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炎の守人 3

 火属性のモンスターを幾度となく倒した先に一人の男が立っていた。それは、このフロアを守る番人の(フロアボス)フレイヤであった。三年の修業を積んだライムたちだったが出鼻を挫かれる結果となった。

 だが、水水雷は黒炎に飲み込まれた!!そして想像以上に炎が早く迫ってくる。あれだけ広範囲の炎から絶対に逃げ切れないぞ。それでも俺たちは皆、散って炎から遠ざかるため逃げた。


 そこに立つ人物が一人、


「爆ぜろ、消えた竜巻を集めて重ねて!」

「エアブラスト!!」 


 魔術!?


「ボファオオオオオオアアアアアアアアァーッ!!!」


 黒炎は破裂する爆風に巻き込まれ破裂したゴムのように散って消えた。辺りを見ると全員が地に伏している。地は熱く、体は爆風で揺さぶられ飛ばされるので必死にしがみ付いた。一方フレイヤは空中で体が振り子のように揺さぶられた。


 そうだ!炎は風で消えてしまう、そして風は空中の方が強い。


 攻撃で、攻撃と回避を兼ねる高等テクニック。乱れ散った炎の残火があったが全員うまく逃げた。爆風に耐え何とか地面に着地したフライヤは回避を見るなり、また空中に飛んで追撃として赤の衝撃波を放ってきた、逃げる先にも衝撃波をとばす。


「また!」

 俺たちは振り向き様に衝撃波を一目で確認、それぞれダッシュとブリンクを使いかわした。シャティとフィアが弓を引く。


 二本の矢が勢いよくフレイヤに向かう。矢を掴もうとしたフレイヤだったが何故か掴まず避けた。

「・・・・」

 矢に毒が塗ってあるのか?その隙にカタリナは仲間の回復を図る。


「ザッ」


「水魔術お願い!」

 モニカが言うと、


 シャティがウォーターガン、フィアがウォータースプラッシュを唱えた。フレイヤの周りに水を発生させ、モニカはティルウィンドで風を作った、魔術三唱で攻撃。

 水に当てる事でダメージを与えることができるか?


 水はフレイヤの体に触れるなり蒸発し気化した。


 効かない!!


