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地獄に落ちた気分 3

 ベヒモスを倒し、ジズが消えると新たなフロアボスのレヴィアタンが出現。鍵を守るボスと戦わないと次の階層には進めない。

「鍵がある!」


「面倒だな」


「どうする?引き返す手もあるけど・・」


「ここで戻っても、またあのキメラだぞ。どの道倒すんだろう」


 来た道を戻っても、キメラの大群が襲い掛かってくる可能性がある。大群はフロアボスより危険で厄介だ、ああっ何度覚悟を決めたらいいのか、戦闘の度に命をかけなければならない。


 絶対俺たちは勝ってやる!!


 レヴィアタンが血に染まったような赤黒い水の中に潜った。光球に照らされた影響か海は血の池のように赤黒い、それはまるで何分後かの俺たちの慣れの果てのような感じで漂う。


「嫌な気配」


 その屍はその水にしばらく浮いたのち底に沈み誰にも気づかれず何があったのかも永遠に知られない。いやダメだ、そんな未来。そんな事を想像したら怖くなるっ。


「行くぞっ!!」

 戦闘態勢をとるスカルベさん、ドラゴン族の覇気ある姿は心強いが、もうこれ以上は戦えません。


 戦闘中止宣言を出したいがフィア、シャティさんまでエルフの目つきで敵を見据えているから形無し仕方なしですよ、参戦する。

「はぃ、もちろんです」

 俺は気取って答えたけど、そこには憂鬱な目のモニカさんとカタリナがいた。


 暢気なアッキーは穏やかに賛同した。

「やろう」

 アッキーは声を出して言う。そうまで言われたらリーダーとして負けられない、そして譲れない。半泣きの顔を隠し俺は戦闘に挑む。三年間の修業でも、立て続けはできないと言いたくなった。やる気が失せても闘争心を奮い立たせるしかない。


「アイシクルランス!!」

 フィアさんが唱える。氷の槍がレヴィアタン目がけて飛んで体に当たるが筋肉のバネと硬い鱗、ぬめりのような体液で跳ね返され水の中に落ちていった。


「ウォーターガン!!」

 シャティさんが詠唱、レヴィアタンの顔目がけて放たれた。


「パシャッ!」

 顔に水が当たるが顔の周りの毛と襞が強固でそれを分離する。体を覆う膜を水で落とす時よく用いる方法だが、それをやったのか!?


「ファイアボール!」

「ボシュッ」

 モニカが詠唱、火の球がヒュンと飛んでいく。どうした?鱗に当たる寸前に消えたような気がした、もしかしたらただの目の錯覚かもしれない。



 まずは魔術三種が放たれた。敵を探る・調べるための遠隔攻撃(魔術)である。


「っ・」

 スカルベさんは走り、海を前に空へ飛んだ。ティルウィングを下に下げ向かう、一方レヴィアタンは竜巻状の渦を空にいるスカルベに飛ばす、スカルベは右翼を傾けかわす!

「・」

 レヴィアタンが水中で体をくねらせ尾を水面から出して振り回す!今度は左翼をバサリ二回動かし斜め上に急上昇。

「ぬっうぐぉおおお!」

 その時、レヴィアタンは移動する場所に竜巻状の渦を飛ばした。スカルベはティルウィングで真っ二つ。

「カ・コン!バシャバシャバシャッ!!」

 スカルベはコンクリートのような硬さの渦を渾身の力で斬った。斬られて形を失う水は自由体となり勢いと威力、硬度を失った。硬い水なんて初めてだ!!


 エルドラはそれを見て、駆け出した。レヴィアタンは真っ直ぐエルドラに対し竜巻状の渦を飛ばす、エルドラは簡単にかわした。ナイフではあの硬度と重さに耐えきれない。水の勢いに負け折れてしまうだろう。その竜巻状の渦はかわされた後、岩地を削りとっていた・・・。


 俺とアッキーはその水流に足が竦んだ、ので足踏みをした。少しでも緊張を和らげて動けるようにするために。俺は三年間の修業で死にそうなことが数回あった、その時掴んだことはチャンスを待てという事だった。


「はぁっ!はぁっ!やぁっ!やっ!せやっ!とぉぅ!とー!はいっ!ていっ!」

「せぁっ!せっ、ぐぉっ!ふんっ!はぁっ!せいせいせいっ!!せあっ!」

 スカルベとエルドラがレヴィアタンに纏わりつくように攻撃を仕掛けている。何と接近戦での戦しかいに持ち込んでいた、もし水中に潜られたら逃げしてしまう。


 どれもスレスレで攻撃をかわす。ここでとまれば明日はない、家族とも二度と会える事はない。


 二人が攻撃で押したか、海にいるレヴィアタンが陸に近づいた。俺たちは駆け出した。


 近寄って体に俺は斬撃をするが手ごたえがない、手前でグニョって剣が滑った。おまけに体もへっこんでいる。アッキーに至っては振落、振回を空ぶる始末。当たってはいるがその体がグニョっと変形し決まらない。

