炎の守人 4
ライムたちは手の内を全て晒すがそれを凌いだフレイヤ。ライムはたちの焦りは焦げつき焦点が合わなくなっていった。
「今のは良かったぞ」
「全然良くないですよ、当たってないんですから」
「いや少しは当たっている。だが傷はついていない」
俺は考えられる事を全てやった。だが通じない。しかし俺も諦めない、何でもやってやる。戦術を組み合わせれば可能性は無限に広がるはずだ、それを模索していた。
攻撃は通じている、敵は全ての攻撃を凌ぐほどの手練れではない、チャンスは必ずやってくるはずだ。
フレイヤの剣から炎が出る、鎧が剥がれた手が見える。明らかに普通の手で、人間の手と同じ。
あっ、剣が赤く輝いた!赤の衝撃波が来る!!
もし衝撃波を返す技があれば大きく戦況が変わる。しかし誰も返せるか試す者はいなかった。出来なければ即死だから。
先回りしてフレイヤは攻撃を仕掛けた、薙ぎ払いを受ける俺とアッキー。
受けれた!!
体が馴染んできたか?ちょっと敵が弱くなった気がする。それとも戦闘中にレベルアップでもしたのか?
「カシン!カキカクカン!!」
「キィン!キキキキキ!!」
「シャッ!カッカッカッカサッ」
「ブン!カカカカカ、ブン!キィイイン!」
剣をかわしながら進化する、自分でも驚くような動きでの攻防、俺は異世界の剣技の新天地に入っているかも、このままいけば勝てる?
敵と距離をとってアッキーに目を配る。
「シィーン」
腕が切れる。
甘いか。否定できない甘の甘ちゃんだ。すぐにポーションで回復、アイテムの消費が著しい。ファーストステップでフレイヤの右・左と移動し一刀を出すが全て受けられ攻めきれなかった。早く動いて剣を出すなら俺でもできる!
反撃!!
「シュィィ」
俺の装備品に傷が入る。一秒で二刀振るが小手先の技術では力が入らず決まらず。逆にそこを見抜かれカウンターを喰らった。
フレイヤが立ち止まり剣を乱雑にふる、そして攻撃に転じた。
一本の剣が自由奔放・変幻自在・多種多様に動く様は真っ直ぐな剣が曲線を描いた蛇のように撓るほど、それでいて剣が当たれば深く重くのしかかる。本領発揮のフレイヤ、まだまだ実力が底知れない。まさかこれほどとは・・。
「キリッ!!」
「っちち」
剣を出し、防御と回避を兼ねたが熱が顔を焼いた。
「手を出すな!」
今のは俺が悪い、俺とアッキーは剣が届かないよう間合いをとる、スカルベさんとエルドラは懐まで近寄った。
「今のは技ですか?」
蛇のような剣の正体の情報を集める。
「剣技の極致だ!」
スカルベさんが言う、つまり剣であると。剣で成せるものらしい。まだそんなの隠していたのか、次元が違う。
「そう、技ではない」
俺は剣をしっかりと見据える、ただ見ればいいだけのスキル・見抜き。一瞬の動きさえ見えれば相手の行動が知れる。
そうだ、攻撃もいれてみよう。その方が見抜きもしやすくなるはず。
剣の動きに合わせこちらも体を動かし、無駄な動きを省き無理なく出来る範囲でかわす、受ける、斬る。
俺たちは四人交互でそれを行い、誰も相対しないときはシャティとフィアさんが矢を射って、モニカさんが魔術を放った。
「頼む!!」
フィアさんが矢を射る、直後シャティさんが魔術を放つ。その後ろから俺はダッシュでフレイアに攻撃を仕掛けた。
フレイヤは矢を剣で斬りおとし、魔術を剣波で防いだ。俺はフレイヤの手が塞がっているのを狙い、横の斬撃を出した。フレイヤはそれを跳んで空中で剣で受け止めた。逆からスカルベさんがティルウィングで弧を描き斬りつけたがそれも失敗に終わる。
「ごめんなさい」
「はっ」
さらにスカルベさんの肩を蹴り上りエルドラが空でクイックカットをする、身を攀じるフレイアはそれを体術でかわす。
そして剣を大振りに回し空中から地面へ円を描き剣波を出す。
地面に当たった剣波は近距離であったため威力が爆発するように岩を削った、また灰が舞い上がる。
「くっ!」
「かぁ」
ばーか、自分にも灰がかかってやがる。思いかけず目を閉じるフレイヤ。目は普通の目だ。しかしこちらの殺気や風の流れ、気配で攻撃を悟れるフレイアにはこちらも迂闊に攻撃できなかった。
「さけろ、空を破る無数の石!」
離れていて目が見えるモニカが魔術を唱えた。
「メテオライト!!」
フレイヤは、襲う隕石の摩擦熱をかわすがよけきれずブラックソードを出して受けた。
「ぬぉおおおおおおお!!」
「ギギギギギギギギギイギイイイッギイギイギ!!!スッ――」
あれはドラゴンの体を引き裂く威力の土属性最高魔術!!土属性だが、やや火属性寄りである。
「やったか・・・」
「――――!!」
「ダメだ」
魔術を斬って散らされた。でも相当力を使ったはず、俺は気落ちした。
「はぁはぁ、何か良い手はないか?」
スカルベさんが言葉を投げかける、激しい戦いで息が上がる。
「ふぅぅ、っぐんぅ」
詰まるエルドラ。全ての攻撃が止められたので、言葉がない。そして良案が浮かばなかった。
「はぁはぁ、熱いのばかり」
シャティさんがマントをヒラヒラする。熱を逃がすためだろうが辺りは熱気むんむん。
「ふぅふぅ、はぁ~いい加減にして」
体温が限界以上に上がり体に熱がこもる。熱は水分を奪う。
皆、これ以上水分をとられると倒れてしまうぞ。
「ふぅ~っ」
カタリナも息をしたいが熱い空気は吸えなかった。
「・・・・・つぃ」
メンバーの中で一番熱がある人物がいた、その名もアッキー。普通の場所で三十五度以上の熱を宿る、みんなの体温は現在四十度を超えるかもしれない。それがアッキーならサウナ並みかも、汗が凄い出ていた。
「はぁはぁ何で呼吸するだけで苦しいんだ」
呼吸が痛みに変わる、喉までやられているのか!?
