カミュ、更に新たな課題に悩む。
次の日、早朝の剣の訓練中、ククリコンが、
「水路はもう完成したし、温泉宿完了後、お祭りをするそうですね。」
と言って来たので、訓練中に話をするなと言う意味で一本入れた後、頭を抑えるククリコンに対して、
「ああ、最終的に決定するのはルオさんと村長だろうが何かやるみたいだな。ところで水路に水を流すのはいつするか知っているか?」
と言った。
現在、水路と川上流部はせき止めていて水を流していない。
お祭りの出し物について何をするのかは村長とルオさん二人に任せればいいか、と思っていたがもし聞かれたら山車を出せば、というつもりだった。
ククリコンは、
「水路はお祭り当日にセレモニーとして開通させるらしいですよ。出し物については、竜の人たちは、「暴虐のカミュ」VS「氷の姫バッチ」の戦いを見たいと言ってましたよ。」
と言った。
おれは、
「どういうことだ」
と言ったら、
「ファフニールさんはかつてカミュさんに敗れたらしいですが、竜の人たちは信じられないみたいで、かといってファフニールさんとカミュさんの試合はファフニールさんが負けた場合色々あるだろうから、ではカミュさんとファフニールさんの次に強いバッチさんとの試合を見たいとのことですよ。」
「それバッチは知っているのか? 」
「知らないみたいです。あ、カミュさん言わないでくださいよ。俺が竜の皆さんに怒られてしまいますから。」
「いや、それバッチも俺に負けたらまずいだろ、竜のナンバー2なんだから。」
「それは大丈夫みたいですよ。その場合、ファフニールさんにカミュさんが順当にバッチさんに勝ったということになるらしいから。」
どうなるの?
その後、朝食を食べてククリコンは竜の駐屯所のパネル工法の指示に言った。
今日からローランさんやロッカさんたち竜が駐屯所の施工を始めるらしい。
俺が自分の部屋でくつろいでいると、ルオさんが話があると言ってやってきた。
魔族の国と人類のセトの国の戦争が和平となったらしいとの事だった。ルオさんは、
「魔族の国とセトの戦いは魔族の圧勝でした。魔王軍が攻め込み、セトが受けて立つという戦いだったらしいですが、緒戦で魔王軍にセト王都軍がほぼ全滅させられ、セトはあの独裁者の王ハルハトが領土を1/3割譲する条件で和平にしたとのことです。」
「あの軍事大国セトが惨敗したか、流石魔王軍ですね。」
「ただし多少は魔王軍も損傷したとのこと、今、竜の領域と魔王軍は不可侵条約を結んでいますが、魔王軍が竜の領域に何か働きかける可能性があります。今竜に攻め込まれたら魔王軍は壊滅する可能性が高いですから。」
ルオさんはじっと俺の目を見つめて言う。
「かなりの確率で何かが起こります。」
「何が起こると思いますか。」
「カミュさんは竜がどう出ると思いますか? 」
「俺ならこれを機に魔王領に攻め込みます。魔王軍と竜とは今まで何度も戦っては和平を結んで来ました。今は和平を結んでいるかもしれませんが、今後はどうなるかわかりません。であれば、魔王軍が弱体化した今攻め込んでセトから割譲された土地まで魔王軍を押し込みます。」
「それを魔王軍は一番恐れています。ですから魔王軍は攻め込まれないように竜にとって背後となるこの村になにか仕掛けてくる可能性があります。多分、カミュさん貴方の懐柔を図るかと。あなたは竜と戦うに際し相性が良く、あなた一人で竜に大ダメージ、あわよくば全滅させるだけの力があります。」
「俺に魔王軍が接触してくると・・・でも俺は魔王軍と結ぶつもりはなく、竜とも争う気はない・・・そうか、魔王軍は村人を人質にとって俺に竜を攻めろ、と言ってくるかもしれない。しばらくの間俺は王都に戻りましょうか?」