 レヴィアタンが体をくねらせ波を作った、横に立つ波が二つこちらに向かってくる。不思議な波だ、蛇のように体がくねった曲線でまるで蛇のような生き物に見えた。


 水か・・何かフワフワしていて竜巻状の渦より弱そうだと思った。その程度の波では陸上にいる俺たちには距離も威力も届かないぞ。


 俺がそれを素手で抑えようとすると、

「巻き込まれるぞっ!!」

 スカルベさんが叫んだ。


 俺は右に跳んだ。波は勢いが失うと形を失い海に戻って行った、俺の足を引っ張って。粘着性・吸着性があるのか知らないが水から足が離れない。


「助けてくれ!!」

 暴れたが逃げられそうにない、手を岩の窪地に引っ掛けるが耐えきれない。


「うわっ」

 アッキーも引きずられていく。


「馬鹿っ!!」

 ライムを掴むモニカさん、


「待てっ」

 シャティさんも俺を掴む。腕が千切れそうなくらい痛い。


 横を見るとアッキーがエルドラとフィアさんに掴まれていた。


「いたたたたたっ・」

「うぅううううぅ・・」


「大丈夫か?」


「はい、助かりました」


「ライム兄ちゃん、足を引っ張らないでよ」


「悪かった」

 敵が引っ張ったんだ、俺じゃない!!


「うん」

 エルドラはそう言ってレヴィアタンへ向かっていった。レヴィアタンの尾に足をうまく乗せ体の上を歩いて体をナイフで斬りつけていく、水に浮いた棒乗りの要領である。


「うわっ」

「クシーーーーーーーーーーッ」

 体の滑り気で転びそうになるが翼を羽ばたかせ平衡を調節し保った。軽く足を乗せたまま、絶妙な力加減で背中を斬っていった。


 エルドラは焦っていた。尾から体を斬りつけるがどうも手ごたえが感じられない。粘り気のあるものだけ切っているような違和感を感じた、ナイフを見る。

 エルドラは胴体から首にのぼり頭上へ・・

「あつっ!!」

 頭部にある襞の膜に少し足が当たったと思うと熱が足を焼いた。


「どうしたー!! 」

 熱い?何が起こっているんだ、炎を吐いたところなんて見えなかったぞ。青い炎も見えなかった。


「頭の襞に触れると火傷するー!」


「火傷って海のモンスターじゃないのかよ」

 炎のような襞、それとも毒で体に熱がまわるのか!?


