カミュ、謎の訪問者と会う。
セトの国と魔族が戦争して魔族圧勝。
カミュの家にファフニール、バッチ、ローランと謎の男が来た。
カミュは見知らぬ謎の訪問者に対し、ファフニールに向かって、
「おい、ファフニール、この方はどなただ? 」
と聞くと、ファフニールは
「カミュの旦那、それは村長らと会ってからだ。」
と言った。
カミュはその男の雰囲気、足の配り、所作を見て、カミュには及ばないがこの男はかなり出来る剣士だ、と感じた。
体格も力強そうな体をしつつしなやかで柔軟そうな体つきだ。
謎の男はククリコンを見て、ビックリしファフニールに
「この一見してモグラに似た男は何者ですか。鼻先に金属のドリルがついているということは、普通のモグラではなく、かといって人間、人化した竜、魔族ではあるまい。」
と聞いた。
ファフニールは
「このモグラはククリコンと言い、知性があるモグラだ。そういう意味では魔族に近いものであるかもしれぬ。今から向かう村の名誉村民でもある。これ以上は今は何も言えぬ。」
と言った。
ククリコンは鼻先のドリルは未だ取っていなかった。
カミュは改造手術後1か月が経過したとき、すでにドリルの魔力を完全に体が吸収したので、ドリル除去手術を行うつもりであったが、ククリコンはドリルがあった方が皆の役に立つのでということでそれを拒否したのである。
また、謎の男はカミュに向かい
「あなたがカミュ殿ですか。私も、気配で察しているでしょうが剣士です。剣士の端くれとして、
大陸最強と名高いあなたに是非一手御指南頂きたいと思う。機会があれば後程。」
と言った。
挨拶が済んだ後、一行は村に向かった。
途中で村民たちに、
「皆さんお久しぶりで、今まで何かあったの? 」
「ファフニールのあんちゃん、今までどうしたんだい? 」
などと声をかけられ、ファフニールはちょっと色々あってなどと村民にあいさつしながら村長宅に向かった。
村長宅に行くと、すでにロッカさんが居た。
村長宅に着くと、村長にさっそく会議用の部屋に案内された。
ファフニールは、村長やルオさんに向かい
「急に訪れて申し訳ない。村長たちに相談する事がある。」
といい、バッチを見た。
バッチはファフニールに頷き続けた。
「さて村長、魔族の国と人類のセトの国の戦いの事は知っているな。魔族の国がセトに圧勝しセトが魔族に領土を割譲した件だ。」
「はい、ルオに聞き知っております。」
村長は答えた。
ルオさんは俺の顔を見て頷いた。バッチは続けた。
「今回、そのことで我が竜の領域は魔族より同盟の締結を提案された。」
俺はルオさんを見た。ルオさんは腕を組み目をつむって聞いている。バッチは
「この件に対し我々は同意することとした。」
ルオさんは目をあけ、俺を見、バッチを見た。バッチは更に
「近い時期、我らが王ファフニールと魔族の王、魔王ベルゼバブが同盟内容について会談することとなった。魔王は会談について中立地域で行いたいとの希望をわが軍に通告してきた。よって、我が竜としては、この村で我らが王と魔王の会談を行いたいと考えている。今回急に村長に会談を求めたのはこの件に関し了承を得たいと考えたからである。」
と言った。
俺はビックリした。ルオさんの読みがズバリ当たったなと思った。ただし同盟の会談をこのアイナ村で行うことまではルオさんは読んでいたのかな、と思った。
村長は、
「バッチ殿の言うことは解りました。竜の領域と魔族が同盟を結べば確かに戦いは減り、竜の領域と友好関係であるわが村も魔族に攻め込まれることも少なく、いやなくなるかもしれません。しかし魔族側がわが村に対してどのような考えを持っているのかも分からず、このままでは返事は出せません。」
とバッチを見ながら表情を消して言った。
「その件についてはこの男から。」
といい、バッチは謎の男を見て頷く。
その男は一同を見渡しながら。
「私はラオンという。魔族軍第一隊隊長及び魔族軍作戦本部次長をしている。」
と言った。俺は魔族の男だったか、と納得した。ルオさんを見ると頷いている。魔族が来ることを見越していたのか。
ラオンは続けた。
「今回、我らが魔王ベルゼバブは竜に対し、解放戦争の終結とその処理の為、期間を定め同盟、若しくは不可侵条約を求めた。それに対して竜側は同盟を結ぶことを了承してくれた。感謝している。」
ラオンはファフニールを見た。
俺は
「解放戦争?侵略戦争の間違いではないのか。」
と言った。
ラオンは怒り顔で俺を睨みつけながら、
「侵略戦争?カミュ殿、我らが魔族は理不尽な侵略などはせぬ。セトの独裁王ハルハトは商人の国ホクリクンを侵略しようとしていた。商人の富を横取りする為にな。」
ラオンはまだ怒りを収めず続ける。
「セトは皆さんご存じの通り軍国である。軍備を増強する為にセトの民に重税を課した。住民達は住民に嘆きながらもなんとか暮らしていた。しかし去年、セトは不作で飢饉にも関わらず更に軍備増強の為に重税を課した。ついに耐え切れなくなったのだろう。住民たちはわが魔族の国に住民の解放を願い出てきて、魔族に従属することを希望してきた。我ら魔族はセトの住民たちとは所定の物品や作物の売買を依頼し金銭を支払い交流があった。我が魔王ベルゼバブはこの願いを聞き入れセトの解放戦争を決意され開戦し勝利した。これが今回の戦争のいきさつである。断じて侵略戦争ではない。」
ラオンは続ける。
「今回の解放戦争で、バッチ殿はすでに見越しているに違いないが我が魔王軍は疲弊している。竜の領域に攻め込まれたら、もちろん負けぬように戦うつもりではあるが解放戦争の意味が台無しになる恐れがあった。よって同盟を申し入れ竜が受け入れてくれた。感謝している。ただし今までの経緯から会談場所においては、我らが魔族領で行うにも竜の領域で行うにもお互い不安である。よって竜にも我らにも理解があるこのアイナ村で行うべきと提案し竜もそれを受け入れてくれた。」
ラオンは更に、
「また、わが魔王軍はセトを解放したが、今後どのように統治していくかを検討中である。魔王様は旧セトに対し我らが望むものを所定量作らせる、当然金銭をもって買い取るつもりだがその事を守れば人間の住民の自治に任せるつもりである。しかし新しく我が国の住民となった人間に対し、魔族がどのように関わっていくかについて色々検討されているようであり、竜たちと人間が融和して付き合っているこの村を参考したいとの思いもある。よって視察もかねてこのアイナ村で竜王と同盟について話し合いたいと考えている。魔王様は竜王に対してこの旨提案し竜王も賛同したが、竜王が言うにはあくまでこの村は友好村であって、この村で会談を行うか否かは村民の賛同が無ければ出来ぬと言って来た。よって村民の賛意を得るために我がここにやってきた。」
ここでラオンは一口水を飲み、
「以上である。」
と言った。




