元犯罪組織科学者の転職先は自分のメイドだった件
「悪いが告白は受け入れられません。すみません。」
「まあそう言われること覚悟だったよ。行成君は昔から淀さん以外、マジで眼中にないからね……」
俺の名前は一大寺行成。見ての通り、とある美人の先輩からの告白を振った、男子高生だ。
「告白を振るのも手慣れた作業のようね。」
物陰から一部始終を見ていた江初と未早矢。
「超人気アイドルにでも告白されようが、俺は絶対に応じねーよ。」
「実際本当に告白されそうなのが行成の怖いところね…」
未早矢の口調は俺に対しても最初から呼び捨てかつタメ語である。
メイドの仕事場以外では長らく犯罪組織で技術・諜報を担当したので、武闘派の関係者に舐められないようにするための名残か、男性的な口調になることも多い。
「まあ幼少の頃から貴方と淀は主人とメイドというより夫婦みたいなものだったしね。惜しむらくは、正式に恋人同士になった数週間後に淀が遠い星に旅立っちゃったということだけど。」
俺はその事実を改めて痛感し、深い溜息をついた。
「行成は本当に出会った時から1センチもキャラブレないな」
「お前もな。俺達と出会ったときから1ミリもキャラブレないよなあ」
淀のアビリスター留学が決定してから数日後、俺と淀は電車でとある遊園地デートに向かっていた。
「電車内での刺殺は他のお客様にとって迷惑なだけでなく電車が遅れる原因にもなります。電車内での刺殺はご遠慮いただきますようお願い申し上げます。」
ちなみに淀の後任メイドはまだ探している最中だ。
「ちょっと行成。常時恋人つなぎは流石にやめようよ…」
「そうでもしないと数分おきにナンパされるだろうがお前は」
……のだが電車はなんととある引き込み線に入る。
どうやら俺達はとあるテロ組織の人質になったらしい。
しかし俺は紆余曲折ありつつも事態の突破口を見つけていた。
その鍵となる女に問いかける。
「お前犯人側の仲間だろ」
「……もしかしてILDAYの探偵卿として有名な一大寺行成さんかしら? せっかく駆け出しアイドルさん?とのデート中だったのを邪魔して悪かったわね。」
「なんで私が駆け出しのアイドルなんですか? ただのJKです。行成と付き合ってるのは気まぐれというかなんというか」
その後、俺達は他の犯人達と秘密裏に打ち解けた。
「しかしわりと親しげに話してくれるな。私は犯罪組織の一員で大勢の人の死を見てる血なまぐさい女なのに?」
「本当に悲惨な境遇ですね。私なんて幼少の頃、一大寺家の娘と間違われて誘拐され別の人質が目の前で惨殺されたり、小中学校の頃何度も無差別殺人鬼が学校に乱入してクラスメイトの10人に1人ぐらいが目の前で命を奪われたり、小中学校の修学旅行ではそれぞれクラスメイト数人が行方不明になった後、バラバラに惨殺された事件の大一発見者になった程度です」
あれ?なぜか未早矢の顔が青ざめる。
その後、司法取引というやつで事態は収束した。
未早矢は犯罪組織の内部情報と発明品の技術力を提供したことで、罪を不問にされ、ILDAYへの加入が認められた。
後日、事件解決への協力のお礼のために未早矢の住むマンションを訪れた。
「犯罪組織の元メンバーにしてはまともな部屋だな。清掃も行き届いてるし」
まあ淀には負けるけどな!
「こちらのランチをどうぞ」
「もしかしてこの料理、未早矢さんが作ったの?」
「そうだけど。私は組織では料理係でもあったの。まあ貴方達は一応恩人だし。」
「とっても美味しいです。」
実際、淀の言う通りかなり美味しかった。
淀には負けるけどな!
「それはどうもありがとう。まあこれから私は通う高校や職場も決めないといけないし、あんまり会えるのは期待しないでね」
その言葉を聞いた瞬間、淀はとっさに口にした。
「だったら行成のメイドになってくれない?」「えっ?」
淀は興奮気味に続けた。
「私は今度アビリスターに留学する予定で、ちょうど後任を探してたのよ。未早矢さんなら能力もあるし、探偵卿として活動するなら尚更行成のメイドになった方が捜査面でも好都合でしょ?」
未早矢は少し驚いた顔をした後、目を細めて俺を見つめた。
「……随分と強引ね。普通の男の子なら、元犯罪組織の女をメイドにしようなんて思わないわよ?」淀が慌ててフォローする。
「未早矢さんは危険な人じゃないってわかってるし、能力もあるからむしろ頼もしいと思うの! どうかな?」
未早矢は小さく笑った。
「私はいいわよ。行成君と彼のご両親がいいというのであれば」
「彼のご両親様には私が説得するわ。高校も未早矢さんなら私達と同じ学校に編入できるでしょ?」
「…念のため言っておくが、住処は俺の家でもいいぞ。俺は淀以外には興味ないからな」
「それ男がいっても説得力あるセリフかしら?って聞く必要無さそうね。」
「俺は淀以外は興味ないんだ」
自分でも呆れるぐらいストレートだった。
淀は少しドン引きしたような顔になりつつも、少しだけ笑ってくれたのが嬉しかった。
「まあ決まりのようですね。よろしくお願いします、行成様。」
新しく仕える相手に対して敬語になる未早矢。
「ねえ、行成に対しては主従関係を強調する必要がある場以外ではタメ語でもいいかなって。その方がいろいろとお互い気楽かなって」
「えっ?」
「探偵卿の同僚って立場だし、むしろ未早矢さんの方が年上でしょ?」
まあ俺にとってはどうでもいいことだし承諾した。
「ってなことがあったなあ」
「一番ブレないのはこの町の治安の悪さだと思うけど」




