淀「今更だけど私の初陣回」
私の名前は浅利淀。地球から超能力者の星・アビリスターに留学し、最強ランクのサイクロンスプリームとなった女子高生。
紆余曲折の末に特別工務隊への入隊を希望した。その後、結局正式な研修もないまま特別工務隊の一員になった。
ここはオクスタン高の地下にある、特別工務隊の支社の一室。
私といっしょにいるのは支社長であるゲンヨさんと、先輩かつ イカレタヤカタの同居人でもあるコウレ君、ピラーセル君、ロル君。
「はい。これでチェックメイドね」
「お前。わりと強いなおい。」
私はロル君とボードゲームに興じている。
「大会とかがない文化系の部活みたいな感じで暇なんですけど、なにか仕事とか研修とかないんですか?」
「確かに仕事ないですねえ。お姉さん。オクスタン屋上から飛び降りてくださいよ」
コウレ君は執事としても工務隊員としても基本的に真面目で有能だけど、時折こういうブラックなことをあっさり言う。
「私死ぬわよ。そもそもそんな事件どこに淀ができる仕事があるのよ!」
「死体の処理とか検死とかですね」
「私の命は淀の死体の処理や検死の経験以下なの?」
「以下ではないです。淀さんの死体の処理や検死の経験未満です」
「言い直さなくていい。平穏な日常を享受しようよ、コウレ君!」
「僕だって享受したいですよ。どこかの誰かが溜め込んだ大量の工務隊の仕事が残ってなければですが……」
笑いながらも目は確実に冷え切っているコウレの手元には大量の報告書など書類の山。犯人の事情聴取なども押し付けられているらしい。
「……」
押しつけた張本人は黙る。
「気にするな。こいつらにとってはごく普通の挨拶の部類だ。……多分」
ロル君が呆れたように言う。
「まあ死体の処理や検死なら何度も手伝ったことはあるんだけど」
「……まあお前は母星ではメイドで、主人は探偵卿だったっけ」
「週に一回ぐらいは死体見た経験あるから。バラバラのやつか、原型ないやつとかも」
「……へえ」
なぜかすごいドン引きした顔になるロル君。
このままこのゲームの勝負がついたらお茶でも飲もうかと思っていたその矢先。ピラーセル君が端末を確認しながら立ち上がった。
「特別工務隊に出動要請。6学区駅のトンキン駅で巨大なロボットが暴れてるらしい」
巨大なロボットっていつの時代ですかそれ、とか言ってる場合ではなさそうだ。
ピラーセル君は飛行で先行、飛べるけどまだ慣れてない私とロル君、コウレ君は巨大な工務隊向けの装甲車に乗る。ロボットアニメによくでてくるそういう系の特殊車両。
「高校生でも操縦できるんだ」
「まあほぼ自動ですからね」
スピードも速く、空間自体も広い。わりと工務隊は金持ちな組織なのかもしれない。
「現場が近いみたいだぞ」
現場は駅ではない。既に空を飛んで先行したピラーセル君が、駅近くの裏山に誘導したらしい。
どうやら自動操縦のロボットなので、ちょっと指示を加えれば人がいない場所への誘導自体は簡単なようだ。
私達は現場にたどり着き、一応それぞれ武器を持ち合流する。私とピラーセルが上空から、ロル君とコウレ君が地上にいて四方からロボットを囲む。
ロボットというより、怪物体といった感じだ。一斉攻撃を開始する。
「マスターブラスター!」
周囲に民家があるので、ロル君のグランクロスは威力が強過ぎて使えない。
ブラスターで怯んだ敵を、コウレ君の温度変化で弱らせる。
そしてピラーセル君の剣術を活かした攻撃。
「ストテレシスソード」
ピラーセル君の剣術はまさに漫画やアニメに出てくる超一流の武芸者のそれである。目にも止まらぬ速さで敵の体に蜂の巣状の切れ目が入る。
私はアビリスターの超能力と剣術については素人だが、彼のそれは能力によるものではなく、本人の卓越した身体能力と剣術に対する技法があるからこそなせる技なのはわかる。怪物体はそれにより爆発しながら粉々になる。
どうやら私の出番はなさそうだ――
と思ってた矢先に、なんと怪物体はバラバラ状態から復活し、さらに巨大化した。




