大フロアでの決戦 4
ステンノー、エウリュアレー、メデューサを倒し次のフロアボスに挑むライムたち。次に現れたのは一階層で一度戦いに敗れたエンシェントドラゴンであった。
俺はこれ以上ない程に力を入れた。剣が途中で折れるくらい、しかし剣はこれ以上入っていかなかった。
普段、傷を負うことなどないのだろう。エンシェントドラゴンが怒り激しく暴れ回る! こちらを見たかと思うと見たことのない速さで移動した。
エルドラは青の銀河で風を読み、その攻撃をかわす。
「グォオーオオオオオーッ!!」
うろちょろと小賢しいのかドラゴンが呻き声を上げる、そして手や翼、尾を出して攻撃する。その攻撃をエルドラは全てかわした。攻撃の初動作に伴う風を肌で感じる、空気が手に触れた瞬間が攻撃開始の合図。エルドラは敵の位置を的確にとらえ行動をとっていた。
「ほら、出来るもんなら当ててみろ!」
「エルドラ、気を付けてくれ!」
三年間の修業でも差は埋まらないのか、攻撃が通じない。効いていると思うんだが。
「!!」
「ったっ・」
エルドラは完全回避が出来ずドラゴンの爪で少し挫かれていた。エルドラの傷は浅いが出血していた。
「エルドラー!俺たちがひきつけるからお前は一先ず回復しろ!」
俺とアッキーが一時的に交替した。あの怒り狂うドラゴンの速度には、ついていけない。
「ジリッ・・・」
「ジジジジ・・・」
俺達たちが攻めあぐねていると、モニカさんが魔術を使い加勢した。
「爆ぜろ、消えた竜巻を集めて重ねて!」
「エアブラスト!!」
体格が大きいほど、風に煽られる影響は大きい。しかし逆に重ければ重いほど吹き飛ばされないで耐えることができるのも事実。
カタリナはエルドラの体にマクスヒーリングを唱える。
「ジリッ・」
「ジ・・」
攻めたいが隙がない。足を出すだけでもドラゴンの高速移動にぶつかられるような感じがした。それを危惧し、剣を出そうとすると視界とバランスが悪くなる。合わせて注意が分散し感覚も鈍くなってしまう。結局、手も足も出せず地団駄する。
「現せ、怒りと熱の化身よ!」
「エクスプロード!!」
・・・・・願うようにドラゴンを見る。だが結果は効果なし、最初の時と変わらない。メテオライトにエアブラストにエクスプロード、モニカさんが偶然エリスと同じ魔術を唱えていた。
風が起こる!見たら横まで来ているドラゴン、俺達を蹴散らすように移動する。あの装甲に当たるだけで大怪我をしそうだ。
俺達は逃げるがドラゴンは圧倒的な速さで俺達に追いつく。攻撃を喰らいつつも全員が散って敵の攻撃を逃げんとするがドラゴンはその距離を苦ともしない。
「このっ、このこのこのこのこの」
「シュカ、カカカカカカ!!」
回避しつつ攻撃するが当たってもダメージは、ほぼゼロ。
「はあっ!おっはぁはぁはっ」
「シッ、キィンキィン!」
あのアッキーの金の斧での攻撃が体に入っても、刃のような装甲をしたドラゴンの体には傷一つつけることができなかった、ただ音だけ返ってくる。
「キ、キキキキキン!」
クイックカットでドラゴンの尾の近くを斬るエルドラ。刃は欠けてはいないがダメージをほとんど与えられない。
「ファイアボール!」
「ボゥオゥン!!」
炎が燃え移ること適わず消えていった。弱い魔術は一切通じない。強い魔術でも、時間稼ぎにしかならず・・。
「効かなっ・・」
俺は苦笑していた、あの時と状況が変わらないじゃないか。三年間だぞ、その間、何も勝つ手立てを見つけられなかったのか?修業しても勝つステータスとスキルを身につけられなかったのか!!
「はぁはぁ、何でこんな巨大な」
体で速く動けるんだ。
「んっゴホッ、はぁはぁ」
「!!」
ドラゴンが金の咆哮を放つ。
「咆哮だぁ!!」
足よ、速く動け!逃げなければ、ここで死ぬ。目に頼ってしまった、見なくても感じればよかったのに。見たせいで余計にドラゴンの目と不思議な力で捕縛されてしまった。一瞬、意識がふらっとしたから間違いない。逃げ遅れた!!
