第33話 ダンジョン第16階層 大フロアでの決戦
レヴィアタンを倒して鍵をとったライム一行。しかし、どこかからケルベロスが出現!スカルベたちはここで敵を引きつける役目を担う。
走らんと、
走り、
走る、
走れば良いと信じていた。
走りながらメニューで履歴を確認。敵の情報を入手する。
≪ケルベロス、ダンジョンの番人≫
とあった。
これは俺の情報ではない、スカルベさん達の情報だ。距離の関係で仲間の情報が俺たちに伝達されていた。ケルベロスって地獄の番人とか言われるケルベロスか。
俺は引き返そうか考えた、目を伏せながら走る皆。俺たちが言っても無駄死にするだけ、そう言い聞かせて走る。
次へ抜ける扉はおそらくさっきの奴がいた場所で間違いはない。
なぜならケルベロスは番人(門を守るモンスター、入り口以外に奴が来た所があるとしたら出口しかない。多少の知識と文章読解能力があれば目指す目的地を見つけるのは楽勝である)
だから仲間を囮にしてひた走る、罪悪感に苛まれながらも。ここはダンジョンであり俺たちは冒険者だ。
走ってしばらく進むと、空まで届きそうなくらい高く鉛色をした鉄の格子があった。格子の中央に扉がある!扉には黒橡錠と棘の鎖がついている。
「ガシャガシャガシャ!」
急いでアッキーが錠に鍵を刺し込み外した。
「焦るな、ゆっくりでいい」
焦っていない!アッキーは手が震えているようだ。早くしないとあいつに食われるかもしれないから。
「カシャン!ギィィー」
錠を外し巻き付いた棘の鎖も外して扉を開いた。
アッキーがいてくれて助かった。この世界でお前の踏ん張りと頑張りと突っ張りと意地っ張りほど頼りになるものはない。鎖をちぎる様に外す。
鍵はもちろん閉めない、スカルベさん達がこっちに来るかもしれないから。そうなるとケルベロスも通すことになるがそのリスクは承知。
格子を抜けた先も岩地が続いている。
「あそこに通路があるぞ!」
そこを進むと岩に穴の開いた通路があった。
「はぁはぁ、まだ走るのぉ~?」
「はい、だってケルベロスはここから来たんですよ。襲ってくるかもしれないので」
「モンスターは違う道を通っているのかもしれません」
「はぁはぁはぁはぁ」
岩の穴の中も休むことなく走った。ずっと行った所に階段があり上る、上ると円を描くように階段が曲がってきた。
「どこまでいくんだろうな」
「これがダンジョン・・」
絶句である、冒険・戦闘もう嫌いだ。
「明かりだ!」
階段を上ると外に出た。出たと言ってもダンジョンの外周で暗かった。まあ普通の通路で履歴に何も表示されなくなった。セーフティポイントに辿りついた直後、俺たちは安堵のため息をこぼした。
外に出たから時間も分かるし、五人が眠りにつくには十分な広さがある。疲れと不安が入り交じる。表情を見ているだけで、何も言えなくなった。キャメルタオルを敷き、そこに腰を下ろした。
「ライム兄ちゃん、スカルベおじさんたち死んじゃうかな?」
「お前の親代わりなんだろ。強いから、きっと生きているさ」
嫌な質問だ。いい加減なことを言わないといけない俺の心境は複雑だった。
「スカルベさん達と一緒に三年間、外で修業をしてすごい強くなった、だから大丈夫やられはしないと思うわ」
モニカさんが説明をした。
「そうだ・よね」
とエルドラ。
カタリナは様子を見守っていた。スプレッドクローズを敷いて体育座り。目の前の扉を開けると、すぐ次のフロアがあった。
格子があった辺りから来たケルベロスだったが、あの錠を渡ったとは思えない。
そしてこれからの事をしばらく話し合う。
「ダンジョンマスターまでとりあえず行きましょう」
とモニカさん。
「もちろんそれは考えてる」
俺は言った。
「浄化なんてできないでしょうけど私も頑張ります」
「僕も」
「うん」
「ダンジョンマスターは不死のモンスターの可能性がある、その時はカタリナ頼むぞ」
ダンジョンマスターは少なくとも五十年以上生きているからアンデッド系の可能性も考慮。さらにカタリナ以上のヒーラーはこの世界に存在しないはず、つまり唯一弱点をつけるのがカタリナになる可能性がある。
「僕守る」
とアッキー。
「ありがとうアッキーさん」
カタリナが答える。
「スカルベさんたちの話は一旦止めよう」
俺は話を打ち切った。そして頭と心(気持ち)と体と全ての休憩をとる。
夕食の時間、昼食はとったかすら覚えていない。衝動と衝撃で脳がモンスターで埋め尽くされていた。サンドパンとフライロットを食べるが、さっきのモンスターの肉の弾力を思い出す。それほど強烈で劣悪な奴らだった。
