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第29話 ダンジョン13階層 炎の守人

 ライムとアッキー、モニカ、カタリナが三年越しの再会をした。ヴィンスもゲイルと再会を果たし、三年越しの十一階層へ歩を進めた。

 十一階層に突入、松明を持ち真っ暗な砂漠の道を進んでいく。


「ザッザッザッザッザッ・・」


「悪いね皆、夜なのに」


「そんないいんです、俺たちはずっとここに居たんですから。それより皆さんの方が疲れているのでは?」

 俺達が待っていて合流したわけだから気を使うのが筋だ。


「構わん」


「行きましょう」


「大丈夫」


「持ってきた食料の事を考えると、この先まで進まないと持たない恐れがある」


 砂地のモンスターもなんのその、俺とエルドラは初動でモンスターを倒した。


「今の動き、どうでした?」

 俺は格好つけてスカルベさんに聞いてみた。


「ん?どうとはなんだ?」


「いや、いいです」

 ズルッ、砂に足を取られてしまった。


 それで踏み外したのかブルースコーピオンが襲ってきた。莫大な数の一部が襲ってきたのだが、意外に硬く強い。

「切りがないから逃げましょう」


「それなら・」

 サンドストームを唱えるモニカ。砂地での時間稼ぎの方法としては一番、物凄い砂嵐が起こる。流石のブルースコーピオンも個々の体重なら軽いので砂と一緒にストームの中に吸い込まれていった。


「行くぞ」

 エルドラとスカルベは翼を羽ばたかせ高速で移動、それ早すぎる・・どこ進んでるか分かってるんですかー!とも叫べず。エルフの二人も風のように早い、修業のおかげで俺とアッキー、モニカさん、カタリナは走って見える所まで追いかけたが速度では明らかに負けていた。


「はぁっ、はぁっ、はあっ、はあっ、ふう~」

 逃げ果せたので足を止め呼吸を整える。一度来たことがあるだけに、迷うことなく出口まで来れた。この日は十一階層出口で夕食と睡眠をとることになった。




 三年ぶりの皆との再会、話が盛り上がる。


 まず俺はエルドラが水魔術を覚えてから十階層のフロアの岩の窪地で水を溜めて入った事を話した。それが周りの細かな砂で泥風呂になって体調を崩したと言ったらみんなヒーラーのいない生活を気遣ってくれた。また戦闘中に真剣になりすぎて崖から落ちかけた事、俺が初めてヴィンスさんに勝負で勝ったことを話した。


 アッキーは街で民衆に頼りにされたこと、デイデイな料理店で恐れられた事、建築屋に来ないか勧誘されたこと、スカルベさんに初めてダメージを与えたこと、一度も勝てずに終わったこと。


 モニカは水魔術が未だ苦手な事、特に水を直接出すものが苦手であること、願掛けにオアシス湖に行ったら、成功しそうだったこと、Gold稼ぎにモンスターを倒して鱗粉を集めていると周辺からモンスターが一時的に消えたこと、火魔術を練習していて他のギルド冒険者に火傷を負わせたこと、カタリナが回復し一緒に謝ってくれたこと。


 カタリナはいつも教会で祈ったこと、セイラと一緒に出掛けて買い物に行ったこと、ポーション集めをしたこと、街の男か知らないが陰で自分を見ているストーカーがいたこと。未だ変わらずロッドで攻撃できないこと。


 エルドラの方もスカルベ達に話をしていた。

 修業でヴィンスさんに勝ったこと、水魔術の他に風魔術も少し覚えたこと、寝相が悪く朝起きたら別の場所にいたこと、毎日つまらなかったこと・・。

 シャティとフィアさんがエルドラを挟むように座り、スカルベさんは前にいたが無表情、何を考えているのか。もちろん家族の話は出来ない、だが俺とエルドラは修業の合間に話した。