 のはわかりきっている。このフロアのモンスターでさえ一発で倒せなかったのだ。ボスに通用するはずはない。

 再びシャティとフィアは矢を射った。風を受け矢はビィーンと音を立て飛ぶ。フレイヤは剣波でその矢を落とした。

 やはりあの矢には何かしらの力が付与されている。何とか接近戦に持ち込まなければ負けてしまう。


 モニカさんが拍手し合図した。目を閉じるモニカさん。その意味は・・。


「舞い上がれ、まわる大地と砂!」

「サンドストーム!!」


 嵐!目を閉じて屈む。風を受け悟りが間違いでない事を実感する。


「ヒューォオオオオオオウゴウン、ゴウンゴゴゴォオオオウンバチバチ!!」

 靡く塵、熱は執拗に気団の中にとどまろうとしてその渦巻を激しく荒らした。集まった土は圧力で壁を作らないまでも締めつける。

 空に灰が舞い、地に火山灰が積もった、空間で灰の嵐を喰らったらどうなるか想像するだけで恐ろしい。


 熱、風、灰、圧力がフレイヤに押し寄せた。仕方なく目を閉じたフレイヤはバランスを崩し地面に叩きつけられた。

 さらに魔術を放つシャティとフィア。アクアウェーブの魔術をストームに飲み込ませる。嵐の中でも目を開けられる、風は得意。

 もし魔術(例えば雷魔術を使っていたら土が絶縁体となって効果が発揮されなかった)が違っていたら失敗に終わっただろう。

 土は泥となりフレイヤにへばりつく、さらにそれが重量となってフレイヤの体にのしかかる。それに合わせスカルベとエルドラは翼と足を動かしフレイヤに向かった。


 灰被りのフレイヤは重くのしかかる灰に抵抗しながらゆっくりと目を開ける。


「キィン!カカン!」

「シィィイン!ギリリ!シュルン!」


 俺が目を開いた時、フレイヤに攻撃をするスカルベさんとエルドラがいた。攻撃は剣で受けられたが、こちらが押している。


「フワッ」

 フレイヤが空中に逃げる。


「カカカカカン!キキン!カカキキィ、カキィン!カカァン!」

 スカルベの剣とエルドラのナイフで挟み撃ち、両者の反動を利用しながら攻撃を全て防ぐフレイヤ。魔術詠唱に入るシャティとフィア、それを見るなりフレイヤは地面に下りていく。


 俺とアッキーは下りる位置に走り陣取った、攻撃体勢をとる


「タッン」


 俺は一刀、斬撃、一刀、ダブルキル俺は敵の呼吸を乱すため強弱をつけて攻撃。

 アッキーは振落、振回、パワーキル、振回、目が周りそうなくらい激しい動きのアッキー。


 フレイヤは俺たち四人を相手にして一歩も引かず攻撃する、防御や回避も含めてやっている。超人レベルの剣術と体術!!

 剣波を使うようなら俺たちは身を引いた。こんな至近距離でもスキルを使う大胆かつ賢いボスである。だが俺たちもそれは分かっている。スカルベさんは右に避けるとその場所に射った矢が飛んでいった。かわしたあともそこには攻撃が残る。連携、連鎖、連続、連撃という攻撃である。


「ビシッ」

「くっ」

 フィアの射た矢が決まった!


 よしっ!


 連携をどうやっているのか俺は知らない。風を読むのはエルフもドラゴン族も得意なのだろう。飛ぶから。


「・・・―――」

 一瞬目が下をむいたフレイヤ、効いたか。だがすぐに赤の衝撃波を放つ!


 俺たちは皆、避けた。


 フレイヤはブラックソードを使い黒炎を出した。


 皆かわす。


「それなら」

「ブルーファイア!」


 剣の先を見せたかと思うとそこから青い炎が現れた、二字熟語でいうなら冷淡、それは不吉な輝きを放つ恐ろしい炎!!


「かわせ!」

 スカルベさんが叫ぶ。


 もちろんかわす。ブルーファイアが飛んだ辺りの岩が燃え、青い炎の柱が立った。それを見ている俺たちを尻目にフレイヤは余裕な顔で歩いてくる。冷淡などではない、冷酷な炎は俺たちにかわされたあとも燃え続ける。



「おい!」

 スカルベは目を反らせないので仲間の顔を見ない、話だけ。


「今のは・」


「魔術ですか」


「道具、それとも技とか」


「炎?」


「あいつ汚ねぇ、魔法使いとナイト職種を二つ掛け合わせた攻撃しているぞ」

 ゲームでいうならチートである。こちらにもエルドラがいるがそれがフロアボスとなると卑怯・卑劣すぎる。


「はい、弱虫です」

 カタリナも心では負けじと声を上げる。


「フレイヤのファイアは嫌よね」

と不気味に笑みを浮かべるモニカ。


「うん」

 アッキーも頷く。


 フレイヤはとても真面目だ。


「これは俺が作り出した技、お前たちにも魔術や技があるようにな」

「ブルーファイア」


 くそっ、変わらないか!正々堂々と戦うキャラではないか。俺達はブルーファイアをかわすと地面に当たった青い炎は、また消えず柱を作った。


 この時初めて気づいた。俺達を囲むように周りに炎の壁が出来ていることに。逃げ道がなくなる!