ルオさんは俺を見て首を横に振りながら、
「その場合、南から子爵ボーナン軍が攻めてくる可能性が高い。ローランさん達がこの村にいてくれればよいでしょうが、魔王軍に竜が攻め込むこととなったら竜の領域に引き上げる可能性が高い。」
「ではどうしろと。ルオさんはどうなるとお考えですか。」
ルオさんは
「多分方針を決めるのはバッチ殿になると思います。多分ですがここまでの状況はバッチ殿なら読んでいると思います。私がバッチ殿なら再度強固な不戦条約を魔王軍と結びます。魔王軍と竜の領土の境を再度確認し、不可侵を破った場合の取り決めを更に強固に結びます。」
ルオさんの読みは鋭いと思った。以前の人生でどこかで会ったことがあるような気もした。
以前俺が足利義輝だったころ仕えていた・・・まさか。
俺はルオさんの目を見つめて言った。
「魔王軍ですが、色々なうわさがありますよね。ルオさんはどう思いますか? 」
「色々なうわさとは? 」
ルオさんは俺を試すように感じた。
「まず一つ目、これは多分セトの軍部連中が流した噂と思いますが・・・魔王軍は問答無用で皆殺し、生きたいのであればセト王国軍に従え。」
ルオさんの顔を見、反応を見るが表情は変わらない。
「そして二つ目、こちらは噂の出どころは解りませんが・・・魔王軍は誇り高く、セト王国軍とは戦うが、民衆には手出ししない。占領下の地域に関しては、ある程度の生産物、商業の指定はあるがそのほかに関しては民衆の自治にまかせる。食料が足りなければ与え、医療品が足りなければヒール系の呪文をかける。税は魔王軍が指定した物品、作物以外は取らない。セトとの戦いで魔王軍の領土となったもの達は、セトの圧政より魔王軍の統治がいいと思っている・・・どちらが正しいのでしょうか。」
ルオさんは相変わらず表情を変えず
「さあ、正確にどちらが正しいのかは解りません。ただし、私自体の考えを言わせてもらえば、多分カミュさんの言った後者の意見が正しいと思いますし、村民もそう思ってます。」
俺はびっくりし、
「え、村民もですか? 」
「ええ、以前村民の知人が何人かこの村に来て魔王軍の統治になって生活が楽になったと言ってました。魔王軍は指定したものを作ればあとは税も安く、食料や薬も提供してくれると。またセトの統治
時代と違い日用雑貨の物価は安かったと言ってました。昔、この村でも何もしてくれない王都よりいっそ魔王軍に降ろうかという話が・・・冗談ですが・・・あったくらいです。」
「そうですか。」
俺はルオさんに言った。
その日俺は何もする気にならず、家でぼーっとしていた。
ボスガンさん達が今日から温泉宿の施工を始めると言っていたが、顔も出さず家に籠っていた。
ククリコンが日が落ち帰ってきても部屋に籠っていた。
次の日から、村から竜が消えた。
竜の政庁から朝風呂に入りに来なくなった。
ククリコンが竜の駐在所の施工に行くと言って朝出て行ったがすぐに帰ってきて竜が誰もいないと言った。
おかしいと思い宿に行くと、宿の主人のカシアスさんが
「ローランさん達はしばらく竜の領域に帰ると言って、早朝出て行った」
と言ったとのこと。
午後になって温泉営業を始めても、あれほど来ていた竜が全く来なくなった。
いつも夜に風呂に入れろとうちにきていたバッチもこなくなった。
ボスガンさんは、竜たちが来ないけど、すでにお金は貰っているから、と工事を続けていた。
そのような日が1週間続いたある日の朝、俺の家にファフニール、バッチ、ローランさん及び知らない人1名がやってきた。
バッチが
「今から村長やルオに相談したいことがある。カミュ、ククリコンついてこい。」
と言った。