「俺が見張ろう」

 眠る時スカルベさんが見張り番を買って出た。


 その後シャティがかわりスカルベは目を閉じた。




 翌朝、起きて朝食を軽く済まし、すぐに出発十二階層に入った。


 くぅっ・・ここに来ただけで忘れかけていたミノタウロスとの戦闘を思い出す。迷宮を進んでいくと一つの道に抜けた。あの時、崩れかけた迷宮だったが侵入を拒む岩や穴がなかった。これも罠ではないか疑ってしまう、例えば崩れて上から岩が落ちてくるような罠があり俺たちを殺すため、わざと侵入を許しているとか・・。ガラスの球の中で火が灯っているランプは跡形も無い。


 あの惨劇のあった宮殿の中に入る。空気が鈍より淀み、鳥肌が立ち血の毛が引く。ミノタウロスの獰猛な臭いと血の生々しい臭いは渇ききり、岩と土の匂いだけがその場に漂っていた。


「誰もいない?」

 シャティさんが中を確認しているスカルベに尋ねOKが出ると俺たちは中に入った。あれだけ大きなモンスターである、生きていれば気配が必ずあるはず。


「クゥ・・」

 唾をのみ呼吸を抑えるのは、充満している悪感に当てられたくないからだ。

 松明を地面に近づける。血の跡があるのを確認、影のような血が一層黒くなっている部分がある、アシュリーが切られた場所、思い出すのはよそう・・。

 体の力が流れるように抜けるのは思い過ごしか、自分の体内の温度を探るが、肌は思ったより冷たかった。


「階段はどこだ?」


「部屋の奥の天井近くの壁に階段があります」

 松明で照らすと黒い穴のようなものが見えた。シャティとフィアがフロートを唱える、全員一緒に空中へ上る。


 階段だ、階段は上へ続いていた。階段に下りるとひたすら上った。


 岩の壁隔てて、フロアボスのいた場所に次のフロアの階段があったのなら、ミノタウロスはどのみち避けては通れなかった。


「高い・・」


「まだ半分くらいだったりして」


「・・」

 これで十五分位は上ったぞ。


 ちょうど宮殿の天井位の高さまで階段を昇った時に熱気を感じた。松明のせいか!?

「はあはあ、何か暑くありませんか?」 


「こんなに動いて熱くないわけないでしょ」

 暗くて、よく見えないがフックを外しているモニカさん。


「そうよ、空気が重い」


「暑い・・」


「ふぅ~ぅ・・・ズッ」

 アッキーは愚痴さえ零さないが息が荒くなった。


 そして壁で固められた場所に到着した。ここは行き止まりだが、亀裂のある壁が岩の扉(隠し扉)であるのは誰でも気づくことだろう。


 グッとスカルベが押すがびくともしない。間違いないのか、壁なのか?俺もジャンプタックルしてみたが疲れただけ。ここは肩をポンと叩きアッキーのおでまし。

 アッキーはスカルベの隣で力を込めて押した。他みんな空いたところを押すと扉がというより壁の部分が中に入って行った。


「ぐぐぐっ」

「ゴゴゴゴォ・・」


 赤い光が漏れている、何だ巨大な化物か?一瞬警戒を強めたがモンスターではないのが分かり安心した。壁が中に倒れ落ちた。開け方乱暴だったかも、でも進めたので良かった。






 ダンジョン13階層 炎の守人


 十三階層のフロアに入ると、顔を肌を刺す痛みで激痛が走った。それは岩と炎に囲まれた場所が原因だと思う。地中に近いからマグマがあるのかは知らないが。

 その炎の中の階層を進むには何かしらダメージ(代償)を負うことを我慢しなければいけない。それで体の水分や血液もとられるのかもしれない。それが嫌なら、こちらはMPを支払って補わないといけない、ダンジョンとはそういった場所だ。

 温度という概念から冷却アプローチをするなら水魔術になる。しかし魔力の消費は極力抑えたい。他のアプローチとして炎が燃え続けるために必要な酸素をなくす窒息や除去といった方法がとれるが、果たして可能だろうか?

 地形の変化で熱を逃がすか、俺にはそんな術はないし地面が壊れたらフロアごと炎で焼かれてしまうので却下。


「これじゃー、暑くて通れないわ」


「本当、汗がふきでてる」


「こんなもの・・」

マグマの近くで寝ているスカルベさんの種族とは皆、違います。


「入り口の扉から、熱を逃がせれば温度が下がると思うんですが・・・」

 俺がそう言うと、


「わかった、お前たちは入り口まで下がっていろ」


 え!?


