12人目のステップ9 ―― サイクロンスプリーム
間違いなく自分の人生最大の転機と言える新天地に踏み入れたのは行成と付き合うようになってから数週間後だった。
宇宙でもトップクラスの科学文明を持つ星・アビリスターへの留学資格である超能力の素質チェックが行われたのである。
アビリスターは超能力者の星である。その超能力は体や頭に電極を打ち込み超能力を開発するものらしい。
素質チェックは文字通りその素質をチェックするためのもの。
私はもちろん「どうせ素質ないだろう」と思ってたし能力者なんて興味なかった。異世界転生系のラノベとかそういう趣味もなかった。
だが、結果は予想外だった。私の能力者としての素質は「非常に優秀」と判定され、留学許可が下りたのである。
許可が下りた途端、なぜか無性に能力者になりたいという気持ちが強くなり、私は留学を希望した。
当然、行成は猛反対した。
「はあ、留学?お前そういうのに興味ないはずだろ?」
「実際才能あると言われると誰だって乗ってみたくなるわよ。それにメイドなら代わりの人も紹介したでしょ?そもそもやめてと言ったのを行成でしょ?」
「バーカ。代わりなんてどうでもいいわ。」
「それにアビリスターは超能力だけの街じゃないわ。教育などに関しても宇宙最先端。だからこそ短期でもいいから留学して私の武道を進化させたいのよ」
「……たまに連絡ぐらいはくれよな…まあくれなければこっちが押しかけてくるからな」
行成は悔しそうな顔を見せながらも、最後には苦笑しながら首を縦に振ってくれた。
その笑顔の裏に、寂しさと不安が少しだけ見えた気がした。
私の両親についても
「…あそこってめちゃくちゃヤバい街じゃないのか?」
「ここだって充分ヤバい街じゃん。アビリスターの犯罪者のほうが人道的な一面だってあるわよ。例えばこの街の強盗殺人犯は自分の顔を見た相手しか殺さないけど、アビリスターの強盗殺人犯はその家の家族全員をいっしょにしてあげるって評判よ」
私は反対意見をなにかに誘われるままに完全に押し切る。自分の運命に飛び乗ったとでもいうのが正解なのかもしれない。
私がアビリスターにいくという話は意外にも私のクラスメイトにも注目された。「全国の小学生〜高校生から一学校数人程度を留学」を見込んでるという話はよく聞くがよりによってそれが淀だとは思わなかったなんて反応。なぜか私の転校をものすごく残念がってる男子の顔も印象に残ってる。人によってはなぜか私を呼び出そうしてるけど行成が来るとすぐに撤回してしまう。変なの。そして、意味深な会話も耳にした。
「どうせ行成の嫁じゃん」
「女子はこれからチャンスじゃん?」
「ムリムリ。あいつ浅利以外にはマジで興味0じゃん」
地球からアビリスターへはワープを繰り返しても12時間ほどかかる。
しかしフェリー形状の宇宙船なので三等個室でも意外と快適である。景色自体はワープを繰り返すのでほとんど楽しめないけど食堂やゲームセンター、温泉などは充実してるのはそこそこ非日常を楽しめた。現地で即開発を受けたがその結果
なんとアビリスター全土でもたった12人しかいない、最上位能力者。
その事実に、脳が一瞬フリーズした。
能力の正式名はサイクロンスプリームで空気などをコントロールできる。自分自身を風にする形で飛行も可能らしい。能力名の由来は必殺技の名称らしい。しかし体への負荷も強いのでここ一番の時にしか使わないようにと言われた。
ステップ9とはアビリスターの頂点能力者。
地球レベルの星なら並の軍隊と戦えて真面目に暴れれば並の大企業を潰せる被害額を出せるほどの力。
それに自分がなったと言われてもまったく実感が沸かない。
素養チェックで優秀な時点で高ステップなのは期待してた。
それでもこのアビリスターでもまだ11人しかいないステップ9の一人だなんて恐らく宝くじを複数同時高額当選したとで言われる方がまだマシだろうというレベル。
当然何度か能力についての実演もやらされた。研究所内とはいえ生まれて初めて自力で?空を飛んだ。
最初は怖かったけど実際やってみるとタ◯コプターをもらった某国民的漫画の住人ほどではないにしろ案外すぐに慣れた。
専門施設内でロボットアニメとかによく出てくるタイプの専用の怪物体と戦わせられもした。
「いっけえー! これでとどめよ!!」
武道有段者である私は、能力を飛行や加速に使い、飛び蹴りやパンチを織り交ぜて戦った。研究者曰く「相当な強さ」とのこと。
ようやく自分の脳は自分自身が地球の人智をはるかに超越した力を手に入れたという現実を受け入れてくれた。
私がこれから通う学校はオクスタン高に決まったようだ。
聞いたことはある。アビリスターでも特殊な能力者、あるいは一芸の天才などが通うエリート校。当然私は特待生扱いとのこと。どういう学園生活になるのかな。
もともと素質チェックをした時点で確定だったのか制服などの支給などは学校先を聞いてから即日だった。
その後研究所の関係者からステップ9で案内役だという少年を紹介された。白髪で青目の超イケメンの少年だった。