「青の銀河!!」
「照らせ、月の光!」
「ライティング!!」
周囲が光に包まれた、俺は光の外へ逃げた。
閃光を見る余裕はなかった、少し受けた気もする。体がピリピリしたと思ったら血管が蜘蛛の巣のように張った。
一方ドラゴンの目は焼かれ、冒険者一行の姿形を見失う。しかしドラゴンは他にも特殊な力を持っていた。それは位置を特定できるようなもの。その力で冒険者たちに咆哮の熱は当てることができた。
熱によりHPが奪われ、強く体を打ちつけて骨が軋むような痺れが全身を生じていた。この負傷により回避すらとれないようになっていった。
「ブブンッ!」
「カシュー」
「フォオオォ」
「バシ!ババッ!!ドサササッ!!」
「痛いなぁ」
「はぁはぁはぁはぁはぁうっぐぅ・・・」
「ドラゴン、全然疲れないぞ」
「はぁはぁ」
「はぁはぁ、このままだと殺されてしまいます。一度逃げませんか?」
とカタリナが提案する。
「逃げれないかな」
俺は弱った声で答えていた。
湧く気力が痛みで奪われていく、湧いたもの全て。体を焼き付けた咆哮の正体は未だ分からず。もう二度とあたりたくない。
「ブバサッ!バサッ!バサッ!バサッ!!バサッ!バサッ!バサッ!!バサッ!バサッ!バサッ!!バサッ!バサッ!バサッ!!バサッ!」
ドラゴンが超速で俺達の周りを飛んでいる!!
「!?」
動きながら微かに白い物が見えた!
また!
爪だ!!赤と・・・
モニカさんが爪で引き裂かれていた。体がとれかかっているようにも見える。カタリナは早急に回復魔術で治療する、少し時間が必要だ。魔術を幾つも使用しているのか?これまでそんな事はなかった。ドラゴンの爪が魔術を阻害しているのか、それとも毒があって簡単に回復させてくれないのか?
時間を稼がなければ・・しかし俺は魔術が使えない。
俺は一刀と見せかけ二刀する。一度目の振り下ろした刀を手首を変えて二度目振り上げた。そして縦に斬撃。ただ振っているだけでドラゴンの体には届かない。
エルドラはロンドナイフをしっかりと握り、ブリンクで移動し飛ぶ。超速のドラゴンに近づき斬りつける。速いが何とか追いつく、攻撃力が高いエルドラの攻撃は決まる。
傷は入るが生命力と治癒力がドラゴンの体の傷を塞いでいく。
アッキーがトマホークを出す。多少の攻撃はガードしアウトブレイクで凌いでいるが、見るとすぐにドラゴンは動いていた。これではガードとアウトブレイクのみで力尽きてしまう。
よかった!モニカさんが起き上がっている、助かった。
モニカさんの深手の件があり、それからのカタリナは応急処置をすぐとるようになった。俺達の命はカタリナの手にかかっている。
これ以上、籠の中で攻撃を受けるわけにはいかない。そっちがそれなら俺は、
!?
「モニカさん、もしかしてメギドフレイムを唱えるつもりですか?」
モニカさんは険しい顔でドラゴンに向かって杖を翳す、その詠唱から炎最高魔術だとすぐに分かった。
「そうだけど!」
「エクスプロードが効かなかったから炎耐性のドラゴンに炎は通じません。魔力が浪費されるだけで戦闘に負けてしまいます。だからやめて下さい」
「冷静なライムに賛成しおうかな、火力負けしたくないから。でどうするの作戦?」
「考えてません」
「きゃあー!」
モニカさんに突っ込むドラゴン、俺たちの横に一瞬で移動する。一度に5、10m避けられなければ追突を受けるんだ。
「グッォオオ―――――ッ!!」
奇声を上げたエンシェントドラゴン。
「・・・!?」
はい、耳鳴りがする。そういった攻撃なのか。
「キィーンとするわね」
「はい、ちょっと声が響いています」
「何だ?」
「ブワッ!ブワッ!ブワッ!ブワッ!ブルンッ!」
「ドスッ、ドゴォオッ!!ドンッ!」
「タタタタタ・・」
ドラゴンが腕を伸ばして突いてきた!そして体を捩り何度も尾を振り回す。
俺達は跳んだり、屈んだり、よけたり、防御する。特に跳んでも明らかに回避不可能な時は、防具のついた方を向けてガードする、そうすればダメージを最小限に抑えられるから。
「ぜぇはぁ、おい」
「ふぅ~なんとかかわせました」
「はぁはぁはぁはぁ」
俺たちは呼吸を整える。こんな動いてちゃあ攻撃どころではない。修業を思い出すんだと心に念じる。
~瞬時の回想(過去の出来事)~
「おい、ライム。俺の攻撃を全てかわしてみろ」
夕暮れの中、ライムとヴィンスヴェルタは棒切れで修業した。闇の中、斜め横から来ることを悟ったライムは棒をかわす。一筋の光のような姿が見えない時は攻撃をかわせない。それが必殺の攻撃であれば負け即死である。
「かわせたか。ではこれはどお・・・・だ!」
「バシッ!」
「まだ、できないか」
~回想まで~
「スッ」
自分の周りの風と気を感じる。ドラゴンが突っ込んで来た!!とても速い。
「きゃあっ」
「うっ」
「ッタタタッ」
「スタッ・・」
出来た!!
