ロボットアニメの1話でありそうな展開
特別工務隊の隊員として、怪物体退治のために裏山へ急行した。だがコウレ君、ピラーセル君、ロル君の手によってあっさりと倒され、「私の出番なんてないな」と思った矢先だった。
バラバラになったはずの怪物体が、まるで時間が巻き戻ったかのように再生し、さらに巨大化して立ち上がったのだ。
「あいつ一体何者なんだ? 破壊が通用しないなら、俺の能力でも簡単には無理だよな」
悔しそうな顔をしつつも、どこか慣れた様子のロル君。
「恐らく形状記憶怪物体ですね」
瞬時に状況を読み取るコウレ君。流石の私でも、その意味くらいは理解できる。
「要するに攻撃を受けて破壊されても、すぐに再生するってことだよね? でも前より巨大になってない?」
「恐らく僕たちの攻撃のエネルギーを吸収してるんだと思う。人間でいう脂肪だね」
ピラーセル君は敵にしてはあっぱれ、といった顔で言いながら、小さくため息をついた。
「だったらどうやって倒すの?」
「広い場所で総攻撃して、形状記憶を制御不能にするしかないだろうね。もちろん人間のパイロットはいないから、完全に破壊しても問題はない」
「広い場所はここでいいのかな?」
「まあ、ここ《裏山》でいいのは確かだよ。ここ《地上》よりははるかに上の場所でなければならない、というだけで」
「このままだと、町に戻っていってしまうよね?」
ピラーセル君は能力で作った翼を広げ、怪物体の背後から剣をダーツのように連続で投げつけた。怪物体は私達の方向に目を向け、攻撃対象を変える。さらに長い槍状の武器を生成し、突きを入れて牽制を続ける。
これにより、怪物体の狙いが町からこちら側だけに向く体制が盤石になった。
彼はどうやら剣術だけではなく、長い武器を使った戦闘全般が大得意のようだ。
「俺は地上からブラスターで援護する。コウレと淀は飛べるよな?」
「もちろんです」
ピラーセル君とコウレ君、そして私は空を飛べるけど、原理はそれぞれ違う。
ピラーセル君はテレキネシスで自分の身体を操作し、コウレ君は温度変化で熱気球的に浮上し、私は自分自身を台風のようにして飛ぶ。
「マスターブラスター!」
「サイクロンガン!」
私とロル君はそこそこ遠くから援護射撃を開始した。私は空気を圧縮した銃タイプ、ロル君はブラスタータイプの攻撃を叩き込む。
「さて、どんどん気力いただきましょうか」
コウレ君は怪物体に接近し、触れた瞬間に急激な温度変化を与えて制御を狂わせようと試みる。
巨大化した怪物体が咆哮を上げ、尾を振り払うように振り回してきた。私は風を纏って急上昇し、辛うじて回避する。
「くっ……再生速度が上がってる!」
ピラーセル君の槍が胴体を貫いても、傷口はみるみるうちに塞がっていく。
だが、その再生のたびに体表が不安定に歪み始めていた
。「エネルギーを吸収しすぎてるんだ。今がチャンスだ!」
地上からロル君が叫ぶ。
「今がチャンスだからこそ尚悪い。このまま破裂したら周辺への爆風がヤバいぞ」
一瞬、沈黙が落ちる。
「いえ。淀さんのサイクロンスプリームで、爆発寸前に真上から地面に叩きつけてしまえば、爆風も機体もミンチ状態になるのでは?」
コウレ君が冷静に提案する。
「できるか、淀?」
「……やってみます。上空なら周囲の空気を集めても、私のダメージは最初で済むはずだし」
私とコウレ君、ピラーセル君の三人は、既に負けを認めて逃げるような動きを見せている怪物体を追いかけつつ、適度な攻撃を繰り返す。
「逆に地面一方向以外に飛び散るのも危ない。このあたりが適当だろうね」
私は全速力で怪物体の真上に回り込む。そして、人生で初めて、自分の超必殺技を本格的に発動した。
「サイクロンスプリーム――!」
真上から叩きつけられた暴風が、怪物体を地面に叩き伏せる。形状記憶機能ごと、完全に潰れた。
「……倒せたのかな?」
私は息を整えながら、残骸を見下ろした。そして地上に戻る。
「大丈夫だぞ。ほら。完全に形状記憶やエネルギーも含めて、跡形もなくなってる」
残骸の処理はアビリポリスに任せて、私たちは帰路についた。
「初陣としては上出来だよ。町に被害が出なくて何よりだ」
ロル君が肩をすくめる。
「でもやっぱり私は、本気はあまり出したくない。だって下手したらそれだけで、周辺の人を窒息させちゃうレベルなんでしょ?」
「ステップ9にしては融通が効かないですね、うん」
私が自分の力に対してそれほど執着がないのを知っているからこそ、人の能力のコンプレックスを弄るようなセリフを言うコウレ君。
「ステップ9なんて基本そんなもんだろ。そんなやつが古風な町の工務隊員なんて、素人が戦車やレーシングカーで日常生活するようなもんだ」
「ロルさんにしては珍しく的確な喩えですね」「ほっとけ!」
「でも淀がいなかったら、今日の敵はもっと苦戦してたのも事実だし」
正直、こう言われるのは素直に嬉しい。
「それに僕は、淀がステップ9でよかったと思うよ」
「えっ」
ピラーセル君が真顔で続ける。
「だってちゃんと自分の力の恐ろしさと向き合ってる。悪用どころか現実逃避もしてない。それが最強の能力者として、一番大切なことだろ」
私は表情と気持ちはほぼ平常時を回復する。
やっぱり、本気は出したくないなけど、彼らの言葉が、少しだけ胸に残っていた。