「もーっ、何で、何で倒れないのぉ!あんな大技そうできるものじゃないのに」
フレイヤは苛立つモニカさんをチラッとみた、女だからといって油断しない、真顔で立っている。
フレイヤはブラックソードで黒炎を出す。剣がのびるように黒炎が広がる。
シャティとフィアさんはアクアウェーブ放つ、その黒炎に魔術を二波飲み込ませた、それで勢いを衰えさせて時間稼ぎ。
俺たちが逃げ出して当たらなかった黒炎は地面を焼いた、焼けた地面は高温と化した、俺たちが歩ける地面も段々と狭くなった。
フレイヤが走って剣を振る、それに合わせスカルベさんが剣を出す。剣が扇に宙を飛び交う、どちらの剣か見分けて対応しないと仲間に当たる。
「ブッ」
暗くて良く見えなかった、背景に混ざったと言ったほうがいいか、スカルベさんが切られて血を流していた。フレイヤも鎧の一部に傷が入った。だがこれでは相討ちにはならない。スカルベさんの負けである。
全員が後ろに下がる、考える、回復の時間を稼がなければ、
「ブルーファイア!」
フレイヤの攻撃に全員が退く、これで敵の体力を削げればいいが・・・。
消えずに燃え続けるブルーファイア。いつのまにか、俺たちはブルーファイアに囲まれていた。そして前にはフレイヤがいて身動きとれなくなっていた。
このフロアは火属性である炎以外は存在ができない。水も氷も、雷だって火(熱)に消されてしまう。土でさえ水分を奪われ砂と化す。
その炎以外存在が許されない世界の中で自分たちも存在が許されず消されてしまうのか。
これ以上は耐えられない、次にフレイヤが技を使ったらどうしようか?そう考えながら俺はカタリナを見た。頼みのシエルアトモスフィアを使う魔力はあるか等。
フレイヤがゆっくりと前進する。
炎に敏感で耐性が弱いエルフは、かなりダメージを蓄積されているのでは。
「ウォーターガン!!」
「・・・・・」
モニカさんが唱えるが発動せず魔術は失敗した。無駄な足掻きだがモニカさんを馬鹿にする奴は誰もいない、フレイヤも笑ったりはしない。
「何で上手くいかないの、私ばかり。夢見て一生懸命頑張ってきたのに、こんな最後ってあまりにも酷いっ」
涙で目が潤む、しかしその涙は熱を吸い、熱くなり消えていく。汗もいつの間にか乾いていた。水分が奪われて、血も汗も涙も全て熱に消える、消される。
・・・
・・!
誰もが目を疑った・・。
お前は何をしようと思っているんだ??
俺たちはそういう目でモニカさんを見た、抑えて止めようと思った。だが、その眼は真剣だった、最後くらい好きにさせてあげよう。それが仲間だ。
「敵を滅ぼせ、メギドの丘で終末を告げた業火よ!」
「メギドフレイム!!」【黙示録の業火】
「ボファァアアアアアアアアアアアア!!!!」
黒杖を翳すと、その方向前方に業火があがった、その業火は前方にいるフレイヤや岩々を包み囲んだ!