「ガコッコココココーッ・・」
動きが滑らかに曲線を描く様に俺は攻撃をかわした。風を押しのけるように近づいてきたから。また、それはとても威圧的だった。
思い描くように動けないのなら、この世界にいる意味がない。風からイメージを掴み動くことが出来れば戦っていける、そう信じてやってのけた。
「うぁああ!」
俺はドラゴンに向かいダッシュした。攻撃の手を緩めずやっていれば糸口が開けるはず、その信念に賭けてみることにした。エルドラは足と翼と腕を振りドラゴンに高速で近づく。
攻撃を次々と品を変え繰り出してみる。背中から、屈んで、空から繰り出す。傷一つつかないが、いつか斬れると信じて連続斬り、足を体を手を動かし、頭を働かす。
これは?と思いつく方法を一通りした、それならこうだ、よしこれでどうだ!!と。ドラゴンの頭から尾の先まで部位を変えて攻撃したがどこにも弱点は見当たらない。
エルドラが魔術を唱える。
「まとえ、凍てつく冷気!」
「スタンコールド!!」
俺たちは冷気を纏った。これなら通じるかもしれない。
「はあっ!」
「カッ!」
冷気を纏った体で剣を使い攻撃しても、ほとんどダメージは与えられず。
それに対抗しエンシェントドラゴンが金の咆哮を放つ!!
「ス、クォオオオオーン・・・・ンン・・ン!!」
とそれをかわした時に、どこかから攻撃が来た!!
狙い撃ち!挟み撃ち!!
「ブルンッ!!」
「ダダダダ、ダンダダダッ!!」
地に転がる俺。後ろから尾で俺を狙っていたのか、危なかった。すぐにカタリナが傷を癒してくれた。
~回想(過去の出来事)~
「自惚れるな!!」
ヴィンスさんに何度言われたことか、もう一度だ!!倒れている暇はない、そんな隙を与える位なら立って攻撃しろ。もし連続技であったならお前は終わっていた。
~終わり~
「くっそぉおお!!」
俺は走った。剣で一刀を出す。
一刀一刀一刀かわす一刀一刀一刀一刀、下に潜る、一刀一刀一刀、体に乗る、一刀一刀一刀、下りる、一刀一刀一刀、旋回をかわす、一刀一刀一刀ぉおおおおおー!!
「キィンィッ!!」
全てがドラゴンの金の装甲の前には無駄に終わった、俺の剣の刃が毀れそうだ。
「休むな、終わるな」
全部やったか、それで止まっているのか、休んでいるのか自問自答する。
斬撃斬撃斬撃斬撃かわす斬撃斬撃斬撃かわす斬撃かわす。
「はあはあはあはあはぁはあはあはぁ~っ、ふぅ~っ!」
手を出しきったが斬れずダメージは喰らっていなかった、カードならこれだけ出せば確実に切れている。勝利のチャンスも到来する。
「逃げれませんか!?」
「絶対無理」
「無理なんだ」
カタリナが目を配る、全員が戦いの中でカタリナの周りに自然に集まるようになった。そして魔術を唱える。今度は、
「授けん、神の息吹と加護を!」
「ゴッドブレス!!」
これなら戦闘が長期戦となってもHPが回復する。応急処置が必要なエルドラにはマドレヒーリングも追加でかける。
このままならMP切れで負け殺されてしまう。
エリスと初めてここに来たとき、俺たちの前にドラゴンが出現した。
そのドラゴンとの戦闘で、俺は仲間にしたばっかりにセイラとアルスに深手を負わせてしまった。その後、俺は現実世界に戻った。そして今は俺たちとゲームの仲間が手を組んでいる。
死んだら命はなくなる、存在も消えて。もう何も失いたくない、仲間を元の世界に連れてかえるために皆と戦いにドラゴンに勝つ!!