「ジャリ・・」

 天井を見ているスカルベさん、天井にへばりついていけば熱も抑えられるし炎も当たらなくて済むけど、そんなコキブリみたいなことできませんよ。スカルベさんは翼を羽ばたかせ空に上がっていく。


「ドラゴントラスト!!」


「フッ・・・、バババドババババァアググワワァアン・・・!!」


 なんだ!?上の方で、地響きのような音がしたぞ。 

 ・

 ・

「ドゴゴゴゴゴゴゴゴゥゥウウゥゥウン!!!!!」


「うわあっ!」


「何が起こったの」


「霧じゃない」


「うん?」

 少し行った先に白い空が見えた。そこに向かって風が流れていく。


「天井に穴が空いてる?」


「バシバシ、これでいいな」

 尾で地面を叩くスカルベさん、熱くないのかよ。


「水」

 水かわからないが蒸気がたっていたからそう思ったようだ。


「すごい、スカルベおじさん」


「お見事です、あれを居ぬくとは思いませんでした」


「いい場所~」


 そして蒸気がほぼ消えて温度が下がっていった、俺たちは用心してそこを歩いた。まだ火柱がいくつも立っているが、これで火傷はしないで済む。

 岩の塊に岩の壁、溶岩のような岩があった場所に水か冷たい空気が触れた。マグマが石板のように塞がれていた。それでも底から熱気が流れて岩は動いていた。


 熱くないか確かめつつ歩く。火山灰の臭いはもちろん卵が腐った硫黄の臭いもして危険な臭いがする。いつまた吹きだすか警戒が必要だ。もし吹きだせば、即死!


「あれ、恐いんだけど」


「まじか」

 俺も怖い、何だあれはとてつもないレベルのモンスターじゃないか。


「敵」


「触るな、体が焼かれるぞ」


「わかりますよ、チリチリしてますもん」

 体が燈の溶岩で何百度もありそうな体である。触れなければ別に問題なさそうだが傍に寄るだけでかなり熱い。こいつがムンムンと地面を這ってくる。


 メニュー確認、

 ≪ラヴァブル 溶岩体のモンスター≫


「水魔術をお願いします」

 頭を下げて頼むモニカさん、初っ端から苦手な魔術が弱点の敵出現!修業の成果どころか面倒をかけている。

 他の魔術も試してもいいが魔力の浪費は避けたい。現実世界の知識量で応えたいんだ。


「気をつけろー」

 体にくっつかれたら火傷、急所なら体に障害が残るようなダメージを追うだろう、この世界の設定は何といい加減なのだろうか。


「ウォーターガン」

 シャティとフィアが魔術を放つ。


 赤い中心の核にあたると固まって動かなくなった。そして見た目で黒い溶岩のようになった。やはり水魔術は有効だな。


「動きが遅いのが弱点」


 案外だらしのない奴だ。俺は剣でつんつんと突いてみた、そして剣を触るが熱くはなかった。蹴って転がすと、裏側にも何もついていない。


 のはよかったけど、他のラヴァブルがどこかからか、いかつい顔をして這ってきた。


「ライムが剣で余計な挑発するから温度が上がったんでしょ」


「そんなこと知りませんって」

 それで怒らせたのっ!敵がいると部屋の温度があがるか普通?


「逃げましょう、早く~」

 一匹倒した感はないがカタリナはいつも逃げるを選ぶな。


「全くぞろぞろと何匹いるんだ?」


「魔力は節約して」


「抑えてるっ」


「早く~」

 とカタリナは逃走の準備をしたが、スカルベの一行は戦闘を選んだ。ギルド協定は決裂だとも言わない、好きにやっつけて下さいな。


 ウォーターガンで五匹のラヴァストンを倒したがあとは退治する魔力が惜しい!ので逃げることに決定!!

