カミュ、もう一人の魔族の英雄と知り合う。 1
「モグラの兄ちゃん、酔ってて素振りしても意味ないぞ。」
と声がかかった。
声のかかった方を向くと、1m足らずのククリコンよりやや大きいくらいの筋骨隆々のドワーフだった。
ドワーフは、
「実戦用に酔った時を想定して素振りをしているのかもしれんが、やめとけ。」
「兄ちゃんなかなか出来るだろう。酔っているとは言えその構えと振り、やるな。」
「モグラ?ひょっとして兄ちゃんが最近隊長どもの間で評判のククリコンか。今度武闘会に出場するんだよな。」
ククリコンは
「はい、おいらは出場するんだね。」
と答えると
「俺も出場するんだよ。俺はドワーフ軍元隊長のナーサスだ。あんたがククリコンという事は・・・・あんたがカミュか? 」
と俺の方を向いて聞いてきた。俺は
「はい。私がカミュです。」
と答えると、ナーサスさんは俺の背中をバシバシ叩きながら、
「そうかそうか。会いたかったぜ。せっかくあったんだ。これから軽く飲もう。」
といい、おれとククリコンを自分の部屋に案内してくれた。宿の給仕を呼び
「酒3本、軽めのやつと適当なつまみ、グラスを3つ持ってきてくれ。」
と注文した。そして
「カミュ殿、俺はナーサスと言う。あんたのことはケルググンから聞いて会いたい、立ち合いたいとずっと思っていた。」
と言って来た。俺は
「ナーサスさん。あなたのことはラオンから聞いております。もう一人の魔王軍の英雄。是非一度立ち会ってご教授頂きたいと思っていました。」
ククリコンも
「おいらはラオンさんに勝つことが目標ね。」
と言った。ナーサスは
「ククリコン、素振りを見る限りお前今ならラオンの若造といい勝負するだろう。まだ勝ててないとは信じられんな。」
と酒をグラスに注ぎながら言った。
「そうかね。ナーサスさんに言ってもらえると嬉しいね。今大会でラオンさんに勝つね。」
とグラスを受け取りながら嬉しそうに言った。
「カミュ殿、俺は現役時代、ケルググンの奴にはどうしても勝てなかった。実践の戦歴でも武闘会でもな。俺にとって奴は最良の親友でもあり目標だった。奴とは武闘会の決勝で5回あたりいずれも敗れた。」
「奴が5連覇をし、武闘会から引退した。俺を含む他の連中の剣技を見て失望したからかもしれん。」
「奴が武闘会の出場を止めた時、俺も武闘会から引退した。奴以外俺の相手になるやつはいないからな。強いて言えば魔王様だが、魔王様は剣よりも魔法を主として戦われる故、武闘会には出場しないからな。残りのメンバーの中で強いのがラオンの若造では出る気もしなかった。」
グラスの酒を一気に煽り
「そんな時、ケルググンがカミュ殿と剣で立ち合い負けたと聞いた。信じられない俺はドワーフ領から魔王城に行き奴を捕まえ聞いたら、奴は本当だと言った。」
ククリコンは
「ナーサスさん、おいらはお二人の戦い見ていたね。結末はお互いの利き手を切断する相打ちだったね。」
とナーサスを見て言った。
ナーサスは
「いや、奴が言うには、奴の初撃をカミュ殿にかわされた時にスキが出来た。その時にカミュ殿に切られていてもおかしくなかったがカミュ殿は敢えて奴との立ち合いを続ける為見逃したと言ってたぞ。」
と俺を見て言うので
「ナーサスさん。あれは確かにスキでしたが、ケルググン殿の剣の威力と、初撃後のこちらの反撃を見越したフェイントで、俺がケルググン殿を切る余裕は無かったです。」
「ナーサスさん、ケルググン殿が何と仰っているか知りませんが、あの立ち合いは俺の負けだと思っています。最初にお互い連撃をして離れるその前のケルググン殿の最後の一撃でフェイントに引っ掛かりスキが出来ました。あの時にこちらが切られていてもおかしくなかった。しかしケルググン殿はあえて見逃した。多分ご自分の剣の弟子でもある隊長たちに立ち合いで勝った俺ともう少し立ち合いを続けたかったからだと思います。」
というとナーサスは愉快そうに大笑いをし
「そうかそうか。一流同士の深読みしすぎで引き分けたか。」
といい、
「カミュ殿、この武闘会に出る目的はケルググンと戦う為であろう。俺もだ。だがその前にもっと楽しみが出来た。」
と俺を愉快そうに見ながら、空になった自分のグラスに酒を注ぎ
「組み合わせを見るとケルググンと当たる前に卿と当たる。俺は卿を倒し、奴に勝ち。」
ククリコンを見ながら
「そしてククリコン、卿に勝ち初優勝を飾る。」
笑いながら言った。
「俺もです。ナーサスさん、あなたの剣のタイプはラオンに聞く所今までやりあった連中のどのタイプとも違う。あなたと立ち合う事で剣の腕をさらに磨き、そして勝ちたいと思います。」
そういってナーサスのグラスに酒を注いだ。