「何か力が入らない」
そう呟くと、
「僕も」
とエルドラが下を見ていた。
「そうだ、ちょっと戻って見てこよう」
モニカさんが言う。
「止めておこう」
その体で動くと普通のモンスター相手でも殺されてしまう。
「僕もそれがいいと思う」
アッキー。
カタリナは落ち着かなかった。それでしばらくぼーっと地面を見ていた。
「みんなから食料を預けられたが、ここに少し置いておこうと思うんだ」
「いいんじゃない?」
「これも置いておこう」
そういうとエルドラはサンドパンを通路の端に置いた。あと何日かなら腐ることもないだろう。
そして異世界の話をする。
「エルドラのいたとこは、どんな世界なんだ?」
俺は、一応フロアの扉からあちらと外を見張っていた。
「僕の世界は言えない。もしも僕たちの世界に来られたら困るから」
「困る?」
「あんまり人が入ってくることがないんだ」
「実際、会えるかもしれないんだぞ」
「いい」
「地球って星じゃないのか?」
「地球じゃないよ、レースっていう星だよ」
「レース?」
「僕、最初は同じ星かと思ったんだけど違ってた」
「僕たちは何もしないよ」
とアッキー。
「住処を変えて月に住むとか火星に住むとか言う話はあったけどね」
「あれはアニメの世界だぞ」
「ゲームならあるでしょ」
「ある、ゲームとかあるのか」
「うん、ある」
「エルドラ達の世界ではどんなのがあるんだ?」
「メニューと一緒のだよ」
「MMORPGやVRMMOとかか?」
「なにそれ?」
「すまない、悪かった」
これは俺たちの世界だけで発展したもののようだ。
「とにかくエルドラたちも文明が発展しているのね」
「うん。食べ物はこの世界と変わらないものがある」
「パンとかは私たちも一緒」
「うん、僕の星も一緒だ」
「皆あまり発展していないのかな」
「そうだな、ははははっはー」
「あはは」
はぁ~、
「さあ明日も戦闘だ、早く寝よう」
そういって俺は寝ようと地面に肘を擦りつけた時、メニューを開いてしまった。いつ来たのかギルドメールが来ていた。
「しっかりやれ」
と書かれていた。逃げ出した後のメールだろう。
「おい、みんな!」
ギルドメールを全員に見せる。
「スカルベさんのメールだ、よ~し僕もしっかりやるっ!」
「やろう」
「うん、やろう」
「僕明日から先頭行く」
「任せる」
戦意が戻ったところで俺たちは眠りについた。
いつのことだろうか家族の事を思い出す。それも生まれた頃の思い出。一緒に公園に行ってピクニックする姿が浮かんだ。レジャーシートを引いて草むらの上で食事をとる。
「――~」
「ライム朝よ」
目を開けると目の前にモニカさんがいた。外を見ると明るかった、朝である。外だからか目がちょっと冷たい。風があるのか寒かったようだ。
朝食は取らない、水を飲んで準備を整える。
【ダンジョン第16階層 大フロアでの決戦】
扉を開けると灰色の大きな空間が広がっていた、広さにして数百メートル。それはまるでコンクリートのような岩盤が一枚、床と壁と天井に置いてあるだけ。
「カッカッ!」
かなり固い床、簡単に壊れそうにない。
照明だろうか白の光の球がいくつも天井に浮いている。ミノタウロスのいた宮殿につながる通路にあったものと同じもの!
遠くに人の形をした者がいた、間違いなく人間ではないだろう。その人らしき者は椅子に座っている。膝には布をかけて詩人のようにも見えた。女の格好をしている奴らが三匹いる。匹を付けるに至ったのは、容姿が化け物であったから。
ステンノー、メデューサ、エウリュアレーの三匹が並ぶ。メニューにそう表示されているので間違いない。
ゲームで言えばゴルゴン三姉妹だったか、その3匹が大フロアで椅子に座ってティーなんて洒落たことをしているもんだから拍子抜けだ。
もちろん、こちらに気づいている・・だって目がこっちを見ているもん。
「あらあらあら」
「やーっと来たのねぇ~」
「待ってたわ、ほらこーんなに皺が出来ちゃったじゃないか~」
「って皺ないわよ」
「ほら、ここよここ」
「それは髪の毛!」
「あら、本当!」
「三匹だけ?」
「いいえ他にもいるわ」
「とうぜーん」
「いないのならこんな広さはないのぉ」
「もしかしてさーあなたたち女だから弱いとか思ってない?」
「いいえ」
「思っていません」
「ふ~ん」
「そのわりには生意気な冒険者」
「・・・・」
アッキーを見るステンノー、人見知りアッキーを見つめるのは一番強そうに見えるのか?