「では・・・」


 剣を持つ手に力を込める。体の鼓動を聞き相手の動きを中止する。敵の反応速度に応じなくては。


「せい」


「キィン!キキキキ、カラララッ、シュッ」


「っ」


「ぐぐ」


「はぁ!」


「チィン、シュ、シュ、キキ、カッ」


「うっ」


 フレイヤは剣の先、腹、剣の柄、こちらとの間合いに応じて剣を扱い器用に攻撃を繰り出す。汚い技とか剣自体が強いとか、そんな事は関係なく本当剣術に長けている。


「ザシシンッ!!カキキ、シシィン、タタタッ、シュララン!」


「――――――――」

「――――――――」

「キィン!!」

 攻撃の手を止めないフレイヤ、一度に二回攻撃しているような太刀筋。


「ザシシン!!」

 女たちに向かうフレイヤの一本の剣をスカルベさんとエルドラの二人がそれぞれ受け止めた。


「サンサンサササササン!スッ、サンサンササン!」

 赤くなったフレイヤの剣に、全員が次々と斬られていく。


 まさか!!


「あの剣、実際はポーション一つ分合わせた長さがあります」

 その刀身は炎の熱も合わせると少し長くなる、だから俺たちの体に浅いが傷が出来ているのだ。


 フレイヤはシャティやフィア、モニカさんまで狙っていた。回復陣を先に潰す気だ。


「キィイーン!」

 俺は剣を受けたが足に物凄い痛みが走った。手が熱い、受ける刀身から熱が伝わり柄にまで達する。ポタリと汗が俺の頬を伝い、胸の中に入っていく。既に体中、汗でベッタリしていた。熱に加え緊張で剣を握る手が滑る。


「タッ・・、シュッ」

 危ない、カタリナ!!


「ギインッ!」

 スカルベとエルドラが助けに入ってくれた。スカルベさんが攻撃を受け、エルドラはカタリナを掴み退いた。


「大丈夫か?」


「は、はい。二人のおかげで」

 カタリナは汗を拭った。


「これだけ集まったら危ないか」


「そんなの構わない、それに離れると助けられない」


「皆さん、ありがとうございます」

 カタリナは、エクスレイズヒーリング&ウィンドサークルを唱えた。皆が一度に集まった時、範囲限定の魔術を上手く使い、不利な状況を有利に働かせる。


 青い炎は灼熱だろう、とてつもない熱さ。傍によるだけで焼け切れそうなほど肌が痛む。囲まれると、ここにいるスカルベさんとエルドラ以外は外に抜けられそうにない。フロートで飛びあがると間違いなく撃ち落としにあう。

 フレイヤは攻撃の連続技、その中に赤の衝撃波とブラックソード、ブルーファイアを織り交ぜてくる。その攻防で知った事は俺たちの行動範囲が狭まっている事。


「サイィィン」

 いつでもない受け流しをした時だった。


 フレイヤの攻撃が今までと違っていた。ブラックソードに本来()()はいらなかった・・。それに気づかずに間合いに入れてしまった俺たち。


「ブラックソード」


 魔術をも飲み込んだ黒炎を俺たちは受け止めなければならない状況になった。



 かわしきれ・・ない!死ぬ!!


 前を見たまま周りを見る、皆、動けない!


「変われ、天空の空に!」

「シエルアトモスフィア!!」

 カタリナは命懸けで魔術を唱えた。この場にあった空気が全てどこかに移動した。


 ダメか!?


「ブンッ」

 やったあ!俺は、あのフレイヤの技を剣で受け止めたのだ。黒炎に触れるように出した剣とフレイヤの剣がぶつかる。黒炎は寸前の所でなくなった。


 スカルベとエルドラはフレイヤに向かった。ドラゴンパンチ、ドラゴンテイルを使い、相手の腹に一撃喰らわせる!

そしてエルドラはクイックカット、さらにウィンドウィング、流れる動きで敵の肘あたりを少し切る!


 あれ!?何故か当たる。隣にいるカタリナがロッドを翳していた。カタリナは何の魔術を唱えたのか?もしかしてカタリナが・・。知らない技や事ばかりでついていけない。


 シャティさんは跳んで弓を引いている、フィアは横で魔術を唱えている。


「ドッ」

「きゃあっ!」

 フィアさんが腹を蹴られた、近すぎたようだ。


 フレイヤは飛んできた矢を剣の柄で弾いた、さらに赤の衝撃波を放つ。衝撃波は地面に当たり地面を壊した。壊れた地面は礫を飛ばしシャティに当たる!礫は腕の皮膚から細胞を次々と破壊し中に侵入する、痛みは十二分以上にあったが礫は熱を放ち奥へと入っていく。その痛みは神経を伝わり、痛みの矛先が脳を刺す!!


