ヨドさんをお迎えしたと思ったら、早速0点答案の隠し場所から始まるんですの……?
私の名前はミンネ・フランル。このイカレタヤカタのメイドです。
今夜の夕飯は、ステップ9でありこの館の新入りでもあるヨドさんと、執事のコウレ君と共に、ヨドさんの母星・地球の日本という国の料理を作っています。
ヨドさんからは私一人で充分と言われましたが流石にそれは私とコウレ君のプライドがそれを許しませんでした。
「正直、アビリスターの食材が地球の料理に合うか不安ですけど……さすがセントカクラ家ですね。調味料も豊富ですし、これなら本場とほぼ変わらない味になりそうです。」
「アギに天災的な料理を作らせず自分が料理したいと名乗り出てくれたヨドさんには私達の救いの女神です。」
「淀さん。自己紹介が遅れてすみません。私の名前はミンネ・フランル。このセントカクラ家で働くメイドです。」
「よろしくお願いします。ミンネさん」
彼女も母星ではメイドをしていたそうです。正直ステップ9なんて基本は私の弟以外はアレな人ばっかですがこの方はまともそうです。何より私が男なら間違えなく一目惚れするレベルの美人。絶対メイド服もコウレ君に負けず劣らず似合うんでしょうね?……って、私何か変なこと言いました?(笑)
ヨドさんの調理は驚くほどスムーズで、所作にも洗練された美しさがあります。
日本という国の食文化に知識まったくないですが、プロとしても通用するレベルなのはわかります。5品目すべてがとても美味しそうで、少なくともお嬢様よりは遥かにまし……いえ、コウレ君以上かもしれません。
「お口に合うかわからないですが味見よろしいですか?」
「ではお言葉に甘えて」
5品目すべて一口ずつ私とコウレ君で味見をしたのですが
「どれもとても美味しいです。」
「特にこの鍋……もう一口惚れしました。」
お世辞じゃなくて本当に絶品です。
「よかったです。あとは盛り付けだけですね。」
盛り付けに至るまでヨドさんの動作はスマートだし貴賓すら感じます。しかしふと重要なことを思い出しました。
「そういえばコウレ君、ヨドさんの部屋はどうします? 入居できるのは3階の畳の部屋だけですけど、まだ全然掃除してないですよね……」
そして、その部屋に関する重大な事実も同時に蘇りました。どこかの誰かさんのテストの答案の隠し場所だという事実を。
「ですね。ヨドさん、すみません。急な入居になってしまったので部屋の準備ができていません。もし夕食までに終わらなければ、今夜はこちらの金でホテルに泊まっていただいても……」
「いえ。掃除ぐらいさせてください。こちらが急に押しかけたんですから」
「いやいや、掃除ぐらい私がやるから、コウレ達は気にすんな!」
噂をすればまさにちょうど本人も思い出したようです。こういうことだけは記憶力と注意力が働く0点常習犯のお嬢様。
「なんでアギが人の部屋の掃除なんてするんですか。いつもは自分の下着や女の子のモノすらろくに整理しないのに。」
「‥‥とにかくコウレはヨドともう少し雑談でもしてろ!掃除は私とミンネでやるから!」
「‥また0点の答案隠してるんですか?」
下手したら単なる自白よりわかりやすいでしょうね。すごい量の滝汗。まあ私は知ってましたけど。
「なるほど。で、0点の答案はどこですかミンネさん?」
私に向けられた笑顔には、第六感的な凄みがありました。執事兼保護者様の説教モード全開です。
「…あい、ミンネ。」
助けを求める目で私を見つめるお嬢様。
「‥‥タンスの1番下の段の裏側に10枚ございます。科目は現代文、魔術史、プログラム、論理、古語。」
「どういうつもりってか何考えてんだミンネ。具体的な場所までいうなんて!」
裏切られたという顔になる劣等生様。
「どういうつもりだもなに考えてんだもアギでしょ。さあ答案見に行きますか?」
表情はいつも通り穏やかながらも目は完全に説教モードに入ったみたいです。
「私ちょっと新しい漫画の構想を思い出したのでこのへんで‥」
「勉強の方が優先ですよ。アギお嬢様」
当然拘束され0点の隠し場所に連行されるなかでも必死に抵抗するお嬢様、いえ劣等生様?
私とヨドさんもついていきます。コウレ君は到着後即答案を見つけだしお嬢様に対しての雷がなり始めました。いつ晴れるのでしょうか?この館の定番行事を見守りながら私はヨドさんの部屋の掃除を開始します。
どうやら新しく来たヨドさんは、私が思っていた以上に相当ハイスペックな方らしいです。久々にこのイカレタヤカタで、まともな同僚ができたかもしれません。