 戦う気満々の顔をして・・・逃げ出した。


「暑いのに走らせないでよ」


「はぁはあ、うわっまた火柱だ」


「そっちもあるから気を付けて」


「あっちちぃ」

 俺とカタリナが通った場所から火柱が立つ、俺はダメージと火傷を負った。


「もうライムさん、気を付けて下さい」


「ごめんっ」

 火ばっかり、おまけに痛みも熱いときた。


「与えよう、煎じられし薬草を!」

「メディシン!!」


「ありがとうカタリナ」


「コロコロ、何だ?石が落ちてきたよ」

「トン、ガン、ゴロゴロ」


「マグマグマグ、ウウゥン、ママママグマ、ホゥ~」

 声が聞こえる方を見ると、こちらに黒い溶岩石を投げつける岩の物体。石は熱で熱くなり火に触れるより熱そう。空に穴があり熱が逃げることがせめてもの救いだ。


 メニュー確認、

 ≪マグマストン マグマ体のモンスター≫


「ガッ、バチッツ」

 次に盾で受けるアッキーが頼りだ。俺たちはアッキの盾の中に入った、つまり後ろに立った。


「あっつい」

 盾を離すアッキー、盾に熱せられた岩の熱が伝わっているようだ。


「おい、離すな。頑張ってくれ」

 盾ではなくアッキーを盾にする俺達。お前なら修業で鍛えたから、この熱にも耐えられるさ。


 ・・・でもなかった。


 あちらはあちらでスカルベがいて、後ろにエルドラさらにシャティとフィアがいた。熱せられた岩をティルフィングで叩き落とすスカルベ。刃先に熱が移らない!?素早い剣捌きだ。


 スカルベの体に黒い溶岩石がかすった。いくらドラゴン族の皮膚が硬いと言ってもその熱で火傷が出来ていた、防ぐにも限界がある。


「なら・・」

 スカルベが消えた。


「ちょっと、あなたがいないと丸裸じゃない」


「シャティ、エルドラがいるわよ」


「任せて」

 逞しいエルドラ、ロンドナイフを携えている。エルドラは、もはやこの世界のレベルとは比べ物にならない。


「ガスン!」

 マグマストンをタタッ斬った。岩をも斬るスカルベの剣筋とそのパワー恐るべし。


「撃て、詰められた鉄砲水!」

「ウォーターガン!!」


「スィッ・・・バシャッ!!」


 ウォーターガンで黒い溶岩石の軌道を反らし、その水で周囲の温度を下げるエルドラは賢かった、そのマグマストンは体に亀裂が入った。

 仲間のピンチを悟ったのか他のマグマストンが続々と現れたが、


「マグマグマ、ママママホウ~」

 マグマストンは黒い溶岩石を一斉に投げつけてきた。当たれば火傷で、直撃しれば重傷だ。


 全員が散る。アッキーは斧で素早く近寄り攻撃を繰り出す、マグマストンはラヴァブルより動きが早い、すぐに決めなければ不利になる。

 金の斧を振り下ろす、マグマストンの体が割れ落ちる。アッキーの一撃は岩をも砕くのか、それとも岩より敵の体が軟質であったのか。強度は如何知らないけど・・。俺もリフューズソードで斬りつけた。剣の刃が小さい分、熱も通しにくいがそれでも熱は伝わった。


 ニヤリ・・!


 穴や窪みがある場所を指すと手ごたえあり、マグマストンは動けなくなった。


「あつっ!!」


 カタリナはマグマストンから一定の距離を保ち、周囲の状況を凝視する。


 モニカは銀の熱伝導率で悩んでいた。銀って熱通しやすかった?銀薬の錫杖で無難に攻撃はせず魔術のアイシクルランスを詠唱。だが放つ矢先から溶けていき、届いた頃には水になっていた。


「ふぅドジばっかり・・」

 自分でそういうモニカ。それでも水が多少かかり効果は見られた。


 戦闘は冒険者勢がマグマストン勢を押す、勝利は目前。


 そこに悪魔の笑みを浮かべたモンスターが出現、さらに襲いかかり火を吹く。


 しゃがんでかわす皆。


 メニューを開く、


 ≪ボルカノ 火そのものから生まれ出た悪魔≫

と明記されているモンスター、火の悪魔?精霊じゃないのか。

 サブタイトル案、炎の番人もありましたが守人としました。それについては後々お話しします。

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