三馬鹿娘による笑える三馬鹿寸劇場
アギちゃんに連れられてきたのは、オクスタンの古い校舎だった。……確かここは老朽化で使用どころか立ち入りも禁止だったよね?
あれ? 私、何かフラグを立ててしまった気がする。
「てんてけってーん。これは絶対に割れないガラスだぞ」
「それで一体何をするの?」
「決まっておろう。ここにいるみんなで家具とか投げるのだ! ユアライブでも派手なアクション動画はヒット動画の定番であろう」
「みんなって……アギちゃん一人で良くない?」
「この私に視聴者にスリルを味わせるほど重い物を投げられるはずがないだろ!」
「……威張ってるってことですか?」
アギちゃんが堂々と窓枠に寄りかかった瞬間——ガタンと不吉な音がした。
窓枠が外れ、アギちゃんがそのまま転落した。コウレ君ですら間に合わない。
私は能力で急降下しながら救急車に連絡した。
数十分後、私たちはアギちゃんの搬送先の病院にいた。
「手でなくてよかったですね。漫画の締め切りが遅れなくて」「
それが全治一週間の重傷を負って入院した主人に対して言うセリフか!」
「それが地上六階の建物から転落したくせに、足の骨折程度で済んだ人の態度ですか?」
確かに普通なら即死レベルだ。
「やはりアギはアホやな。この私の卓越した笑いのセンスをお見せするわ」
自信満々なエヌミちゃんに連れられて行った先は、オクスタン校内の散歩道にあったジェットエンジン付きゴーカートだった。
「いくら有名オチゴ家のお前でも、ゴーカート乗り回すだけで再生数取れるんか?」
「ちゃうちゃう。これはタダのゴーカートではないわ。ジェットエンジン付きや。オクスタン校の広い校内を周遊するためのゴーカートやけど、別にジェットエンジンをつけてはいけないってルールはないやろ?」
コウレ君とロル君が、三流登山家が未踏峰に軽装で挑むような目で見つめる中、エヌミちゃんを乗せたゴーカートは暴走を開始した。
「うわ〜なんやこれ〜!」
「それはまあそうなるでしょうねえ」
「止めてくれや〜!」
叫ぶ間もなく、ゴーカートは最高速度で給食室の壁に激突した。
壁もゴーカートも、調理中だった料理もめちゃくちゃである。
給食室の責任者らしいおばあちゃんが、静かに言った。
「まあ。なんて情けない生徒さんなんでしょう。昼ご飯がめちゃくちゃじゃない。また作り直さないといけないわ」
……それ以外に言うことないのかな?
「案外軽傷で済んでよかったじゃねえか。全治半月だとよ。」
結局、アギちゃんの隣の病室にエヌミちゃんも入院することになった。
「相変わらずしょうがないなあ。アギちゃんもエヌミちゃんも。これで優勝も決まりだね」
勝ち誇ったルリネちゃん。
「ルリネちゃんのネタはどんなやつ?」
「よろしい。お見せするのでオクスタンの空き地に来なさい!」
連れてこられた先には、花火のようなものが大量に設置されていた。
「確かに花火ならルリネさんの能力を生かしつつ再生数も取れそうだけど……こんな大量の爆発、大丈夫なんですか?」
「大丈夫。タイマーを仕掛けて上の校舎から撮影するのんだよ。上から見れば綺麗だし」
しかし私は、いかにも爆発しそうな不穏な音を聞いた。コウレ君とロル君も気づいたらしい。
「っうわー!」
爆発に巻き込まれるルリネちゃん……。
当然、私たちも助けるどころか逃げるのが精一杯だった。ルリネちゃんは全治一ヶ月とのこと。
正直あれだけの爆発でそれで済むのはもはやお約束である。
「なんでタイマーが誤作動しちゃったの?」
コウレ君が、ルリネちゃんの私物に目を留めた。「……コウレ君」
「ああ、これルリネさんの母星の懐中時計ですよね?」
いかにも実用性が低そうなデザインの時計。どうやらルリネちゃんの両親がプレゼントしたものらしい。
「…これ、アビリスターの時限と全然違うなおい。もしかして時差に合わせて調整してないのか」
「そんなわけないよ。私が設定したときは一致してたのに!」
「……恐らくもともとかなり壊れていて、ルリネちゃんが爆弾を設定したときだけたまたま時刻が一致してたんじゃない?」
私の推測が当たったようだ。周囲は一斉に呆れた目でルリネちゃんを見た。
「……アホさの次元も違いますね」
「私は全治一週間なのに対し、エヌミは全治半月、ルリネは全治一ヶ月。まったくだらしない奴らだな」
「全員、本来なら即死で当然のレベルだけどな……」
五十歩百歩という言葉がここまで似合う光景も珍しい。
「これを一本の動画にまとめて投稿しました。ほら、なかなかの再生数です」
今まで撮影役だったコウレ君が編集して投稿したらしい。
タイトルは『三馬鹿娘による笑える三馬鹿寸劇場』。
「わかったでしょう。あなた方は三人並列にバカなんですよ。三人お揃いで最低最悪のバカなんです」
今まで主人とその友人に対して可能な限り配慮していたコウレ君も、さすがに我慢の限界だったらしい。
敬語のまま端正なジト目で放つ嫌味は、いつも以上に鋭かった。
「なんだとー!」
当然、コウレ君は病人三人組に袋叩きに遭った。
「まあとりあえず結論は出たな」
「……うん」




