両方他人の恋愛には敏感だけど自分自身は鈍感です
僕の名前はフリミド・ピラーセル。
この超能力者の星、アビリスターの最強格の能力者・ステップ9の一人。
今日はオクスタン高の休日。棲家であるイカレタヤカタでのんびりした午後を楽しんでいる。
「アイデアがでない!」
机に向かいながら大声で叫ぶのはこのヤカタの主人であり、13歳にして高校生かつプロの漫画家でもあり、大物魔法師の孫娘でもあるセントカクラアギ女史。
締め切り間近にアイデアに悩むのはもはや定例である。
「デートシーンが全然書けない!どういうスポットでなにやるかとか全然わからん」
「現役JKがいうセリフですか?」
いつも通り呆れながら苦言をぶつける執事のコウレ。
「おいピラーセル。お前が誰かとデート……もどきにいってくれないか?参考にしたい。」
相変わらずの無茶振り女王様。モドキをつけるだけ要求としてはまともなのかな。
まあそれぐらいならなんとかできるが、相手いるのかな?一人いたわ。
僕とアギお嬢はこの館に来て自分と同じこの超能力者の星のステップ9となって間もない地球人美少女の顔を見る。
「なあ。淀。ピラーセルとデートしてくれないか?少なくともお前なら私よりは一般的な女子高生の恋愛にも詳しいだろ?」
「えっデートって…」
お嬢の無茶ぶりに慣れてないので当然戸惑う。
「まあデートスポットの写真とか体験記とかなら…」
まあ淀だってここで自分があからさまに断ったらコウレにもっと無茶ぶりを振るうのは予想がつくのか、案外あっさり応じる。
「淀さんがいいならピラーセルさんではなく僕とデートすればいいのでは」
「それはダメだ! ダメに決まっておるだろう!」
コウレすらドン引きするほど必死に否定するアギお嬢様。
まあ理由はわかってるけど。あれだ。恐らく本人に問い詰めても「別に私がコウレが万能美少女のヨドとデートするのが嫌とかそういうわけあるか!」とか叫んで屋敷破壊するのがオチだろう。コウレもとくにアギの気持ちに夢にも気づいてはいないが、まあこの手の駄々をこねるアギお嬢様に無理を押しつけるのは無理があるのは宇宙の誰よりも知ってる。
「ヨドがいいなら僕とデートごっこ?をしようかな。もちろん僕にもそんな趣味ないけど。」
なぜか僕にとっても淀と無性にデートもどきをしてみたいという気持ちが高ぶった。
もともとイカれた家主によるイカれた思いつきのデートもどきなので、ルートは適当にネットでググったコースの外回りである。
……ということが許されるはずもなく、ある程度ルートは指定されていた。
まず図書館。
「アビリスター犯罪史は約200巻、同じ厚さでも100巻しかない私の町とはやっぱりレベルが違うわね」
「……町の話なんだよね」
いやアビリスターは星だが君は町単位だ。同じ人口辺りの犯罪数なら間違いなくはるかに上なんだろう。
淀の故郷は一体どういう町なんだろうと思ったけど聞かないことにする。闇が深そうだ。
次がゲームセンター。
「漫画の参考のためのゲームって何すればいいのかな?」
「とりあえず適当にクレーンとか」
しかし淀はすごい景品ゲット率。
僕はアビリスターに来る前には景品目当てでよくやった。しかし生活がかけてやったことはないであろう淀がここまで獲得できるのはすごい。
改めて彼女は何やらせても器用な女性だと思う。
次が公園。
「きゃあひったくりよ!」
被害者はこういう場面にありがちな人の良さそうなおばさんではなく、ヤンキー女子校生。
僕は一応工務隊の隊員だしこういうときに手を貸すぐらいの義侠心が持ってるつもりだ。
しかしそんな僕より早く淀は動いていた。犯人に能力も使わずに追いつき、ドロップキックを喰らわせる。
とりあえず僕がアビリポリスに連絡した。
デートどころかかなり時間を食ってしまったが、その後ようやくベンチでのランチにありつけた。「普通のコンビニで買ったものでもやっぱりこういうところで食べるのっておいしい」
今日の行程で唯一印象に残ったのは、わりと生き生きとしている淀だ。
僕にとっても正直「仕事」と思えなかったのは人生初めてだ。正直僕は自分で言うのもなんだが顔だけはいい方なのでステップ9になる前はママ活とかもやってたし、こういうデートやなんなら体を重ねたことも少なくない。
特別工務隊の仕事上、潜入捜査のために女性とデートすることなんてしょっちゅうだ。
性欲は人並みにはありそれを発散にはなるけど、あくまでも仕事上の副産物程度だ。
「そういえば行成……私の母星のメイドとしての元主人兼一応恋人から今どうしてんのって聞かれたんだけどー。」
「……君は自分の恋人や親友、親なんかが同じ人間の命を20億個奪えるとしたらどう思うんだ?」
聡明な彼女らしくこの一言だけで唾を飲み込む。彼女もこの答えを予想できたのだろう。
そうでないなら誠実な彼女が地球で幼い頃から付き合いである相手とのやり取りをわざわざ僕に相談するのもあれな話だ。
まあ僕もこれ以上変なこといってせっかくの非日常を揺さぶりたくはない。
「にしても告白は向こうからだったよね。やっぱり淀は母星でもモテる方なんだね」
「そんなことないよ。告白された経験も行成だけだし。」
多分他の男性からの告白は例の彼氏に阻止されてたのだろうな彼女は。
僕たちは後半のデートプランも終わらせて、その行手を阻むものもなく帰路につけそうだ。
このセリフはつけないことを匂わせすぎてるとかはやめてよね!




