カミュ、魔王王都を目指す。
俺とククリコンは魔王領に入った。
魔王領は、街道が軍路を兼ねており広く取られている。
街道脇には木が植えられ、主要道路は街道並みに広く、一般道はそれよりやや狭く街道と交差している。
このような道路配置は旧セト領にも指示されて、旧セト領も道路の拡張が急がれていた。
街道脇には商家、民家が立ち並びその後ろには倉庫、畑が広がっている。
ある程度街道を進むと、街道と交差するひときわ大きな道があり、東:ドワーフ領、西:ゴブリン領と書いてあった。
以前魔族のラオンに聞いたのだが、ドワーフとゴブリン、オークは同じ種族で固まって住むのを好むのでそうしているとのことで、魔王様の支配下にあることには変わりはないらしい。ドワーフは鉱山師、金属加工職が多くその仕事から鉱山に住むことを希望し、ゴブリンは農夫、狩人が多く、広大な農地が必要だからそうしているらしい。
オークはサイズが大きいため、町の規格と合わないのでまとめて住んでいるとのことだ。
途中、商店に入ってみた。
商人はウサギ型の魔族だった。人間の俺を見ても態度は変わらず、
「いらっしゃいませ」
と言って来た。農業のコーナーがあり、種を売っていたので、主人の説明を聞きながら果物系の種を購入した。購入したのは、魔王領では日照、気温が足りなく育ちにくいと言われているものを買った。
アイナ村は魔王領より大陸南に位置し温暖なのでこれが育てば魔王領に高く売れるかもと考えたからだ。
主人はハルビスと名乗った。
ハルビスに、俺は人間だけどいいのか、と聞くと
「それ以前にも人間の出入りがあったが旧セト領が魔王領になってから、人間の出入りが多くなった。人間は几帳面で商売に関しては事前の取り決めはきっちり守ってくれるし、商売相手としては信用できるからオッケーだ。それに今は旧セト領の開発でうちもそれなりにもうけさせてもらっているからね。」
といった。
「お客様達は魔王領王都までですか。商売で? 」
と聞いてきたので、情報を仕入れる意味もあり、正直に
「いや、それもあるのだが今度の武闘会に参加する為になんだ。」
と言うと
「ああ、あなたたちがカミュ様とククリコン様ですか。今魔王領で評判の。」
ククリコンが、
「評判の、ってどんな評判なのね。」
と聞くと
「まだ見ぬ強豪、未知の強豪カミュ、ククリコンと言われ、オッズ師泣かせのカミュ、ククリコンと言われていますよ。」
と言われた。おれとククリコンは苦笑し
「まあ、全力を尽くして頑張るし、大穴空けるよう頑張りますよ。」
と言った。
ハルビスにサインをくれ、と言われ
「大穴あけます。カミュ」
「打倒ラオン ククリコン」
とサインした。ハルビスは勝ち券買います、頑張ってくださいと言ってくれた。
商店を出て、更に北上し王都を目指した。
道は石積み、家も石を使ったものと木を使ったもの半々だった。石済みだと馬車が揺れるんじゃないかなんて考えた。畑などを見ると、見たこともない旬の果物、野菜が一杯あり、農家の人に名前や味を聞きながら、商店などでは何が幾らで売れているかなどを見ながら王都を目指していると、魔族に囲まれ
「怪しいやつ、ちょっと駐屯所まで。」
と言われた。
やっちゃいますか、とククリコンが目で合図してきたので首を横に振り、着いていった。
駐屯所で所属と魔王領での目的を聞かれたので、魔王様の印の押してある魔族の武闘会への参加依頼書を見せた。
魔族の警備隊は突然姿勢を正し、
「これはカミュ様とククリコン様でしたか、不快な思いをさせ申し訳ありませんでした。」
といってきたので、ククリコンは
「確かにおいら達は怪しかったね。物価調べたり作物の様子みたりね。それを取り締まるのがあなたたちのお役目なので、ご苦労様ね。」
と言い、俺も
「魔王領を歩いている人間がキョロキョロしながら歩いていたらセトやホクリクンのスパイだと思うのは当然で、あなたたちは魔族の領民の生活を守るためにしたことなので気にしないでください。私は今回取り調べを受けたことで逆に『さすが魔王領、スキがない』と思いましたよ。アイナ村は今魔王領なので魔王領の住民として安心しました。」
と言い、警備隊を褒めた。
「そういっていただければ助かります。」
と警備員は言った。
警備隊を出てからも北上し、王都へ進んだ。
やはり他の警備隊にも取り調べを受けそうになったので、その都度武闘会への参加依頼書を見せ、お役目ご苦労様です、といい切り抜けた。
2日で行く予定だったが、トリッパーとの出会い、魔王領の商店、畑をブラブラしていたら時間を食ったのでもう一泊することにした。
怪しまれるのは嫌なので、割と高そうな宿に入り、受付で武闘会への参加依頼書を見せて手続きした。
わざわざ宿の主人が出てきて挨拶してくれたので恐縮した。
夕食はとても美味しかった。山の幸、海の幸をふんだんに使ったものだった。
宿の主人から2品オゴリということで付けてくれた。
1品はこの地方の酒で美味しくいただきました。
もう1品は差し出がましいようですが、とメモがついており、ヤマタやホクリクンで大人気の野菜を使った料理だった。流石宿屋の主人、俺たちが何をしながら旅をしているか探ったうえでこのような料理を出してくれるとはと感謝し、美味しく頂きました。
その後、ククリコンは剣の稽古で素振りをすると言った。俺は酒を飲んだ後にやっても意味ないから辞めとけと言ったのだが、日課だからやると言った。
ククリコンの素振りを見ていると、やはり乱れがあった。でも実践では酒を飲んだ後に急襲されるとかがあるので、まあいいかと思い見続けていた。すると
「モグラの兄ちゃん、酔ってて素振りしても意味ないぞ。」
と声がかかった。