全員が必死で攻撃を繰り出す。剣を斧をナイフを杖を言葉を出す。
「みなさん頑張って下さい!」
カタリナは全員の中心にいるように常に移動した。またドラゴンに襲われないようにしなければいけない。
アッキーが振落、ドラゴンの腕をかわして振回、ドラゴンの突きをガードしアウトブレイク。離れたらトマホーク、隙が出来たら近づき斧を拾う。ドラゴンの後ろで他の仲間が攻撃直後ならパワーキル、パワーアクス、さらにディスクストライクを出す!!
しかし、全く歯が立たない!!ドラゴンの体は無傷のまま。
エルドラが飛び退く、だがその着地を狙いドラゴンが攻撃!ドラゴンの羽ばたきで巻き起こった風に飛ばされる。俺たちもその風に煽られた、風に飛ばされないように耐えていると尾で叩かれる。
モニカは魔力を温存している。試すための魔力がない。
アッキーはエルドラを助けようと近づいたが尾の攻撃が来たのでガード、その衝撃で固まって動けず、また後ろに滑るように退いた。アッキーは距離をとることが必要だと思った。
ドラゴンが翼で旋回、俺に突っ込むふりをして騙し、カタリナに直撃した。体当りで飛ばされるカタリナ、目がひくついている。
「あああっ!!」
「バタッ!バタバタバタバタバタタ!」
そして床を転がっていた。
やばい!!カタリナがやられた。回復担当のヒーラーが倒されれば俺たちに勝機はない。攻撃全てを回避なんて不可能だぞ、例え防御してもそのまま、なぶり殺しだ。
アッキーは死ぬ気で動いた、ドラゴンの体に正面から飛び込む。そして振落を決める!アッキーの武器がたとえ金の斧でもその竜の体は戦車の装甲で比べ物にならない。それでも、アッキーは時間稼ぎになればいいと考えた。
自暴自棄になっているんじゃない、もしこれが通じなければ助けられない、願いを込めてアッキーが跳んで振り下ろす。
「うぉおおおおおおおっ、うあっああ~っ!!」
ドラゴンには効果なし、それでもアッキーは仲間の命を助けるために命を賭けて頑張る。俺も前へ出ようとするがドラゴンの爪に阻まれる。エルドラも翼で近づくがドラゴンに風を起こされ近づくことができない。
「うあああーーーっ!さいっ。ああぁぁっ、てやっ!」
「はぁっ!!はぁっはあっはぁっはあっ、はぁはぁはぁはぁ」
「うぉおおおっ!あーーーーーっ、うっぉおおおおおおおおおおお!」
アッキーは、どこでもいい、少しでいいからとドラゴンに斧を振り下ろした。そしてみんなを助けてほしいと願った。
「ああああああーっ!」
アッキーが渾身の力を振り絞って斧を振る。
「ガコォン・・・カラカラ、カランッ!!?」
金の斧が割れてしまった!!最悪最低な事が起きてしまった。
「あっ・・このぁ」
アッキーは言葉にならなかった。
「金だぞ、金」
それが砕けるとは・・・・。
「!!」
「金の斧が壊れたわ!!」
「あああ、あっ」
アッキーは立ち止まった。一方ドラゴンは詰め寄るが、立ち竦んでいるアッキーは、斧の屑を見て固まっていた。
おい!下に落ちた金の欠片でどうしようっていうんだ。ドラゴンはお前の前に!
「うぁあーっ!!」
俺はアッキーの危険に声を上げてしまった。
鋭い爪がついた強力な腕でドラゴンが引き裂く!
「グァギャアーッ!!」
悲鳴が聞こえた。
何が起こった!?誰の呻き声だ?。見るとアッキーの体が床にのけ反っていた。アッキーは体を起こす。
「プッ!」
血が吹き出している。エンシェントドラゴンの体からじわりと紫の血が出て垂れ落ちた。
「グゥウウウウウウッ・・・」
機械の保冷音のような音が聞こえる。
ドラゴンの体当りを受けたカタリナ、死の間際でアッキーはとてつもない力を見せた。生存するには戦うしかない。