「それに触れるな!」

 スカルベさんが怒鳴る、遅いけど・・。


「エルドラ君、まだ痛い?回復できますー!!」

 カタリナが言うと、


「まだ大丈夫!」

 そういってエルドラが再び斬りつけるが、やっぱりナイフに手応えがない。


「レヴィアタンは攻撃がきかないのか?」


「一度作戦を立て直しましょう」

 シャティさんが言うと俺は頷いた。 


「でもレヴィアタンが襲ってきます、ほら炎ぉ!!」

 海から離れようとすると青い炎のようなものを吐いたレヴィアタン。


「私が時間を稼ぐわ」

 モニカさんが言うと、


「いいえ、私たちがやる」

 二人は魔術を詠唱し放つ、


「流れる、帯は幾重に大波!」×2

「アクアウェーブ!!」×2

 青い炎に青い水をかける。中から炎がゆらゆらと出てきたが、時間稼ぎは成功!!俺たちはこの場を離れた。


 とりあえず、一度逃げられればいい。そして作戦を立て直す、


「どうするー?」


「これでは体力が尽きるだけだ」


「攻撃がダメだけどスキル使うのはどうかな?」


「前者がダメなら後者も意味がない」


「口の中とかはどうですか?」


「阻まれない?」


「海の水をなくしたらどう?」

 アッキーの作戦、炎と雪のフロアのようにどこかとつながっているかもしれない。試せない事はないが、


「それには水中に入るしかない、誤れば殺されてしまうな」


「魔術を使って、もがいているうちに鍵をとるのはどう?」

 フィアさんが提案。


「そうだな。あそこから離れられないモンスターならそれも一つの手」


「そう、ね。だけど魔術ねぇ」

 シャティさんが悩む。 


 俺はモニカさんを指さすと、


「私?」

とモニカさんが聞き返した。


「でもでも、近づかないと当たんないわよ。こんな離れてちゃー届かないし」


「そーれはスカルベさんがやってくれます」


「・・・・・」

 話しの行方がどうなるのかスカルベさんがこちらを見ていた。俺とモニカさんが見ると、あちらを見る。気になっていたようだ。


「どうするのよ」

 モニカさんが俺に尋ね返す。


「モニカさんが魔術を使えばいいんです」


 俺は魔術作戦を提案した。その話を聞きながら全員のエナジードリンクを受け取り飲んだ、これで最後、残量0となる。


 そして、

「ゴニョゴニョ」

 俺はスカルベさんに耳打ちした。




 モニカさん、スカルベさんが前に出る。スカルベさんとモニカさんは背中合わせになった。スカルベさんはモニカさんを背負うと空に飛んだ。


「きゃあ!!ちょっと、いきなり飛ばないで!!」


 モニカさん、ドラゴン族は言っても言わなくても飛ぶのは同じだと細かいことは気にしない性格だ。ああ、飛んでる飛んでる、頼んだのは俺だが何もあそこまでやってくれとは言っていない。アッキーみているか?


「大変」

と呟くアッキー。


 だな。絶叫マシーンさながらモニカさんは上空に飛んでいった。


「きゃあー!!きゃあっ!!きゃああああーっ」

 おおぅスカルベさんが飛翔・旋回してる。


「ふふふふふふっ、空にモンスターがいるみたいですね」

 カタリナが俺に話しかけた。


「そうか」

 モンスターか、面白い。だがあれを見て笑っているお前の心がモンスターだ!必死だぞ。まあ列伝伝承者だからモンスターと呼ぶのは止めておこう、後継者があれではお前も認めれないのだろう。



 レヴィアタンが空を見た。

「今だ!!」


「サンダーボルト!!」


「うわぁーっ!!」


 見たか、これぞドラゴンマジック、それともウィッチマジックか。空中でやることで敵の顔を上に向けさせることができる、かつ敵の真上にいることで正確に魔術を落とせる・当てることができるのだ。


「張裂けろ、雷火花!」

「サンダースパーク!!」


「パシャパシャパシャ!!」

 レヴィアタンに降り注ぐ雷の雨、敵の表情から苦しそうである。


「射る、空を飛ぶ雷弧!」

「サンダーアーク!!」

 開いた口の中に雷狐が走っていく、そして体の中で電弧となってぶつかりまくる。


「これでどう!?」

「けちらせ、樹形雷!」

「ライトニング!!」

 鱗や粘膜をすり抜けて、口から体の中に入る。突き進んだ電撃が内部に当たり痛みの棘を刺して掻き乱した。


「グォオ――――ン!」

 悶え苦しむレヴィアタン、水に体を揺らし電気を逃そうとするが思う様にいかず。


 一旦モニカをおろしエルドラとスカルベが飛ぶ。


 それでも紫の炎を吐くレヴィアタン、それをかわすため俺たちは海から離れた所へ一気に走った。だが容赦ない!

 炎は行く手を塞ぎ俺たちを閉じ込める。炎を海へ誘いこむように吹いてくるのでエルドラとスカルベさんが翼で飛びあがった。


 激しく動いて渦を起こし空に壁をつくる、巻き込まれるので仕方なく岩地に着地したエルドラとスカルベ。見とれる俺にレヴィアタンのトロける水が飛ばされた、俺に手にくっつく。この水はなぜか離れない。


 それを助けようと皆、俺の周りに集まる。レヴィアタンは弱っている、倒せるまであと一歩の所まで来ているのに、ここで負けるのかよ。負けて待つのは死!


「ザッボーン!!」

 遥か空から水は手を伸ばしていた。上から全員を飲みこむように落ちてきた水が全員の体を掴んでいる。どんどん海の中に引き摺りこまれていく。


 !!


「苦しい」

 泳ぐが蕩ける水に動きが縛られる。


「息ができない」


「ごぼごぼごぼっ・・」


「ぐぉおおおおおおおおっ!!」

 水中で必死に翼を羽ばたかせ、四肢を動かすスカルベだったが力激減で逆らえない。


「ねぇ・・」

 手を引くシャティ。


「えぇ・・」

 手を出すフィア。



 全員が赤黒い水の中で苦しみもがいて酸素が奪われ自由を失って、どんどん海の底深くへ引きずりこまれていく。


 これはレヴィアタンというより、水そのものが引きずり込んでいるという感じである。海の深くにそれがあった。レヴィアタンの尾の先である、それが発生の源。


「助け・」


 全員が苦しむ、もがけばもがくほど酸素を消費し死が早くなることが分かる。


「誰か・・」


「ゴポッ」


「コポコポッ」

 全員が止まって見える。

 o

   o

  o

   o

「ミ・」

 ライムの耳に声が入った!その声は、まやかしか怪しい誰かの声。


「ミズミズミズミズミズ!」


 海の底深くに沈んでいったライムに語りかける。


「ココトビラナイヨ」


 !?