 エルドラは翼を少し斬られ、スカルベは手の甲と鱗、足とこめかみを切られた。


 さっきのブラックソードの黒炎は残っていた。だが黒炎を燃やす酸素が無くなった。酸素ゼロの状態が一秒あったとしても俺たちは死にはしない。だが火は一秒で消える。

 フレイヤの振ったブラックソードは只のソードになっていた。その事が見て分かった、だがその剣はとても重かった。フレイヤも剣を振った後に効果をわざわざ確かめたりはしない。だからフレイヤも隙が出来た。油断が生まれた。


 ここまで重傷を負わず、よく済んだと思う。急いでカタリナに回復してもらわないと死んでしまう。俺は走った。

 俺は横目に腕を抑えているシャティさんは礫に腕を抉られていた。血ごと皮膚を焦がした腕は見るだけで痛く感じた。


「傷はいいのか」

 フレイヤが静止したまま俺たちに尋ねてきた。


「?」


「お前たちが全力を出し切ったところで葬り去ろう」

 宣言するフレイヤ。


「やはり最初は様子見で最後に殺すつもりですね」

 俺は逆に尋ねた。なぜならフレイヤとの戦闘に少し躊躇いがあったから。


「それが戦いだ」

 フレイヤが立ったまま待っている。いきなり攻撃はしてこないか。


「体はどうだ?」

 スカルベさんが俺達に確認をとる。


「僕は全然平気」


「すごくきついです」

 俺は現況を語った。


「それだけ無駄口叩けるなら、いけるな」

 目はフレイヤから離さないスカルベ。


「戦力は互角と言いたいが、相手は歴戦を勝ち抜いてきた」


「アッキー、戦った日々を忘れるな」


「はいっ」


「準備はいいか?ここから本気で行くぞ」


「どうぞ」


「お好きに」


「ブラックソード!」


「ワールウィンド!!」

 黒炎を少し吸収する旋風、最小限の時間で黒炎をかわす。


「おい、エルドラ!!」


「あれだね」


「ザンッ、キキキキ、ザンッ」

 スカルベとフレイヤが剣を交えている。


 フレイヤの背後に回ったエルドラは間合いギリギリラインからスキルを使用した。


「りゅうせいのやり!!」

「☆」

  「\キィー」


「キィ!」

「がしっ、ふんぬっ」

「ブファ」

 フレイヤは背後から放つ『りゅうせいのやり』を剣で受けた。だが剣先がとばされる!!それでもスピードと力で剣を掴み抑えブラックソードを放ちりゅうせいのやりに対抗をする。


「バババババ!!バチバチバチ!!チィシュ~」

「バリバリバリ!!ギギギギババァ!!バァバリババリバリバリリッ!!!!!」


 竜精の槍はブラックソードの黒炎に飲み込まれなかった。それどころか黒炎を消し、回転しながらフレイヤに突き進んだ。

 フレイヤは剣をしっかり握りしめ素早く乱れ斬りする、そして回転を凌いだ。


 凌ぎきった・・・。


「ちっ、相殺しやがった」


「もう一度やろうか?」


「何度も見せるな。二度目は通用しない相手だ」

 その言葉は、一撃必殺を意味する。


 エルドラの技がかわされた俺のショックは大きかった。

 もし勝機や可能性を追求するならフレイヤの鎧の小手が剥がれ落ち、素手が見えていた事くらい。フレイヤは人間と同じ手を持つ。


「キンキィン!バスッ」

 フレイヤは飛んで俺の方へ来た。


 俺は急いでゲイルさん直伝、光球斬りを使った。


「ススス、ランッ!」

「キィン!!」

 無口キャラのフレイヤ、男らしく情に熱い男。その情熱は灼熱を焦がすまでに至る。

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