カミュ、Bブロック本選本選1回戦を観戦する。 2
舞台袖で色々話しているうちにククリコンとシーサーさんの試合が始まった。
ククリコンが二刀流で構え、シーサーさんが両手で槍を構える。
ククリコンが間合いに入るぞ、とフェイントをかけるのに対し、シーサーさんは小刻みに槍を動かし懐に入られない様にする。
トリッパーが俺に向かい
「隊長、ククリコンは隊長の弟子ですよね。でも隊長は一刀流、ククリコンは二刀流で全然違いますが。」
と言ったので、
「我が鹿島新當流は一刀流が主流であるが二刀流もかつてあった。我が師は両方使われたし兄弟子は
二刀流だった。」
と言った。ケルググン殿が
「ではカミュ殿が、ククリコンは二刀流が合うということで進めたのか。」
と聞いてきたので
「いえ、剣を2本与えたらククリコンが両方使うようになったんです。二刀流は奴自身が自分に合うと思って編み出したのです。面白いと思いほっといたら、だんだん兄弟子と同じ様な構えから攻撃、防御をするようになり、かつての鹿島新當流の二刀流を再現したのですよ。」
と、こちらを興味深そうに見つめるナーサスさんに言った。
「そうか、自分で知らずに再現したのか。カミュが言うようにククリコンは天才だな。」
とナーサスさんは言った。
試合はなかなか打ち合いにならず、フェイントと誘いあいのにらみ合いが続いた。
ナーサスさんが
「思い切っていけばいいのにククリコンは何やってんだ。」
というとケルググン殿は
「武闘会初出場の最初の試合だ。慣れる為にじっくりいっているだけだ。」
といい、トリッパーも
「そろそろ行きますよ。ケルググン様には悪いですが、実力差ははっきりしている。」
と俺を見て言った。
ククリコンが右の剣でフェイントをかけ、それに対しシーサーさんは槍で払おうとしたその時、右の剣で槍を下から突き上げククリコンがシーサーさんの懐に入り喉元に寸止め。勝負あった。
観客席の人化した竜やアイナ村応援団から歓声が上がっている。
勝負タイムは10分53秒だった。
試合後のインタビューでククリコンは
「シーサーさんはなかなか懐に潜らせてくれなかったね。緊張したね。最後決まってよかったね。アイナ村から応援団が来てくれて応援してくれたね。勝ちを見せる事が出来てよかったね。」
と言い、シーサーさんは
「アイナ村で何度か立ち合いをして、どんどん強くなっているのは感じていたが・・完敗です。」
と言った。
7.マナックさん(オーク隊隊長)とマンテナさん(魔王軍第2隊所属)の試合
部隊から降りてくるククリコンにマンテナさんが
「続くぜククリコン」
といいハイタッチをし舞台上に上がった。マナックさんはすでに舞台に上がっている。デカい。
マンテナさんはマナックさんに礼をし、マナックさんは手を差し出し握手をした。
実況解説者は、前回ベスト4のマナックさんが圧倒的パワーで有利。マンテナさんは下士官で予選からの勝ち上がり勢いがあるが相手が悪いと言っていた。斧と剣どちらを今日は使うか。
魔王軍の下士官とおぼしき連中からマンテナコールが起っている。
マンテナさんは今日は剣を持っていた。
俺はナーサスさんに
「ナーサスさん、マンテナさんは斧と剣を使うと言ってましたよね。今日は剣だけですね。以前お聞きしたときは剣と斧の二刀流かと思ったのですが。変わった使い方をするから見てみたいと思っていたのですがね。」
と言うと
「カミュ、そんな変わった二刀流があるわけないだろう。マンテナは斧との立ち合いでは力負けする事が多いので、ドワーフ領に来て俺に教えを乞うたのだ。俺は対斧に関して言えば実際自分も使ってみた方がよいということで斧を教えたにすぎん。斧もそれなりに上手くなったが剣のほうが実力は上さ。」