「ライムイキテ」


「アワアワアワワア!」


「コポコポコポコポコポコポコポコポコポコポコポコポコポコポコポコポコポコポコポアワコポコポミズコポコポアワアワコポコポミズミズミズコポコポコポコポコポコポミズミズミズミズズ!!!!・・・」

 何処とも無く泡を起こす水の精霊は怒涛の如く増えていく、水の精霊が海の中に無数に見える、こんなにも精霊が増えるなんて!!


「スゴクオオキイ」


「モットアワーヲ」


 泡沫を作った精霊はレヴィアタンの膜や鱗を剥がしていく。これだけの渦や炭酸を作れば嫌でもとれるだろう。海一面は巨大なウォッシングマシンと化しスパークリングシャワーを浴びせる。


「カキカキカキカキカキカキカキカキカキカキカキカキカキ」

 精霊オリジナル魔術ってか、そんなの有りかな。水の中に逃げるレヴィアタン、ミズミズたち(アワアワともいう、水の精霊)は海の『塩分』を外の岩地に飛ばしていく。


 俺たちは精霊に支えられていた。


 レヴィアタンは息が何故か続かない。アワミズ言い直す淡水に変わった水質では浮力も呼吸も苦しくなる。もともとこういう環境のモンスターであれば、そこを変えると生息できない。

 そう言えばまた忘れていた。そういうのあったなー。おまえエリスのこと知っているんじゃないか?


「アワ?」


 首を傾げる水の精霊、そんな表情だとなさそうに見えるぞw。


 レヴィアタンが苦しくなって水面に浮かび上がってきた。弱体化、そして水質変化が余儀なく起こったレヴィアタンは体が薄くなっていた。




 アッキーは斧を振りおろした、レヴィアタンの体にぶっささり取れなくなる。急いでとらないとと焦っていた。スカルベはティルウィングで頭を刺す。


「アイシクルランス!」×2

 弱いがそれなりの効果があった。体に刺さった氷の刃の先から流れ出る黄色い血、さすがのフロアボスもこれでは成す術なしか。地球温暖化なんて環境の変化を知っているが仮に伝説の生き物であろうとそれに対応できるはずもない。


 エルドラも体にナイフを突き捌くように刃を流した。俺も斬撃をして体に剣を突き刺す。こうも簡単に通るとは精霊たちの力は悪い意味で甚大である。


 モニカさんはファイアボールを詠唱した、頭が少し焦げただけ。最後までフロアボスを倒す必要はない。目的は次へ進むために戦闘し最上階まで行きつくことだから。

 エルドラが羽ばたいて鍵を取って来た。


「やったわね」


「疲れたぁー」

 その場で腰を下ろすフィア。


「ふぅううううううううう」

 アッキーは随分長い溜息だこと、ふふっ。


「もう戦えない」

 俺も愚痴が出る。




 ほんの少しだけ休み俺たちは立ち上がった。


「ふぅ~、あと一息だ」


 俺たちは岩地を歩いた、まだ行っていない一つの方角へ。あそこでいいのかと前を見ると倒したはずのベヒーモスがいた。そして正面から襲って来る!いや間違い、顔が違う。険しい顔をして走ってくる新たなモンスター!!!


 バネを活かし跳びはねる黒い体、頭が一、二、三!!


「あれもフロアボス?」


「まだいるぞぉおお!!!!」

 もういないと思いたかった、願いたかった、だがそこまで近づいている。それもフロアボス級の。


 凄い気迫と脅迫と緊迫と威迫と圧迫と窮迫が胸に押し寄せる。胸が詰まる。敵は食い殺そうと怒り狂う尋常ではない目でこちらを見ている。


「あとは任せろ、後は俺たちがやる。エルドラ、お前はその四人と行け!」


「でも僕はスカルベおじさんのギルドだよ!」


「こっちはいいから行け!!!!」


「エルドラ、ライムたちに手を貸してあげなさい!」


「エルドラ、いくぞ!!」


 スカルベ、フィア、シャティがこちらを見て頷くので俺はエルドラの手を引いた。先ほどのフロアボスは八人で間一髪倒せた。その新たなフロアボスが迫り来るのに俺たちは三人を見捨てている。逃げている。


 ボロボロの体、疲れ切っているはずなのに三人は先に行けと言う。俺は思いを振り払って走ったのだった。

 スカルベたちを残しライムたちは次の階層へ、不安を抱えながら道を進む。水の精霊に好かれたライムだったが理由が分からず。タイトルは気分とヘブン(Heaven天国)が似ていたから、でも相反する。

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