天を仰ぐように両手を出して上を見たフレイヤだったが、それに気づくとすぐに走って逃げた。だが炎の熱量と熱圧と熱気と熱風がフレイヤをおさえつける。動けない!!それは、まるで悪を退治する神の力そのもののように。
「うっおおおおおぉ おおおおおぉ おおおおおおぉ!!!」
フレイヤは怒声を上げ激しく抵抗した。ブラックソード、ブルーファイア、赤の衝撃波、使える技を全て使って抵抗した。だがフレイヤの地獄のような炎では神の炎には勝てなかった。
炎のフロアボスに火魔術を使うなんて普通するか。
「存在が許されるのが炎なら、私の思いを込めて放つ!!」
この魔術は初めて成功したものだった。フロアの属性が味方したのかは知れず。
「ゴォオォオオオォォォオオオオオオオオ!!!」
「うぉおおおおおおっ、うぉおおおおおおおおおおおおおおお―――っ!!」
「ゴゥンゴゥンゴゥンゴゥン!!」
フレイヤの体を目まぐるしく突き抜ける熱、そしてフレイヤは業火に体を焼かれた。
そう言えば少し前からフレイヤの手が焦げていた。
見ること、これ以上に大事なことはない。『良い観察眼をお持ちですね』なんて誉められたわけじゃーないが俺は細部まで見ていたからモニカさんの行動を理解した。鎧で覆う生身の体は炎の抵抗・耐性ゼロである。まさか火のフロアボスの弱点が炎とは誰も思わない。
火のフロアでは炎以外存在が許されない程だが、神も悪魔も精霊の炎も存在できるフロアであった。
「ゴゥンゴゥンゴゥンゴゥン」
「た、倒したのか?」
「どうなの?」
焦るモニカ。
「燃えていてよくわからない」
「炎が止んだら・・」
「キュークククククク・ク」
カタカタと音を立てるフレイヤの体。
「音が!・・・」
「生きてるっ!」
「俺はこのフロアの番人、これしきで負けるわけにはいか・・ない。どこで気づいたそこの女!」
「火フロアのボスの弱点が炎だったら面白いかな?と思っただけよ」
とモニカはきっぱり言った。
「そうか」
ダメージを受けながら、赤の衝撃波を撃つフレイヤ。
「うわあっ、危ない」
「うぐ」
エルドラが盾になり衝撃波を受ける、エルドラもまともに喰らっては死ぬのでロンドナイフで弾くようにさばいた、衝撃波の軌道が変わる、すぐ後ろで回復魔術を唱えるカタリナ。
親代わりのスカルベはエルドラの体を見て安心した。ウィンドサークルの風の防壁が多少役立ったか。ドラゴンは炎に強くエルフは弱い、ハーフなら普通と変わらないのでは、いや良い部分だけ引き継がれているのかも。
「そこの子供よ、お前はそれに触れて何もないのか」
フレイヤが尋ねる。
「だからケガしたでしょ」
「ひどいわね、子供に」
エルドラは質問に答えない、エルドラは普通の体ではない。それを知られるわけにいかない。俺は敵に知られてしまうと切り札が狙われるので安心した。
「――――ブラックソード」
「もう逃げ道がない」
「かわせないわよ」
「知ってる」
「死ぬの?」
「そうか、なら俺の勝ちだな」
フレイヤはそういって構えた剣を下ろした、体から力が抜け黒炎も消えていった。
鎧がモニカの魔術で破壊されている。そしてフレイヤは自分の炎に焼かれていた。自分が焼けても攻撃するとは・・。
「ダンジョンマスターだったな、実は俺も見たことがないがおそらく最上階にいる。一度捕虜を上の階層に届けた時に上に行ったことがある。お前達のような奴を見ると、ここもまだ上ではないな」
「そう思います」
「次のフロアにはどうやっていけばいいんですか?」
「そこの炎を消せば、次のフロアに行けるはずだ」
フレイヤの体が燃えていく。
「体が燃えている」
「ああ、体が消えていく。もうこの世界に蘇ることはないな」
フロアボスとの戦闘は長期戦になるかと思われた。
HPやMP、その他人間の水分や体温の問題で急いだので案外早く決着がついたのだった。そこの炎とは普通の炎である、このフロアで探し回っていたらきっと熱で脱水し気絶していたな。
「流れる、帯は幾重に大波!」
「アクアウェーブ!!」
フィアが唱える。
炎が消えた、炎は階段を隠していた。階段はフロアの壁にまでかかっている。
「のぼりますね」
「急げ」
「早くー」
階段を上る、途中炎のフロアの全体を見下ろしてみた。熱い、あのフレイヤという人物このフロアにずっといたというのか俺には理解が出来ない。
「私はメギドフレイムを何で使ったか皆わかった?」
「・・・」
「??」
「思いを込めたんでしょ」
「いいえ、一度使ってみたかったの」
「なんですかそれー、それで俺たちが生き残ったんですか?」
「そうよ」
「勝ちは勝ちだ」
「もし得意な魔術が水で水を出していたら負けてたと思うよ。よかったー水魔術が苦手でー」
エルドラがモニカに言う。
「ひどーい。お姉さん頑張って練習したのよ」
とモニカさん。
メギドフレイム、神の魔術として使ったが悪魔の魔術だったりしてw。焦点が分からないのなら全てを焦がすまで。