と言った。
審判の試合開始という合図があった。
いきなりマナックさんが全力で斧を振ってきた。
「なんちゅうパワーだ。スゲーよ。」
とトリッパーが言った。ケルググン殿は
「確かにマナックのパワーは凄い。パワーはな。」
と言い、ナーサスさんを見た。
「パワーは俺と互角近いがマナックはその他がな・・・。」
とナーサスさんが苦笑いをしている。
斧を振り回すマナックさんに対し、逃げ回るマンテナさん。しばらくこの状態が続き場内の観客はこの鬼ごっこみたいな試合状況に笑いが起き、沸いている。
全てを全力でフルスイングのマナックさんは息が切れてきたようだがマンテナさんの頭上にフルスイング、それを剣で受けたマンテナさんはマナックさんの斧を受けてすかした。マナックさんのバランスが崩れた所を胴に寸止め。勝負あった。
魔族の下士官から大歓声があがり、地鳴りがした。地面をタイミング合わせてなんども踏みしめているらしい。
勝負タイムは8分48秒だった。
試合後のインタビューで、マンテナさんは
「マナック隊長の斧はとてつもなく重かった。いつ潰されてもおかしくなかったが上手く避ける事ができた。」
と言い、マナックさんは
「あれだけ避けられりゃ勝てねえよ。」
と言った。
8.ラオン(魔族軍第1隊隊長)とトラジャさん(オーク隊副隊長)の試合。
トラジャさんは舞台に上がる前に、ククリコンとマンテナさんに「俺も続くぜ」といった。
そういえばこの3人は大会前意気投合して飲みに行ってたな、と思った。
すでにラオンは舞台に上がっている。
実況解説者は、3連覇中のラオンが圧倒的に有利、トラジャさんはどこまで食い下がることができるかと言ったものだった。
トリッパーは
「予想を外しまくってる実況だけどこの試合はラオン様だろうな。」
と言った。ケルググン殿やナーサスさんはうなずいている。
審判の試合開始という合図があった。
いきなりその場でトラジャさんは斧を振った。奇襲だ。ラオンはギリギリで避けることが出来たが額から血を流している。かすった様だ。
場内からどよめきが起こり、ラオンの顔色が変わった。
ラオンはいきなり一方的に攻め込んだ。キレたのか。突く、打撃、払い、連打連打連打!
トラジャさんはなんとか受けていたが受けきれなくなり頭上寸止めで勝負あった。
場内の魔王軍からラオンコールが沸き起こる。
勝負タイムは2分30秒だった。
試合後のインタビューで、ラオンは
「トラジャの最初の一撃はビックリした。驚いた。あれだけ気迫あふれる思いの籠った一撃には敬服せざるを得ない。今後の試合は奴のためにも頑張り優勝を目指す。」
トラジャさんは
「悔しいが実力差は歴然だったので、最初の一撃にかけたが避けられてしまった。悔しい。」
といった。場内大ラオンコールが続いている。
Bブロックの1回戦が終わった。
俺はアイナ村の方々と宿に帰った。
これで本選準々決勝の組み合わせは
Aブロック
1.ナーサス(ドワーフ)ドワーフ軍元隊長 予選会勝ち抜き
カミュ(人間)アイナ村所属 シード 招待選手
2.ケルググン(魔族)魔王軍宰相 予選会勝ち抜き 過去優勝5回(連続)大会無敗
トリッパー(人間)旧セト領所属 元セト軍義勇軍隊長 予選会勝ち抜き
Bブロック
3.シンパ(ゴブリン)ゴブリン隊隊長 予選会勝ち抜き
ククリコン(モグラ)アイナ村所属 シード 招待選手
4.マンテナ(魔族)魔王軍第2隊所属 予選会勝ち抜き
ラオン(魔族)魔族軍第1隊隊長 予選会勝ち抜き 前回大会優勝 3連覇中
となった。




