カミュ、対セトの戦争を考える。
前話:魔族とアイナ村の会議をしている。
ケルンさんは続けた。
「これは村全体の意見ではなく私個人の意見としてお聞きください。今私達は魔族領として暮らしていますが、種族とはなんなのか?と思います。」
更に続ける。
「我々が魔族領となる前から魔族領で暮らしていた人たちが居ます。我々がセト領民で会った時、セトでは彼らのことを人類の裏切り者と言ってました。聞くところによると、セト以外の国でもその様に言う人が多いと聞いています。」
ラオンをチラ見して続ける。
「今は魔族領で魔王様の支配下にいます。人類の多くが言う人類の裏切り者に私達もなった訳です。でも、人類の一員であったときは、戦費を出すために重税を課され、戦争の食糧の為にただでさえ少ない食料を取られてきました。しかし、魔族領、彼らの言う裏切り者になってからは、魔族の方々の指定するものを指定量作れば、村の開発に兵を出し協力して下さったり、人間が食べれる野草や作物を持ってきて下さったり、狩りをして余った肉を持ってきて下さったり、今回の様に友好を結んだ地域の技術を我々に教えてくださったりしてます。これで人類の裏切り者と言われるのであれば私たちは裏切り者で十分です。」
そして村長を見て
「村長さん、私たちはかつての故郷であるセト、その他の国であるヤマタやホクリクンでも人類の裏切り者と言われています。良くしてもらう立場でこんなことを言うのは何ですが・・我々と友好を結んでよいのですか。これらの国や、それ以前にあなたたちの所属するイナバーンに悪くみられませんか。」
と言った。
ルオさんは
「このアイナ村も王直轄領でしたが、竜の領域と接しているということで王都からは税を取りに来る以外放置され、つい最近までは痩せた土地で慎ましく農業を行ってきました。それがカミュさんが来られ竜と交流を持ち、竜から頂いた金貨を元に再建計画を立てて畑を広げ、土を肥やし温泉を掘り、石鹸など特産品を作りようやくこのようになったのです。今の状態は竜の金貨を元にカミュさんの錬金などで作り上げたもので、イナバーン国は税を取るのみです。この村の今の状況を見て、今までほったらかしだったくせに最近は指示ばかり出してきています。」
村長は焦りながら、おいルオと言った。
ルオさんは
「大丈夫ですよ、今ここにはカミュさん、ラオンさん、バッチさん、カムストックさんが居ます。人間のスパイが居たらどなたかが気付くはずです。」
と言った。
村長は
「アイナ村では国に対して、『だったら国で竜や魔族を追い払ってくれ』と言ってます。ですから問題はないでしょう。魔族との友好に関しても、セトが負けて魔族領とイナバーン領が接することになりましたが、アイナ村が友好を結ぶことによって魔族が侵略してくることを防いでいると言ってますし、竜に対しても同様に言ってます。」
と言った。
ルオさんはラオンを見ながら、
「しかしそれも最近は疑いの目で見られています。アイナ村には大陸一番の剣士兼魔術師『暴虐のカミュ』がいますが、カミュさんがこの村にいない間に何か仕掛けてくる可能性があります。竜の方に駐屯してもらってますからその場合でも大事に至らないとは思いますが。」
ククリコンは
「このアイナ村も旧セト領と同じなのね。おいらは名誉村民だけどイナバーン国民ではないからいうけど、人間の村というけど、さびれた村の開発を手助けしてくれたのは、竜なのね。それで最近は魔族の人たちが色々教えてくれたね。特に芋はうまいのね。その間イナバーンは何もしてくれなかったのね。」
更にラオンとケルンさんを見て
「さっき言ってた旧セト領とアイナ村間の間に流民の村をつくる件ね。あの辺はむかしモグラの時住んでいたことあるけど、土が痩せててミミズもいないし、固いね。農業には向いていないと思うのだけどどうね。いっその事、工場を作るなり、魔王軍の軍の駐留地にしたらどうね。」
ラオンは
「そうか、ありがとうククリコン、参考になった。」
と言った。
ラオンは竜たちを見て
「今セトは、旧領回復、魔族から人間を解放しろといって旧セト領を奪還しようとしているらしい。旧セト領の人間は誰も奪還してほしいとは思っておらず、またあれだけ完全に負けたのに懲りないことだがな。」
バッチは
「オブザーバの立場でこの打ち合わせに参加したが、ラオン殿から意見を求められたので発言してよいか。」
皆が賛成したので続ける。
「セトはイナバーンと協力して攻めてくるかもしれん。魔族はどうするのだ。」
「今のセトなら我が魔族軍第一隊だけで十分に抑えられる。我が隊が抑えている間にイナバーンを蹴散らす。」
「ラオンよ。その時はアイナ村が戦場になるな、カミュ、どうする。」
俺は
「その場合はイナバーン軍がアイナ村に来る前に村南部を錬金と土魔法で囲い軍が入れないようにする。魔族軍に攻められないよう守りを固くしたといってごまかすさ。とにかく大軍が入れないように
すればなんとかならないか、ルオさん。」
「その状況だけでは何とも言えない。わがアイナ村としたら、イナバーンとセトが魔族領に同時侵攻しない様にするしかない。」
なんとも歯切れ悪くルオさんは言った。
更に
「魔族としてもアイナ村としても、イナバーンと魔族が対立しないように最善を尽くすことが重要だ。」
と言った。
俺は、
「バッチ、竜はどうするつもりだ。」
と聞くと
「竜と魔族は同盟を結んでいる。イナバーンが魔族領に攻め込もうとした場合、同盟に則り我が竜軍の精鋭・・・少なくとも1000以上を持ってイナバーン軍を殲滅する。そして場合によっては王都まで攻め込み、上空から炎を無差別に発射し火の海とするかもしれない。」
と言った。
重々しい雰囲気になったので、ククリコンが話を変えた。
「さっき言ってた旧セト領とアイナ村間の間ね、おいら今度行って土見てみるね。そういえばカミュさん道路つくる新しい方法考えるってこの前言ってたね。それ何必要ね。」
俺はククリコンが上手いこと話を変えてくれた、と思い、ケルンさんに
「そちらの村に石灰ありますか。」
と聞いた。大量にあると言うので、いつでもいいので分けてくれとお願いした。
砂と混ぜてコンクリートもどきをつくってみようと思っている。
これを使えば建物にも道路にも応用できると思う。
錬金術所に行って検討してみよう。
結局後半重苦しい雰囲気のまま会議が終わった。
セトやイナバーンの対応については後日竜と魔族で打ち合わせを行う様それぞれ国に進言することになった。
俺はルオさんに、イナバーンと魔族が戦争しないようにはどうすればいいと思うか聞いた。
ルオさんは
「魔族が竜に金貨を借りればいい。いや、あの魔王のことです。すでに借りに行ってるかも。」
と言った。




