政略結婚ではなく、ふざけた政争ごっこです
ピラーセル君に案内されてイカレタヤカタに入った直後、私は居間でとりあえずお茶を出してもらった。そこで次々と奇妙な住人たちが紹介されることになった。
初めに自己紹介をしたのは私とほぼ同い年であろう茶髪で活動的な服装の男の子。
「俺の名前はロル・フランル、一応お前と同じステップ9の一人で能力名はマスターブレイカー。まあマスブレイカと略してもいいけどな」
「浅利淀。能力名はサイクロンスプリーム。よろしくお願いします。」
「別に敬語はいらないよ。ステップ9歴はともかく年齢は一応サイスプリムの方が年上なんだろ?」
「わかったわ。ロル君。なら私からもお願いがあるの。サイスプリムじゃなくて淀って呼んでほしいな」
「わかったよ。よろしくな。淀」
ロル君もピラーセル君同様、ステップ9の中では常識人の部類のようだ。
「僕たちはもともと特別工務隊としてこの星の治安を維持するために生務会とも警察とも別に活動する組織の仲間。例えば危険な能力者や麻薬や危険な兵器の密売の取り締まりとかね。」
「そんなの、学生がやるような仕事じゃないでしょ?」
「むしろアビリスターの高能力者やそれ顔負けの一芸の天才だからこそ穏便な形で済むんだよ。まあ毒には毒を、ってやつ」
「大変そうだね‥‥」
「淀。君もその毒だってこと忘れないでね。間違いなく君の星の歴史上もっとも多くの命を奪える人間だからね」
それをいわれると私は思わず唾を飲み込んでしまう。
「僕はちょっと野暮用あるからあとでね」
ピラーセル君が自室に戻ってからロル君と雑談ししばらく経ったのち
「もしかして貴女が新しいステップ9さんですか?」
まず声をかけてくれたのは私とほぼ同い年であろう水色髪で執事服を着た中性的な容姿の少年……なのかな。
「はい。初めまして浅利淀と申します。能力名は一応は略してサイスプリムというらしいですか」
次が金髪ストレートの小学校高学年ぐらいのとてもかわいい女の子。
「まあかなりかわいい部類なんじゃないか?母星での評価はどうか知らないけど」
「初めまして。この館の主人である。セントカクラアギとその執事ケンリュウコウレです」
お嬢様を先に紹介する優秀な執事さん。ちょっと待って…
「セントカクラ家ってもしかしてあの‥‥」
私はアビリスターに来る前に聞き齧り程度にはアビリスターとその対抗勢力である魔法界についても調べたのでセントカクラという言葉は聞いたことはある。魔法界での超大物である大司族のなかでも一際最強と言われるセントカクラ家。魔法界どころか宇宙中の政財界にも多大な影響力を持っているのだそう。もちろん私が知らないだけで案外アビリスターならよくある苗字かもしれないけど執事がついてるということはひょっとして
「アギは当主ヌルタイジの孫娘ですよ」
やっぱり……。にしてもコウレ君はアギの執事でありながら呼び捨てにしてるのが気になる。
「まああのクソジジイとはほぼ絶縁状態で今現在は相続権も失ってるけどな」
「だから魔術師のクセに隠居所的にアビリスターのこのアパートに住んでるというわけ。まあどこにいてもどうせ引きこもりのクズニートなのは変わらないけど」
「相変わらず元夫婦なのに冷たいですね。言ってることは正論ですが」
「えっ夫婦?」
思わず彼らの日常会話に割り込んでしまう。年頃の同年代の男女が元夫婦なんて聞いて反応しない年頃の女の子はいるだろうか、いやない
「まあ私が4歳、ロルが7歳の時だが」
「えええええー!?4歳と7歳が夫婦!?」
私は思わずギャグ漫画なら屋根が外れかねないほどの大声をだしてしまう。そりゃあ地球と常識が違うのはわかるけどここまであからさまにさらっと流されると尚更驚いてしまう。
「まあもともとロルの育脳を担当する研究者と私の両親が勝手に決めたことだけどな。」
「ひょっとして政略結婚とかそういうのですか?」
まあセントカクラ家ほどの名家ならむしろ普通かな。ロル君もステップ9としては私よりかなりの先輩らしいし。
「ガハハ、違う違う。結婚を通してお互いを後ろ盾にしあうとか、それを使ってお互いの政治的影響力を高めようとするとかそういう名家の政略染みたことじゃなくてアギの両親がはまったのは政略結婚ごっこだ」
「ごっこって‥‥」
「アビリスター側はセントカクラ家の結納金で豪遊、私の両親や側近の方はステップ9の義両親ということを免税付にしたバカ遊びやって終わった」
「平和的というべきですかね」
「バカ遊びって‥‥」
「アビリスターの内で疑似商店街を作って店屋さんごっこをしたりわざと猛獣を放し飼いにしての軍人ごっことかだよ。ちなみに双方のバカ遊びの費用はおそらく一人あたりの平均でもヨドの星のかなりの人間の年収に相当するだろうね」
「あと孤児の女の子とかに裸踊りをさせたりと」
とても近代的な超能力者の星と格式のある魔術界の話とは思えない…
「裸踊りって‥‥流石に下着か水着姿ですよね?」
性に対してはもともとこちらの方が寛容とはよく聞くけど…
「‥おそらく貴女が予想し得る最悪のことやってのけてます。ですがこの作品はR18ではないので割愛させていただきます」
「…なんかごめんなさい」
「いいんだよ。私の両親がおかしいんだから。それと私やコウレにも敬語は不要だ。私よりはもちろんコウレよりも年上だろ?」
「わかった。よろしくねアギちゃん、コウレ君」
こうして私は、イカレタヤカタで暮らすことになった。




