシ!!ト!」

 エルドラの素早く走り何度も斬りを入れる、飛んで斬るのもリリスロードの杖さばきで返される。


「―――」

「カ!カシッ!」

 杖と斧の力比べでどうして互角になるんだ、おまけに神の武器だぞ。ハチャメチャな力を持つリリスロード。おそらく受けが上手いっ!


「ファイヤーボウ!」

「ボゥウ!」

「シィパッ!!」

 モニカの魔術から炎矢が放たれた。その炎矢をリリスロードはドレスで叩き落とした。あのドレスは攻撃と魔法防御を防ぐ代物。ステータスも異常な位、高い数値を示すと思う。何せリリスロードはほとんどダメージを喰らっていないのだから。焼けた後すら見えないんだ。


「マドレレイズヒーリング!!」

 ライム、アッキー、モニカが効果範囲に入る所でカタリナは詠唱した。エルドラはおそらく全てかわせたはずと推測したのだと思う。


「ファイヤーボウ」

 リリスロードが魔術を仕返す、俺はこれを避けた、これくらいは楽勝だ。


 ブリンクでエルドラがリリスロードに向かった、その後ろについていく俺とアッキー、トライアングルフォーメーションのような態勢で戦闘に挑む!!

 全員、これまで足手纏いだったがアッキーの姿を見習うことになった、モニカのローブは元の色に赤い血がつき赤黒くなって喪服を成す趣向である。

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