クズニート魔法令嬢のアギ様は今日もダメ人間とのこと
自己紹介が一通り終わった後、アギちゃんが突然元気よく立ち上がった。
「まあ気を取り直して!イカレタヤカタの新しい住人の歓迎会をぜひやろうではないか!私が手塩をかけてアギスペシャルを作ろう。きっと天にも昇る気分になれるぞ!」
「本当に昇天してしまうのでアギは黙って原稿書いててくださいよ。もうすぐ締切でしょう?」
「原稿ってアギちゃん創作の趣味なんてあるのね」
「違う違う。単なる趣味じゃなくて、ちゃんとした雑誌で連鎖してるプロだぞ!」
といってセンラアクギという作者による漫画を見せられる。実際チラ見したが明らかに面白い。縁故採用ならぬ縁故連載と呼べるものではないことは素人でもわかる。
「これアギちゃんのペンネームなの?」
「もちのろんだ」
「こいつは幼い頃から漫画、というよりは創作の天才なんだよ。漫画だけでなく小説家やイラストレーター素質もある。それだけでオクスタンを飛級できるぐらい」
オクスタンは特別な才能を持つ生徒には飛び級制度が存在するの知ってる。いくらセントカクラ家のお嬢様とはいえアビリスターの正規の能力者ですらないアギちゃんが飛び級できるのはその漫画の才能がよほど優れてるのだろう。
「それ以外でも基本は超万能な美少女だぞ。」
「魔術の才能どころか早寝早起きもできない怠惰で不登校でオタクでクズニートの万能美少女なんているわけないでしょう」
「あと勉強もダメ、スポーツもダメ。ボードゲームどころかジャンケンやトランプですらコウレやミンネどころか俺にすら勝ったことがない」
「あと当然のように金銭感覚も非常識ですし自分のサブカルチャー関係以外は一般常識も皆無、なのに社交パーティーみたいなことはろくにできませんよね。なのに無駄に負けず嫌いですし」
このセリフを言ったのは、いつの間にか私たちのそばに立っていたメイドさんだった。彼女がミンネさんかな。少しロル君に似てる。ひょっとして親戚とかかな。
まあ話を聞く限り容姿は静香ちゃん並み、能力は◯び太君未満、性格はス◯夫・ジャイ◯ン未満、苦手への耐性は青狸未満らしい。
「あと運動神経どころか体力も皆無ですし体型も年相応に考えても残念な部類ですし…ゲフ」
言い終わる前にコウレ君はアギちゃんの魔術?で壁に突き飛ばされていた。これはコウレ君が悪いかな。私がいうのもアレだけど実際年齢を考えたらアギちゃんは身長も女性としての曲線もかなり残念な部類ではある。それこそ小学校高学年と思われてもおかしくないレベル。しかし前述通り容姿は充分可愛い。地球の男の子からなら一目惚れされてもおかしくない。
「とりあえず締切はもう大丈夫さ。ってことで今夜は私が料理を奮うからな。」
「お願いですからやめてくださいお嬢様。料理なら僕とミンネさんが腕によりをかけたものを作りますから」
やはり彼女がミンネさんらしい。
「そうですよ。お嬢様はあくまでもここの家主ですし」
「コウレが私をお嬢様と呼ぶのはなにか良からぬことから逃げるときだよなおい」
[newpage]
私はロル君に耳打ちで質問する。
「‥‥アギちゃんってそんなに料理下手なの?」
「死人が出るレベルにな。でもアギ自身はその自覚ないしタチが悪いのはこいつの魔術はこういう時だけはわりと冴えるんだよ。足止めしたり捕獲して無理矢理食べさせることもできる。まともな戦闘ではゴミだけどな」
「‥‥」
本当にそこまで不味い料理を無理矢理食べさせられるなら充分まともな戦闘向けなのではとも思う。
「気にするな。こいつはただ料理は下手だし掃除も下手だし生活能力も皆無で性格も最悪なだけなんだ…」
「‥‥」
「そんなに私の料理が食べたくないのか?」
「原稿終わったなら尚更休んでてくださいませ」
「いつもは勉強しろとかいうクセに‥」
「あの。だったらこの際私が料理作ろうか?一応同居人になることを(歓迎)するわけですから私が作っても矛盾はないよね?」
「「「えっ」」」
「私も一応母星では幼少期からメイドやってから簡単なものでよければ」
本来なら遠慮すべき使用人の方々も
「ぜひお願いします」
一気に顔が明るくなる
「なあ。ヨド。本当にいいのか?」
「まあ地球のレシピが口に合うかわからないけど」
「ぜひお願いします。僕一度地球料理食べてみたかったんです!」
「地球って星自体ヨドとの出会いで初めて(うが)」
「私もです!」
「俺も!」
まあこうして私はこのヤカタの住民に料理を振る舞うことになった。
この館に来て初めて、馴染むきっかけができた気がした。