ステンノーは放射するように目の虹彩が入り、赤い髪、白い肌。肌は白いが薄く赤みを帯びていて色で言えば桃色。背も高く体は細身だが筋肉があり戦士のような防具を身に着けている。
メデューサは緑の髪に、淡い緑の体、血管が緑で走り、瞳は青も帯びる深い緑の眼。背はあまり高くはないが体は肉つきが良く一張羅を着ている。ワンピースなのか中国のチャイナドレス風の腰に紐を一つ巻き、足には妙なブラウンシューズを履いていた。傍目には身軽そうである。
エウリュアレーは濃い黄色の体でミツバチのよう、全身が発育のいい女ではあるがその姿は見るからに怪物。髪は黄色と黒が混ざっている、目は黒いが中に粒々があり白く輝いていた。第一印象はマネキンだった。背は高く美形でちょっと怖い。ダボついた服を着ていて性格がきつそう。上は白、下は黒のガードルを履きどこかのやんちゃなお姫様に見えた。
「さっさと片づけよう」
エウリュアレーが言うと、
「早い方がいい、人間の臭いがプンプンして臭くなるからっ」
ステンノーが同意した。
ステンノーがダッシュ、気づいたら超速接近で目の前!剣を振り下ろす。俺はファーストステップで後退して一刀一刀斬撃の連続斬り!!
「シュッタッ、キィン!キィーン!ガキィン!!」
俺が下がればステンノーが前に出て詰め寄る。それと一緒にスキルを使ったが全部リズムを合わせ弾く。
エウリュアレーがエルドラと対峙する。
「ガッ」
「バシッ!バサッ」
「ドッ、うわっ!」
エウリュアレーが動いたと思ったらエルドラは頭を掴まれた、エルドラはエウリュアレーの肩を足で蹴りつけ空に飛んで逃げる。がエウリュアレーはその足を持って床に向かって振り下ろす。
「バサッ!タッ」
椅子の下に敷いた茶色のカーペットにぶつかる直前に、体を捻り足を持った手を片足で蹴り手で着地した。カーペットがあると言っても床は固くかなり痛い。眩暈がして足が痛むがそれでも休ませてくれない。
メデューサは魔術を使った、異国の魔術なのか全く聞いたことがない声と言葉。
「*L/*=LL!」
「スペンサー!!」
赤い閃光が空を渡る、照射された物を焼き切っていく。軽いレーザーガンのようなものか。
「マジックバリア!!」
モニカは防壁をつくり防御、カタリナはその中(効果範囲)に入る。何とかモニカの魔術で防ぐことはできた。続けて得意の火魔術を唱える。
「ファイヤーボウ!!」
メデューサは矢をかわすため魔術で空中に浮いた、さらに別の魔術を詠唱し放つ!
「ランプル」
闇から緑の光を持つローブを着たものの手が出てきて、ボンヤリと空に光が灯った。大フロア全てが緑色に照らされる。
「なんだ視界がちょっと悪くないか?」
「何か薄暗いと思いますけど」
「幻術か毒かも、気を付けて!!」
「そんなのあるの」
「そうよ!」
メデューサがこたえる。
それでいて敵はピンピンしている。視界が落ち、緑の中に落ちた。目を閉じれば攻撃を受けるし耳を閉じても同じだ。つまり敵はコンビネーションが合わさり活きる技となっている。目が見えないというのは不便で普通に立っていることすらかなわない。
カタリナがたじろいでいる。シエルアトモスフィアをしようにもカタリナの魔術範囲では届かない。迷いは敵を誘う、襲い掛かる敵の姿は攻撃を受けた後でわかるが反撃にまでは至らない。
「エアブラスト!!」
こんな大フロアで放つ魔術でもなかろうが。俺は頭を抱え床に伏せた、状態異常はなおっていない。でも見えなくなりかけてた敵は見えるようになった。
ステンノーが剣で斬りつけてきた。アッキーがガードで受ける。続けてアウトブレイク!!ガードを壊し攻撃を仕掛けた。斧を振り上げるという動作なし=その分の時間なしで威力激減のリスクを負い力で斧を押し付け攻撃する
「キキィーン!」
ちょっと限界を越えた攻撃であるが流暢なことは言ってられない。敵から攻撃を出したところではねっ返しの受けのようになった。
俺が後ろから横に一刀を入れるが、それを読んでいたようにステンノーはとんでかわす。空か、なら光球斬り!!下に剣を振りそれを当て、落ちるタイミングを調節しつつ力を入れる。
エウリュアレーと戦うエルドラは拳を受け止める。ナイフの刃を出すが手に金属型の武器が装備してあり接触、お互いの武器がぶつかる。視界が悪くなったのにエルドラはしっかり見えたのはドラゴン族の目があるおかげ。
「バスバスバス」
「タッタッタッ」
エルドラは足を使い巧みにかわす。何より連続でスキルを使用をするほど疲れるものはない。
メデューサが杖を振るう。モニカさんも黒杖を振るい迎え撃つ。
「カッ!カッ!カカカ!ガッガッガッ」
「うわっ、ちょっと~痛いって。そんな怖い目で睨まないでよぉーっ」
メデューサが目をかっ開く、白く光る虹彩が色濃くなり力を放つ!!
「ストーンアイ!」
体が固まる、身動きが鈍ってきた。
「まずい、動きが止められてしまう。カタリナ、メディシンを頼む!!」
カタリナがメディシンを唱えた。しかし状態異常が回復しない、それどころか俺は、さらに動きが鈍くなった。
「どうしたらいいの!」
「俺も分からない、何でもいいからやってくれ」
見つめられたせいか俺だけ固まっていく・・ここで死ぬわけにはいかないんだ。
ここは本当に大きな大フロア、その中での戦い。




